濱口竜介の映画論をまとめた書籍発売 レクチャーを活字化&書き下ろし原稿も掲載
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「他なる映画と 1」書影
濱口竜介が著した「他(た)なる映画と 1」「他なる映画と 2」が7月3日に発売される。
濱口は映画「ドライブ・マイ・カー」で第94回アカデミー賞 国際長編映画賞に輝き、同作で第74回カンヌ国際映画祭、「偶然と想像」で第71回ベルリン国際映画祭、「悪は存在しない」で第80回ヴェネツィア国際映画祭にて受賞を果たした。
「他なる映画と 1」「他なる映画と 2」には、彼がこれまでに発表してきた映画論をまとめて掲載。1巻目の「映画講座」編では仙台・神戸・鎌倉・ソウルなどで開かれたレクチャーが初めて活字化された。「映画批評」編となる2巻目には、作品レビューや映画をめぐる論考・エッセイ、日本語未発表原稿を収録。さらにロベール・ブレッソンの「シネマトグラフ覚書 映画監督のノート」を論じた原稿といった書き下ろし2本も載っている。「他なる映画と 1」は432ページ、「他なる映画と 2」は384ページで構成。どちらも税込2750円で販売される。各書の目次は下部に記した。
刊行記念イベントとして、7月21日に東京・東京堂書店で濱口と映画ライター・編集者の月永理絵によるトーク&サイン会を実施。なお月永は「悪は存在しない」「偶然と想像」の劇場用パンフレットの編集を手がけている。予約受付はすでに始まっているので、東京堂書店の公式サイトを早めにチェックしよう。
また7月25日には東京のアテネ・フランセ文化センターで「濱口竜介『他なる映画と』刊行記念 他なる映画のからだたち」が行われる。イベント内では「他なる映画と」1・2で取り上げられた「KAZUO OHNO」「海とお月さまたち」「ジャン・ルノワールの演技指導」を上映。濱口は“勉強会”を一緒に開いてきた、ダンサーで振付家の砂連尾理、芸術学研究者の平倉圭とともにトークを繰り広げる。チケットは7月7日10時にPeatixで発売。
「他なる映画と 1」目次
まえがき
I
他なる映画と 第一回 映画の、ショットについて
他なる映画と 第二回 映画の、からだについて
他なる映画と 第三回 映画の、演技と演出について
II
偶然と想像
偶然を捉えること
III
改心を撮る──エリック・ロメールからフリッツ・ラングへ
復讐を描く──黒沢清からフリッツ・ラングへ
運命をつくる──フリッツ・ラングからエドワード・ヤンとクリント・イーストウッドへ
IV
複数の複数性──侯孝賢「悲情城市」
同期・連動・反復──小津安二郎「東京物語」
「他なる映画と 2」目次
I
あるかなきか──相米慎二の問い
映画におけるISAウィルス問題に関する研究報告
ロメールと「死」にまつわる7章
II
「東京物語」の原節子
アンパン──「麦秋」の杉村春子
理想的な映像──「海とお月さまたち」の漁師さん
III
永遠のダンス、引力と斥力の間で──エリック・ロメール「我が至上の愛 アストレとセラドン」
「結婚」というフィクション──ジョナサン・デミ「レイチェルの結婚」
ただショットだけが──小津安二郎「鏡獅子」
too late, too early──ジョン・カサヴェテス「トゥー・レイト・ブルース」
力の前で──マノエル・ド・オリヴェイラ「家族の灯り」
ある演技の記録──ユベール・クナップ、アンドレ・S・ラバルト「ジョン・カサヴェテス」
〈世界〉を鍛造した男 あらゆる忘却と想起のために──エドワード・ヤン「牯嶺街少年殺人事件」
もぞもぞする映画(のために)──ティエリー・フレモー「リュミエール!」
曖昧さの絶対的な勝利──クリント・イーストウッド「15時17分、パリ行き」
身体をまさぐる──ジャン=リュック・ゴダール「イメージの本」
どうやって、それを見せてもらうのか──ペドロ・コスタ「ヴィタリナ」
かわいい人──ギヨーム・ブラック「女っ気なし」
愛の映画──レオス・カラックス「ポンヌフの恋人」
The Art of Preparation──三宅唱「ケイコ 目を澄ませて」
希望は反復する──「エドワード・ヤンの恋愛時代」
ためらいの技術──小森はるか監督特集に寄せて
IV
手紙についての手紙
彼方への手紙──瀬田なつき「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」公開に寄せて
共に生きること──梅本洋一さんの言葉
あの街、この街──柴崎友香、相米慎二
三宅唱監督への10の公開質問──「きみの鳥はうたえる」をめぐって
遭遇と動揺──あるいは、蓮實重彦の「聞く視線」
曖昧な映画の書き手──アンドレ・バザンと俳優の声
聞くことが声をつくる──小野和子「あいたくて ききたくて 旅にでる」に寄せて
物語りについて
孤独が無数に、明瞭に
V
ある覚書についての覚書──ロベール・ブレッソンの方法