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東京二期会オペラ劇場『コジ・ファン・トゥッテ』種谷典子 インタビュー

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チケットぴあ

種谷典子 (C)STUDIO KUMU

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モーツァルトと台本作家ロレンツォ・ダ・ポンテによる、いわゆる「ダ・ポンテ三部作」の中でも、恋愛の最も過激な面を描いたオペラが『コジ・ファン・トゥッテ』だ。現代の作曲家も書けないような斬新なポストモダン的な愛の状況が提示され、ラストシーンに至るまで驚きが絶えない。「恋人たちの学校」というサブタイトルも意味深で、二組のカップルの男性たちが老哲学者の悪巧みに操られ、お互いの恋人を交換しようとする。音楽は美しい重唱に彩られ、天国的な趣だが、心理的には観る者に複雑な感情を喚起する問題作だ。

今回の東京二期会の上演は、パリ・シャンゼリゼ劇場との共同制作で、合唱は二期会合唱団、新国立劇場合唱団、藤原歌劇団合唱部の三団体の共演、演出は魔術的な知性で驚くようなオペラの本質を抉り出すロラン・ペリー。巨匠ペリー自らが東京で歌手たちに付き切りで稽古をつけている中、姉妹の姉役フィオルディリージを歌うソプラノ種谷典子さんに話を聞いた。

――お稽古はどれくらい進んでいますか?

「今の段階でフィナーレまで演技が全部つきまして、これからは繰り返し稽古を重ねて、ペリーさんの演劇の世界の本質に入っていけるよう進めている段階です。マエストロのクリスティアン・アルミンクさんは先週お見えになって、音楽的にはこれから指導を受けていきます」

――若手の歌手の中でも躍進めざましい種谷さんですが、フィオルディリージ役は以前から歌いたいと思っていたのですか?

「モーツァルトのキャラクターに挑戦したいという気持ちが私の中にあって、フィオルディリージの役は声の質としては挑戦の域にあるんですが、この役独特の心情の揺れ動きはぜひ表現したかったんです。今回の演出の設定が、今の自分の年齢に比較的近いのではということもあって、演じることに入り込みやすい所もありました」

シャンゼリゼ劇場公演より (C)V.Pontet

――フィオルディリージは姉妹の姉役で、誘惑に弱い妹ドラベッラとは対照的に、最初のうちはなかなか浮気をしようとはしません。14番のアリアと25番のロンドはフィオルディリージの性格的な面が強調された聴かせどころでもありますね。

「今まで歌っていたアリアとは違う捉え方をして稽古をしています。自分自身に問いかけているというか、対象がいるというよりも、自分がしていることに対する葛藤を表現している…すごく難しいアリアだと思います」

――なるほど。ロラン・ペリーさんといえば天才肌の演出家ですが、シャンゼリゼ劇場でのハイライト映像も、歌手の日常を演出に落とし込んでいるのではないかと深読みさせるものでした。

「舞台美術は1950年代に実在したベルリンのスタジオを再現したものだと聞きました。演技はシャンゼリゼ劇場でご自身が演出されたものから、日本での上演では色々な変更箇所が出てきているようです。新たなものが生まれることもあったり、実際の私たちを見て『このシーンはもうちょっとこう変えたい』と作り替えたり。身体の見せ方についても、パッと立ち上がって実際に見せてくださるんですけど、少し動いただけで場の空気が物凄く変わるんです。そういう演技を目の当たりにして、私たちも何とか自分のものにしたいと取り組んでいます」

シャンゼリゼ劇場公演より (C)V.Pontet

――ペリーさんの印象深い言葉などありましたか?

「とにかく“もう考えるな”と。私にとって謎なことがたくさんあるので、これは何故ここに出て来るのか、この物は何のために使うのかと色々なことを質問するんですが、その意味合いというのも漠然と物語に影響してくるものであったり、自分自身を助けてくれるものだったりするんですね。あまりそこに自分から意味を持たせなくていい、という意味で言われたのだと思います」

――でも、そのように歌手の方が積極的に質問されるのは素晴らしいことだと思います。

「納得しながら作り上げていきたいと思っているので、ペリーさんと対話をしながら答えが本番までに答えが出るといいな、という感じですね」

シャンゼリゼ劇場公演より (C)V.Pontet

――フィオルディリージの性格面では共感できるところはありますか?

「まず頑固(笑)。頑固がいいこともあるんですが、例えば柔軟にその曲の多面性をとらえるには頑固すぎてもいけないと思うので、柔軟さも心がけています。演技も、心情によって動かされるということを優先してやっているのですが、モーツァルトの音楽から動きを有機的に作り上げていくのは結構技術的に難しいです」

――フィオルディリージの聴かせどころは音楽もバロック的というか、きっちりしていますね。

「立ち稽古を進めている中で、少し自分の発声自体が劇的に寄りすぎていることもあるので、声を壊さないように気を付けています」

――『コジ・ファン・トゥッテ』は演出によってエンディングが微妙だったり、後味が悪かったりしますが……。

「最後はハッピーエンドになるそうです。キャストによってもハッピーのニュアンスが変わるかも知れませんね。それぞれの役の、それぞれのトラベルという感じで、ラストに辿り着くと思います。とにかく本番まで全力で、自分で思ったことはとりあえずやってみたいと考えています」

取材・文:小田島久恵

<公演情報>
コジ・ファン・トゥッテ

公演日程:
2024年9月5日(木) 17:00開場/18:00開演
2024年9月6日(金) 13:00開場/14:00開演
2024年9月7日(土) 13:00開場/14:00開演
2024年9月8日(日) 13:00開場/14:00開演
会場:新国立劇場 オペラパレス

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2450383

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