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ピナ・バウシュ『春の祭典』サロモン・バウシュ インタビュー

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サロモン・バウシュ (C)Uwe Schinke

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ダンスと演劇を融合させたドイツの舞踊演劇「タンツテアター」の代表的振付家であり、過去に日本でも数々の名作を上演して熱狂を呼んだピナ・バウシュ(1940-2009)。「カフェ・ミュラー」「コンタクトホーフ」などの衝撃作は映画監督たちの創造力も刺激し、彼女の友人であったヴィム・ベンダースはピナ亡き後にドキュメンタリー映画『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』(2011) を撮影した。モーリス・ベジャール(1927-2007) と並び、20世紀のモダンダンスの潮流の中で最も大きな影響を与えた振付家であるピナの代表作『春の祭典』が、18年ぶりに日本で上演される。

ピナ・バウシュ Ulli Weiss (C)Pina Bausch Foundation

アフリカ13カ国からこのプロジェクトのために選ばれた精鋭ダンサー35名が踊る本作は、振付・演出は初演のオリジナルそのままで、ピナ・バウシュが1973年から芸術監督を務めてきたヴッパタール舞踊団のメンバーがリハーサルを指導した。ピナ・バウシュのご子息であり、ピナ・バウシュ・ファンデーションの創設者であるサロモン・バウシュ氏に、オンラインで公演について語っていただいた。

2、3年前からこれまでのピナの作品を新しい世代に受け継ぐための活動を始めています。彼女のレガシーを世界中のカンパニーに伝えようという試みで、実際にヴッパタールのカンパニーでダンサーとして参加した方たちを各地の舞踊団に送り込んで教えるようにしています。昔から活躍しているメンバーは、私たちのアーカイヴの活動にも力を貸してくれ、ビデオで収録し始めた60年代の後半から現在に至るまでの作品がアーカイヴ化されています。

──『春の祭典』では、国籍のみならずダンスのルーツも異なるダンサーが参加するということですが、このことが作品に与える魅力はどのようなものでしょう?

今回の『春の祭典』に関しては、本当に多様なバックグラウンドの踊り手が集まっています。パリ・オペラ座バレエ団で上演したときは同じ踊りの教育を受けていた人たちが集まっていたので、魅力的ではありましたが、多様性という面ではそれほどの違いはなかったのです。今回は本当に色々な背景を持つダンサーが集まっています。クラシック・バレエ出身者もいますし、ストリート系のヒップホップなどをやっている人たち、アフリカの多様な伝統舞踊やコンテンポラリー・ダンスの経験者もいます。

ピナ・バウシュ『春の祭典』舞台写真 Photo by Maarten-Vanden-Abeele (C)Pina Bausch Foundation

──リハーサルの現場はかなりハードであったという話を聞いています。ピナの舞踊言語は従来のダンサーにとって新しいランゲージであり、ヴッパタール舞踊団のダンサー以外が踊るのは大きな苦労が伴うのではないですか?

様々なダンスの教育を受けていたとしても、それとは別の次元のダンスが必要になります。いつも使わない筋肉を使わなくてはならないという話も聞いたことがあります。例えばバレエでは飛んでいるかのような、重力がないような動きを求められることがありますが、『春の祭典』では、重力に従って大地に根差したような動きがたくさん求められます。バレエダンサーにとってはこうした振付は大変難しかったようですが、アフリカ系のダンサーにとっては比較的簡単な動きだったようです。メンバーに関しては、今回新たに結成したグループですから、一人一人の苦労はまたそれぞれ違ってくるかも知れません。

『春の祭典』は動きと感情というものが非常に密接に関係していて、一連の動き、例えばすべてを手放してそのまま重力にまかせて落ちるといった動きをすることで、非常に強烈な感情が湧き起こって来るわけですね。それを何度も繰り返して、毎回同じような感情に到達するということは、非常にハードだったようです。

──半世紀前に初演された『春の祭典』という作品が時を経ても尚これだけ多くの観客を魅了する、その力の源はどのようなものだと考えてらっしゃいますか?

『信じられない』というようなコメントもいただいたことがあります。まるで今作られた作品ではないか、という驚きを伝えてくる人もいて、多分それは私たち人間、誰しもが心の奥底に抱えている根本的なものが描かれているからかも知れません。だからこそ、世界中の国々で長い間上演されてきたのではないかと思います。

ピナが何度も言っていた言葉なんですけど「人々がどうやって動くのかではなくて、何によって突き動かされているのか、そちらの方に興味がある」という言葉です。これは彼女がインタビューやスピーチで何度も使っていた言葉なんです。また彼女は素晴らしいダンサーたちと仕事をしてきました。基本的に皆さんは素晴らしいダンステクニックを持っていたんですが、彼女はそれ以外の部分を重要視していました。いわゆる人としてのあり方や人格を見ていたということになります。

──『春の祭典』が18年ぶりに日本で上演される今の、率直な心境をお聞かせください。

(コロナ禍で)来日する直前にキャンセルになってしまい、その時はとても悲しかったんですが、ようやくプロジェクトが実現することになり、本当に嬉しく思っています。日本のお客様はピナの作品を気に入ってくれていますし、彼女自身も日本と非常に強い絆を感じていました。コロナを経てダンサーたちはいったん身に着けた振付を、自分の中で育んでいくという過程を経ているので、むしろそれがプラスに働くのではないかと思います。本当にあの美しい作品を皆様と共有できることを心から楽しみにしています。

取材・文:小田島久恵

<公演情報>
ピナ・バウシュ『春の祭典』、「PHILIPS 836 887 DSY」/ ジェルメーヌ・アコニー「オマージュ・トゥ・ジ・アンセスターズ」来日公演

公演期間:2024年9月11日(水)~9月15日(日)
会場:東京国際フォーラム ホールC

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/pinabausch2024/

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