木戸大聖の夢を叶える秘訣「夢があることに自信を持つ」
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木戸大聖 (撮影:友野雄)
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すべて見る「代表作を塗り替えたい」と語る木戸大聖は、きっとどこまでも先を見ている。
2022年Netflix配信の『First Love 初恋』で認知を広げた木戸は、すでに役者としてのキャリア7年目。『ゆりあ先生の赤い糸』(2023)や『9ボーダー』(2024)など出演作は途切れないが、18歳〜20歳にかけて表舞台に出られず苦渋を舐めた2年間と、やっとの思いでデビューにこぎつけた20歳のころの感動は、未だ薄れないという。
7月1日に自身の1st写真集『HANA-UTA』が発売となった彼に、あらためて「役者」という仕事の魅力と、夢を叶える秘訣について聞いた。
自分へのメッセージにもしたい「あなたは素敵です」
自身にとって、初めての写真集。「もっと恥ずかしいかな、と思っていたんです」と、完成品を手にする前の心境をはにかみながら教えてくれる木戸。「でも、想像以上に『美しい』と思いました」と自分の目で『HANA-UTA』を捉える。
「紙にもこだわっていて、ページごとに質感が違ったりします。お気に入りの写真は、海を背景に撮ったもの。この日は少しだけ天気が悪くて、夕日が出るのを待っていたんですが、なかなか……。でも、諦めかけたところで待ちに待った夕日がパッと顔を出してくれたんです。そんな奇跡も相まって、思い出深いカットになりました」
タイトル『HANA-UTA』のとおり、全編をとおして「花」がテーマ。「僕がよく、無意識に鼻歌を歌っているっていうのも、タイトルに関係しているんですけど……」と、1st写真集を飾る表題の秘密を明かしてくれた。
「『あなたは素敵です』という花言葉を持つ白いお花、ブーゲンビリアをところどころあしらっています。この言葉は役者として7年間がんばってきた集大成として、自分にかけてあげたい言葉でもありますし、この写真集を手にしてくれたいつも応援してくださっている皆さまや、お世話になっている方へのメッセージになったらいいな、という思いも込めています」
『First Love 初恋』のブレイク以降、若手俳優の代表として次々とドラマや映画に出演している木戸。自身の努力を正当に見つめる姿勢、そして周囲への感謝も忘れない真摯さが、彼が引っ張りだこになっている由縁なのだと、あらためて思わせてくれる。
初めての写真集で「嘘をつきたくなかった」
初の写真集に向け、どんな心持ちで撮影に臨んだのか。問いかけると、意外にも「頑張らないことを、頑張ったかもしれません」との返答。
「この写真集のために! とか、撮影に向けて調整しなきゃ! とか、そういった意識を持たないようにしていたかもしれません。せっかくの写真集だし、と思って気合を入れて、かっこよく美しく……って思いすぎちゃうと、自分を見て! って感じになりすぎちゃうから。なるべく現地の景色や、その場の雰囲気に溶け込んでいる自分、ただそこに存在している自分……って意識を持つようにしていました」
ありのままの自分。自然体な自分。それは、木戸の役者としてのポリシーにも通じるのかもしれない。「映画やドラマの撮影のときに、自分だけを見て! っていうお芝居はしない」と本人も語るように、彼の映り方はどこまでも自然だ。
写真集にも、あえて一輪の花だけをクローズアップしたカットが混じる。それはまるで、映画やドラマに一瞬だけ映り込む、景色をとらえたワンシーンにも似ている。
「写真集の撮影だけど、どこか映画やドラマでお芝居をしているような感覚がありました。夜の街並みや、暗い雰囲気のバーで撮った写真もあるんですが、イメージは『人間失格』(笑)。どこか堕落している人物を演じているような、物語のなかに生きているような撮影でしたね」
飾らない自分と、少しだけ役を纏った自分。木戸にとっては、どちらも偽りのない自分なのだろう。「あまりに芝居がかっていたら、どこか偽物みたいになっちゃう。初めての写真集だから、嘘をつきたくなかったんです」と語る彼の本当の姿が、一枚一枚の写真に残されている。
見た目は変わっても、ブレない自分らしさ
旅をしている最中を捉えたリラックスした一枚もあれば、金髪に真っ白な衣装で海辺に佇む幻想的なカットも紛れ込む。木戸のさまざまな表情が見られる一冊を前に、ふと木戸自身が思う「自分らしさ」について問いたくなる。
「何も意識せず、自然体でいるのが一番良いよって、言われることが多いんです。役を演じるときも、自分のフィルターを通す。あまり自分とかけ離れた演技をしようとしない。そのほうが良さが出るよ、って。だから、どんな髪型や髪色でも、どんな衣装でも、どんな景色のなかにいても、ちゃんと自分でいること」
それが自分らしさなのかな、と冷静な視点から、役者・木戸大聖を分析している。自分らしさを保ちつつも、どんな自分がもっとも魅力的に映るかを見つめている木戸。彼にとっての初めての写真集は、これまで応援してきたファンにとってはもちろん、初めて彼を知る側にとっても、媒介のような存在になるのだろう。
「僕の喜怒哀楽があらわされた写真集になっていると思います。いろいろな表情、さまざまな感情が見える一冊になっていると思うので、木戸ってこんな表情もするんだな、じゃないですけど(笑)、僕のことを知ってもらうきっかけになったら嬉しいですね」
支えてくれた家族への思い「この仕事に就いてよかった」
初の写真集発売が決まったことを、最初に報告したのは家族。「いつ(写真集を)出すの?」と心待ちにしていたという家族は、とても喜んでくれた。『HANA-UTA』には、そんな家族について語る木戸のロングインタビューも掲載されている。
「両親からは、とにかく『周りの人に感謝しなさい』と言われて育ちました。とくに父親は自分の目から見ても、後輩に慕われているし、同じ男として『かっこいいな』と思います。素直に尊敬できる部分が多いので、父親みたいな男になりたい。追いつけないな、と思わされることも、多いんですけどね」
取材当時(2024年6月初旬)も、ドラマ『9ボーダー』が放送中だった木戸。主演映画の公開、ファンクラブの開設、そして1st写真集の発売と、日を追うごとに露出の機会が増えている。どんどん人気者になっていく息子に対し、家族はどんな思いでいるのか。
「僕がドラマに出演中だったらリアルタイムで観てくれますし、母親から聞く限り、父親は外で僕の話をたくさんしてくれているらしいです(笑)。僕たち家族の前では、あまり多くを語るタイプではないんですけど。ちょっとでも喜んでもらえているなら、自慢できるって思ってもらえているなら、この仕事に就いてよかったな、と思います」
家族やスタッフをはじめ、周囲への感謝を忘れない謙虚な姿勢を絶やさない木戸だが、彼は過去のインタビューでも繰り返し「負けず嫌い」な自身の性格に触れてきた。その源には「20歳での役者デビューは遅い」という引け目があったという。
「18歳からお芝居に関わらせてもらって、およそ2年間、スタートラインにさえ立てない期間がありました。その期間にだいぶ醸成されたマインドなんだと思います、僕の負けず嫌いは。自分よりも年下だったり、同い年だったりする子がドラマに出ているのを、ただ観ている側にいる自分が許せなくて、悔しくて」
『木戸大聖』といえば、とくに映画やドラマフリークではなくとも、若手の有望株として知られている名前だ。それにも関わらず、環境に甘んじない意思が、彼にはある。
与えられる側から、返す側になった
写真集に収録された、木戸のこれまでの生い立ちや、家族への思いを吐露したロングインタビューを読んでいると、20歳のデビュー以降から途切れない「役者愛」を感じる。
「ずっとドラマが好きなんです。毎週楽しみにしながらドラマを観ていて、そんなふうに育ってきたから、映像作品やお芝居には力があるんだって思える。僕が出演しているドラマや映画を観て『仕事が大変だったけど元気が出た』『癒された』って感想をいただけると、もっともっと頑張ろうと思えるんです。僕もたくさん、ドラマから元気をもらってきた。与えてもらう側から、恩を返す側になったのかもしれないな、と」
いわば木戸にとって、役者という仕事の魅力は「好きなドラマや応援してくれるファンに対する恩返しができること」にあるのかもしれない。次々と映像作品への出演が続くなかで、自身の成長を感じとる瞬間とは。
「度胸というか、前にぶつかっていく精神力みたいなものが培われてきているのかな……。作品によって演じる役も違えば、共演する方もスタッフさんも違う。毎回違う環境のなかで一つの作品を作りあげて、クランクアップしたらまた別の作品をゼロから積み上げる。そんな繰り返しによって、お芝居の相手がどんなに大御所の方でも、怖けずに堂々とする度胸はついてきたかもしれません」
2024年3月に放送されたテレビ朝日開局65周年記念ドラマ『万博の太陽』では、まさに多くの大御所と共演。なかでも唐沢寿明との共演は強い記憶として残る。「ずっとテレビで観ていた方だったので、嬉しい反面、緊張も……。でも、引かないように頑張りました!」と当時を振り返る木戸の目からは、途切れることのない役者愛が感じられる。
夢を持っていることに、自信を持つ
木戸にとっての忘れられない記憶は、やはり20歳のデビュー当時、ようやく役者としてのスタートラインに立ったと実感できた瞬間だという。
「事務所(トライストーン・エンタテイメント)の先輩方を間近で見させてもらうなかで、影響を受ける場面は多いです。とくに、いまの社長の小栗旬さん。野心というか向上心というか、満足していない感じが伝わってくるんですよ。どれだけ走っても追いつけないな、と思わせてくれる先輩が近くにいる環境なので、僕もいつか、後輩に対して背中で道を示せるような人になりたいです」
あと3年で30歳になる木戸にとって、「大人」とはどういう存在なのか。それは「まさに、喋らずとも存在感を示せるような人、ですかね」。
「落ち着いているのに、ちゃんとそこにいる存在感がある人。僕自身がそんな人に近づけるかどうかは、ぜんぜんわからないですけど……。でも、デビューしてからこれまでの7年間、通ってきたルートは異色だったと思います。僕のキャリアは子ども番組『おとうさんといっしょ』のレギュラー出演から始まっていて、そこから役者として活動するってちょっと新しいんじゃないかって。そこが僕の強みでもあるのかな、と思います」
そんな木戸の次の展望は、ゴールデン帯ドラマの主演、そして連続テレビ小説への出演。着実に自分の夢、やりたいことを叶えている木戸にとって、それらは決して、ただの青写真では終わらない。
「僕自身、まったく根拠のない自信でここまで来てるんです。根拠のない自信って、ときには危険かもしれない。でも、行動を起こすための原動力にもなるんです。自信って、どれだけ準備しても100%にはならない。だったら、根拠なんてなくても『自分ならできる!』って自信を持っておけば、夢や目標を叶える力になってくれるんじゃないでしょうか。もし、やりたいことを形にできず悩んでいる方がいたら、夢を持っていることそのものに、堂々と自信を持ってほしいって伝えたいです」
俳優人生をスタートした記念日にもあたる7月1日に発刊される、木戸大聖の1st写真集『HANA-UTA』。この一冊が区切りになるとしたら、ここからまた新たな道が拓かれる。「お芝居だけでなく、いろいろな経験をさせてもらった7年間を振り返って思うのは……」と、まさにボーダーの上に立つ木戸が口を開く。
「経験を重ねてきたいまだからこそ、人への感謝や、初心を忘れちゃいけない。それは役者として、毎回新鮮な気持ちで現場に向かうこともそうですし、人としても、新しく出会う共演者さんやスタッフさんへの感謝、リスペクトの気持ちを持っておくことが大切だと、あらためて思います」
きっとこの先、どれだけ注目されても、彼が甘んじることはない。なぜなら、なかなかスタートラインに立てず、もがいた経験と、支えてくれたスタッフやファンに対する感謝が、役者・木戸大聖の根幹を担っているからだ。いつだって初心に根を張りながら、未来を見据える木戸の目線は、真摯な熱を保っている。
取材・文:北村有 撮影:友野雄
ヘアメイク:速水昭仁 スタイリング:田中トモコ(HIKORA) 衣装協力:パラブーツ青山
<書籍情報>
1st写真集『HANA-UTA』
発売中
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