前代未聞のダンスフェス『s**t kingz Fes 2024 ももたろう』は感動を呼ぶ、まったく新しい祭典だった
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s**t kingz Photo:Team SOUND SHOOTER(タマイシンゴ、SARU、木下マリ、高田真希子)
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すべて見るText:川上きくえ、Photo:Team SOUND SHOOTER(タマイシンゴ、SARU、木下マリ、高田真希子)
ダンサー初の単独公演となった武道館の記憶も新しいs**t kingzが、7月27日・28日に横浜BUNTAIにて『s**t kingz Fes 2024 ももたろう』を開催。s**t kingzと親睦の深いアーティストたちを集め、ロックバンドが行うフェスとはまた違う趣向で感動を呼ぶ、まったく新しい祭典を実現させた。
2日間とも出演したのは、三浦大知、RIEHATA、パワーパフボーイズ。その他に27日公演にはMAZZEL、在日ファンク、28日公演にはDa-iCE 、QUICK STYLE、C&Kが出演。個性の強いアーティストが並ぶ中、s**t kingzはどのアーティストのステージにも登場し、一糸乱れぬダンスを披露。振付師として自分たちが提供した曲はもちろん、そのアーティストの代表曲も完璧なレベルでパフォーマンスする姿は、関わるすべてのアーティストに対する彼らのリスペクトを物語る。そして同時に、踊るからには全力で最高峰を目指す彼らのプロとしての佇まいを感じさせた。
そのタイトル通り、今回のフェスは昔話の「桃太郎」に沿い、桃太郎であるs**t kingzが鬼ヶ島に向かう道中、出会った人たちを仲間に誘うというストーリーで進行。パカンと割れた巨大な桃から出てきた4人はつまり、このフェスにおけるホストなのだが、ダンサーがホストな以上、相手の出番を盛り上げるべく踊りまくる。結果から言ってしまえばトータル約4時間半に渡り、ほとんど踊ってるような印象なのだった。しかも、登場時からダンスは劇的に熱く、テンションは最後まで振り切り型。見るたびに思うのだけど、この人たちのパッション、マジで怖い。
さて最初に現れたのは、Da-iCE。あの超高音フレーズのアカペラから始まった「CITRUS」で、いきなり場内の空気を変えていく。Da-iCEいわく、彼らの楽曲のほとんどがs**t kingzによる振り付けで、その付き合いもインディーズの頃から数えればざっと16年になるとのこと。shoji、Oguri、kazuki、NOPPOとそれぞれの振り付け曲を続けていき、s**t kingz 4人で振り付けたという曲も両グループで披露。その彼らの表情は、楽しい!を飛び越え、もはやうれしさ炸裂という感じだった。Da-iCEだけで聴かせようとしたラストの「スターマイン」ではイントロのたびにs**t kingzが乱入し、結局また10人で踊るという一幕も。曲中に即興でソロタイムを作り、ペアを組み、陣形をとる仲間同士ならではのあうんの呼吸は、こんなにもダンスをフレキシブルにさせるものなのかと驚かされた。
一方、ノルウェーでs**t kingzと同じく活躍するダンスグループQUICK STYLEは、大きな身体を駆使した独特なアプローチを見せる。その動きは、高速なのになぜかスローモーションに見えてくるほど優雅だ。そして洗練されたナンバーに続き、QUICK STYLEが振り付けした藤井風の「きらり」を2組でパフォーマンス。お互いのクセやテクニックを肌で感じあいながら展開するダンスは、国籍や言葉を不要とするダンスの可能性を体現していた。
中盤には、kazukiが自身のYouTubeチャンネル『カズキのタネ』で共演するダンサー・Show-heyとともに殺陣にトライする寸劇チックなコーナーや、s**t kingzファンにはお馴染みとなった家族コント『せが家』のコーナー、サプライズゲストとしてガチャピン&ムックが登場するコーナーも。一階客席に作られたミニステージを使い、照明を全開にして観客全員と踊る。それはまさに、“ダンスで繋がる”をモットーにしたs**t kingzフェスならではの醍醐味だった。
場内をアットホームな雰囲気で包んだ後は、2人組歌唱ユニットのC&Kと、3人組ダンスチームのパワーパフボーイズのステージへと続く。男性デュオでありながらキー幅の広さを誇るC&Kは、バイオリンのように高く澄んだ歌声と、飾らずぬくもりのある歌声で、みるみるうちに観客を楽曲世界に引き込んでいく。なぜかひとりは工事現場の警備員スタイルなのだが、もはやそれが気にならないほど美しい歌声だ。そんなC&Kとs**t kingzの融合は笑えるほどセクシーで、客席からたくさんのため息が寄せられた。そして最近、「Bling-Bang-Bang-Born」のダンス動画がバズって注目を浴びたパワーパフボーイズも、類稀なる存在感を発揮。ガールズダンスのようにしなやかな振りをバキバキな動きで見せるエネルギッシュなダンスは、面白さとカッコよさの間で大いに客席を沸かしていく。彼らの新曲「ツメカワイイ」でコギャルのコスプレで登場したOguriとshojiも、バッキバキに踊るコギャルという希少価値の高いパフォーマンスを見せた。おそらく本人たちは、ブリブリのつもりだったはずだけど。
ガチャピン&ムックに続き、サプライズゲストとしてKing&Princeの髙橋海人も登場。もともとアイドル界屈指のダンス実力者として名高い彼は、じつは中学生時代にNOPPOからダンスを教わっていた、いわばNOPPOと師弟関係にあるアーティストだ。そんなNOPPOと海人のふたりだけで踊るダンスは、コンテンポラリーのようでいて表現の機微にルールが定められており、お互いのクセを知り尽くした絡みがドキドキさせる。ステージの大画面に映し出された幼い海人とNOPPOの写真も、ふたりがこうして大きな舞台で共演しているという奇跡をリアルに感じさせ、より胸を熱くさせた。
ゲスト陣の中で最後に登場したのは、s**t kingzの盟友・三浦大知。「能動」「Unlock」など、歌とダンスが絶妙に引き寄せあう曲たちが、両者がこれまで共に過ごしてきた時間の尊さを思わせる。音楽の中ではお互いフルパワーすぎてヒリヒリするくらいなのに、いざトークとなると部活仲間のような兄弟のようなわちゃわちゃが始まり、どこか甘えあっているように見えるのがおもしろい。「(このフェスには)大知がね、遊びに来てくれないとヤダ!」というkazukiの言葉は、三浦大知の存在を介して、このフェスの意義を表明していたように思う。ダンスをメインにしたフェスの新たな方法論を提示するだけでなく、今回出演したアーティストたちからs**t kingzがもらったものへの感謝を示すこと。それがホストを務める彼らの本意であり、今後もダンス界を牽引し続けるであろうs**t kingzのけじめでもあったかもしれない──。旅の途中で出会った人の魅力を浮き上がらせ、仲間にして鬼ヶ島を目指すという今回のテーマも含め、強くそう感じた。
そしてラストはもちろん、新曲「MORECHAU feat. edhiii boi, Janet真夢叶(ぺろぺろきゃんでー), JIMMY(PSYCHIC FEVER)」から始まるs**t kingzのステージ。これまでの人気ナンバーを片っ端から披露する選曲に、客席から悲鳴に近い歓声があがる。楽曲のメッセージを100%表現した上で、世界観を200%見せつけるパフォーマンス。何より、ここまで4時間以上もかけて各アーティストのステージで踊ったにも関わらず失速しないパワー。再び三浦大知と見せた「No End」もSKY-HI提供による「Oh s**t !!」も、あり得ない気迫で展開され、見る者すべてを釘付けにした。
出演者総出で華々しく迎えたエンディングまで、桃をパカンと割ったオープニングと同じテンションで進行したフェスは大成功となった。しかもs**t kingzは終始、めちゃくちゃ笑顔だった。前代未聞のダンスフェスの、歴史的はじまりというすごい瞬間に立ち会った気がした。
<イベント情報>
『s**t kingz Fes 2024 ももたろう』
会場:神奈川・横浜BUNTAI
【出演】
7月27日(土):三浦大知 / 在日ファンク / MAZZEL / RIEHATA / パワーパフボーイズ / カズキのタネ / s**t kingz ももたろうダンサーズ / s**t kingz
7月28日(日):三浦大知 / C&K / Da-iCE / QUICK STYLE / パワーパフボーイズ / カズキのタネ / s**t kingz ももたろうダンサーズ / s**t kingz
s**t kingz 公式サイト:
https://shitkingz.jp/
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