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トロント国際映画祭:マックス・ミンゲラ監督作『Shell』

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『Shell』 Courtesy of TIFF

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マックス・ミンゲラが監督デビュー作『ティーンスピリット』を引っ提げてトロント国際映画祭を訪れたのは、6年前のこと。エル・ファニングが歌手志望のティーンを演じた青春音楽映画は、ミンゲラが長い間抱いてきた情熱のプロジェクトだった。

今年のトロントで世界プレミアされた監督2作目『Shell』は、まるで違うタイプの作品。女優のサマンサは、ある程度の年齢になったこともあって、あまり仕事を取れないでいる。プレッシャーを感じる彼女は、メディアで話題になっている新たな美容施術を受けることを決意。その企業のCEOゾーイは、実年齢が信じられないほど若々しく、美しい女性だ。成功したビジネスウーマンとして尊敬されるゾーイは、新しい顧客であるサマンサを目にかけてくれ、ふたりの距離は近づいていく。そんな中、サマンサの知り合いで女優のクロエが行方をくらます。

ジャック・スタンリーによる脚本をミンゲラが読んだのは、『ティーンスピリット』を作り終えた後。登場人物たちに強く惹かれ、次はこれを監督すると決めた。ダークなスリラーで、怖い要素もあるこの映画を、ミンゲラは、子供が寝る前に聞かせてもらうお話のようなつもりで作ったという。

「この映画はベッドタイムストーリーへのラブレター。遊び心、いたずらっぽさに加え、神話的な要素もある。クリーチャーも出てくるし、娯楽作品だよ。僕が作りたかったのは、観客を楽しませる映画だ」(ミンゲラ)

サマンサを演じるのは、ドラマ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』で共演してきたエリザベス・モス。ゾーイ役には、自身もビジネスウーマンとして活躍するケイト・ハドソンを抜擢した。「ゾーイは私自身をサイコパスにしたような感じね」と、ハドソンは笑う。

「これはクレイジーで美味しいキャラクター。性的にも解放されていて、魅力的。そういった役を演じるのは楽しいわ。ただし、ああいう施術を私自身に売り込んでも無駄だけれどもね。脚本は独特のトーンを持っていて、非常に優れていた。私は、マックスが思い描くビジョンを実現するお手伝いをしたかったの」(ハドソン)

妊娠中にこの映画の撮影をこなしたというモスは残念ながらこのインタビューに参加しなかったが、彼女の女優としての実力をミンゲラは絶賛してやまない。モスとハドソンが白いカウチのある部屋で対立するシーンは、ミンゲラが最も撮影を楽しんだシーンだ。ミンゲラが望んだのは、あえて古風な演技。それは映画全体を通じて意図したこと。

「この映画にはポール・ヴァーホーベンの影響がたっぷりある。『氷の微笑』『ブラックブック』などだ。撮影監督のドリュー・ダニエルズと僕は、40年前に存在した方法を使ってこの映画を作っている。セットも、クリーチャーも、すべて実際に作った。それが僕らのこの映画へのアプローチだ」(ミンゲラ)

父は『イングリッシュ・ペイシェント』でオスカー監督賞を受賞したアンソニー・ミンゲラ。

「僕は子供の頃を主に編集室で過ごした。両親は教育熱心だったので、僕が撮影現場に行くのは夏休みの間だけ。だから僕は編集を重視するようになった。撮影をしている時も、常に編集を頭に入れている。制作費は限られているのだし、必要なものを確実に撮るのは、大事なことだよ」(ミンゲラ)

現在39歳。ミンゲラの映画監督としてのキャリアは、この先どう築かれていくだろうか。

文=猿渡由紀