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Dannie Mayインタビュー「自分たちの強みに気づいてからは楽曲の力強さが全然変わった」

音楽

インタビュー

ぴあ

左から)タリラ(vo、key)、マサ(vo、g)、Yuno(vo、kantoku) (Photo:石原敦志)

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Text:石角友香 Photo:石原敦志

3ボーカルという特徴を踏まえ、ハイパーなポップスもロックもダークポップやエレクトロスウィングもジャンルの縛りなく世の中に放ってきたDannie May。振り幅の広さはそのままにライブを通して、よりリスナーにダイレクトに伝わるエンタテインメントが何なのか?を問い直した2023年を経て、待望の2ndアルバム『Magic Shower』が完成した。

すでにライブのピークタイムを担う「カオカオ」や、Dannie May流のグランジ×ヒップホップチューン「ダンシングマニア」など先行配信曲も収録しつつ、衒いなくポップを突き詰めたタイトルチューン「マジックシャワー」からスタートする本作には今とこれからのDannie Mayが凝縮されている。この変化のきっかけはなんなのか。そこからインタビューを始めてみた。

――今年3月の5周年ライブではセットリストの半分がノンストップだったり、去年とは姿勢が違っていて、退路を断った感がありました。

マサ(vo、g) 確かに「こっち側で行くぞ」っていうのを決めきったタイミングではありました。

――ということも含めて2ndアルバム『Magic Shower』ではどういう心境の変化がありましたか?

マサ お話しいただいた通り、ライブも去年に観てもらった時はどちらかと言うと音源重視ではあったんですね。僕らはコロナ禍もあって、バンド歴に対してライブをやっている時間が少なくて。ライブバンドっていうわけではないですけどライブに重点を置いたバンドになって行こうと決めたのは去年だったので、そこから2ndアルバムの制作に入って、ライブの中での優しい曲やライブの中での広がりのある曲、ロックな曲、みたいなものを意識して作ったりはしましたね。

マサ(vo、g)

――この間にかなりバンドの本音が詰まったEP『青写真』のリリースもあり、バンド内の空気の変化を感じられたんですよね。

Yuno(vo、kantoku) 信頼感を持ってダメ出しできるようになったっていうのはあるかも。それにメンバーで食事に行くことも年々増えているんです。例えば、取材が終わった後にスケジュールがない日は「せっかく集まっているし軽く飯でも行く?」みたいなことが自然と増えた気はしていて。そういうのが増えるとわざわざかしこまって集まらなくてもかしこまった話ができるっていう、3人でラーメンを食べながら話していたことが意外と次の曲のスパイスになっていたり、みたいなことは昔にはあり得なかったから。

タリラ(vo、key) 多くの場合、バンドは仲良い人で始めたり、友達だったとか。接点があった人と始めて、でもいざいろいろやってみるといざこざが出てきて“仲良かった”が最高潮でなんか上手くいかなくなるみたいな。でも俺らは最初が別に仲良いわけじゃなかったから。

タリラ(vo、key)

マサ たぶん野良で解き放たれたら集まるような3人組ではないんですよ。

Yuno クラスメイトみたいな感じ。たまたま同じ学校の同じクラスになった中で、文化祭とか運動会とかテスト勉強とかを経て仲良くなっていったみたいな感じだから、時間がかかった分、仲が良いみたいなのもあるかもしれない。

――5周年のライブの時に、Yunoさんがお客さんも含めてジャンルで集まったわけじゃなくて音楽で集まってるわけだからというMCをしてましたね。

Yuno その時も話したんですけど、パンクロック好きだからパンクロックやろうとか、ファンクが好きだからファンクやろうって集まったんじゃなくて、シンプルに音楽が好き、歌うことが好きっていう共通項だけで知りあった3人ではあるんですけど、でもようやくそこの大事さにちゃんと気づけたかなとは思います。だからこそ今までもいろんなジャンルの音楽を作ってこれたけど、逆にいろんなジャンルを作る自分たちの強みは何だろう?というのを去年は考えてた1年だと思っていて。そこで明確に歌自体が好き、音楽自体が好き、音楽が持つエンタメの可能性自体が好きみたいなところが強みなんだというふうに気づいてからは楽曲の力強さが全然変わったと思う。

マサ “なんでもできる”の内側に誰もいなかったっていうのが去年までだったんです。

左から)タリラ(vo、key)、マサ(vo、g)、Yuno(vo、kantoku)

――その“なんでもできる”が手段だったけれど、今は音楽が目的になってるっていう感じがすごいするんです。

Yuno どんなにそのアーティストが好きでも、ジャンルでカテゴライズができるバンドだと自分のメンタルとか置かれている環境の状況によっては「この人たち、今聴けないな」とかっていうのは全然あるかなと思っていて――僕はあるんですけど。ただ僕たちみたいにすごいたくさんのジャンル音楽を作っていれば、その人のどの人生のターンでも僕らの中の数10曲あるうちの1曲の一節ぐらいは引っかかるんじゃないかなっていうか、背中を支えてあげたり寄り添ってあげられるというか、それが今僕らにとって大事なことなのかなっていうのは思いますね。

――どの曲を作ってる頃からアルバムの全体像が見えてきましたか?

Yuno それで言うと、もう最初の「カオカオ」(2024年第一弾シングル)を作っている時からですね。EPとかアルバムを出す時は曲の寄せ集めを出すのは嫌だなっていうのは思っているし、今回は絶対テーマを決めて作ろうっていうのがあったんです。「カオカオ」はそもそもアルバムの話が始まるのと同じ頃にきたんだよね?「コレクション」(EP『青写真』に収録)ともかぶっていたっけ?

マサ かぶっていたよ、俺死にそうだったよ(苦笑)。

Yuno 今回のアルバムテーマ、まぁ2ndアルバムだからもじって数字の“2”っていうのをテーマにしているんです。バンド自体がポップとマイナーの境界線を縫うような音楽を作るっていうこととか、一筋縄ではいかない二面性みたいなのを大事にしてきたバンドではあって、それこそDannie Mayってバンド名もDannieとMayっていう外国人男性と日本人女子の名前をかけ合わせた概念が組み合わせてできた名前なんで、2というテーマはDannie Mayにとって大事なもので。で、今回はそれをテーマにしたんですけど。

Yuno(vo、kantoku)

――バンドにとって必然的なテーマなんですね。で、今回タイトルチューンの「マジックシャワー」で始まりますが、EP収録の「コレクション」が持っていたような前向きなテンションで始まりますね。

マサ 自分たちが今までやってきた中の曲をもっと広げていこうというところももちろん意識しつつ、アルバムリード曲っていうのはもうその曲を書く前からそこの枠の曲っていうふうに決めるんです。で、「最強のポップスを作ろう」というテーマからその曲ができているので、もう「ワーっ!!」って明るい感じになっていますね、J-POPだなって。

――この曲が1曲目なのは意表を突かれました。

マサ 確かに攻めてるっちゃ攻めてる(笑)。

タリラ でも言ってたよね、闇を照らすには……。

マサ なんかそんな話もしたよな。

Yuno なんかこの鬱々した日々というか、何か一歩足りない時とか自分のしがらみのようにまとわりつく闇をはねのけるぐらいの強さがあるものって、圧倒的な光だよなってことは言っていて。

マサ そうだ。そのメンタルで書いたんだ。

Yuno だとするならば、もうすべてをはねのけて打ち返すぐらいの力強いポップスなんじゃないかっていうので上げてきたのが「マジックシャワー」なんですよね。

――ちなみに「マジックシャワー」のテーマは?

マサ “音楽は魔法足りえるのか”っていう。それを是と言わせる、それを魔法ですって言わせるようなイメージで書いたんだって話を5周年のライブでもしました。

Yuno 日々の会話で紡げない言葉だったとしても音楽の歌詞によってみれば、「コレクション」みたいにちょっと恥ずかしいようなこととか、「ふたりの暮らし」みたいに大切な人をまっすぐ愛でるようなことも曲だったら伝えられるんじゃないか、音楽だったら伝えられるんじゃないかっていうところに何か魔法を感じたというか。なので「マジックシャワー」も純粋に“本当に音楽は魔法足りえるのか?僕らは魔法足りえると思っています”という意思の曲ですね。

――そして毎回特徴的で、ライブでは場面転換になる曲を出してくるタリラさんの新曲「強欲」。これはどんな発想だったんですか?これも2なんですか?

タリラ これも2ですね。もともとはデモを4〜5年前に作っているんです。でもずっと出していなかったんですけど、今回2というテーマだったので。ある時、電車の中でいろんな人の欲が見えて。どこかに行きたい、あの人に会いたい、お腹空いたから何か食べたいとか、寒いから暖かいとこに行きたいとか、そういうこの世のすべての欲が見えて。なんか二次元三次元とかの他に“欲次元”みたいな、欲だけが渦巻いている次元みたいなのが――俺その時なんかスピっていたのか分かんないですけど(笑)、電車の中で見えて、それで書いた曲で。この三次元の普通の世界と欲次元っていう世界があるんじゃないかという二面性の曲なんです。

――そしてYunoさん作詞の「Night Flower」、これはどんな着想なんですか?

Yuno これはもともと去年、曲に広がりが出過ぎた時に”SNSにワンフレーズぐらい上げてみてみんなの反応を見てみるっていうのも面白いかもね”みたいなのをやっていたんですよ。で、その中で圧倒的に評判が良かった楽曲をフル尺にしたっていう感じなんです。なので、これは作曲がマサで作詞は僕っていうDannie Mayにたまにある特殊なパターンのやつなんですけど、歌詞は明確に「ふたりの暮らし」のダーク版みたいなイメージで書いている曲で。

マサ 初耳なんですけど。(笑)

Yuno 明確にリファレンスにしている僕の好きなアニメがあるんですけど、それも男女を描いているアニメで。「ふたりの暮らし」っていうのはわりとこういう今の社会というか、広い世界でもふたりですごく愛のある世界を築いているんですけど、「Night Flower」の方は逆で、今あるこの世界のせいで一緒に生きたかったけど生きれなかったふたりを描こうと思って。

――へえ!歌詞の中にポップスターもロックスターもパンクロックもディスっている部分もあって、自分はそこにフォーカスしてしまいました。

Yuno これは完全に、最初にマサがこの曲のワンフレーズを作る時に、なんとなく口ずさんでいたロックスターとかいう言葉をそのまま僕がもらってきたんです。

マサ 仮歌詞ね。

Yuno リファレンスにしている作品でもカッコいいけど、きれいごとを言うちょっと横暴なキャラクターがいて。音楽ってそれこそ魔法足りえるって話もあったんですけど、とは言え見る人によってはきれいごとだなって捉える人もいるだろうし、そこに対して正直に向き合えない環境にいる人もいると思っていて。最初に話した通り、どんな状態であっても何か1曲はきっとこの人に響くはずだっていうのを大事にしているんで、それをこの曲ではちょっと表現したっていうところではありますね。音楽を否定はしていないんですけど、きれいごとの否定っていうのを歌詞の中で書いている感じですね。

――そして目下、アルバム直前の新曲が「ダンシングマニア」で、平たく言うとライブにあるとめちゃくちゃうれしい曲かなと。

マサ うれしいですね。この曲は僕らの今後のライブで名刺代わりになるような曲にはなっていくとは思いますね。

――フィジカルな意味で、ライブで必要な感じの曲というか。

マサ それこそこの曲のテーマはグランジロックとヒップホップをかけ合わせてやったらどうなるかな?っていうので作ったので。かけ合わせって、面白いことが起こる可能性が高いので結構やるんですけど、「ダンシングマニア」は今回のアルバムの中だと割とハマったんですね、そのかけ合わせが。

――2というテーマの幅を感じます。アルバムが完成した今、どういう手応えがありますか?

タリラ 最高でしょう!

マサ これは最高だと思うな。どこを切り取ってもらっても恥ずかしくないようなアルバムになったかなっていうのはもちろんありますし。前回のアルバムが完成した時も、「めっちゃ良いアルバムだな」って思ったんですけど、今回聴いてみると格段にいろいろと見えてるもんが違うなって(笑)、すごく思う。

――1stアルバムの『Ishi』って攻撃力があるアルバムだった気がしていて。

マサ そうですね。やっぱり暗いというか中にいる人間が暗かったな、あの時は。後向きなやつが頑張って前向いている感じがあの頃はすごいあったんです。実際かなり報われてなかった頃なんで、明るくしようと思ってもやっぱ明るくできないじゃないですか、そういう人間って。不幸せって無理しても絶対分かるんで、曲とかで。そういう意味で今回の方が人の匂いがするというか本来の俺らっぽいっす。

――10月後半からはツアーも始まりますが、どんなものにしたいですか。

Yuno これはでも前回のツアーからそうだったんですけど、というかなんならそれこそ5周年の日からですけど、漠然とZeppでの単独公演っていう結成当初から掲げてきたものがいよいよリアルに掴みに行くフェーズに変わったと思っていて。それが3月の5周年のワンマンから夏のツアー、今回のアルバムのリリースツアーっていうふうにひとつずつ階段を登っていくっていう感覚でやってきているので。夏のツアーよりもさらに力強いライブにはもちろんしていくし、とはいえここがゴールではないので、ここもひとつ力強い階段を踏めるイベントになればいいなとは思っていますね。

――初めて観る人もその場で参加できそうな新曲が増えましたし。

マサ 確かに。僕らって別にお決まりのノリ方があるわけじゃないですけど、(Yunoが)大体煽ってやってくれるんで(笑)。

Yuno 僕は初めて来る人でも一回来たら楽しいと思ってもらえるようなことを心がけて常にライブには臨んでいて。静かに後ろで観たい人も前でノリたい人も僕が一番歌って踊っていればきっと全員楽しいはずなんで、そこは意識して先陣切って今回のツアーも盛り上げていきたいと思います。

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<リリース情報>
2ndアルバム
『Magic Shower』

9月18日(水) リリース

●CD:3,200円(税込)
●CD+Blu-ray:5,400円(税込)

【CD・配信収録曲】
1.マジックシャワー
2.ゲッショク
3.ふたりの暮らし
4.強欲
5.Night Flower
6.ダンシングマニア
7.アストロビート
8.ハッピージャック
9.カオカオ
10.肌合い

【Blu-ray収録曲】
1.灰々
2.笑わせらぁ
3.玄ノ歌
4.黄ノ歌
5.針よ墜とせぬ、暮夜の息
6.待ツ宵
7.東京シンドローム
8.異形
9.適切でいたい
10. If you イフユー
11. 3分半の反撃
12.ぐーぐーぐー
13.ええじゃないか
14.KAMIKAZE
15.OFFSIDE
16.カオカオ
17.コレクション
18.ユウヤケ
※結成5周年記念ライブ
『5th Anniversary One Man Live「Give Me Five」』公演の本編を全曲分収録

予約リンク:
https://dannie.lnk.to/MagicShower_CD

<ツアー情報>
『Dannie May ONEMAN LIVE 2nd Album Release Tour「Magic Shower」』

10月26日(土) 広島・ALMIGHTY
開場 17:30 / 開演 18:00

10月27日(日) 福岡・Queblick
開場 17:30 / 開演 18:00

11月2日(土) 大阪・Music Club JANUS
開場 17:30 / 開演 18:00

11月3日(日・祝) 名古屋・CLUB UPSET
開場 17:30 / 開演 18:00

11月9日(土) 東京・渋谷 CLUB QUATTRO
開場 17:15 / 開演 18:00

【チケット情報】
前売4,500円
※別途ドリンク代必要。
https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=J6190039

Dannie May公式サイト:
https://danniemay.com/

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