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ぴあ 総合TOP > ぴあ映画 > 結末を知っているからこそ泣ける! 『インサイド・ヘッド2』をリピート鑑賞したくなるワケ

結末を知っているからこそ泣ける!
『インサイド・ヘッド2』
をリピート鑑賞したくなるワケ

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ディズニー&ピクサーの最新作『インサイド・ヘッド2』が日本でも大ヒットを記録している。すでに観た人の評価は圧倒的で、楽しむだけでなく、感動のあまり号泣する人や、涙を浮かべて劇場から出てくる人も続出。この夏、最も評価の高い映画のひとつになっている。

さらに本作はリピーターが増えているのも特徴で、結末を知っているからこそ楽しめる展開や、初見では気づかなかったポイントも多い。そして何より、結末を知った上で改めて観ると、劇中のドラマがより心に響き、深い感動が広がるのだ。

そこで本特集では『インサイド・ヘッド2』のリピート鑑賞時に向けた注目ポイントを紹介。小ネタやトリビアではなく、より深くドラマを楽しめる、あなたの感動がより深くなる解説を掲載します。



※以下の記事では『インサイド・ヘッド2』の一部ネタバレが含まれます。未見の方はご注意ください。

1:見逃してません? ライリーの頭の中大解剖

2:改めて観たい。私が私を“見守る”光景

3:結末を知っているからわかる“いまここ”の大切さ

1:見逃してません? ライリーの頭の中大解剖

人間の頭の中はどうなっているのだろう? なぜ、私たちは笑ったり、泣いたり、そのことをずっと覚えていたり、時には急に思い出したりするのだろう? そんな人間の“ふしぎ”を少女ライリーの頭の中にいる感情たちの活躍を通して描いたのが、『インサイド・ヘッド』だった。

本作はその続編で、新たに大人の感情が芽生えてきたライリーが迎える複雑な感情・出来事と、頭の中で起こる大騒動を描いている。すでに本作を観た人はまず何より、ライリーの頭の中の変化に驚いたのではないだろうか? 彼女の感情を左右する司令部の設備が冒頭から最新版に交換され、新たな感情たちが登場。これまでライリーと共に過ごしてきたヨロコビ、カナシミ、ムカムカ、ビビリ、イカリに加えて、シンパイ、イイナー、ハズカシ、ダリィが加わった。

物語は高校入学を控えたライリーがホッケーキャンプに出かけ、そこで親友との関係に問題が起こったり、憧れる先輩選手たちの中でうまく振る舞えるか困惑するドラマと、シンパイによって司令部を追い出されてしまったヨロコビたちの物語が描かれるが、ライリーの頭の中の“新しい要素”が実は物語の展開に大きく関わっている点をおさらいして、改めて映画館に出かけてほしい。

ライリーの頭の中は、感情の色に彩られた“思い出ボール”があり、それらは彼女の大事な記憶と結びついている。前作ではこの感情の色が単色ではなく、複数の感情=色が入り混じったものになることが描かれたが、本作では頭の中も様変わりしている。

まず驚くのは、前作にも登場したスポットの変化だ。ライリーの性格を決める”性格の島”は本作でも健在だが、島の種類と大きさが前作とはかなり変化している。友情の島が大きくなっている一方、家族の島はとても小さい。映画では長い時間描かれないが、この島は細部までデザインされているので、再鑑賞の際は忘れずにチェックを。さらに前作では大きな扱いだった“イマジネーションランド”が思春期を迎えて大きく様変わりしているのもポイント。理想の彼氏ではなく、将来の理想像が次々に生まれてはパレードしているのも面白い!(前作も本作もヨロコビは、ライリーの”空想”に捕まって司令部に戻ろうとしているのは偶然の一致なのだろうか?)

そして何よりも大事なのは、本作から登場した”信念の泉”と“ジブンラシサの花”の存在だ。再鑑賞のために少しだけおさらいしておくと、思い出ボールの中で大事なものが信念の泉に運ばれ、そこで生まれた信念が寄り合わさって、その先に“ジブンラシサの花”が咲く。ここで生まれる信念とは、他人から見たライリーの評価ではなく、“ライリー自身が自分をどう思っているのか?”のこと。「ライリーはいつも優しいね」ではなく「私は優しい」の寄り集まりが“ジブンラシサの花”だ。本作では、この花に危機が訪れるが、それはつまり、他人によるライリーの評価が落ちたのではなく、彼女が“自分自身がどういう風にしたいのかわからなくなっている”ことを指す。

信念や花は、周囲の評価や印象によって成長したり、しぼんだりするものではない。自分がどうしたいのか? 自分は相手に何を伝えたいのか? それこそが信念なのに、思春期を迎えたライリーはそのことがわからなくなってしまうのだ。自分は間違ったことをしているのではないか? 自分は場違いなことをしているのではないか? 自分の想いは相手にまったく伝わっていないのではないか? 自分の将来は悪いことしか起こらないのでは? ライリーはライリー自身を信じられなくなってしまう。

こんな事態を起こしたのは、いつも将来に備えて予想以上に備えてしまうシンパイが登場したから。しかし、改めて映画を見直すとシンパイは決して“悪者”ではないことがわかる。シンパイは悪意があるわけではなく、いつもライリーのことを心配=シンパイしている。私たちだって「何か悪いことが起こってからでは遅いのよ」と言われたら、納得してしまうかもしれない。

一方、映画の冒頭でヨロコビがライリーの司令部に“ライリー保護システム”を導入していることにも注目だ。これは都合の悪い思い出を記憶の彼方に飛ばしてしまえる便利アイテムだが、別の言い方をすると“自分の都合の良いことしか見ていない”とも言える。そんなことばかり続けて、大人になれるだろうか?

映画の初見時にはヨロコビがライリーのためにがんばっていたのに、シンパイの登場によって追い出されてしまった、と思ったかもしれない。でも、結末を知った上で映画の冒頭を観ると、両者の関係はそう簡単に“良い人”とも“悪い人”とも言えないとわかる。本作はヨロコビが頑張って頭の司令部に戻る話ではなく、ライリー、ヨロコビ、シンパイたちが、それぞれが自分の誤りや思い込みに気づいて、良いことも悪いことも受け入れて成長していく物語だ。

そしてライリーの頭の中は、その過程で起こる葛藤や迷い、根拠はない不安や想像によって“具体的に”変化していく、地面は割れ、建物は崩れ、感情は嵐となってスクリーンに吹き荒れる。スクリーンで何かアクションや派手な出来事が起こっている時はライリーの気持ちを想像しながら観ると、より深く映画を楽しめる。

1:見逃してません? ライリーの頭の中大解剖

2:改めて観たい。私が私を“見守る”光景

3:結末を知っているからわかる“いまここ”の大切さ

2:改めて観たい。私が私を“見守る”光景

『インサイド・ヘッド2』をリピート鑑賞する際に、いつも頭の片隅に置いていてほしいことがある。それは“感情たちがいつもライリーを動かしているわけではない”ということだ。

確かにライリーの頭の中には指令室があり、ヨロコビが司令部の感情操縦デスクにふれると、ライリーは笑顔になる。彼女が涙を見せた時はカナシミがデスクのボタンにふれている。しかし、ライリーの頭の中の感情たちはライリーを支配したり、彼女を操っているわけではない。ヨロコビやカナシミたちはライリーが幼い頃から彼女の成長を見守ってきた。空想の友達と仲良く遊んでいる時も、初めてホッケーの試合をした時も、引っ越した先で不安になり、家出して前の家に戻ろうとした時も。そして、新しい感情たちも、思春期のライリーの複雑な想いをさらに“こじらせて”しまう原因にはなっているが、彼らがライリーを複雑な状況に追い込んでいる描写はひとつもない。

それどころか、ヨロコビたちがライリーをずっと見守ってきたように、シンパイたちもライリーを自分たちのやり方で見守っているのだ。親友から”同じ学校には進めない”と言われた時、シンパイはライリーの将来を想像して、勝手に心配して最悪の未来に備えてしまう。でも、シンパイはライリーを操っているわけではない。彼らなりのやり方でライリーを見守っているのだ。

『インサイド・ヘッド』シリーズは、あまりにも物語が面白く、次から次に新しい展開や新スポット、新キャラクターが登場してワクワクが続くので、感情たちとライリーの関係が“並行して”進んでいるように感じる瞬間がある。でも、ふたつの物語は必ずつながっている。そして司令部から追い出されてしまったヨロコビたちは、現在のライリーの感情と無関係に思えるかもしれないが、そんなことはない。ヨロコビもカナシミもイカリさえも、ライリーのことをいつも考えている。彼女のことを見守っているのだ。

この“見守り”こそが本作を深く楽しむための最大のポイントではないだろうか? 感情たちはライリーの毎日に時に寄り添い、一緒に笑い、泣き、ドキドキしたり、不安になったり、めんどくさいなぁと思ってしまったりする。あなたの頭の中にも、そんな風にいつもあなたを見守ってくれる存在がいるとしたらどうだろう? 嬉しい時はひとりで喜んでいるのではなく、見守ってくれるヨロコビと一緒に笑顔になれる。怒って我を忘れそうな時は、イカリの暴走を残りの感情が止めようとがんばっている。そう想像したら、あなたの人生はほんの少しだけ楽にならないだろうか?

通常の映画では主人公が自ら行動して成長して目的を達成する。しかし、『インサイド・ヘッド』の感情たちは自分たちで行動するが、それはあくまでも“ライリーのため”だ。そして彼らはライリーを操ったりはしない。良い時も悪い時も見守って、ライリーのためにがんばる。

これと似た構造をもつピクサーの名作がある。そう、『トイ・ストーリー』シリーズだ。ウッディやバズたちは、おもちゃの持ち主の子どもの成長を見守りながら時を過ごし、持ち主に危機が訪れたり、人生の変化があれば、最初は自分たちに危険がおよぶのでは、パニックになるが最後はいつも“持ち主の子どものため”に行動する。

私たちがヨロコビたちの行動に感動するのは、ライリーの成長ドラマに涙するだけでなく、ヨロコビたちのライリーを想う気持ち、感情たちの“見守り”の奥にある愛情に心が震えるからではないだろうか? この点に注目して『インサイド・ヘッド2』を観ると、ラストだけでなく物語の中盤あたりの一見、何げないシーンでも思わず涙してしまう感動ポイントがたくさんある。

ところで、私は私をちゃんと見守って、大事にしているだろうか? この映画を改めて観ると、そんな気持ちになるかもしれない。

1:見逃してません? ライリーの頭の中大解剖

2:改めて観たい。私が私を“見守る”光景

3:結末を知っているからわかる“いまここ”の大切さ

3:結末を知っているからわかる“いまここ”の大切さ

すでに映画を観た人はご存知のことだが、本作のクライマックスは感動シーンの連続だ。ついに司令部に帰還したヨロコビは、かつて咲いていたジブンラシサの花を再び元の場所に戻そうとするが、そこで観客が想像もしなかった行動に出る。

そこからは怒涛の展開と感動シーンが待っている。観ながら、感情たちの意外な行動や想いの深さに涙し、ライリーと親友たちの友情ドラマに感動した人は多いはずだ。怒涛の展開で、感情のピークポイントが来た!と思ったら、もうひと山、さらにひと山! そのどれもが“物語上の展開”だけでなく“観客が過去に体験しているであろう記憶・感情”と結びついているのがポイントで、観ながら、自分の過去や、昔の友達、自分が子どもだった頃を思い出した人も多いはずだ。

ああ、私にもこんな感情を味わったことがある。かつて、こんな風に迷ったり、必要以上に考えて、モヤモヤしたり、悲しい気持ちになったことがあった。すごい大変な想いもしたけど、友達がいてくれて救われたことがある……『インサイド・ヘッド2』はライリーだけでなく“あなたの頭の中の記憶”も開いてしまう。良かったり、悪かったり、弱かったりする自分もすべてまとめて自分なんだと思わせてくれる。そんなクライマックスだ。

しかし、クライマックスの後に“重要なシーン”がある、と言ったらどうだろう? あなたは「そんなシーンあったっけ?」と思うかもしれない。ぜひ、再び映画館でそのシーンを見届けてほしい。それは、試合中にペナルティボックスに入っていたライリーが不安に押しつぶされそうになった時に、親友たちが駆けつけてくれて、新しいジブンラシサを取り戻した“後のシーン”だ。

彼女はボックスを出て、まずホッケーコートの手すりにふれる。次に滑りながら氷の感触を確かめ、窓から差し込む光を目にして、ホッケーのパックに触れる。

本作の監督を手がけたケルシー・マンはこの一連のシーンを大事に描いている。本特集のためにこのシーンについて質問すると、監督は満面の笑みを浮かべて、こう語った。

「そのシーンについて質問してくれて本当にうれしいです。あの場面は、パニック状態になったり、不安発作を起こしてしまった人が使うテクニックを参考にしました。あの場面でライリーは、具体的なもの(コートの手すり)に触れることで自分の感覚を取り戻しています。地に足をつけるために、ものにタッチして自分を落ち着かせて、次に彼女は耳をすます。そして自分を“いまここ”に戻すわけです。

シンパイは、最悪の将来を想像してしまう感情ですよね。いつも未来のことばかり考えている。でも、あのシーンでライリーはまだ起こっていない未来のことばかり考えるのをやめて、ものにタッチすることで”いまここ=現在”に戻ってくる。そうすることで彼女は自分を取り戻すのです」

本作は、あなたの過去の記憶の扉を開く作品かもしれない。過去に自分もこんなことがあった、こんな気持ちを味わったことがあったと思うかもしれない。そして、映画はまだ訪れていない未来/将来に備えすぎるあまり起こってしまったドラマが描かれる。

でも、この映画は最後の最後に“現在=いまここ”に戻ってくる。過去にあった記憶と感情が“現在=いまここ”の私をつくっている。この先に何が起こるかわからないけど、それに立ち向かうのは“現在=いまここ”の私だ。そして、そんな私をずっと見守ってくれる感情たちがいる、友達がいる、新しい仲間が増える、さっきまで目に痛かった陽の光が優しく暖かいものに感じられる。

『インサイド・ヘッド2』は結末まで知った上で改めて観ると、過去の“あるある”を描いた映画でも、思春期だけの感情を描いた映画でもないことがわかる。ぜひ、再び映画館で本作を観てほしい。この映画は、“いまのあなた”に向けた映画だ。そのことに気づいた時、本作は一度目を超える感動が待っているはずだ。

1:見逃してません? ライリーの頭の中大解剖

2:改めて観たい。私が私を“見守る”光景

3:結末を知っているからわかる“いまここ”の大切さ

『インサイド・ヘッド2』

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