沢村玲&別府由来が演じる究極の愛「どこか満足していない人たちに観てほしい」
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インタビュー
別府由来、沢村玲 (撮影:映美)
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暗闇の中でたったひとつ、自分だけの光を見つける。そんな作品なのかもしれない。
大人気BLコミック「ハッピー・オブ・ジ・エンド」が実写化される。
新宿で出会ったふたりの青年。社会の片隅で生きるミステリアスな美青年ケイト(浩然)と家族に見放され全てを失った千紘。行きつけのバーで出会ったケイトに千紘は一目惚れ。一緒にホテルに向かうが、抱き合っていると、不意にケイトに激しく殴られ……。
最悪の出会いから始まったふたりの関係は次第に、互いにとってかけがえのないものとなっていく。
ケイト/浩然役を沢村玲(ONE N’ ONLY)、千紘を別府由来が熱演。センセーショナルなストーリーをふたりはどのように演じたのだろうか。
玲くんは黙っていれば…
――『ハッピー・オブ・ジ・エンド』への出演が決まったときのお気持ちを教えてください。
沢村玲(以下、沢村) 原作を読んで「わぁ、どう演じようかな」というのが率直な感想ですね。浩然(ハオレン)は感情をなかなかわかりやすく表現できない人なので。読み進めていくとその人となりが分かるんですけど、最初はどうしようかなという気持ちでした。
別府由来(以下、別府) お話をいただいてすぐに原作を読んだんですけど、あっという間に虜になりました。この作品に参加できる喜びを感じましたね。
千紘という役と玲くんと共演できるということも本当に楽しみでした。
――おふたりとも非常に難しい役かな、と拝見していて感じたのですが、どういったところにこだわって演じられたのでしょうか。
沢村 浩然は背景に、人としての感情を失うぐらいアウトローな世界で生きています。難しい人生を送っている人だから、どうやって表現したらいいかわからないんですよね。どう感情を表現したらいいのかわからない人って意外といると思うんです。例えば表現の仕方が違う人、全く話せないとかいろいろあると思うんですけど、そこは監督と話し合って浩然という人物に寄せたような気がします。
――沢村さんは普段、すごく明るいイメージのある方かと思うんですが、今回のような影がある役に入り込んで日常生活に引きずったりとか……。
沢村 ない……ですね。
別府 僕から見てもゼロです(笑)。
沢村 (笑)
別府 静かにしていると浩然になるんです。
――黙れば!!(笑)
沢村 いやあ、やっぱりみんな僕が喋ることを望んでいると思います(笑)。
別府 ときと場合により、です(笑)。もちろん望んでもいますが。
沢村 まあまあまあ、そうですね。はい(笑)。
――(笑)。別府さんは役作りにおいて、いかがでしたか?
別府 ビジュアル面は、出演が決まったときから金髪は絶対にやらせてください、という相談をしていました。プラスαで髪の根本の部分が暗いんですけど、これは自然にできたものではなくて今回の千紘という役を演じるためにあえて作りました。原作があるということは、ビジュアルは大切だと思うんです。もちろん、原作とは違う場合もあると思いますが、僕の努力で役に近づけることができるのであればそれはやりたいという思いがあったので。あとは、眉毛を細くしてみたり、今回は細かいところもやってみました。
お芝居については、原作を読んだときに感じたことを素直に、一旦そのまま表現してみようかな、と。自分なりの千紘を演じてみて、監督に判断していただきました。千紘は浩然よりは言葉数も多いし、どちらかというと千紘からの発信のほうが多いので。
ただ、浩然への思いとピュアさは忘れずに軸として据えました。
--監督とお話されて印象に残っていることはありますか。
別府 ありがたいことに、僕の千紘像と、監督が考えていらっしゃった千紘像が似ていたんです。千紘らしいと思っていた言動に共感したり、監督がやりたかったことに対して僕が考えてきたものが「そうきたか!」と監督がおっしゃってくださったり。そういう会話が多かったですね。だからお芝居を考えていくのがすごく楽しかったです。
ふたりの熱量が高かったから最後までブレずにいられた
――おふたりは今回の共演で初めてお会いしたんですか?
沢村 共通の友人がいてこの作品の話が決まる前に偶然会ったんです。
別府 びっくりですよね。
沢村 うん、すごいな、と思って。食事に行って話していた、というぐらいだったんですけど。
別府 会ったことは覚えていたんですけど、なに話してたっけな、って。会ったのが一瞬だったので記憶がないからそれを最悪な出会い、とするならこの作品にぴったりな出会い方をしていましたね。
――そんな出会いを経ての共演。いかがでしたか?
沢村 すごく支えてもらってます。別府くんはコミュニケーションを取ってくれる方なので、タイトなスケジュールの中でも楽しく切磋琢磨しながら撮影ができたと思います。2人ともこの作品に対する思いが強かったので、最後までブレずにできたことが一番嬉しいです。
別府 僕もやっぱ負けてられないぞ、って何回も台本を読み直したり、千紘について考えたり。
どちらかが欠けてしまうと、成り立たなくなってしまうから、本当にそこは感謝ですし、玲くんじゃなかったらできなかっただろうな、ということも痛感しました。
――お互いの印象は出会いのときと変化しました?
沢村 コミュニケーションを取ってくれたり、現場を楽しい雰囲気にしてくれるんですけど、自分の時間もちゃんと大事にする方ですね。
撮影中も、シーンごとに1人で考えていたり。本番前に何回かカメリハをしたあとにちゃんと自分の中に落とし込んでるから、本番では全然雰囲気が違ったりするんですよね。
別府 玲くんは変化しかないですね。
初日は、多少は話してくれたんですけど、お互いに緊張感もありました。見た目は浩然だし、クールな方なんだなと思っていたら、蓋を開けていったらどんどん、どんどん浩然じゃなくなっていく……。
沢村 うーん……(渋い顔)。
別府 普段は浩然じゃない! 「よーい、はい!」で浩然になるんです!
――それはそれですごいですよね(笑)
別府 本当にそうですね(笑)。だから「話さないでいれば浩然だよ!」としか僕の口からは……。もう、しょうもないことばっかり言ってくるんですよ。
――ちなみに印象に残っていることはありますか?
別府 いっぱいありますよ! 僕にビールをかけるシーンがあるんですけど、それをビール瓶じゃなくて、ビールサーバーのようなやつでそのままぶっかけた方がいいとか。
沢村 やっぱり僕が思うに、瓶だと量がね。
別府 いやいやいやいや、違うんですよ!
沢村 やっぱり、ビアショルダーだとたくさん入ってるじゃないですか。
――確かに大きいですよね。
沢村 ホースの感じで勢いよくかけたら、千尋がビールまみれになりますよね、本当の意味で。その提案をしたらちょっと違うって言われましたね(笑)。
別府 そういうことを言ってくるのですが、クランクアップのときは印象的でした。感情が高ぶっていいシーンになっていました。玲くんの思いが溢れているというか……僕もうるってきちゃいましたね。
「この作品はよくなるんだろうな」と思った瞬間
――ドラマとしてはかなり辛いシーンも多いかと思うので、現場のほっこりとした話が聞けると安心します。
別府 基本的に横浜近郊で撮影していたんですけど、初日だけは新宿の一角で撮影があって。新宿って、場所によってはちょっと怖いところもあるじゃないですか。僕らが撮影していたら、怒号が聞こえてくるんですよ。「うわ、やっぱり新宿だなあ」と思っていたら、怒鳴っていたのがうちのスタッフでした(笑)。
沢村 (笑)
別府 僕らのとこの人だ! ごめんなさい! みたいな。本当にすごくいいスタッフさんたちなんですよ。作品に対する熱量が高すぎるがゆえにヒートアップしちゃってケンカのようになる。
だから、その時点でこのチームは素敵だな、と思いました。やっぱり、なあなあでやっていたらそこまでの熱量にはならないじゃないですか。
沢村 言い合ってることは間違っていないんだよね。
別府 でも本当にその出来事があったからこそこの作品はさらに良くなるんだろうな、と思えました。
浩然と千紘は「お互いがいることによって感情を取り戻していく」
――この作品は、浩然と千紘が自分の大切なものに出会う物語かとも思います。おふたりは普段、お仕事やプライベートで大切にされていることはなんですか?
沢村 僕は、切り替えはなるべく大事にしてます。役を引きずっちゃうと、仕事もプライベートにも影響しちゃうんですよね。それが一番よくないな、と思っていて。 今回、浩然だとクールな役なんですけど、ずっとそのままでいるのも役にも影響しちゃうので切り替えを意識していました。
別府 僕は逆で、普段から「千紘だったらこれをどう食べるかな」とか、そういうことを考えるタイプなんですよ。散歩をしていても千紘ならどこに行くかな、とか。なにをするにしても、撮影の期間中は役のことが頭にあるからなかなか休まらないんです。どんどん役のことで頭がいっぱいになるので、本当は仕事とプライベートを分けたいんですけど。
悩みではあるんですけど、やっぱりお芝居の役に立つことがあるんですよね。「ここだったら、この前考えたことが使えるかも」とか、今回、千紘が僕の性格とは違うタイプの人間だったからこそ、そういうことは考えていましたね。
――最後に、おふたりが考える、本作のおすすめポイントを教えてください。
沢村 2人ともお互いに足りないところを補っているのでおもしろいんですよ。
千尋って俗に言うヒモで。浩然は人の感情がわからない人。そこをお互いに補っていくんです。お互いがいることによって感情を取り戻していきます。
そして綺麗だけじゃないところを描くからこそ、綺麗なところはより綺麗に見える。そこは『ハッピー・オブ・ジ・エンド』のいいところだなと思います。
別府 愛に飢えた孤独な男たちの物語で、きっと心が満たされている人が観ると、「なんだ?」と思うシーンがあると思うんです。でも何かが足りないとか、何かわからないけど欲してるとか、日々葛藤しどこか心が満たされていない人には、どん底の人生でも一所懸命生きている浩然と千紘に今の自分の気持ちが少しでも救われる作品かな、と。この作品に登場する人物は決して誰のことも見放さない人たちだからこそ、自分のこと以上に誰かのことを大切にできるのかな、と感じさせてくれます。誰にでも満たされない気持ちってあると思うんです。少しでも何かを満たしてくれる作品になったら嬉しいです。
「ハッピー・オブ・ジ・エンド」(全8話×各30分)9月2日(月)よりフジテレビで放送開始&FODにて独占配信開始。放送終了後、TVerにて1週間見逃し配信開始。
※放送・配信の時間は予定のため、予告なく変更する場合があります。
ドラマ公式サイト:https://www.nbcuni.co.jp/jcon/happyoftheend/
Ⓒおげれつたなか・竹書房/NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
取材・文/ふくだりょうこ、撮影/映美
ヘアメイク/小原梨奈<沢村>、友森理恵(Rooster)<別府> スタイリング/竹上奈実(沢村)、庄司洋介(別府)
衣装協力/ジャケット¥35,200 、パンツ\30,800 いすれもNaNoArt/JOYEUX(03-4361-4464)、シャツ\28.400 Mizuid(https://mizuid.com)<沢村>、シャツ\36,300/SOSHIOTSUKI、ジャケット\140,000、パンツ\94,200/1017 ALYX 9SM(MATT. info@the-matt.com)、シューズ\88,000 ADIEU(BOW INC 070-9199-0913)、ブレスレット\81,950/DIESEL(DIESEL JAPAN 0120-55-1978)、その他スタイリスト私物<別府>
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