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10代の3人からなるバンド・ココラシカとは? ポップながらもどこかR&Bやシティポップのグルーヴを感じさせる注目バンド【オフィシャルレビュー】

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ココラシカ(左から)らな(b)、こうき(vo/key)、こた(g)

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ギターレスのスリーピース・バンド、しかも全員高校を卒業したばかりの10代。もしかしたらそれだけで話題になるかもしれない。ただ、今時10代の天才ミュージシャンなんて世界を見渡せば珍しいわけでもなんでもない。ビリー・アイリッシュなんて10代でグラミー賞を獲得しているわけだから。それでも、ココラシカには注目すべき理由がある。7月に配信リリースされた「最後の花火」に続く新曲「溶けないで」を聴けば誰もがわかるはずだ。色鮮やかに感じられるメロディと、バンドならではの躍動感溢れる演奏、そしてフレッシュな世界観を持つ歌詞の世界。良質なポップ・ソングの要素がすべて詰まったともいえるこの曲を、まだ残暑を感じる夏の終わりに提示してくるなんて、なんともニクい奴らではないか。

ココラシカは、ボーカル&キーボード、そしてソングライティングを手掛けるこうき、ベースのらな、ドラムスのこたという3人によって編成されている。全員が2005年生まれの同級生。出会いは都立鷺宮高等学校の軽音楽部だ。実は、鷺宮の軽音は名門として知られている。古くは四人囃子の森園勝敏や岡井大二、最近でもミュージシャンやバンドを多数輩出しており、軽音に入りたくて入学する生徒も多数いるそうだ。そんな軽音楽部での結成に至るココラシカのストーリーはなかなか面白いのだが、それはまたの機会に。いずれにせよ、3年間の高校生活の間に、数々のコンテストで賞を獲るなど、ココラシカは高校生バンド界隈では有名になっていった。そして今年の春に全員卒業し、本格的に音楽の道を歩み始めたのである。

ココラシカの音楽の鍵は、やはりこうきのソングライティングだろう。父親が作曲家という家庭に育ち、幼少時から曲作りを行っていたというだけあって、その作風には10代とは思えない手慣れた印象を受ける。また、藤井風をフェイヴァリットに挙げることもあり、ポップながらもどこかR&Bやシティポップ的なグルーヴを感じさせるのが特徴だ。そして、彼が生み出す楽曲をボトムで支えるのが、らなとこたのリズムセクションである。らなは音楽好きな母親の影響で物心ついた時にはコンサートやライブハウスに連れていかれ、生の音楽を浴びるように育ったという。RADWIMPSのようなバンドだけでなく、iriなどのR&Bも好む彼女のベースは、こうきが作る楽曲が持つグルーヴを体現しているし、ギターレスということもあってベースソロを披露するなどバンドならではのアンサンブルを補完する役割も担っている。ドラムスのこたは、最初に触った楽器がフラをやっている母親からもらったウクレレであり、その後ギターを始め、高校でもギター&ボーカル志望だったが、軽音部内の事情でドラマーになり、それがココラシカの結成につながったというユニークな経歴を持つ。星野源を知って音楽に向き合うようになり、かなり幅広いジャンルを網羅しているというだけあって、彼のドラミングはひとつのジャンルに凝り固まるわけでなく、柔軟なイメージがある。

プレイヤーとしてはそれぞれ個性的な3人だけあって、個々のエゴが強くなるとちぐはぐになりかねない。しかし、そこはこうきが作る楽曲の吸引力もあって、バランスよく心地良いアンサンブルを聞かせてくれるのだ。新曲「溶けないで」は、そういった意味において完成されていると同時に、彼らにとっては大きなチャレンジでもあったのではないだろうか。前作「最後の花火」は緑黄色社会やAwesome City Clubなどを手掛けてきた横山裕章をプロデューサーに迎えていたが、今回の「溶けないで」には、SEKAI NO OWARIやOfficial髭男dismとの仕事で知られる保本真吾を起用。当初は’80sテイストのシティポップ・サウンドを作ろうとしていたようだが、保本氏の「僕とココラシカでしかできないことをやろう」という提案により、どこかアナログの香りはありつつも、現在進行形の最新サウンドとココラシカの3人のプレイとのマリアージュが味わえる一曲に仕上がっている。

そして、子供から大人へ移り変わる彼ら自身の揺れ動く気持ちが、夏の終わりの切ない風景を重ね合わせて表現している歌詞も秀逸だ。もちろんメロディも完成度が高く、バンドにとって堂々たる代表曲になったのではないだろうか。

ココラシカは、バカ売れしたいたいとか、ドーム公演をしたいとか、そういった大きな野望が似合うバンドではない。そういったことよりも、等身大で地道に成長していきたいという気持ちを大切にしている。こうきは「僕らが成長する姿を見て、お客さんも頑張ってみようかなと思ってくれると嬉しい」と語るが、その感覚はココラシカのバンドとしての重要なスタンスなのだろう。「ギターレスのスリーピース・バンド、しかも全員高校を卒業したばかりの10代。」そういった肩書で話題になることは悪いことではないが、彼らはそういう肩書を通り越し、その先にあるゆるぎない音の世界を作り出そうとしている。もちろん、まだ10代という若さもあって、完成されたわけではないし、粗削りな部分も見え隠れしておりあくまでも発展途上ならではの完成度といえる。だからこそ今後の彼らには大いに期待したいし、新曲「溶けないで」を聴く限りでは、ココラシカの未来は輝かしく、そして無限に広がっているのは間違いない。そう強く確信させてくれるバンドなのだ。

Text:栗本斉(音楽と旅のライター/選曲家)

<配信情報>
2ndデジタル・シングル
「溶けないで」

2024年9月20日(金) 配信リリース

1stデジタル・シングル
「最後の花火」

配信中

1stデジタル・シングル「最後の花火」

ココラシカ各種リンク:
https://lit.link/cocolashika