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現代のダンスを牽引するNDT(ネザーランド・ダンス・シアター)、5年ぶりの日本公演「皆さまの思考を刺激し忘れられない体験を」

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NDTプレミアム・ジャパン・ツアー2024記者会見より、左から)髙浦幸乃、エミリー・モルナー、唐津絵理  ©Tatsuo Nambu

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世界的ダンスカンパニーによる5年ぶりの日本公演、NDT(ネザーランド・ダンス・シアター)プレミアム・ジャパン・ツアー2024が6月30日(日)高崎芸術劇場で開幕、7月5日(金)・6日(土)に神奈川県民ホール、7月12日(金)、13日(土)には愛知県芸術劇場にて公演を行う。ダンスの最前線をゆくクリスタル・パイト、マルコ・ゲッケらNDTのアソシエイトコレオグラファー、巨匠ウィリアム・フォーサイスほか、気鋭の振付家による5作品を携えての来日だ。初日を前にオランダ王国大使館で実施された記者会見では、芸術監督のエミリー・モルナー、NDT1所属ダンサーの髙浦幸乃と、公演統括プロデューサーの愛知県芸術劇場芸術監督/DaBYアーティスティックディレクター唐津絵理が、日本公演への熱い思いを明かした。

日本だけのスペシャルなプログラムが実現

会見冒頭に登場したのは、ヒルス ベスホー・プルッフ駐日オランダ王国大使。「NDTは世界有数のダンスカンパニー。あらゆる年齢の観客に楽しんでいただけるものと思います」と挨拶したが、続いて唐津も、「NDTは新作のリサーチと創作を重視し、デン・ハーグを拠点に国際的に活動する世界有数のカンパニー。そのふたつの部門のうち、今回公演を行うNDT1は、多彩で高い技術力を誇る27人のダンサーが所属、世界的に知られる創り手とのコラボレーションによる革新的な振付を上演します」とアピールした。1990年の初来日以後、世界的振付家イリ・キリアンが芸術監督を務めた時代は何度も日本公演を実施していたが、キリアン退任後はしばらく間が空き、2019年に13年ぶりとなる日本公演を実現させている。

ヒルス ベスホー・プルッフ駐日オランダ王国大使 ©Tatsuo Nambu

「前回の日本公演では、当時の芸術監督ポール・ライトフット、アソシエイトコレオグラファーのクリスタル・パイト、マルコ・ゲッケの作品を紹介することができました。NDTは、1959年にオランダの国立のバレエ団にいた18名のダンサーが、より革新的なダンスを踊りたいと飛び出し、自分たちでカンパニーを作ったところからスタートしたとお聞きしています。その革新的な精神が今も息づいていることを改めて感じる貴重な機会でしたが、コロナ禍を経て、2020年から芸術監督を務められているモルナーさん率いるNDTを再びお招きできることを、一同、大変喜んでいます」(唐津)。

唐津絵理(右)©Tatsuo Nambu

今回の公演は、5組の振付家による5作品を、3つの劇場にて日替わりで3作品ずつ上演するという独特のパターン。海外カンパニーの来日公演が減少傾向にあるいま、「振付家とNDTが創り出した素晴らしい作品を、ひとつでも多く日本の皆さまにお届けしたい」と語る唐津。「日本だけのスペシャルなプログラムが実現しました」と笑顔を見せた。

映像での作品紹介ののち発言したモルナー芸術監督は、日本公演実現の喜びを述べるとともに、あらためて今回のプログラムについて「私たちの多様かつ革新的な精神を感じていただける作品をと、丁寧にキュレーションしました」と述べ、それぞれの作品の魅力を紹介した。

NDT 芸術監督のエミリー・ モルナー ©Tatsuo Nambu

「クリスタル・パイト『Solo Echo』は、2012年初演の作品で、降りしきる雪を背景に、ひとりの人物を複数の視点から見ていきます。マルコ・ゲッケの『I love you, ghosts』は、ゲッケ特有の激しく繊細な動き、強烈な感情が特徴。シャロン・エイアール & ガイ・ベハールによる『Jakie』は、その長年のコラボレーターであるリヒティク作曲によるサウンドスケープに彩られた作品。ガブリエラ・カリーソ振付の『La Ruta』は、時空間が宙吊りになった映画的な世界観の中で繰り広げられる作品で、私たちの想像力の限界に挑みます。ウィリアム・フォーサイス『One Flat Thing, Reproduced』は、フォーサイスが長年取り組んでいる対位法的な構造にまつわるリサーチにおいて、重要な節目となった作品です。日本の皆さまの思考を刺激し、感情が突き動かされるような、忘れられない体験をお届けしたいと思っています」(モルナー)。

「NDT(ネザーランド・ダンス・シアター)プレミアム・ジャパン・ツアー2024」告知映像

全5作品に出演する髙浦幸乃の活躍に注目

続いてマイクを手にした髙浦幸乃は、「日本の観客の皆さんがどんなふうにこれらの作品を観てくださるのか、興味深く思います。お客さまとお話しできることがあれば、質問したいです」。ドイツのバレエ学校に留学し、2013年よりNDT2、2015年よりNDT1で活躍している彼女は、カンパニーの中ではすでにベテランの世代だ。数々の作品のクリエーションに携わってきたが、今回上演する5作品全てに出演するという。

「そのうち3作品でオリジナルキャストとして携わっています。『La Ruta』ではガブリエラの新作のクリエイションに初めて関わりました。最初の3週間、キャスト全員がスタジオに朝から晩までこもり、大道具、小道具、衣裳がばーっと並べられた空間で、ワークショップの形でアイデアを出し合った。彼女から出されたお題に対して即興で動いていく。ダンサーたちの個性が詰まった作品だなと思います」と髙浦が述べると、唐津は「福士宙夢さんもオリジナルキャスト。日本人ダンサーふたりがほぼ主役のような形です」と補足。「日本のホラーにインスピレーションを得ている」とも。ますます興味をそそられる。

NDT1所属ダンサーの髙浦幸乃 (左) ©Tatsuo Nambu

日本初登場となるシャロン・エイアールによる『Jakie』についても、髙浦は「シャロンさんの魅力が作品から滲み出てくる感じがある。彼女の世界観を日本のお客さまにも楽しんでいただけたら」と訴える。「NDTは常に進化、変化をしてきたカンパニー。エミリーさんの、そのクリエイティビティにすごく注目しています。彼女が招待する振付家の中には、演劇やサーカス出身のクリエイターもいて、彼らとのコラボレーションも多く行われています」と、NDTのますますの充実ぶりを実感しているようだ。

長くカンパニーを率いたキリアンの時代ののち、芸術監督はライトフット、モルナーへと引き継がれたが、NDTの革新性、創造力は失われるどころか、新たな道を切り拓くべく、より貪欲に前進する姿勢を見せる。続いて行われた質疑応答でも、現在のNDTの状況、取り組み方についてさまざまな質問が寄せられた。

エミリー・ モルナー ©Tatsuo Nambu

カンパニーで振付を手掛ける芸術監督が続いた中で、モルナーは監督の仕事に専念。そのことについて彼女は、「多くのカンパニーは長年、ひとりの振付家の作品を発表していくことを基本の形としていた。NDTのような大きい組織をどのように運営し、業界全体でどのようにさまざまな振付家を支援していくかということを考えると、ひとりの振付家ではまわっていかない。NDTのアイデンティティはひとりの特定の振付家の声ではなく、このダンサーたちの技巧その表現の幅広さにあると考えます。もちろんバランスも考え、キリアンの作品も毎シーズン上演していますが、それと並行し、いわば次のイリ・キリアンを探す、その橋渡し、支援ができるようなカンパニーとしてやっていきたい」と考えを述べた。

モルナー率いる現在のNDTの魅力のみならず、今後のダンス界の可能性をも実感させる、充実の日本公演となるだろう。

取材・文:加藤智子

<公演情報>
「NDT(ネザーランド・ダンス・シアター)プレミアム・ジャパン・ツアー2024」

【上演プログラム(各公演3作品を組み合わせて上演)】
・『Jakie』振付:シャロン・エイアール & ガイ・ベハール
・『One Flat Thing, reproduced』振付:ウィリアム・フォーサイス
・『Solo Echo』振付:クリスタル・パイト
・『La Ruta』振付:ガブリエラ・カリーソ
・『I love you, ghost』振付:マルコ・ゲッケ

【群馬公演】
2024年6月30日(日)16:00
会場:高崎芸術劇場 大劇場

【神奈川公演】
2024年7月5日(金)19:00・6日(土)14:00
会場:神奈川県民ホール 大ホール

【愛知公演】
2024年7月12日(金)19:00・13日(土)14:00
会場:愛知県芸術劇場 大ホール

公式サイト:
https://ndt2024jp.dancebase.yokohama/