BEGIN 撮影:大湾朝太郎
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すべて見るBEGINによるイベント『沖縄からうた開き!うたの日コンサート2024 inよみたん』が、6月29日に沖縄・読谷村運動広場で開催。そのオフィシャルレポートが到着した。
三線の音色、太鼓のリズムに合わせ、指笛と囃子、合いの手が鳴り響く。2024年の『うたの日コンサート』の幕開けは、開催地、読谷村の高志保青年会によるエイサー演舞からのスタートとなった。
ここ読谷村は、唄三線の始祖・赤犬子が生まれた地とされ、毎年、琉球古典音楽と舞踊が奉納される「赤犬子宮」がある場所。また、会場近くには世界遺産に登録された「座喜味城址」や、登り窯がある「やちむんの里」があったりと、古(いにしえ)から今につながる「時」を感じる場所が数多く残っている。
BEGIN自身「うたの日は生き物」と言うように、毎年、彼らは時代の空気を感じ取り、今、自分たちが沖縄から伝えることができるメッセージは何かを「うたの日」のテーマに重ねているが、それは「どこで開催するか」も大きな意味を持つ。今回、受け継いでいく心が息づく読谷村だからこそできることは何か。出演者がすべて沖縄の唄者やアーティストになったのも、沖縄に生まれ、この島で暮らし、歌を紡ぐ人たちが、歌を通して何を次に繋げようとしているのか、その真意を感じてもらえる「うたの日」にしたいと思ったからではないかと思うのだ。
琉球古典音楽「千瀬節」のイントロから、LiSAの大ヒット曲「紅蓮華」や映画『リトル・マーメイド』のテーマ曲「アンダー・ザ・シー」をウチナーグチで披露し、観客を惹きつけたのはトップバッターNanaironoteだった。梅雨が明け、晴れ続きの空の下、ウチナーグチの言葉の柔らかさと沖縄的なアレンジが、沖縄音楽の可能性を見事伝えていた。続いて、彼らは初のオリジナル曲をここで披露。この島から内地へ、世界へと向かったウチナーンチュに向けて、「いつまでも沖縄の心を忘れないで、ひとつだよということを伝えたくて作った」という「いちまでぃん」は、これから多くの人の前で演奏されることで、聞き手一人ひとりの応援歌として大切に育っていくだろうことを予感させた。
続いて、沖縄民謡唄者の新星として、大きな注目を浴びている仲宗根創が登場。幼い頃から民謡に触れ、民謡界の重鎮、松田弘一、登川誠仁から民謡の心をしっかりと受け継いだ仲宗根の声は、まさしく今回の「うたの日」に相応しい人物。「谷茶前節」から「伊計離節」へ、リズミカルな三線と伸びやかながらに深く響いてくる歌声が、優美さと土臭さを持ち合わせ、とても魅力的だった。
「沖縄の民謡は、現代でも新しい歌が1日1曲新しい曲が生まれているとも言われています」と、スローテンポの「ハベル」も、歌の情感をひしひしと伝えてくる。そして、最後の1曲を仲宗根が歌い上げている時、晴天だった空から急に雨が降り出した。歌は、ケアリイ・レイシェルが「涙そうそう」をカバーした「カノホナ・ピリ・カイ」だった。
2005年にも同じことが起きた。ハワイから、まさしくケアリイ・レイシェル自身が「うたの日」に出演した年だった。あの時もこんなふうに雨が降ったのだ。
その後、栄昇は、この雨にケアリイとのことをすぐに思い出したのだろう。ステージでこう話した。「その時の風景とまったく同じ。ケアリイが言ったんです。“これはウェルカム・レインっていって、僕たちを歓迎してくれているんだよ”って。自然が喜んでいる時は、こんなことが起きるんですよ」雨はほんの2、3分ほどですぐにやんだ。暑かった空気が少しだけ和らいだ。
続いてHoRookiesがステージに上がる。ドラムの舜太朗は、BEGINのバンドメンバーとして今年も昨年も「うたの日」のステージに上がってはいるが、HoRookiesとして出演するのは5年ぶり。全員が曲を作り、全員がボーカルも取るHoRookies、まずは舜太朗が高音に響く瑞々しい歌声で「結の唄」を披露。その後、「ヨット」「ルートビア」と勢いのある楽しい曲を続け、最後は「幕開け」で締めた。全員のボーカルが入れ替わりながら、それぞれの歌声が生き生きと絡み合う、力強い歌だった。
大きな拍手が起き、これで退場かと思いきや、「ここから先輩方とステージやらせてもらいます!」との声。
「フロムBEGIN、島袋優!」
その声で優がステージに登場。この2月にソロアルバムを発表した優は、その中で1曲、HoRookiesと一緒に作った「歓びのブルース」を演奏。これは、舜太朗に子どもが生まれた喜びから生まれた曲なのだという。小さい頃から知っている舜太朗が、親になり、こうして新しい歌が生まれ、一緒に演奏する。さまざまな想いが込められたエモーショナルな演奏だった。
ここからは、優とHoRookiesが中心となり、ゲストを迎え入れる形で進んでいった。「歓びのブルース」の途中で登場しラップを披露したRude-αによる「うむい」は、一昨年の慰霊の日に発表された曲。幼い頃、慰霊の日に祖母と平和祈念公園に行くと、祖母は平和の礎を前に泣いていたと、Rude-αは話を始めた。祖母は母親のお腹にいる時に戦争で父親を亡くしていた。会ったことのない父親を想い泣いていたのだと知ったのは、後のこと。そのことを詩に書き、優が曲をつけ、そして同世代のHoRookiesが演奏をする。こうして、祖母からRude-αへ、そして聞き手へと、受け継ぐべき大切な歌が生まれたのだと知る。
続いて玉城千春。歌ったのは、沖縄南部の児童養護施設の子供たちと一緒に作った「あの人の声」。「今なら言える 生まれてきてよかった」という歌詞は、施設の子供の個人的な経験から生まれた言葉だっただろうが、玉城のあたたかい歌声が、聴き手誰もに生きることを肯定させる力を与えていた。
そして、MONGOL800からキヨサクが優のソロアルバムのために書いた「シージャーGO GO!」が続いた。シージャーとは先輩のこと。「すべてのヤッケーシージャー(厄介な先輩)に捧ぐ! 俺から見たら優さんはシージャーだけど、HoRookiesから見たら俺もシージャーです!」との声で、愛溢れるゴキゲンなロックンロールが飛び出した。
HoRookiesはそのままに、「あとふたり、ヤッケーシージャー呼びますか!」、その声にD-51のふたりがステージに現れた。HoRookiesのバンド演奏とともに、ヒット曲「NO MORE CRY」を披露。2005年の楽曲だが、歌い重ねてきた歌はエバーグリーン的な響きをまとい、ふたりの声のハーモニーにも磨きがかかっている。観客もともに歌いながら、身体を揺らしていた。
続く「ハイビスカス」では、歌声とラップが組み合わされ、フロウの心地よさが際立っていた。ラストは観客とともに手を振りながら、なんともピースな空気が流れた。
「ほうら、足元を見てごらん」、伸びやかで美しい声が晴れやかな天に響く。玉城千春の歌声だ。アコースティックギターと鍵盤だけのシンプルな構成で始まったKiroroのメドレーは、それゆえ、彼女の歌のきめ細やかで奥深い表現をしっかりと伝えてきた。
ここ読谷は彼女の地元。その後、優を呼び込んでのバンド演奏での「命の樹」は、母校の読谷中学校に、難病で亡くなった生徒を偲んで植えられた桜の樹をモチーフに作られた曲で、命の輝き、尊さ、今この時間の大切さを切々と伝えてきた。
その声が響いた瞬間、会場が大きく包まれた。「アメイジンググレイス」、古謝美佐子の祈りの歌だ。会場にいる人たちがみな、すっと歌の中に惹き込まれていくのがわかった。
古謝は、昨年15年ぶりにアルバムを発表したばかり。もともと圧倒的な歌唱力と表現力を持つ古謝だが、70歳を前に、その歌声は生きる悲しみも喜びもを内包し、円熟した特別な声となっている。その上で、まだまだ歌を通して伝えることがあるという強い意志が宿った声は、切々として、胸迫るものがあるのだ。
アルバムタイトル曲「平和星願い歌」で古謝は、いまだ癒えることのない戦争の悲しみを歌い、祈るように、願うように、手を合わせた。嘉手納基地を抱え、毎日戦闘機が空を飛ぶ嘉手納町で暮らす古謝にとって、平和を願うことは、メッセージとか大仰なものではなく、ただただ、日々のこと。それゆえに、強い説得力があった。
続く、キヨサクと玉城を呼び込んでの「童神」は本当に素晴らしかった。世代を超えて、受け渡していくこと。3人の歌声の重なりは、その意味を目に見える形で私たちに伝えていたと思う。大きな拍手の中、「この場にいることが、誇りに思える」と、司会のありんくりんが言う。それは観客もみな同じ気持ちだったのではないだろうか。
続いてパーシャクラブが登場。彼らの音楽は、ロック、ファンク、ジャズ、ラテンとさまざまな音楽ジャンルを融合させ、圧倒的なオリジナリティを持っているが、それこそが「この島の音楽」であることを誇りを持って伝えているように思う。凄腕のバンドメンバーによる巧みな演奏と新良幸人のますます艶っぽい歌声に誰しも酔いしれ、身体を揺らしていた。
「乾杯しようね」という新良の言葉から、お祝いの時に歌われる八重山民謡「かたみ節」。新良のアグレッシブな速弾きの三線に高揚感が高まると、そこにRude-αのラップが絡むという、ここでしか見れないコラボレーションに、さらに会場は大盛り上がり。
そして美しい笛の音色から始まる名曲「ファムレウタ」。変わらないでほしいと願う故郷への想いが胸に響き、彼らの歌の中には、島の暮らしの中にある願い、人々の生き方、自然、失いたくない島の風景がここに描かれていることに気づかされた。
「うたの日が、長く長く、続きますように」と幸人は言った。それは、何を大切にしたいのか、よく知っている人の優しい声だった。
「うたの日、遊びましょ!」
キヨサクの声を合図に、観客が大きく手を挙げた。少しずつ夕暮れ、風が出てきた頃、雨が再びざっと降り、そしてまたすぐにやんだ。虹が出て、その後に登場したのが、MONGOL800だった。
一発目、「あなたに」で、早くも観客は一体となり、大合唱。そして、トランペットとサックスを加え、軽快にスウィングする「PARTY」で、大きく人々が踊り、波のように揺れた。粒マスタード安次嶺がさらに盛り上げ、ゆったりとしたリズムから観客を巻き込んでいく「OKINAWA CALLING」の気持ちよさに、各々声をあげたり、手拍子したり、と、自由に音楽を楽しんでいる。
ここで「Pray」。「祈り続ける」という言葉が沁みる。沖縄で暮らしていれば、祈ることは特別なことではなく、むしろ、日々の中で、より切実なものとなる。キヨサクは言った。
「平和ですねえ。めっちゃ楽しくライブができている。そんな時に響いてほしい曲をやりたいと思います」
「himeyuri〜ひめゆりの詩〜」だった。戦後79年、当然だが、月日とともに世代は入れ替わり、戦争体験者から話を聞く機会は少なくなっていく。だからこそ、歌に何ができるのか。一緒に歌いながら、「歴史にするには早すぎる」という歌詞をもう一度噛み締めた。込み上げてくるものを押さえられなかった。この感覚を忘れてはいけない。
そして、開演して5時間、「うたの日」最後の出演者はBEGINだった。この時、会場には約7,000人が来場していたと聞く。この時を待っていたとばかりに、BEGINの登場に、みなが立ち上がった。
1曲目はデビュー曲「恋しくて」でスタートした。栄昇の歌声は、年を重ねることで、歌い続けることで、ますますブルージーさを纏っている。そんな35年目の「恋しくて」の瑞々しさに驚いた。続く優が歌う「海の声」はここ数年でBEGINの新しいスタンダードとなり、優と観客の声が混ざり合っての大合唱。
後半は、琉球國祭り太鼓をステージに迎え、「オジー自慢のオリオンビール」、「三線の花」と続いた。特に唄三線の発祥と言われる読谷村での「三線の花」は、どこか特別な響きを含んでいたように思う。歌の中にはオジーの人生は語られないが、形見の三線の中に、この島に生きた人の想いを知り、島唄を通してその想いを受け取ることができるのだ。そうやって、「うた」が人々の暮らしのそばにいつもあることに、「うた」への感謝が湧いてきて、静かな感動が押し寄せた。観客も感無量で、拍手が鳴り止まない。
これでは終わらなかった。この後は、マルシャの2拍子のリズムに、宮城姉妹率いるサンバチームとホーンセクション隊が加わり、「ワッショイワッショイ!」との掛け声を合図に、今日の出演者が順番に参加し、日本の流行歌を歌い継いでいくマルシャショーラのコーナーがノンストップで30分以上続いていくのだ。そのリズムの中、「笑顔のまんま」「ソウセイ」、そして、最後の「島人ぬ宝」。その時、「うた」は、観客一人一人の心の中にあった。誰もが歌いながら、ほんとうに幸せそうに笑っていた、その姿がとても印象的だった。さまざまな世代の人たちが集い、そこに歌があり、踊りがあり、笑顔であるという、ただ本当にそれだけのことが、なんて美しいのだと心が震えた。
2001年から始まった「うたの日コンサート」は、今年、23年目の開催を無事に終えた。どんな伝統も行事もその時その時を大切に受け継いできた人たちがいたからこそ、受け渡された「今」がある。きっとこの「うたの日」も、こうして続けていく先に、受け継がれた「うたの日」で歌い踊る人たちの未来があるのだろうと思えた。
ここから未来へ。受け渡していきたいものが何か、あらためて、確かめるような1日を体験した、そんな「うたの日」だったと思う。
文:川口美保
撮影:大湾朝太郎
<ライブ情報>
BEGIN 35周年記念公演『さにしゃんサンゴSHOW!!』
2025年3月22日(土) 大阪・大阪城ホール
開場16:00 / 開演17:00
2025年3月30日(日) 東京・日本武道館
開場17:00 / 開演18:00
【チケット情報】
FC優待一般料金:10,000円(税込)
一般(26歳以上):12,000円(税込)
高校生以上〜25歳以下:7,000円(税込)
小中学生:3,500円(税込)
■BEGINオフィシャルファンクラブ『かりゆしネット』チケット先行受付(抽選):7月16日(火) 23:59まで
https://fc.begin1990.com/
公式サイト:
https://www.begin1990.com/
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