広瀬アリス×風間俊介が考える“信じる”とは?「信じるって思考停止の瞬間があると思う」
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インタビュー
左から)広瀬アリス、風間俊介 (撮影:奥田耕平)
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すべて見る信じるとは、どういうことだろうか。相手を疑わないことが、信じることなのか、自分の見たいように相手を見ることが、信じることなのか。7月7日(日) 放送・配信スタートの『連続ドラマW 完全無罪』は、まさに信じるとは何かを突きつける作品だ。
21年前、少女誘拐殺人事件を起こし、獄中の身となった男・平山聡史。その冤罪再審裁判の担当に抜擢された弁護士・松岡千紗は、自らもその事件で監禁された被害者の1人だった。
弁護士として、被害者として、容疑者と向き合い続ける千紗。彼女が信じるべきは、目の前の平山なのか。それとも平山を犯人とする世間の声なのか。
大門剛明原作によるリーガルミステリーを、大森立嗣監督・脚本で連続ドラマ化。主人公・千紗を広瀬アリス、千紗の協力者となる熊弘樹を風間俊介が演じる。
迷宮のような物語の果てに、2人が見つけた“信じる”の答えとは――。
相手を信じるのか、信じると決めた自分を信じるのか
――容疑者・平山聡史は本当に有罪なのか無罪なのか。彼の言葉をどこまで信じていいのか、ひたすら問われ続けるような物語でした。
広瀬 私も最初に台本を読んだとき、どっちなんだろうと思いました。でも千紗のようにそこまで強く真実を知りたいと思えなかったんです。私、誰よりあきらめが早いので(笑)。
風間 それは魅力的な性格だね(笑)。
広瀬 結末を全部わかっていても、1話のラストの接見室のシーンを撮るときとか、自分の感覚を信じるのか、平山さんが言ってることを信じるのか、リアルに揺さぶられちゃって。とても私じゃ無理だなと思いました。絶対にここまで向き合えない。改めて千紗の強さがわかったというか、本当に芯の通った女性なんだなと思いました。
風間 また(平山を演じる北村)有起哉さんの目の読めなさがすごくて。それこそ(千紗と対立する元県警刑事・有森を演じる)奥田(瑛二)さんの「絶対そうだ!」っていう気迫もすごい。俺、奥田さんが近くにいて「絶対そうだ!」って言われたら「絶対そうだ!」と思うもん(笑)。
広瀬 私も。「ですよね!」って(笑)。
風間 全員説得力がすごすぎるんですよね。
広瀬 すごすぎる。だから、毎回気持ちが変わっちゃう。
風間 その上でもし自分が平山と対峙したらどうするかというと、やっぱり疑いますよね。個人的な意見なんですけど、信じるって思考停止の瞬間があると思っていて。言葉として健やかだから、みんなついすがりたくなるけど、信じていると思い込むことによって目を背けていることが世の中にはたくさんある。信じるって、向き合えば向き合うほどわけがわからなくなるものだと思うんですよ。
広瀬 千紗がまさにそうで。平山のことを信じたはずなのに、自分の勘違いなのか、事実なのか、それすらわからなくなっていく。
風間 その姿をちゃんと描いているところが、この作品はリアルだし怖いというか。
広瀬 でもそこがいちばん好きなところです。
風間 わかる。オブラートに包まれていたものが剥がされていく瞬間みたいなものがあって、そこがすごく魅力ですね。
広瀬 台本をもらったときも、5話分、一気に読んじゃって。読み終わったときは、人を信じるって何だっけ、疑うって何だっけということをすごく考えさせられました。余韻に浸りながら、人の心について考えさせられる作品だと思います。
風間 結局信じるって、本気で相手を信じるのか、相手を信じてると決めた自分を信じるのかの、どっちかだと思うんですよね。きっと千紗は後者な気がしていて。誰の言葉を信じるとか信じないとかじゃなくて、信じると決めた自分を裏切らないように生きていくしなかった。精神的にはアスリートみたいなキャラクターだなと思いました。
風間さんは親戚のお兄ちゃんって感じでした(笑)
――そんなシリアスな作品の中で、千紗と熊の場面は少し肩の力が抜けるようなところがありました。
広瀬 パラリンピックのお仕事で何度かご一緒したりして、普段の風間さんを知っているからこそ、熊さんが風間さんだと聞いて、こんなにすんなり入ってくることってあるんだと思うくらいすんなり入ってきました(笑)。現場でも私のことをすごく心配してくださるんです。その感じが熊さんみたいで、ほっこりしました。
風間 千紗は、本来人が生活をする上で適度に距離をとって誤魔化すことまで正面から受け止めなきゃいけない役。演じる側としては、相当大変だと思うんですよ。だから僕も心配で声をかけたりしたんですけど。広瀬さんのすごいところは、撮影の前後とか、メイク中とか、ずっとみんながこうあってほしい広瀬アリスとしてそこにいるんですね。現場で一言も喋らなくても全然通る役なのに、みんなに声をかけて。すごい人だなと思いながら見てました。
広瀬 私は風間さんとのシーンは、いつも安心感がありました。お芝居のリズムがすごく心地よかったんですよ。
風間 本当に? 俺、今めちゃくちゃ喜んでるんだけど(笑)。
広瀬 北村さんや奥田さんとのシーンでは、あえて気持ちのいい間を崩すことで自分を追い込みたいみたいなところがあって。その分、熊さんとのシーンは心の中の重いものが取れるようなところがありました。
風間 ここがまさしく僕と熊のリンクするところなんですけど、ロマンス力みたいなのが一切ないんです(笑)。
広瀬 すごく話しやすいんですよ。親戚のお兄ちゃんって感じでした(笑)。
風間 熊から言わせれば親戚じゃないんですよ。でもね、親戚なんです(笑)。広瀬さん、僕がすぐそこにいるのに扉が半開きのまま着替えようとしたことがあって。それもまた広瀬アリスの魅力だなとあのときは思っていたんだけど、今、謎が解けた、親戚だったからか(笑)。
広瀬 違和感がないんです(笑)。
風間 ロマンスって違和感からスタートするものだと思うんだけど、その違和感がない。
広瀬 ゼロでした(笑)。
風間 シームレスなの。波風が立たない。喜んじゃダメなんだけれど、でもね、それも俺なんです(笑)。
1年前の悩みなんてみんな思い出せませんから
――千紗は過去のトラウマと向き合いながら真実を追求しようとします。千紗ほどではないにせよ、人生に苦しみはつきもの。お2人は苦しみとどう対峙して乗り越えていますか。
広瀬 今って100歳まで生きられる時代じゃないですか。だから、たかが1年とか、半年ぐらいの間、しんどいことがあっても、長い人生というスパンで考えれば、どうってことないと思うようにしています。私の場合、ダイエットがそれなんですけど。人間の体が変わるのは3ヶ月らしくて、ダイエット中は確かにキツいけど3ヶ月ぐらい犠牲にしてやるって思っちゃう(笑)。
――苦しみはずっとは続かないと思うと確かに楽になれますね。
広瀬 続かないです。大丈夫。だって、1年前に何に悩んでたとかみんな思い出せませんからね。それに、楽をしても何も得られないということを身にしみて感じた瞬間があって。楽をしてる間は確かに楽しかったけど、自分の気持ちが大きく変わることもなく、ずっと足踏みが続いている状態でした。だったら少しくらい苦しい思いをしても向き合って受け入れた方が得られるものがある。言葉にするのは簡単で、実際にはものすごくエネルギーが必要だし、投げ出したくなるんですけど、そういうときは苦しみを乗り越えたあとの自分をひたすら想像して踏ん張る力に変えていました。
風間 僕は苦しいときは弱音を口に出すようにしています。弱音を口に出さない方がいいという考え方もあるし、そこは人それぞれでいいと思うんですけれども、僕はあだち充さんの漫画に出てくる主人公がすごい好きなんですよね。ああいう感じで生きたいなと思っていて。疲れたら「疲れた」ってちゃんと言う。ただ、僕が弱音を口にするときは、大抵大したことないときなんです。「構って〜」とか「助けて〜」と言ってるうちは大丈夫。本当にしんどいときは黙ります。
広瀬 カッコいい!
風間 そう? 結局、本当に辛いことって簡単に人にシェアできないから。そういうのは黙って粛々と自分と向き合って乗り越えます。
僕は自分のことをあんまり信じていないです
――冒頭で信じるとは何かという話をしていただきましたが、お2人は自分のことを信じていますか。
広瀬 私、自分の好きなところが嘘つけないところなんです。
風間 素晴らしい。
広瀬 だから、隠すことが本当にない。自分に嘘をつかなくても恥ずかしくない生き方すればいいじゃん、としか思っていないんです。今までついてきた嘘とか恥ずかしいぐらい全部バレてますから、事務所の方に。嘘つきながら、顔に「今、嘘言ってます」って出ちゃってる(笑)。
風間 それはそれでいとおしいね(笑)。
広瀬 本当に隠すことがないから、そういう自分を信じてあげたいと思っています。
風間 僕はあんまり信じてないと思います。
広瀬 そうなんですか。
風間 そんな胡散臭い自分が好きなんで(笑)。そこも含めて客観的に愛してます。自分の生き方はこのままでいいと思ってるし、嘘にしても世の中的に良くないと言われてる嘘はダメだけど、自分で嘘ついたときに「センスいい嘘ついてんな」って喜んじゃうタイプなんで(笑)。だから、信じてはいないけど、悪いようにはしないだろうって自分で自分のことを思っています。
広瀬 風間さんの生き方はなんだか余裕を感じます。
風間 全然。そんなことないよ。
広瀬 すごく器用な方なんだろうなって。私は不器用の塊だから。
風間 でも広瀬さんはさ、それを魅力的に見せてくれるよね。人ってとっ散らかってるときとか、普通だったら自分を見ないでほしいと思うのに、広瀬さんは自虐も込めて、ちょっと面白おかしく昇華するじゃない? エンターテイメントとして。
広瀬 本当の自分って自分が一番わかってるじゃないですか。プライベートの私とか、表に出ている人間でこんなやついないぞと思うぐらい、チーンって沈んでいるときがあって。そういう自分も別に恥ずかしくはない。「これが私だ!」って思ってる(笑)。
風間 そこがカッコいいのよ。
広瀬 本当ですか。
風間 カッコいいと思う。
広瀬 家での私なんて女優らしからぬって感じですよ。お酒飲んで酔っぱらって、犬に絡んで、寝るみたいな(笑)。
風間 でもそこが愛されてるんでしょ?
広瀬 そっか。じゃあ、いいのか。女優さんってやっぱり清楚なイメージがあるから、私もよく足を揃えてくださいとか、笑うときは口を手で隠してくださいとか注意されていたんです。でも、それがまったくできなかったから、自分から崩していっちゃったんです。
風間 変な言い方だけど、同じことをやって嫌悪感を抱かれる人もいると思うんです。でも、そこが愛されるってことは、それが広瀬アリスの人間力なんだと思います。
広瀬 ありがとうございます。ますます自分を信じられるようになりました(笑)。
取材・文:横川良明、撮影:奥田耕平
【広瀬さん】
ヘアメイク:宮本愛(yosine.)、スタイリング:梅山弘子(KiKi inc.)
衣装協力:ドレス DEPAREILLE(0333510005)靴 PIPPICHIC(0364340975)ピアス MARIA BLACK × CINOH for Demi-Luxe BEAMS(0368051449)ネックレス Rieuk(info@rieuk.com)
【風間さん】
ヘアメイク:清家いずみ、スタイリング:手塚陽介
<番組情報>
『連続ドラマW 完全無罪』
7月7日(日) 放送・配信スタート
公式サイト:
https://www.wowow.co.jp/drama/original/kanzenmuzai/
(C)大門剛明/講談社 (C)2024 WOWOW
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