トロント国際映画祭:デミ・ムーア主演『The Substance』
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『The Substance』 Courtesy of TIFF
今年のトロント国際映画祭でこれまでに上映された中で、おそらく最も会場の反応がすごかったのは、コラリー・ファルジャ監督の『The Substance』だろう。デミ・ムーア主演、マーガレット・クァリー、デニス・クエイドが出演するこのホラー映画は、カンヌ映画祭で世界初上映され、脚本賞を受賞した。トロント映画祭での上映は北米プレミアとなる。
エリザベス(ムーア)は、ハリウッドの人気女優。だが、歳を取り始めた今、周囲の態度は明らかに変わってきた。そんな彼女は、若く美しいもうひとりの自分を創造できる闇の医療施術を知る。もうひとりの自分は本当の自分から生まれるものであり、ふたりとも自分。ふたりの自分は、7日ごとに交代して現実の世界を生きる。エリザベスの“もうひとりの自分”であるスーを演じるのが、クァリーだ。
スーは業界のエグゼクティブ、ハーベイ(クエイド)からすぐに気に入られ、たちまちスターになる。7日経つとエリザベスと交代しなければならないため、レギュラー番組を持つのは難しいが、スーを特別扱いするハーベイは、無理を聞いてまで実現してくれた。そんなスーの毎日は薔薇色で、やがてエリザベスと交代するべき時になっても、引っ張ろうとするようになる。
女性に対して若さと美しさを求める社会についての強烈な風刺。クエイドをはじめとする男性のキャラクターはダークで強烈なユーモアを持って描かれ、会場にはしばしば爆笑が起きた。だが、後半は、ジャンルがホラーとなっているのも納得の恐ろしいことが次々に起きていき、笑いは叫び声に変わる。
最後の最後まで予測のつかない展開で、2時間20分、息をつく暇もない、スリルと驚き、ショックに満ちた映画だ。文字通り体当たりのムーアの演技への評価も高く、賞レースにからんでくることも考えられる。
今月20日にアメリカ公開されれば、さらに話題になることは確実。日本でも公開が決まっている。
文=猿渡由紀