『天使にラブ・ソングを…(シスター・アクト)』森公美子インタビュー
ステージ
インタビュー
森公美子 (撮影=源賀津己)
殺人現場を目撃し、マフィアに命を狙われる羽目になった売れないクラブ歌手が、匿われた先の修道院で大騒動を巻き起こす――。ウーピー・ゴールドバーグ主演の大ヒット・コメディ映画をもとにしたブロードウェイ・ミュージカル『天使にラブ・ソングを…(シスター・アクト)』が、7年ぶりとなる来日公演を行う。日本語上演版で主人公・デロリスを演じ、本作の魅力を知り尽くす森公美子に見どころを聞いた。
――2015年と2017年にシアターオーブで来日公演を行った『天使にラブ・ソングを…(シスター・アクト)』。7年ぶりとなる再来日の報をどのように受け止められましたか?
森 うわ~、やっとかと。コロナ禍でしばらく来られませんでしたからね。今回は新演出版だそうで、踊りや舞台装置がどうなっているんだろうと気になりました。
――森さんは2014年の日本版初演以降、5公演にわたりデロリス役を演じてこられました。この作品のどんなところに魅力を感じていらっしゃいますか。
森 お客に見向きもされなかったクラブ歌手のデロリスが「私ここから出ていく!」と飛び出した先で出会ったシスターたちとの交流を通し、ステップアップしていくお話で。デロリスの自立と同時に、彼女に引っ張られるように周りの人々が自分の殻を破っていく姿も描かれます。ほんと慈愛に満ちた素敵な作品なんです。以前『天使に~』のナショナル・ツアーを観にアメリカまで行ったことがあるんですが、オープニングから泣きました。オーケストラはすごいし、小気味よい英語でのセリフの応酬がまた面白くて。4泊5日くらいのスケジュールで、着いたその日から4回観てきました(笑)。
――森さん自身はこの作品と出会い、何か変化はありましたか?
森 『天使に~』に出会っていなければこの仕事を辞めていたかもしれません。というのも、『ラ・カージュ・オ・フォール』のダンドン夫人や『レ・ミゼラブル』のテナルディエ夫人など、長くやらせていただいている素敵な役はありますけど、自分はあくまでバイプレイヤーで主役として舞台に立つことはないだろうと、ずっと考えていたんです。でも、デロリス役をいただいて。その後、『GHOST』のオダ・メイ役も演じられました。こちらも『天使に~』と同様に原作の映画でウーピー・ゴールドバーグさんが演じられていた大きな役。ある意味、『天使に~』は私の人生を変えた作品といえます。変化といえば、2011年のブロードウェイ初演から社会の変化とともに『天使に~』の演じられ方も変わってきたと思います。例えば、オリジナルの映画でも舞台版の初演時も人種差別というものが見るからにあったと思います。でも実際の修道院や教会にさまざまな人たちが集まるように、今の『天使に~』も人種にとらわれないキャスティングが行われるようになってきている。今回の来日公演では、そこにもぜひ注目していただきたいです。
――観劇するうえで“変化”がキーポイントとなりそうですが、逆に『天使に~』の揺るぎない部分ってどんなところでしょうか?
森 大笑いできるのに、ちゃんとしたメッセージがあるところ。こんな楽しいミュージカル、そうそうないですよ。冒頭殺人事件が起きますが、以降はひたすら超ハッピーにできているんで。もとの映画もそうですが、ストーリーの組み立てが素晴らしいんだと思います。あと音楽。アラン・メンケンは天才だなって聴くたび、歌うたびに気付かされます。
――ディスコ・ナンバーからゴスペルまで幅広いジャンルの、それも一緒に口ずさみたくなるようなキャッチーな楽曲がずらりとそろっています。
森 そう! ゴスペルもね、学生時代にグレゴリオ聖歌を歌わされた経験を持つ私から見ても「アラン・メンケン、ちゃんと分かっていらっしゃる」という感じで。本当にすごいと思います。
――3回目の来日公演で、森さん自身も5回も日本公演をやっていらっしゃいますが、まだまだ『天使に~』に出会えていないという方もいらっしゃるかと思います。
森 未見の方には「観たら人生変わるよ」とお伝えしたいです。劇中の誰もがどんどん幸せをつかんでいくミュージカルなので、ご覧になればものすごい幸福感を味わえるはず。あと、英語での上演に抵抗があるという方でも大丈夫。字幕もありますし、私のつたない英語力でも全部聴き取れるくらい、非常に簡単な英語が使われています。日本にいながら英語で『天使に~』を楽しめるいい機会なので、臆せず劇場に足を運んでいただきたいです。ひとりでも多くの方がこの来日公演を通し、ご自身の幸せをたくさんつかめますように。そして日本版が再演される際にはぜひ観に来ていただければと思います。
取材・文=兵藤あおみ
撮影=源賀津己
<東京公演>
ブロードウェイ・ミュージカル 天使にラブ・ソングを…(シスター・アクト)
2024年7月3日(水)~7月21日(日)
会場:東急シアターオーブ
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/24-sisteract/