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朝夏まなと×田代万里生×廣瀬友祐 “ハッピーエンドの最上級”なミュージカル『モダン・ミリー』再演の魅力

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インタビュー

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左から)廣瀬友祐、朝夏まなと、田代万里生 (撮影:塚田史香)

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ジュリー・アンドリュースがヒロインを演じた1967年公開映画を原作に、2002年にブロードウェイで初演されたミュージカル『モダン・ミリー』。1920年代マンハッタンを舞台に、モダンガールに変身した田舎出身の少女ミリーが意気揚々と恋に仕事にと邁進していく中で、とある事件に巻き込まれて……という、恋あり友情あり事件ありの陽気でハッピーなミュージカルだ。

日本版は朝夏まなと主演で2020年4~5月に初演予定だったが新型コロナウイルスの影響で開幕直前で中止に。しかし2年後の2022年、満を持してメインキャストが集結し上演、連日大きな笑いと大喝采に包まれ大好評を得た。その作品が新キャストを迎え2年ぶりに再演決定! 初演に続いてヒロイン・ミリーを演じる朝夏まなと、ミリーと偶然の出会いを繰り返すジミー・スミス役を新たに演じる田代万里生、ミリーの勤務先の社長トレヴァー・グレイドン役の廣瀬友祐に話を聞いた。

「お客さんにハッピーになってもらうことで僕らも幸せになっていた」

――朝夏さんと廣瀬さんは前回に続いての出演。田代さんは今回からの新キャストです。まず朝夏さんと廣瀬さん、初演はどんな公演でしたか。

朝夏 2020年に「あとは幕を開けるだけ」という状態まで稽古を重ねた経験を経ての2022年の初演でした。一度ほぼ作り上げていたにも関わらず、実際にやるとなると必死(笑)。まわりがあまり見えていない状態で、舞台に立って「ここで笑いが起きるんだ」「ここが面白いんだ」と発見するような形でした。千穐楽が近付くにつれてお客さんも増え、こんなに愛される作品なんだなと感じました。

廣瀬 2020年の公演がコロナの影響でなくなってしまい、2022年は言わば“リベンジ公演”。ほとんどのキャストが再集結し、しかもまだ不安定な社会情勢の中、最後までやり切れた。とても記憶に残った作品になっています。作品自体がハッピーで明るいミュージカルですし、まぁちゃん(朝夏)筆頭にハッピーなエネルギーに満ちていて、まわりを幸せにしてくれる個性を持つ人たちばかりが集まっていた。沈みがちなコロナ禍において、観に来ていただけたら楽しんでもらえて、前向きな気持ちになれるようなパワーのある作品だったし、僕自身もこの作品に救われたところもありました。

田代 初日、信じられないほどドッカンドッカン笑いが起きたそうですね。僕も映像で拝見し、お客さんを笑わせるぞという皆さんの意地を感じました(笑)。笑わせることが目的ではないとは思うけれど、あの時期に“演劇を観ること”、“演劇を届けること”、ともに思いが伝わってきました。

廣瀬 演劇界、エンタメ界に限らず世界中が沈んでいましたからね。どうにか踏ん張って前を向こうと思っても、ことごとく止められてしまうような日常で、心が疲れていた。そんな中でただただ笑えて、明るい気持ちで劇場をあとにできるパワーがあった。僕自身あの時期は、演劇に限らず辛い物語は観られなかったですから。あの時期に演劇にお金を払い、劇場に来てもらうからにはハッピーになって帰ってもらいたかったし、お客さんにハッピーになってもらうことで僕らも幸せになっていた、というような作品です。

朝夏 私たちとしては2022年の公演を、できなかった2020年の思いも込めて“集大成”としてやっていたんですよ。

廣瀬 そうですよね。そのつもりでやっていました。

朝夏 まさか再演できるとは! ですよね。

廣瀬 お客さんの反応もよかった公演を再演できるって、幸せなことですね。

――そんな作品に初参加する田代さん、作品の印象は。

田代 演出の小林香さんも、まさに「世界的に沈んでいる時期だったから、とにかくお客さんに笑ってもらうことに対して貪欲に作っていった」とおっしゃっていました。辛い時期の光のような存在だった作品なんだろうなと思います。今回は社会情勢も変わっていますが、僕にとっても底抜けに明るい作品は久しぶり。ど直球の、クラシカルなザ・ブロードウェイミュージカル。僕が演じた中で一番近いのが2013年に演じた『エニシング・ゴーズ』かな? 『エニシング・ゴーズ』には別カンパニーですが、一路真輝さんや廣瀬くんも出ていたので(2021年)、そんな繋がりも嬉しく思っています。

廣瀬 普段はやっぱり暗い役柄の方が多いんですか?

田代 うーん……、最近はそうでもないけど。でももともとクラシカルな歌唱ルーツから来ているから、クラシックな作品ってシリアスなものが多いんですよね。唯一違ったのがオペレッタの流れを汲んだ『エニシング・ゴーズ』だったんです。最近はキャラの濃い役もやるようになり、チャレンジもあり、昔のようなクラシカルな作品に立ち戻ったりもし……という感じです。

圧巻のダンスシーンもお楽しみに

――役どころについてお伺いします。朝夏さん、ミリーという役はどういうところに魅力を感じていますか。また前回とは違う顔が見えてきた、というようなことがあれば教えてください。

朝夏 ミリーは一生懸命なところが魅力。前回はライトな感じでお届けしていましたが、今回は2年前よりこの時代の女性の立場など、時代背景にも重きを置いて作っています。それにより、最初のナンバーからして、田舎から出てきてNYで困難に立ち向かっていくガッツが伝わるようなエネルギッシュなミリーになっていると思う。より、芝居重視になっているなと感じますし、それは一度経験したからこその深みだなと思っています。あと、2年経って、ミリーの設定年齢も2歳上がりました!

田代 ふたつ上がって22歳なんだ! ってことは、前回は20歳だったんですね。

朝夏 そうなの(笑)。だから演出家にも「めっちゃ若い! と意識しなくていいよ」と言われたので、ありのままやろうと思います(笑)。

――田代さんはジミー。ミリーと反発し合いながら次第に惹かれていく、というようなキャラクターです。

田代 最近僕が演じた役の中ではかなり若くて、20代という設定。実年齢より若い役だというのは楽しみですね。僕は40歳になりましたが、30歳ころから背伸びをしてその役にたどり着くような役が増えていたところ、ここ数年は逆行するような役も出てきた。久しぶりにフレッシュで生き生きとした青年なので、ドキドキしています(笑)。一幕ラストでミリーが『ジミー』という曲を歌うじゃないですか。僕はあの曲が一番好きなのですが、同時にこれはジミーがチャーミングじゃないと成立しない作品だなと感じるところでもある。とにかくキュートでチャーミングでありたいと思っているのですが……大丈夫かなぁ。

朝夏 チャーミングがダダ漏れてます。ピッタリ!

廣瀬 キュートでチャーミングなんて、もう万里生くんの代名詞じゃないですか。

――廣瀬さんはグレイドン。ミリーの勤め先の社長で、ミリーが玉の輿に乗ろうとモーションをかける相手です。前回は真面目な顔でドカンドカン笑いを取っていらっしゃいました。

廣瀬 笑わせるつもりがなかったと言うと嘘になりますが(笑)、あくまで芝居の流れの中で笑ってもらえたら嬉しいと思って作っていました。でもミリーとジミーが基本的に受け身なんですよ。受け身の人たちがちゃんといてくれたからこそ、笑いを仕掛ける側が無茶苦茶にできたんだと思います。

朝夏 今年は、もうすでにパワーアップしてますよね。

廣瀬 嘘でしょ!?

朝夏 なんか、よりグレイドンが染みこんでいる。

廣瀬 染みこんで……。まあ確かに、稽古で言えば3回目ですしね。

朝夏 4年やっているってことだから。

朝夏 この間の稽古で、ミリーとジミーが初めて会うシーンをやったのですが、もう笑いをこらえるのに必死でした。すでに笑いをこらえてセリフが言えないという感じだったので、ちょっと気を付けなきゃと思っています。でもまりまり(田代)の場面でもめっちゃ笑いが起きてたよね。

田代 そうでしたっけ(笑)。もう必死すぎて。展開は早いし、会話のキャッチボールも早いし。『エリザベート』のフランツ・ヨーゼフのような、威厳をもってゆっくりしゃべるのと真逆。けっこう今、いっぱいいっぱいです。

朝夏 そうは見えない!

――『モダン・ミリー』、ダンスもとても楽しく華やかな作品です。特にタップが印象的ですが、踊っていていかがですか?

朝夏 私はガッツリ踊りますが、楽しいです! グレイドンさんにアピールするためにタップを踏みます! タップは前回の『モダン・ミリー』ぶり。

田代 すごいね、それであんなに踊れるんだ!?

朝夏 タップって自転車と一緒なんです。一回できちゃうと、できる。……と、思う。

廣瀬 それはまぁちゃんのポテンシャルが高いからだと思う……。

田代 廣瀬くんもタップある?

廣瀬 タップと呼んでいいのかわからないものなら、あります(笑)。

朝夏 エレベータータップね(笑)。

廣瀬 まぁちゃんを邪魔します(笑)。

朝夏 グレイドンさんはタップじゃないけど、ドロシーとのすごいアクロバットなダンスシーンがあるじゃないですか! バレエのようにちゃんとリフトをして。

廣瀬 今回そのシーンがどうなるかわかりませんが、たしかにやっていました(笑)。

朝夏 あとジャンプ力も半端なかった。

田代 廣瀬くんはサッカーやってたんだっけ? スポーツ万能だからダンスもできるの?

廣瀬 どうでしょう、でもダンスは『WEST SIDE STORY』で鍛えられました。できるできないではなく、自分の中のダンスに対する姿勢みたいなものは、あの経験で大きく変わったというのはある。

朝夏 なるほどね。ジミーも昨日、めちゃめちゃ踊ってた!

田代 みんなよりは踊らないけど、“僕比”ではすごく踊る(笑)。

朝夏 まりまり、何年ぶりに踊るんだっけ?

田代 それこそ『エニシング・ゴーズ』ぶりだから11年ぶりくらい? すごく新鮮です。やっぱり上手い方と組むと、ひとりで練習していてもできなかったことができたりする。恵まれているなって思います。アンサンブルの方たちもとても素敵ですし圧巻のダンスシーンになっているのでそこも楽しみに注目してほしいですね。

“濃い”新キャストたちとともに、新たな『モダン・ミリー』を

――改めて『モダン・ミリー』という作品の魅力は。

廣瀬 とにかくこんなハッピーエンドな物語、ないんですよ。ハッピーエンドの最上級です。ミリーは全てを手に入れて、幕が下りる。明るい作品ってこんなに人を幸せにできるんだ、笑うって大切だなということに気付かせてくれた作品です。

――2024年再演版、けっこう変わるところがあると聞いています。

廣瀬 脚本がずいぶん変わり、ストーリーも違うんです。一路さんはじめ、前回と明確に違う流れがあったり、違う台詞があったりする。(※本国からの変更で現代に即したアレンジが加えられている。キャラクターとしては一路真輝の演じるミセス・ミアーズは、前回は中国人のふりをするアメリカ人だったが、今回はアメリカ人として登場)ミリーの立ち回り方も変わっています。その中で僕の演じるグレイドンはほぼ変わらないのですが、前回と変えた方がいいもの、変わらないけれどブラッシュアップさせていく部分にはいつも通り挑戦していきたい。

朝夏 再演すると、前回気付かなかったことに気付くというのは絶対にある。キャストも半数ほど変わり、すでにまりまりが新しい風を吹かせてくださってますし……。私としては一度経験した作品ですが、まったく違う感覚。そういう作品に巡り合えていることも楽しいです。

――最後に田代さんと廣瀬さんには“朝夏ミリー”の魅力を、朝夏さんには2024年版『モダン・ミリー』の魅力をお伺いしたいです。

田代 とても前のめりなミリーで、キラキラしています! もともと大きいおめめを飛び出るくらいキラキラ輝かせてこちらを見つめてくるので……なんか、自分の目って小さいなと思っちゃうんだけど(笑)。

朝夏 可愛い目ですよ!

田代 こんなキラキラしている人がいるんだなって思うし、稽古場でも誰とでも明るくコミュニケーションをとって、自然にみんなを幸せにしている。普段のまぁちゃんのハッピーオーラが、そのままミリーになっている。まさにミリーにピッタリです!

廣瀬 基本的に明るい印象のある方ですが、きちんと弱さがある強さを持っている。そこが魅力的だなと思います。僕は『モダン・ミリー』のほかに『シスター・アクト』でもご一緒していますが、まぁちゃんの強さにみんながついていっているというのは、どの作品でも感じます。

朝夏 ありがとうございます。新キャストが皆さん濃くて。まりまりは本当にジミーにピッタリ、声の圧もあるので出会いのシーンから印象に残るものになっているのではないかと思うし、新たなジミーが誕生するなと感じています。(夢咲)ねねちゃんも、ねねちゃんそのまま(笑)。演技なのか素なのかわからない究極のドロシーという感じだし、親友感はすでにばっちりです。

田代 「生クリームの上を歩いてるような」だっけ?

朝夏 そうそう、それくらいふわふわしているのがドロシーだって香さんがおっしゃっていました(笑)。土居裕子さん演じるマジ―は、彼女のセリフでミリーが自分の生きる方向性、心が変わるのですが、本読みですでに泣きそうになってしまいました。本当に皆さんピッタリで、「よくこんなにキャラクターにピッタリの人を連れてきたな!」と思っています。前回は前回の良さがあり今回は今回の良さがありますが、表現すると……ビビッドな色あいになった感じかな? 香さんもこれは再演ではなく新しい『モダン・ミリー』だとおっしゃっています。初演のような勢いのある再演にしていきたいです!

取材・文:平野祥恵 撮影:塚田史香
ヘアメイク:根津しずえ(朝夏まなと)/ 小森真樹(337inc.)(田代万里生)
スタイリスト:ゴウダアツコ(田代万里生)

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<公演情報>
ミュージカル『モダン・ミリー』

脚本:リチャード・モリスディック・スキャンラン
新音楽:ジニーン・テソーリ
新歌詞:ディック・スキャンラン
広東語翻訳:ドゥラ・レオン(柯杜華)スーザン・チェン
原作・ユニバーサル・ピクチャーズ同名映画脚本:リチャード・モリス
演出・翻訳:小林香
訳詞:竜真知子
振付:木下菜津子・RON×II・松田尚子

出演
朝夏まなと 田代万里生 廣瀬友祐 夢咲ねね 大山真志
土居裕子 一路真輝

入絵加奈子 安倍康律
砂塚健斗 高木裕和 常住富大 堀江慎也 村上貴亮
伊藤かの子 島田 彩 橋本由希子 湊 陽奈 吉田萌美 玲実くれあ

【東京公演】
2024年7月10日(水)~7月28日(日)
会場:シアタークリエ

【大阪公演】
2024年8月3日(土)・4日(日)
会場:新歌舞伎座

【愛知公演】
2024年8月11日(日・祝)
会場:Niterra 日本特殊陶業市民会館ビレッジホール

【福岡公演】
2024年8月16日(金)~8月18日(日)
会場:博多座

【東京凱旋公演】
2024年8月24日(土)・25日(日)
会場:昭和女子大学人見記念講堂

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/modern-millie/

公式サイト:
https://www.tohostage.com/modern_millie/

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