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12歳ながらジャッキー・チェンのファン歴9年の男の子は、如何にして愛を温め続け本人と対面するに至ったか

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ジャッキー・チェン(右)とハグをする山田くん(左)。

何かに並外れた愛情を注ぐ人や、著名人の意外な趣味にスポットを当てる連載「〇〇の異常な愛情」。第11回となる今回は、ジャッキー・チェンを愛してやまない12歳の男の子“山田くん”に取材を実施した。

主演作「ライド・オン」のプロモーションのため13年ぶりに来日したジャッキー・チェンとともに、同作の宣伝アドバイザーとして舞台挨拶に登壇した山田くん。緊張した様子を見せながらも、映画の魅力、そしてジャッキー・チェンへの愛と感謝を伝えることができた。インタビューでは、本人と対面した直後の感想、ジャッキー・チェンと出会った4歳の頃の思い出、山田くんが思うジャッキー・チェンのアクションの魅力などを語ってくれたほか、自作のコスプレ衣装や手描きの宣伝チラシも見せてくれた。

取材・文 / 脇菜々香

ジャッキー・チェンが13年ぶりの来日、舞台挨拶に登壇したあの男の子は誰……?

5月31日に公開されたジャッキー・チェンの主演作「ライド・オン」。海外プロモーションは行われない予定だったが、本人たっての希望で日本限定でのプロモーションが実現し、都内で3日間の舞台挨拶が実施された。その初日である6月11日、東京・丸の内ピカデリーにはジャッキー・チェンのほか、彼のモノマネタレントとして知られるジャッキーちゃん、そして“山田くん”と呼ばれる男の子が登壇。彼は、弱冠12歳にして同作の宣伝アドバイザーを務め、小・中学生が100円で本作を鑑賞できる「集まれ!小学生・中学生 はじめてのジャッキー・チェンキャンペーン」を立ち上げた人物だ。

山田くんの単独インタビューを実施したのは、この舞台挨拶の直前。約30分間の取材中、何度も「このあとジャッキーと会うんだ……」と実感が込み上げては涙目になる山田くんだったが、本番では「長年の夢が叶いました。(ジャッキー・チェンは)スタッフの方にも気を配る素敵な人です。これからもずっと応援していきたいと思いました」と本人の前で伝え、大好きなジャッキー・チェンとのハグも叶った。

舞台挨拶後、山田くんは「ジャッキーに会って愛とお礼を伝えるのがずっと夢だったんです。達成できたので、今日は人生最大の日です」と笑顔で語った。舞台裏で最初に本人を見たときのシチュエーションを聞くと「スタッフさんたちがワーワー言ってるなと思ったら、ジャッキーがサンドイッチをほおばってて! 手がすごく大きくてかっこよかったです。そのあと対面して手を(腰に)回してくれたんですけど、がっちりしていながらもやわらかかった。『あのシーンのあれをやった手・足なんだ……』って思うとぼろぼろ涙が出てきました」と教えてくれた。

山田くんインタビュー「初めて観たジャッキー・チェンの映画は『ポリス・ストーリー2 九龍の眼』」

──まずは簡単な自己紹介と、ジャッキー・チェンを好きになったきっかけを聞かせてください。

山田です。12歳の中学1年生です! 4歳のとき、友達の家に行って遊んでいたら、友達とその子の妹が喧嘩をし始めたんです。2人とも別の部屋に行っちゃって、僕だけリビングに取り残されたんですけど、そのときに友達の親が見せてくれた映画が「ポリス・ストーリー2 九龍の眼」で、これに感銘を受けてジャッキー・チェンの存在を知りました。

──具体的には何に惹かれたんですか?

僕、ずっと忍者が好きだったんですよね。

──忍者!?

忍者は動きが美しいんですよ。僕が今ハマっているパルクールも一緒で、どうすれば体を効率的に使えるか、着地するときに衝撃を抑えられるか、受け身を取れるか、どういう飛び方が一番飛べるのかとか、そういうキレイな動きがすごい好きだったんです。ジャッキー・チェンはそれを面白いストーリーにうまく組み込んでいて、子供にもわかりやすい表情とコミカルさ、素敵な音楽、すべてがマッチしていた。「アクションがよかった」とか「かっこよかった」だけじゃなくて、1つひとつの表情から音楽まで完璧だったので惹かれました。

──そもそも“こういうアクションが好き”というのがはっきりしていたんですね。お互いが倒れ込むまでボコボコにやり合うものより、美しいものがいいと。

僕、「ミッション:インポッシブル」とかも好きなんですけど、ジャッキーの場合はテンポがすごくいいんですよ。戦いが“リズミカル”なので、観てるほうは相当面白いです。

──こんなに言語化できるのがすごいです……。そこからはどういう順番で作品を観ていったんですか?

「ポリス・ストーリー2 九龍の眼」を観たあと、Netflixでジャッキー・チェンの作品を探したら、子供向けのコーナーにはそのとき「ダブル・ミッション」と「ベスト・キッド」しかなかったので、毎日のように観ていました。そのあと配信された「ポリス・ストーリー 香港国際警察」が僕のベスト映画なんですが、本当に面白くて度肝を抜かれ、それから「ドランク・モンキー/酔拳」も観ました。ただ、Netflixでは本数に限りがあったので、映画と映画の間に僕の少ないおこづかいから神保町で買ったたくさんのチラシや雑誌を読み込んだんです。だから初めて観た作品でも「雑誌で読んだあのシーン、あの話はこの映画だったんだ!」みたいな発見がものすごくありました。

「奇蹟(ミラクル)」のアクションシーンは何回もスローで観返した

──たくさん観るだけじゃなくて、同時に映画やジャッキー・チェンの知識も増やしていってたんですね。同じ作品を何度も観ることで気付くことはありますか?

「奇蹟(ミラクル)」でいうと、1つのアクションシーンを何回もスローで観返したこともあります。そしたら面白い発見があって。ジャッキーが机で1回ごろんと転がって、後ろから追ってきた敵が一瞬ぶるっと震える場面があるんですよ。「なんでだろう?」と思って繰り返し観てたら、ジャッキーが転がったときに何かを投げてたんです。相手に少し当たってリアクションするというのが0.5秒ぐらいで繰り広げられるんです!

──その探究心に感服します……。

「あれ?」ってなるところって、絶対に理由があるんです。最初は(パソコンのコマ送りの)矢印を押していって画面の全部の場所を観ていってたんですけど、そのカットだけじゃわからないからもう少し戻って観直したら、最初にジャッキーがその部屋にいるときにティーカップが置かれていて「じゃあさっき投げたのはこのティーカップだったんだ!」と気付きました。そういうちっちゃな発見とかアクションが、ジャッキーの映画には詰め込まれてるんです! すごくないですか? だから何回も観れるんですよね。「奇蹟」はドラマとしても面白いんですけど、アクションがとにかく面白い。らせん階段をすーっとお尻で滑るシーンなど、身の回りの環境に合わせた体の使い方が最高です。

──山田くんが以前、「マツコの知らない世界」の「ジャッキー・チェンの世界」の回(2023年5月16日放送)に、ジャッキー・チェンのファンのオフ会参加メンバーの1人としてVTR出演したのを拝見しました。そのときには「ポリス・ストーリー 香港国際警察」の衣装を着ていましたよね。あれは自作ですか?

小さい頃から裁縫も好きだったので、布をユザワヤで買ってきて、1からジャッキーの衣装を作ったりもしています。今日も持ってきました! 番組でも着ていた「ポリス・ストーリー 香港国際警察」のラストシーンの衣装は、市販のトレーナーの肩に模様を縫い付けました。「カンフー・ヨガ」の最後のダンスシーンの服もあるし、相当ボロボロになっちゃったんですけど「酔拳2」の服も。「五福星」では、ジャッキーがローラースケートで走るシーンで上下黄色の服を着ているんですけど、Tシャツ3枚を使って上の服とズボンのセットを作りました。「プロジェクトA」は、ズボンは市販のものなんですけど、上は1から作ってます。

──その作った服は、どこで着ているんですか?

家で着て、モノマネして満足してました(笑)。あとこれは服じゃないんですけど、幼稚園の頃に「レッド・ブロンクス」のときのジャッキーの顔を布の切れ端に手縫いしたものもあります。

ジャッキーファンから学んだのは「自分の人生は自分で楽しくする」ってこと

──家でジャッキー・チェンの映画を観て研究したり、コスプレを楽しんでいた山田くんが、大人のジャッキーファンと交流するまでにはどんな経緯があったんでしょうか。

幼稚園を卒園した頃はジャッキーへの愛を語れる人がいなかったんです。コロナが始まった3年生のとき、妹もお姉ちゃんも小学校が被らない年で心細くて、自分の筆箱にジャッキーのシールを貼って学校に行ったら、後ろの席の女の子が「ジャッキーだ!」って反応してきたんですけど、最初は「知ってるわけがない!」って信じてなかったんです。でもその子のお父さんがすごくジャッキーが好きで、その人がグッズをくれたり、話をしてくれたり、いろんなところに連れて行ってくれて、それが最初の本格的なジャッキーファンとの関わりでした。その年の夏休み、「アジアの殿堂」っていう企画(※2020年に行われたアジア映画の特集上映)で東京にジャッキーの映画を観に行って、ジャッキーファンの皆さんと出会いました。

──それまでは劇場で観たことがなかった?

「カンフー・ヨガ」とか新作はありましたけど、過去作品を劇場で観たのは初めてでした。僕が最初「アジアの殿堂」の「スパルタンX」を観に行ったとき、終わったあとにぽろっと「ジャッキー最高……」とつぶやいたんです。そしたら周りの人がその様子をツイートしてくれて、次に行ったとき、ファングループの中心の人が話し掛けてくれました。そのまた次の回に皆さんの集いにお父さんと参加させてもらったら、本当に素敵な人たちで、すごく僕に優しくしてくれて世界が一気に広がりました。

──それまで周りになかなかジャッキー愛を語れる人がいなかったと考えると、すごく大きな出会いでしたね。

ファンの方々に教えてもらったことで2つ、これからの人生で大事にしたいなと思ったことがあって、1つ目はジャッキー・チェンという人の人柄。僕は今まで、ジャッキー・チェンのアクションとか映像が好きだったんですよ。もちろんインタビューとかで素晴らしい人とは聞いてましたけど、映像として好きだったんです。でもファンの人たちの中には何回もジャッキーに会ったことがあるとか、若い頃のジャッキーの(ファンとの)接し方を知ってるとか、撮影現場でのジャッキーを見たことがあるという人たちがすごく多いんです。世界中からファンを呼んでジャッキーの負担でイベントをやったことや、東日本大震災のときも多額の寄付をしたことを教えてもらい、そういうジャッキーの人柄が印象に残って、この人を一生応援していきたいなって思いました。

2つ目は、「自分の人生は自分で楽しくする」ってこと。ジャッキー・チェンに感銘を受けたファンの皆さんは、ジャッキーを応援するため、ジャッキーを伝えるために、俳優になったりラジオを始めたりと自分の人生を変えてきたんですね。それを受けて、僕も将来はジャッキーを伝えていきたい、ジャッキーになりたい、ジャッキーに愛と感謝を伝えたいと強く感じるようになりました。このことは、(小学校の)卒業文集にも「ジャッキー・チェンとジャッキーファンに支えられて」というタイトルで書きました。

──「マツコの知らない世界」でも「僕の人生を作ってくれたのは本当にジャッキー」「(ファンのみんなとの)出会いもジャッキー」と言ってましたね。

4歳から今までジャッキーのおかげで夢みたいな出会いや機会が絶えず続いているので、ジャッキーがいなかったら僕の人生どうなっていたのか想像がつかないですね。

──友達や周りの大人への広報活動もしていると聞いたのですが。

ファンの皆さんの話を聞いていると、「ジャッキーになりたい」という人と、「ジャッキーを伝えたい」という人がいるんですよ。僕はどっちもなんですけど、より強いのが「伝えたい」。当時の子供たちも、僕も、大人も魅了されている人がたくさんいるから、きっとどの時代でもジャッキーは支持を得ると思う。僕も伝えていくべきだと思って、積極的に学校集会やクラスでジャッキーのことを話しています。「ライド・オン」もみんなの前で宣伝したり、LINEのステメ(ステータスメッセージ)に「『ライド・オン』5月31日公開、みんな観てね!」と書いたり、僕なりの方法でできることを1つひとつやりました。今回はこのチラシも作ったんですけど、予告編動画のQRコードや映画のホームページのURL、「涙あり、アクションあり! 笑いあり! 超傑作!!」「映画好きに年代は関係ない! みんなでみてね!」という言葉を書いています。友達と遊ぶときに持っていったり、家の近くにある施設でジャッキー世代のおじさんたちに配ったり、下校するときに会う警備員さんにも渡しました。

──ジャッキー・チェンと映画への愛があふれていて胸が熱くなりました。あと、めちゃくちゃ絵が上手でびっくりしています。

なんか照れるー(笑)。僕は美術部で、絵を描くのも好きなので、ジャッキーの絵はめっちゃ描いてます。

山田くんの父 1人で集中して紙に向かってると思ったら、だいたい写経のようにジャッキーの顔を描いています。なんだか落ち着くみたいで。

何時間ジャッキーを描いていても楽しいです。ちっちゃいときから“何を描くか迷ったらこれ”と決めてるジャッキーの写真があるんですけど、描くたびにまだ発見があるんですよね。鼻の角度を変えたらより近くなった!とか。

「ライド・オン」で隣の子が大号泣してて、「伝わった!」と僕も大号泣

──美術の腕もジャッキー・チェンのおかげで向上してるんですね。今回、小中学生が対象となる「ライド・オン」の100円キャンペーンを企画したことで“宣伝アドバイザー”に就任したわけですが、もともとは「寅さん」がきっかけなんですよね。

「男はつらいよ お帰り 寅さん」の中学生以下100円鑑賞キャンペーンのときにお母さんが連れて行ってくれたんです。最初はまったく興味がなかったんですけど、面白かったからそのあと何作品か「寅さん」を観ました。そんな感じで、親になったジャッキー世代は「彼の映画人生の集大成らしいし100円なら子供を連れて行こう」と思うはずだから完璧!と思ったんです。映画館の収入としては少なくなっちゃうかもしれないけど、まずはジャッキー・チェンの存在を子供に知ってもらえればいいじゃん!と。今後(ジャッキー・チェンの別作品を)宣伝したときに「知ってる!」となってもらうために、知識として定着させないと、と思って今回イベントを提案させていただいたんですけど、まさか実現するとは思っていませんでした。僕が「ライド・オン」を(キャンペーンの対象劇場である)新宿ピカデリーで観たとき、前の席も横の席も子供だった回があったんですけど、隣にいた小学2年生ぐらいの子が大号泣してて、その顔を見て僕も大号泣。伝わった!って思ってうれしかったです。

──「ライド・オン」はもう何回も観ているんですか?

(6月11日の時点で)5回“だけ”です。言い訳すると、定期テストが近くて時間が全然合わなくて(笑)。

──公開から2週間も経っていない中で5回は相当です。「ライド・オン」は5回観ていてもまだ発見がありますか?

あります! ジャッキーが「香港国際警察/NEW POLICE STORY」の本を読んでいたり、「スパルタンX」に出てきた黄色い車が、ジャッキーが市場で戦う背景にぼんやり映っていたりしました。

サモ・ハン・キンポー、アーミル・カーン、チャップリン、キートンも好き

──ちなみに、ジャッキー・チェン以外の映画も観るんですか?

めちゃくちゃ観ますが、どれもジャッキー・チェンがきっかけです。ジャッキーが尊敬する(チャールズ・)チャップリンや(バスター・)キートン、(ハロルド・)ロイドの無声映画がすごい好きで、あとはイギリスコメディの「Mr.ビーン」や、「パディントン」「ナイト ミュージアム」などファミリー映画も観ます。

──12歳の男の子から「ファミリー映画」という言葉が出るとは思っていませんでした。

「ライフ・イズ・ビューティフル」も観たし、お父さんが好きなインド映画も観ます。この前はイラン映画も。僕、ゲームを持ってないんです。だから映像を観ること自体が珍しくて、ちっちゃい頃から「映画観よう」って言われたらもう最高!って感じでした。

──好きな監督はいますか?

ジャッキー・チェンです(即答)。

──愚問でした。ではジャッキーのほかに好きな俳優は?

俳優はたくさんいます。サモ・ハン・キンポー(サモ・ハン)、ユン・ピョウ、ウー・ジンとかみんな好きです。インド映画の俳優はみんな素敵なんですけど、シャー・ルク・カーン、アーミル・カーン、サルマーン・カーンの三大カーンで一番好きなのはアーミル・カーン。チャップリン、キートン、ロイドも好き。ローワン・アトキンソンもめっちゃ好きです!

──では最後に、改めてジャッキー映画をアピールしてください!

ジャッキー・チェンの映画はストーリーがわかりやすくて、その中で繰り広げられるコミカルなアクションシーンと、それぞれのキャラクターが本当に素敵です。ジャッキー・チェンの映画は観れば観るほど発見と楽しさ、そして希望が満ちあふれているので、どんどん観てほしいです。