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【PFF開催直前!入選監督対談】史上最年少14歳で入選、ひがし沙優監督×犬童一心監督

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左から)ひがし沙優監督、犬童一心監督

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「ぴあフィルムフェスティバル2024」(以下PFF)が、9月7日(土) ~21日(土) にかけて東京・京橋の国立映画アーカイブで開催される。今年46回目となるPFFでは、若き映画監督たちの登竜門となるメインプログラム「PFFアワード2024」に、692本の応募作品の中から入選した19作品がスクリーンで上映される。

さらに「生誕100年・増村保造新発見!~決断する女たち~」をはじめ、多彩な特集上映も同時開催されるが、中でも注目は、8ミリ映画全盛期にPFFに入選した傑作から厳選されたレア作品が並ぶ必見のプログラム「自由だぜ!80~90年代自主映画」。「特別上映」以外はすべてポジフィルムからデジタル変換されており、鮮明な画質で当時の8ミリ映画を観ることが出来る絶好の機会にもなっている。

今回、「PFFアワード2024」にPFF史上最年少の14歳で入選を果たした『正しい家族の付き合い方』の、ひがし沙優監督と、「自由だぜ!80~90年代自主映画」で上映される『気分を変えて?』を高校生のときに撮った犬童一心監督が、50歳の年齢差を超えて語り合った。

14歳のストーリーテラー

――ひがし監督は、これまで犬童監督の映画はご覧になったことはありますか?

ひがし 『ジョゼと虎と魚たち』と『ハウ』を観ました。

犬童 どっちが面白かった?

ひがし 『ハウ』はワンちゃんがかわいくて、ドキドキ感がすごかったです。

ひがし沙優監督

――今回、ひがし監督には、犬童監督が高校生のときに撮った『気分を変えて?』も観てもらいました。

犬童 『気分を変えて?』は1978年の映画だから、46年前。

ひがし テンポが良くて見やすかったです。時間の経過が英語で出たりするのも新鮮でした。

犬童 僕がこの映画を作ったときは、物語を一回バラバラにして、無理矢理テープで止めてるみたいなギリギリの破壊志向があったと思うのね。ひがしさんの『正しい家族の付き合い方』は、面白い物語を作るってことに、ものすごく集中していると思った。

ひがし 自分の部屋だけで、どうやって映画を作れるかなと考えたんです。そこで今回の設定にすれば、この部屋だけで出来るなと思って。

犬童 どうして部屋の中だけで撮ろうと思ったの?

ひがし 学校とかを借りて撮ると、使える時間が決められているので。家だったら好きな時間に、小物とかもじっくり置いて撮れるから。良いものを作るんだったら、自分の部屋を崩してやった方が良いと思ったんです。

犬童 すごいね。その考え方は、昔の巨匠監督と同じだよ。何でもスタジオに持ち込んでセットで撮りたがったんだけど、ひがしさんがやってることはそれに近い。だから、完成度の高い映画になったんだと思う。

ひがし ありがとうございます。

犬童 14歳の人が映画を作って、こんなに完成度が高いものを作れるとは思っていなかった。ひがしさんは、もう完全にストーリーテラーとして映画作ろうとしてるよね。

ひがし 物語は分かりやすいように心がけています。

犬童 そこに興味があったんだけど、これまであまり映画は観てないでしょう?

ひがし たくさんは観てないです。YouTubeとかTikTokは、めっちゃ見ます。逆に父は映画をすごく見るので、映画を一緒に作っていくうえで、2人のバランスが取れて結構上手くいってる感じがします。

――ひがし監督は自分で主演も兼ねていますね。

ひがし 私は元々役者をやっていて、あまり出るところがなかったので、それなら自分で作って、自分で演ってみようっていう。編集も出来るので、自分で編集するなら監督もしようかな、みたいな。

犬童 編集はいくつからやってるの?

ひがし 小学4年ぐらいから、歌詞動画を音楽に合わせて作ったりしていました。映画を作り始めたのは中学1年生からです。

犬童 大林宣彦さんっていう監督がいたんだけど、大林さんも映画を観るようになる前の小さい頃から映画を作ってたのね。ちっちゃいときからフィルムにアニメーションを描いて、それで映写して観てた。映画を観るより、作るのが先だった人。

ひがし えっ、すごい。

犬童 ひがしさんも作る方から入って、それがすごく良い形で映画になってると思うね。

犬童一心監督

8ミリ映画とスマホ映画

――犬童監督は64歳、ひがし監督は14歳。50歳の年齢差があっても、同じように自主映画を撮ってPFFに入選したわけですが、当時と今では作り方に違いはありますか。

犬童 僕が高校生の頃は、8ミリフィルムで撮っているんだよね。撮ったものを現像所に出して、フィルムが現像されて帰って来るまで、ちゃんと撮れてるか分からない。ひがしさんは8ミリを触ったことないから言ってる意味分かんないかもしれない。

ひがし 現像はわかります。

犬童 現像するのに1週間ぐらいかかるのね。それに1本のフィルムで撮れるのが、大体3分。フィルムが千円するとして、現像も入れたら、2、3千円かかる。『正しい家族の付き合い方』はスマホで撮ってるんでしょう?

ひがし はい、Androidを使ってます。編集もスマホでやってます。

犬童 スマホで撮るときに、三脚ってどうしているの?

ひがし スマホを立てる安いスタンドみたいなものがあって、それでやってます。今回は父と私の出番が多かったので、そのときは母に撮ってもらいました。

犬童 そうか、人手が足りないときは、お母さんが撮ってくれるのか。お母さんが撮ってる画もちゃんとしてる。それから、すごく綺麗にライティングされてる。あれは何か照明をしているの?

ひがし 100均で色んなライトを買ってきて、並べてます。

犬童 ちゃんと主役を良く見せるライティングになってたね。何日で撮ったの?

ひがし 2週間ぐらいですね。1日1時間半から2時間ぐらい。学校が終わってから撮ってました。それで直ぐに編集して1回はめてみて、おかしかったら次の日にもう1回撮ろうみたいな感じでやってました。

犬童 うーん、うらやましいね(笑)。

ひがし ははは(笑)。

犬童 だって、それはポン・ジュノとか韓国映画の巨匠監督みたいな撮り方だよ。ひがしさんは笑顔で何でもないように言うけど、日本の映画の現場だと、それは出来ないからね。撮ったらそれでおしまい。編集でおかしいと思っても撮り直しなんて出来ない。だから、今はすごく恵まれた撮り方をしてるわけだよ。

「映画」は新しいのか、アンティークなのか

犬童 僕が高校生の時に映画を作り始めたときは、自分のことを描く。それから、1977年から1978年っていう時代を映画の中に残すって、はっきり決めて作ったのね。どうしてかというと、わざわざ8ミリで映画作るんだったら、映画の中に自分がどういう時代に生きているかっていうことを描かないとダメだと思い込んでたのね。ひがしさんは自分で映画を撮るときに決めていたことはある?

ひがし 今回の作品に関しては、他の人たちにどう思われても、自分たちが幸せだったり、それで良いなって思ったら、それで良いんじゃないか、というテーマにはしています。

犬童 この映画は、自分たちが住む世界とは別の世界や人がいることに気づくってことを描いているわけだよね。ひがしさんの普段の生活の中で、同じような気分があるのかな?

ひがし 敵ってわけでもないんですけど、自分とは住む世界が違う人がいると感じることは、学校生活とかでもありますね。それが出てるのかな?

犬童 映画を作ったりしている自分とは違う人たちがいるってこと?

ひがし ずっと編集してると、明るい人たちと自分は違うなって(笑)。対立っていうわけじゃないんですけど。

犬童 僕と一緒だね。学校から家へ帰ったら延々編集ばっかりしてたんだよ。他にそういう人は全然いなくて。でも、こうやって話してると、ひがしさんが明るい人たちとは別の場所にいるっていう感じには見えてないけどね。でも、それが映画に出てくる人間たちの感じになったんだね。

ひがし 『気分を変えて?』を観たら、今の映画と画質は違っても、作り方とかは今も同じなのかなって思いました。映画は変わらないなって。

犬童 僕は逆に、「映画」ってもの自体が、古い気がする。映画が誕生してから今に至るまで、色がついて音が入ったぐらいで、ほとんど変わってない。編集の仕方も新しい手法なんて実はそんなにないし。だから僕には、映画ってアンティークじゃないの?みたいな気分があるのね。そこが好きなんだけど(笑)。

『気分を変えて?』より

ひがし 私は、新しいものを作るという気分の方が大きいかなって思ってます。

リモートでも映画は撮れる

――最後におふたりから、今回のPFFで上映される監督作について、これから観る方に一言お願いします。

ひがし 『正しい家族の付き合い方』は、いろんな人にリアルで会わずに作ってる映画なんですけど、皆さんが飽きないように心がけて作りました。いろんな人に協力してもらって作ったので、是非楽しんで見てほしいです。

『正しい家族の付き合い方』より

犬童 リアルに会わないって、どういうこと?

ひがし 途中で出てくる姉妹役のふたりは、リモートで撮ってるんです。

犬童 えっ!? あのふたりが覗き込んでる演技を撮ってるときは、ひがしさんはいなかったってこと?

ひがし いないです。絶対的に必要な小道具を段ボールで作って送ったんです。演技はお任せして、やってもらいました。

犬童 全然そう見えなかった。カメラ位置が正確だから違和感がない。覗いてる角度や目線も正確だったよね。あれは指示してるの?

ひがし 段ボールの向きとか、細かいところは指示してますが、目線とかはお任せしてます。撮ったファイルを送ってもらって、リテイクしたところもあったんですけど。

犬童 なんで会って撮らないの?

ひがし 私が大阪で、あちらが東京なので会うことが難しくて。「中2映画プロジェクト」っていう、つんく♂さんが監修している短編映画を作るプロジェクトに以前入っていて、そこで知り合った信頼して任せられる人たちにお願いしたいと思ったんです。

犬童 そうか、そういう考え方もあるのか。ひがしさんが僕の年齢になる頃には映画はどうなってるんだろう……。あと50年先だけど(笑)。

――では、犬童監督からも上映作品について。

犬童 『気分を変えて?』は、70年代の後半の日本のティーンエイジャーにとって、日本がどういう風に見えていたかがよく映っていると思う。この映画は1978年のキャンディーズの解散の日が舞台になってるんだけど、その10年前の1968年は70年安保闘争とベトナム反戦運動がピークに来てた。そのあとに連合赤軍事件とかがあって、政治離れが進んだ果てに78年になる。ベトナム反戦運動の代わりがキャンディーズの解散になって、時代が変わったということがテーマになっている映画です。

――ひがし監督の次回作も楽しみですね。

犬童 次の映画は、いつ作るんですか?

ひがし 今、作っている最中です。次の映画は『気分を変えて?』と似たところもあるんですけど、映画を作る話なんです。ネット配信の映画講座を見た女の子が映画を作りたいと思い立って、その講座で教えられた手順で映画を作っていくと……というお話です。

――それはぜひ来年のPFFに出品してもらいましょう(笑)。犬童監督からPFF入選の先輩として、何かアドバイスはありますか?

犬童 表彰式に参加するなら、今回入選した作品の中で気に入った映画があったら、作り手の人と会っておいたほうが良いよ。その出会いがずっと続いたりするから。僕もPFFで知り合った黒沢清さんと50年ぐらい付き合いが続いてる。先週もご飯食べたんだけど。

ひがし えー、すごい。

犬童 自分の周りに映画を作る人がいっぱいいるってすごく良い。ひがしさんはクラスの中では、他の人と違うフィールドにいるかもしれないけど、周りにそういう知り合いがいるようになると、映画を作るのが当たり前になるからね。

ひがし はい!

取材・構成:吉田伊知郎

<イベント情報>
『第46回ぴあフィルムフェスティバル2024』

日程:9月7日(土)~21日(土)
会場:東京・国立映画アーカイブ ※月曜休館

『ぴあフィルムフェスティバル in 京都2024』

日程:11月9日(土)~17日(日)
会場:京都・京都文化博物館 ※月曜休館

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2453245

公式サイト:
https://pff.jp/jp/

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