ノサカラボ『シャーロック・ホームズ4』山寺宏一×水島裕が阿吽の呼吸で魅せる!
ステージ
インタビュー
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左から)野坂実、山寺宏一、水島裕 (撮影:石阪大輔)
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すべて見る演出家・野坂実が世界中の名作ミステリーを舞台上で表現していくプロジェクト「ノサカラボ」。その最新作として、コナン・ドイルの人気作「シャーロック・ホームズ」を朗読劇に仕上げた『TASTE OF SOUND WAVE Reading with Live music Sherlock Holmes4』が7月13日(土)、14日(日) に大手町三井ホールにて上演される。2021年から毎年、行われてきた人気シリーズだが、今年は「赤毛組合」、「青いガーネット」、「オレンジの種五つ」という色にまつわる3作を上演。1作目からホームズ&ワトスンの名コンビを演じてきた山寺宏一、水島裕、そして演出の野坂実が意気込みを語ってくれた。
――2021年に始まった『シャーロック・ホームズ』シリーズも今年で4作目を迎えます。
山寺 もう4回目ですが、ますます進化したところをお見せしたいなと思います。こうやって毎年できることを当たり前じゃないと思って、より進化した姿をお見せ、お聞かせできればと思っています。初めて加わるメンバーもいますので、どういう絡みができるのか楽しみにしています。
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水島 4回目ではあるんですけど、とても新鮮なんですよ。というのも、ゲストの方が毎回変わるから。山ちゃんと僕は、幸せなことに固定の役でやらせてもらっていますけど、ゲストの方が変わると空気が変わるんですね。これがね、毎回全然違うんですよ。しかも3話のオムニバス形式で、ゲストの方は3つの役を演じ分けないといけないでしょ?その凄さ&大変さを横で見ているのも楽しいです(笑)。
あとは、野坂さんのこの作品に対する“覚悟”の表れとして、毎回、(劇中の音楽を演奏する)演奏家の方がひとりずつ増えていくんですね。
水島 それが毎年、増えていくので、それもあっていつも新鮮なんですよね。
――今回、赤、青、オレンジという“色”つながりの3タイトルを上演されます。
野坂 山寺さんからも最初に「色だね」ってメッセージが送られてきましたね。
山寺 自分で気づいてなかったの?
野坂 いや、気づいてました(笑)。短編第1作目で「シャーロック・ホームズの冒険」というのがあって、そこからスタートしているんですけど、男女の比率であったり、いろんな要素について鑑みながらこれまでつくってきましたが、今回、男性だけで構成される物語にしようと考えた時、いろいろ探したらちょうどこの3つの色が当てはまっていったんですね。
山寺 信号か(笑)!
水島 出演者が男性だけって初めてだよね? 学校の部活の柔道部みたいになりそうな気がします(笑)。
野坂 衣装さんからも「ちょっと地味ですね」って(苦笑)。いつもは女性の方が必ずいたので、色味もいろんなバリエーションで展開していたんですけど。
山寺 これね、僕の衣装はちょっと光沢があるんですよ。
野坂 時代考証的には大丈夫なのか? というのもあったんですけど……(笑)。
山寺 あえてです!
野坂 そうなんです。ちょっとずつアクセントになるものを衣装でも取り入れていきましょうと。
――山寺さんと水島さんは、これまでホームズとワトスンを演じられてきて、その面白さをどんなところに感じていますか? またコンビネーションの深まりを感じますか?
水島 アニメや洋画の吹き替えでもそうなんですけど、本来は1話目からちゃんと役とシンクロしてなきゃいけないんですが、現実的には役に近づくまでにどうしても時間がかかることもあるんですよね。そういう意味でも、1年目と4年目で違うと思います。そして、僕は“山ちゃんシャーロック”を一番近くで聴いているわけで、これは至福の時間ですよ。
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山寺 ありがとうございます。大先輩にそのように言っていただけるとは…
水島 何をおっしゃいますやら、“大先輩”じゃないし(笑)! さっきも言いましたが、ゲストさんは大変なんですけど、シャーロックとワトスンというコンビは固定されているので阿吽の呼吸ができてきていると思っています。
山寺 全くその通りです。僕としては、この3人でずっとユニットとしてやってきた「ラフィングライブ」でもコンビを組ませていただいてたんで。だましだまされ……というか、利用したりされたりという関係で……。
水島 いやいや、役の上では、ほぼあなたが僕を利用してたじゃないの(笑)!
山寺 その延長にあるという感覚を勝手に持ってるので「裕さん、こう思ってるかな?」「こんなことするかな?」と思いながら、ずっと一緒にやっているような不思議な感じなんですよね。「ラフィングライブ」の時からふたりで掛け合いをやるのが本当に楽しかったんで。
あれがなかったら「(かしこまった口調で)水島先輩と『シャーロック・ホームズ』をやらせていただけて、ワトスンをやってくださるということで、何卒よろしくお願いいたします!」となったかも……。
水島 なってないもんね(笑)。でも、山ちゃんと野坂さんと3人でやった「ラフィングライブ」の存在はすごく大きな〜。
山寺 もちろん、初めての『シャーロック・ホームズ』に緊張する部分もあったけど、「ラフィングライブ」があったから、稽古場でも「またため息ですか?」とか大先輩に突っ込めたりするわけですしね。
水島 すいません!
山寺 本来はね、僕のような後輩な立場でそんなことは…。
水島 いやいや、普段から言ってるし。(笑)。
山寺 この関係がなかったら、シャーロック・ホームズを演じる前に水島裕さんという存在に緊張して役に近づくのに時間がかかったでしょうね。
水島 なんか褒められてるのか、からかわれてるのか……(苦笑)。
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――シリーズ常連の大塚明夫さんに加えて、谷山紀章さん、細谷佳正さんという新しいふたりがゲストとして加わります。
山寺 僕はまず「こういう人とやりたいです」とお願いするんです。今回、新たに加わるおふたりもずっと共演したいと思っていた方たちなので、本当に嬉しいです。
細谷くんとは、他の朗読の企画でご一緒したことがあったけど、谷山くんは初めてなので、どんなお芝居をされるのか? 声の仕事で会ったことはあるんですけど、それもそんなに回数はないのですごく楽しみです。ずっと前から気になってたんですけど、決定的だったのが、飲み屋で意気投合したということですね(笑)。もともとミュージシャンとしても大活躍していて、カリスマ性がありますよね。それでいてすごく勉強熱心なイメージです。
細谷くんは、嘘か本当かわかんないけど、僕の存在が声優になったきっかけだといろんなところで言ってくださっていて。
水島 そうなんだ? 素敵だね。
山寺 そう言われて、嫌な気はしないので、それを真に受けて、やらせていただいています。役者としても大好きで、以前、あるアニメで僕がすごく良い役をいただいたんですけど、ネットで「細谷さんじゃなかったんだ……」と書かれたことがあったんです。僕自身は、自分にピッタリな役だと思ってやったし、評判も良かったんですけど「細谷さんのが見たかった」って(苦笑)。「そんなすごいやつがいるのか? チクショー!」と思って(細谷さんの演技を)見てみたら、本当に素晴らしくて、好きになりました。声もお芝居もすごく魅力的なのでね。あの書き込みを根に持ちつつ……。
水島 僕ね、おふたりともお会いしたことがないんですよ。新鮮です。新鮮な柔道部です(笑)!
――そもそも野坂さんが、ノサカラボとして『シャーロック・ホームズ』シリーズを朗読劇で上演しようと思ったのはなぜだったんでしょうか? その上で、このおふたりにホームズとワトスンをお願いした経緯は?
野坂 ノサカラボとして最初の作品が『シャーロック・ホームズ』シリーズで、そこから朗読以外の舞台などもやるようになったんですね。まず「ミステリーをやろう」と思って、伝説的な作品でもある 『シャーロック・ホームズ』をやることにして、その時にはもうおふたりの顔が頭に浮かんでいましたね。そのまますぐに電話して「手伝ってください」って言って、「え? やるの?」と言いつつ「わかったよ」と承諾してくださったんです。
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山寺 朗読劇じゃなく、舞台でやろうとは思わなかったの?
野坂 思わなかったですね。先ほども話に出た「ラフィングライブ」の時から、山寺さんは気になることがあると考え込むようなタイプで、裕さんは「山ちゃん、考えすぎだよ~」って声をかける感じだったので、ホームズとワトスンピッタリだなと。
水島 僕は「まあ、なんとかなるんじゃない?」ってタイプだから。
野坂 このふたりがピタッとハマったんですよね。当時、コロナでなかなか舞台もできなくなって、それこそ「ラフィングライブ」もできなくなってしまって、おふたりと一緒にできることはってことで朗読劇ならいけるなとも思ったんですよね。
だから、僕はいつもプロデューサーにも、古い言い方だけど「『シャーロック・ホームズ』が、ノサカラボの一丁目一番地なんだ 」って言ってて、ノサカラボの将来にとっても“核”となる存在であり、数多の公演のひとつじゃなく、『シャーロック・ホームズ』は特別だって思っています。
水島 でもね、これは本当に脚本が大変な作品なんですよ。だって原作はご存じの通り小説ですから。それをセリフで展開する魅力的な朗読に仕上げないといけないわけです。山ちゃんも僕も稽古場で「ああしない? こうしない?」と言って一緒に作っていく部分はありますけど、野坂さんは本当に大変だろうと思います。
野坂 「ラフィングライブ」でも、3人で作っている感じが僕はすごく楽しかったんですよ。この『シャーロック・ホームズ』も3人でつくっているイメージで、脚本でわかりづらい部分があると、山寺さんからも裕さんからも「ここはこういうのどうかな?」「朗読ならこういう言い回しもありじゃない?」といった提案をしてくださるんですね。それはすごく心強いです。
水島 去年の公演で山ちゃんが提案した“歩数”の部分なんかは本当に印象的ですよね。
野坂 そうなんですよ。これはネタバレに関わる部分なので詳しくは言えないんですけど、原作で書かれている描写が、破綻していることで有名ではあるんですけど、山寺さんが自分でも何度も確認したうえで「おかしい!」とおっしゃってね。
山寺 図を描いてましたね。
野坂 朝方にLINEで写真を何枚も送ってきて「ドラマバージョンだとこうなってるんだけど、こうやってやると、建物の幅が……」と指摘してくださって「なので、僕からの提案なんだけど」と解決案を提示して、きちんとシーンを成立させてくれたんです。あれはすごかったです。
山寺 いやいや、朗読劇としての魅力を伝えるのはもちろんですけど、やはり原作が素晴らしいので、その面白さをきちんと伝えなくてはいけないので。これだけ世界中にファンがいる作品なので、すごく難しいことにチャレンジしてると思いますけど、こうやって形になってシリーズとして続けられるのは、すごく嬉しいし、何より脚本の力が大きいと思います。
水島 本当にそうだよね。
野坂 先ほど、楽器の話も出ましたが、今年はフルートが増えます。
水島 そうなんだ!?
野坂 バイオリン、チェロ、クラリネットにビオラ、ピアノにフルートが加わって、さらに豊かな音色をお届けできると思います。
水島 更に生効果音もあって、本当に豊かな空間になると思いますので、ぜひ楽しみにしてください。
山寺 改稿を加えるたびに、キャストの個性が活かされて、どんどん進化していくので、すごく面白くなると思います。ぜひお楽しみにしてください。
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取材・文:黒豆直樹
撮影:石阪大輔
<公演情報>
ノサカラボ『TASTE OF SOUND WAVE Reading with Live music Sherlock Holmes4』
公演期間:2024年7月13日(土)・7月14日(日)
会場:大手町三井ホール
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