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演劇らしい面白さがある作品に 『みわこまとめ』インタビュー

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『みわこまとめ』インタビューより 撮影:中島花子

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ピンク・リバティ1年ぶりの新作公演『みわこまとめ』は、主人公・実和子の半生と恋愛遍歴を通して人間を描く悲喜劇。初日まで約3週間のタイミングで、作・演出の山西竜矢、キャストの大西礼芳、三河悠冴、池岡亮介にインタビューを行った。

──山西さんはリリース時に「今までにない切り口に挑戦する重要な作品になる気がしている」とコメントを出されていました。

山西 社会性や社会問題にタッチする物語をそこまで作っていなかったのが1点。今まで自分の中で構築された演出方法を全部使おうというのが1点です。全く新しいことをやるというよりは、過去の積み重ねを新しい形で表現できたらなと。作品によって新しい表現方法を作るのがクリエイターとしては理想的だと思うので、今回はそことしっかり向き合いたいと思っています。社会性を孕んだ作品になってきたのは、年齢を重ねて自分を取り巻く環境も変わってきたので、自分の周辺の話だけに留まりたくないという気持ちが以前より強くなってきたのかもしれません。

山西竜矢

──脚本を読んだ印象やご自身が演じる役の印象はいかがでしたか?

大西 すごく面白かったです。笑うのを我慢して演じなきゃいけないなという心配がありました。実和子については、すごく可愛らしい人だなと思います。夢や幻想を大きくもって生きている女性で、それを相手の男性などに投影することで幸せを感じて生きている。でも現実は自分の夢とはかけ離れているから絶望を繰り返すみたいな女性。人に期待できるのが素晴らしいなと。素敵に演じられたらいいなと感じました。

三河 面白かったです。主人公の実和子が人間であるというか、人間らしいのがすごく良いなと。欠落している部分があるけど真剣に生きている。傍から見たら笑えるけど主人公は大真面目。そういうのが面白くないですか?

山西 ありがとうございます。

三河 僕のセリフには作文かと思うほど長い箇所があり、これが最大の試練ですね。台本を読んで「(役者を)辞めさせようとしてます?」って思いました(笑)。

山西 そんなことない!(笑)

三河 でもこれを楽しみとして、元気に挑もうと思います。

池岡 いわゆるリアルな生っぽさ、普通の会話に入ってくるファンタジー要素の塩梅が絶妙です。台本で読んだ時の想像と実際の立ち稽古では全然違うものになって、それぞれの個性やスキルが活かされる作品だと思いました。僕はリアルな現代劇への出演経験が少ないので苦手意識もありつつ、共演するみなさんのお芝居を見て勉強しています。役柄はホスト。デフォルメされがちでキャラとしては一つの型があるけど、僕が演じるリョウは普通の青年ぽく描かれています。演じる上でも、できるだけナチュラルな方向でという話を山西さんとしました。実和子がいろいろな恋愛を経て転がっていく姿は、痛々しくもありつつ人としての愛おしさも絶対にある。とてもやりがいのある作品です。

池岡亮介

──立ち稽古まで進み、現時点での手応えはいかがですか?

山西 やっぱり俳優さんが面白いです。今回は久しぶりに単独主人公の話ですが、大西さんを中心に皆が粒立っています。まだ稽古は中盤ですが、現時点でみんなのキャラや技術で楽しめているので、その面白さに甘えすぎないように、冷静に見つめて演出をしていかなければなと思っています。

大西 結構大変な舞台になると感じています。私は出ずっぱりで動き回っていて、皆さんがその都度いろいろな役として舞台の真ん中に来てくれる。台本を読んだ時には感じなかった孤独みたいなものがあります。自分は真ん中にいるけど、周りは定着しない。その寂しさ、実和子の不安や孤独は立ってみて感じました。

池岡 役者は全員が舞台上にいて、中の芝居を見ている。大西さんの話を聞いて、その効果も山西さんは意図していたのかなと驚きました。

山西 書く際から意図していたわけではないですが、演出的には実和子がずっと見られている対象にしたいなと思っています。どの作品も主役って孤独だけど、今回は肌で感じる瞬間が多いですよね。みんな自分を支えるために出てきてくれるけど、ずっと一緒にはいてくれない。出会いと別れの話だし、実和子の寂しさを追体験するような感じになっているのかも。

大西 今までの山西さんの作品は、家での会話やいざこざが描かれているものが多いじゃないですか。でも今回は実和子がどこかに訪れるシチュエーションばかり。自分の停滞する場所がないのかなっていうのも寂しく思う理由かも。

山西 意識してなかったけど自然とそうなったんですよね。来てもらう人じゃなくて行くばっかりの人。

三河 セリフ以外で心が動くところが多いんですよ。山西さんの転換とかみんなの動きとか。稽古でこれだから、本番になって照明も入ったらどうなるのか楽しみです。上手くいえないけど、舞台を見て心が動く瞬間って、「圧倒的なものを見た」とか「なんだかすごい」というドキドキがありますよね。それを体験できると確信しています。

──山西さんから見たみなさんの役者としての印象、今回の役柄を演じる中での魅力はどこでしょう。

山西 みんな素晴らしいです。大西さんは上手いし面白い上に、不思議な魅力のある方。普通だと言いづらいであろうセリフもちゃんとそこに存在する人間である、という説得力をもって話してくれる俳優さんで、稽古の度にすごいなと感じます。実和子の可愛らしさは大西さんに当てて書いた部分はあると思う。大西さんを想定すると少し変わった面白いセリフを思いつくんです。

三河くんも独特な面白みを纏っている俳優さんで、ずっと見ていられます。ユーモラスで笑わせる芝居もお上手ですが、その中に「素敵だな」「生きている人間だな」と感じる部分がある。僕は演じている人の元々の人間味がはっきり見える芝居が好きで、俳優さんに演じすぎないでほしいんです。三河くんは本人がしっかり見える演技で芝居を成立させるのがすごく上手です。 池岡くんは、「リアルな芝居をやったことがないから」みたいなことを言うけど、とっても上手い。何を言っているんだろうと(笑)。

三河悠冴

池岡 いや、本心から羨ましいと思ってみなさんのお芝居を見ていますよ。

三河 それはないと思う。すごく上手い。

山西 ナチュラルだし、余分な物がない。俳優さんが舞台上やカメラの前にただいるだけでも、その人の魅力は見ている側に伝わる。極端にいうと、何もしないのが大事。池岡くんはそれがすごく上手。それでいて遊び心もあり、バランス感覚が絶妙です。他のキャストさんも本当に素晴らしいです。

──見どころや注目ポイントを教えてください。

山西 脚本の段階から、劇場で見ることの意味が強い、演劇的な強度のあるものが作りたいと思っていました。三河くんもおっしゃってましたが、今回はお客さんに「なんだかすごい」と思ってもらえるものを作りたい。目の前で見る体験として、説明のできない圧力のある作品というか。

池岡 おそらくセットも抽象になるし、シーン転換も多い。その中で役者が生身の身体でどこまでお客さんの想像力を膨らませられるかがポイントだと思います。リアルなところやファンタジックなところまで、劇場空間でいろいろな情景を見ていただけるはず。僕も稽古場から面白く見ているので、みなさんにも楽しんでいただけたら。

三河 池岡くんの言う通りです。あとは実和子にどう感情を入れるか。大西さんが立っているだけで面白いけど悲しかったりするので、これに照明とか当たったら……僕は照明部さんじゃないですけど(笑)。

山西 照明の話すごいする(笑)。

三河 言葉にならない感情が生まれると思うし、僕も稽古場で毎日感じています。

大西 それぞれの男性、友達、家族……と、接する相手によって実和子も変わるのが面白いところなのかなと思いました。それって人としてどうなんだって思う時もあるけど、普通のことなのかも。実和子の心の中、夢の中の人物なども出てくるので、そのあたりも楽しんでもらえるように体現したいと思います。

──キャストの皆さんから見て、山西さんの演出や作品の魅力はどこにありますか?

池岡 風通しがいいです。演出の付け直しの意図や流れを全部話して共有してくれる。信頼して稽古場にいられます。

三河 山西さんの演出は動線みたいなものも含めてやっぱり面白いです。あと、話すこととか考えとかを聞いて誠実な男性だなと(笑)。僕はドラマ『今夜すきやきだよ』で山西さんの脚本を演じましたが、最終話で紡がれている言葉が好きで。今回参加できて嬉しいですし、テイストがドラマとは違うので、「こんなに面白いセリフも書くんだ」って驚きもありました。

大西 面白いですよね。脚本を読んでいると「なんでこんなこと言うんやろ」って思うけど、私も普段から選び抜かれた言葉を話してるわけじゃないよなって(笑)。自然な会話をちゃんと文字にしてあるから面白いし、自分を通して話す作業が楽しいです。

大西礼芳

──最後に、皆さんへのメッセージをお願いします。

山西 今回は浅草九劇で上演します。夏の浅草なので、見た後にご飯などもしやすい。劇場で見る意味があるものをと話しましたが、行き帰りも楽しんでもらえると思います。

三河 絶対に見た方がいいと思います。

山西 強気だなぁ(笑)。 嬉しいですけど。

三河 映画とかドラマと生で見る舞台はやはり違います。絶対生で見た方がいいと思うし、僕なら絶対見ます。「出られてよかった、この役を他の人が演じるのは嫌だな」って思うくらい良い作品です。是非来てほしいです。

池岡 想像力の話しかしてないですが、想像するのが好きなんです。今回は本当に、お客さん一人ひとりの受け取り方が全然違う作品になると思う。見ている人の環境や現在の心情で変わる、見に来た人にしか自分のものにできない作品だと思うので、見なきゃ損です!

大西 今回初めてのことが重なっています。舞台に出ずっぱりなのも初めてだし、舞台主演も初めて。とにかく不安ですが、不安に押しつぶされそうな中で、きっと花咲かせてみますんで!

一同 カッコいい(笑)。

大西 どうぞよろしくお願いします!

取材・文:吉田沙奈
撮影:中島花子

<公演情報>
『みわこまとめ』

公演期間:2024年8月29日(木)~2024年9月8日(日)
会場:浅草九劇

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/pink-liberty/

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