「山人音楽祭」奇跡が続いて、新しい軌跡を作った笑顔の2日間。最終日を最速レポート
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Text:吉羽さおり(赤城)、荒金良介(榛名)、蜂須賀ちなみ(妙義/赤城・TETORA)
Photo:HayachiN(赤城)、Kazuya Kohsaka(榛名)、タマイシンゴ(妙義)
G-FREAK FACTORY主催のフェス『山人音楽祭2024』の2日目が、9月22日、日本トーターグリーンドーム前橋で開催された。外はあいにくの雨だが、会場には群馬の、そして他県からやってきたロックファンが早くから集まっている。午前11時、赤城STAGEに現れた司会のNAIKA MCは、集まった観客に注意事項を伝えるとともに、初日公演の成功を「奇跡が続いて、新しい軌跡を作った」という言葉で報告。フリースタイルラップを開会宣言に変え、2日目の火蓋を切って落とした。
TETORA
11:10〜 赤城STAGE
昨年は榛名STAGEの初日トリを務めたTETORAが、今年は赤城STAGEの2日目トッパーとして出演。明るい表情で会場を見渡す上野羽有音(vo/g)は、「このためにバンド始めたんじゃないかなってくらい達成感があります」と語り、「けど、こっからまた、TETORA、進化させてもらいます!」と宣言。「G-FREAK FACTORYを聴いてきたから、見てきたからできた曲」と紹介された1曲目は、『4月』だ。先輩バンドの背中を見て、彼女らの中で培われた“優しさ”の定義について歌った曲が、実の詰まったサウンドで鳴らされる。上野が初めてCDを買ったバンドROTTENGRAFFTY、バンドを始めるきっかけとなった10-FEETなど、赤城STAGEの出演者は3人の好きなバンドしかいないという。そこで「だったら、やるしかないよな!」と燃えるのがTETORAであり、こういう日のTETORAは、向き合った人の心を突き上げては鼓舞するような、本当に素晴らしいライブをする。朝一からロックバンドの生き様を見せつけるとともに、「カッコいい人たちがやってるカッコいいフェス、お互いカッコよくいよう!」とメッセージを送った。
THE FOREVER YOUNG
11:50〜 榛名STAGE
クニタケヒロキ(vo/b)がアカペラで力強く歌い上げると、拳を突き上げる観客が増えていく。既に満杯に近い状態の榛名STAGEのトップを務めたのはTHE FOREVER YOUNGだ。『今君を迎えにゆくんだ』から荒々しい演奏を叩きつけ、初っ端からサーフする観客で溢れ返る。『明日はいらねぇ』に入ると、さらにギアを上げ、フロアの熱気も急上昇。捨て身の覚悟で、熱い歌声と演奏を放出し続ける。
THE FOREVER YOUNGは『山人音楽祭』に初登場にもかかわらず、ほんの数曲で我がホームに変える腕力を、強さを発揮。「歌える奴は一緒に歌おうや!」と呼びかけ、次の『素晴らしき世界』ではフロアに巨大なシンガロングが渦巻く。ステージとフロアの境目を無にする凄まじい熱気を作り上げていた。
中盤に差し掛かり、「喋らんで、曲バンバンやろうと思ったけど、思いが溢れてきて。クソやばい! 同じ空気吸ってくれて、ありがとう!」とクニタケが思いを伝えると、ステージ袖にいたG-FREAK FACTORYの茂木(vo)がクニタケに帽子を被せる一幕も。さらに「(G-FREAK FACTORYは)日本トップのローカルバンド、夢を見させてもらってる。福岡県久留米市でやってることが間違ってねえって、山人(音楽祭)で証明しにきた!」と語るクニタケ。その言葉通り、ラスト2曲『GO STRAIGHT』、『YOUTH』の激情っぷりには鳥肌が立つほど感動を覚えた。
四星球
12:20〜 赤城STAGE
「この時間は山人音楽祭改め、群馬県名産・下仁田ねぎの収穫祭をはじめたい」とギターまさやんがお手製の巨大ねぎの神輿に乗ってアリーナへと登場するなど、今年もまたコミックバンドとして『山人音楽祭』への愛と、ともに「ザ・ローカルズ」と題したツアーを回ったG-FREAK FACTORYへのリスペクトを形にした四星球。『運動会やりたい』では会場を紅組・白組に分け曲中でスクワット対決やウォールオブデス仕切るやつ対決、YMCA対決を催したり、「ちょんまげマン」では“ちょんまげマン”だけでなく“ちょんまげマン原田”も登場し、まさやんとの骨太なツインギターを聴かせる(ライブ中、どんだけマンも写真で登場)。「Mr.Cosmo」では北島が群馬・草津温泉の湯もみ板を掲げ、観客の先頭に立ってアリーナを回るなど、観客とG-FREAK FACTORYを大いに巻き込んで会場中を笑顔にする。憂いや痛み悲しみの涙を笑いへと昇華するコミックバンドの真骨頂を曲にした『コミックバンド』まで、誰ひとり置いていかないショーを見せれくれた。
KUZIRA
13:00〜 榛名STAGE
2ビートの疾走曲から豊潤なメロディをアピールした曲調まで、縦横無尽のパフォーマンスで榛名STAGEを瞬間沸騰させたのはKUZIRAだ。
「山人ー! あんたたち凄いよ、パワーが。この景色やばいわ。僕たちは岐阜のクソ田舎に住んでいて、正真正銘の“山人”です。マジ岐阜は何もないんだ、群馬も何もないよね。G-FREAK FACTORYに教えてもらいました、人がいねえから、手を取り合えって。全員で山人(音楽祭)作ろうね、今年2月に出した新曲やるわ、今日ぐらいハミだそうぜ!」と末武竜之介(vo/g)がMCを挟み、『Wasted Time』をプレイ。メロウな歌メロから一気にアップ・テンポに切り替わる展開が最高。かと思えば、スカのリズムを用いた『Clown』ではフロアを激しく揺らし、緩急をわきまえたセットリストで観客を翻弄していった。
「秋だね、僕が一番好きな季節です、みんなで歌おうよ」と前置きした後に『A Sign of Autumn』を披露。切ない歌メロに観客は拳を掲げて歌い、楽曲の世界に心酔。後半は『Pacific』『Backward』『Spin』とキラーチューンの連打で榛名STAGEを完全燃焼させた。
LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS PLUS
13:30〜 赤城STAGE
今年初めて赤城STAGEに登場したLOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS PLUS(LOW IQ 01/渡邊忍/フルカワユタカ/山崎聖之)のステージは賑やかな『LITTLE GIANT』でスタートした。「今年も最年長だと思うけど、今日も飛ばしていきます」と挨拶するLOW IQ 01。豊かな音楽的知識と好奇心で構築されたパンクチューンの数々はキャリアを経て貫禄を増しているものの、演奏やステージングは誰よりエネルギッシュでハッピーなバイブスに満ちている。フロアはたちまちもみくちゃだ。TOSHI-LOWがコーラスで登場してグッドメロディを引き立てた『SNOWMAN』、普遍的なビター&スウィートなメロディに歓喜のコブシが上がる『SO EASY』、そして後半『OUT IN BLOOM』からの3連投では4人の重厚で激熱なアンサンブルでフロアのボルテージを上昇させる(『BIG LITTLE LIES』ではSCAFULL KINGのホーンふたりが華を添えた)。「あ、ば、れ、ろ!」と叫び、ラストの『WHAT’S BORDERLESS』までギアを上げ続けるステージに食らいつくように、観客も全力で暴れまわる時間となった。
上州弾語組合
13:30〜 妙義STAGE
前日とは違うメンバーでの出演となった上州弾語組合は、群馬県で活動する音楽家の集まりだ。午前中に降っていた雨は止み、野外にある妙義STAGEは気持ちのいい天気。手作りうちわを持ってメンバーを応援に来た人も、家族と一緒に来たちびっこも、リラクシーなサウンドに揺れ、手拍子をしながら盛り上がった。「楽しい!」という声がステージからも聞こえてくる。MCでメンバーが住所を言うと、どのあたりか何となく分かった観客が歓声を上げていた。観客の6割は群馬県民という『山人音楽祭』ならではの光景だろう。この日披露されたのは、シンガーソングライターの岩崎有季がG-FREAK FACTORY茂木と制作した曲『野営』を含む6曲で、6名のメンバーが順に歌うステージに。六人六色の歌声、それぞれのローカリズムを青空の下で奏でると、ラストは、名曲『オブラディオブラダ』のカバーで締め括った。
HUSKING BEE
14:10〜 榛名STAGE
今年結成30周年30公演ツアー中のHUSKING BEEが『山人音楽祭』に初参戦。初っ端から記念すべき1stアルバム『GRIP』収録曲『8.6』『Anchor』の2連打を浴び、テンションはアガらずにはいられない。『Sun Myself』を演奏後、「元気だね。メンバー間で”山人”ってどう読むんだろうなって話した」(工藤哲也/b&cho)
「ありがとう、マウンテン・ピーポー! 早速楽しんでおります。ちょっとここで新曲を、僕が大好きだった人に捧げた曲です」(磯部正文/vo&g)
そう言った後に新曲『Faraway Flow』を披露。イントロから重厚なバンド・アンサンブルを掻き鳴らし、深みのある演奏に引き込まれてしまった。続いて平林一哉(vo/g)がリード・ボーカルを務めた『New Horizon』を挟み、「山人たちへ、新しい風を」と磯部が告げた後に『新利の風』をプレイ。日本語詞を用い、ハスキンの代表曲のひとつと言っても過言ではない名曲に会場も沸く。そして、トドメは先述した1stアルバム収録曲『Walk』が炸裂。若い人はもちろん、AIR JAM世代と思われる男性が力一杯シンガロングしていたりと、永遠のパンク・アンセムにフロアは最高潮の盛り上がりを見せた。
ライブゾーン(TOSHI-LOW&茂木洋晃)
14:30〜 妙義STAGE
同じ年の同じ日に生まれ、今は群馬でそれぞれ『New Acoustic Camp』『山人音楽祭』を開催する“兄弟”であるTOSHI-LOWと茂木洋晃。妙義STAGEにはそんなふたりのユニット、ライブゾーンが登場したが、最初はなぜかTOSHI-LOWひとりのみ。TOSHI-LOWいわく「あいつも忙しいからさ、俺ひとりで頑張るから別に来なくていいよって言っちゃったんだ」とのことで、歌い始めた1曲目は、G-FREAK FACTORYの『ダディ・ダーリン』だ。冒頭ではああ言っていたが、実際は袖に茂木がいて、途中何度か茂木が出ていこうとするも、その度にTOSHI-LOWが手で静止して笑いが起きる。茂木がちゃんと登場してからは飾らない感じでトークしつつ、ふたりのハーモニーが印象的だった『ナオミの夢』(へドバとダビデのカバー)、茂木からのリクエストだったというOAUの『朝焼けの歌』などを披露した。ラストはTOSHI-LOWのブズーキをバックに、RCサクセションの名曲『スローバラード』を茂木が歌い上げる。2日目のタイムテーブルももうすぐ折り返しということで、TOSHI-LOWが観客に「茂木の悲しそうな顔を見るのは嫌なんだ。だからこいつが笑って帰れるようにしてくんね? 俺の兄弟なんで、よろしくな」と伝える一幕もあった。
ハルカミライ
14:40〜 赤城STAGE
ステージに登場するや橋本学(vo)はすぐにフロアへと降りて、観客に体を預けるようにして『君にしか』を歌い出す。つねにゼロ距離のハルカミライのライブは、フェスでも変わらない。「去年に引き続き今年も呼んでもらえて嬉しい」と昨年のステージや打上げでのことも鮮明に覚えていると話すと、「それだけ去年はよかった。今年はそれを更新するってことだよね。山人、今年も騒ごうか」と『ファイト!!』や『春のテーマ』など猛烈にエネルギッシュなアンサンブルとともに聴かせていく。アカペラで歌い出した歌が、いつしか観客にリアルに語りかけるようなMCになり、そしていつの間にか全員でコブシを振るいシンガロングする歌になっている。今という瞬間をバンドと観客が渾然一体となって作り出しているようなエネルギーが、ここに渦巻いている。『世界を終わらせて』や『PEAK’D YELLOW』をじっくりと聴かせ、また語りかけるように『アストロビスタ』や『エース』を響かせて、頭から疾風怒涛の勢いで駆け抜けていったハルカミライ。最後は時間が余ったということで、橋本が弾き語りで『これさえあればいい』を披露する温かでスペシャルな時間となった。
SHANK
15:20〜 榛名STAGE
SHANKは、今年1月からサポートを務めてきた早川尚希が4月に正式加入。彼らも今年結成20周年という大きな節目を迎えたが、新体制SHANKのサウンドはまたしてもパワーアップしており、ちょっと驚くほどのレベルだった。早川のドラムは一打一打が重い。それによって、バンド自体も重心が低くなり、骨太かつ重厚なサウンドへと進化を遂げていた。ゆえに、これまで聴いてきた楽曲がまた新鮮な形で響く。『Hope』などは重厚なドラムが活きていて、腹にズシッと迫る説得力を感じさせる。やはり3ピース・バンドは、メンバーがひとり替わるだけで激変するのだ。
ライブ後半の『Set the fire』冒頭でG-FREAK FACTORYの茂木(vo)がステージにフラッと姿を見せ、同曲が始まった瞬間に肩車→サーフする観客の数に圧倒されてしまうほど。
「G-FREAK FACTORYいつもありがとうございます! ずっと昔から愛してます!」と庵原将平(vo/b)は感謝の言葉を述べ、ローカル・バンドの先輩に対して、最大限のリスペクトを込めた演奏に心が震えた。
NakamuraEmi
15:30〜 妙義STAGE
「妙義STAGE、帰ってきました!」と笑顔のNakamuraEmiは、2019年の妙義STAGEにも出演していた。『山人音楽祭』自体にはその後も出演していたものの、思い入れのあるステージに5年ぶりの帰還ということで、喜びもひとしお。1曲目の『Don’t』では〈山人音楽祭は最高だろう〉と歌詞を替え、妙義STAGE復活を観客と一緒に喜んだ。小さな体の奥底から出てくる魂の歌が、風とともに野外を吹き抜ける。Nakamuraにとって『山人音楽祭』はデビュー以降ずっと自分を呼び続けてくれているフェスであり、その感謝から、「(観客に)“音楽とか山人ってやっぱり最高だな”と思ってもらえるように、お手伝いができたら」という想いがあるという。『YAMABIKO』でNakamuraが観客にマイクを向けると、オーオーオーオーと大きな歌声が。レぺゼンを大事にするNakamuraと『山人音楽祭』のオーディエンスの精神性ががっちり噛み合った瞬間だった。
ROTTENGRAFFTY
15:50〜 赤城STAGE
地響きするようなヘヴィなバンド・アンサンブルとツインボーカルによる波状攻撃で、頭からフルスロットルで飛ばしていったROTTENGRAFFTY。「群馬のローカルヤンキー、群馬のビジュアル系G-FREAK FACTORY、は?! それは俺のことだろ。京都のヤンキーの底力見せてやるわ」という挑発的なNOBUYA(vo)の言葉から『THIS WORLD』で観客を圧倒。N∀OKI(vo)は2000年初頭の出会いから年月を重ね茂木と兄弟と呼ぶ間柄になったと両バンドの熱い関係値を語り、人生の紆余曲折をも丸ごと愛するエモーショナルな『アイオイ』を山人へと贈る。25周年を迎え、年頭から全国を回っているそのツアータイトルにもなっている未発表曲『Blown in the Reborn』も披露し、ラストは「わかってるやろ?」という言葉とともに観客の大合唱で『金色グラフティー』をスタートさせた。全員こっちに飛んでこいと興奮に沸き立つフロアを受け止め、観客の熱量もガソリンにそのサウンドは爆発的に加速。「俺たちがライブハウス最強バンド、京都からやってきたROTTENGRAFFTYだ!」と山人に轟音を刻みつけていった。
SHADOWS
16:30〜 榛名STAGE
ライブ中盤、「またここ山人(音楽祭)に戻ってこれて、幸せです。そして何よりも競輪場でライブできるなんて、最高の幸せです。おそらく800万ぐらい負けているから(笑)、800万ぐらいのライブをする!」(Hiro/vo)「俺らの勝負はこれからだ!」(Kazuki/g&vo)
そんなクダけたやり取りはMCだけ。ライブ自体は疾風怒濤のハードコアからオルタナ〜ロック経由の楽曲を織り交ぜ、フロアを縦に横に揺らしまくった。ショウは9月20日に発売されたばかりのニュー・アルバム『DIG』収録曲『CLIMB』でスタート。
そして、ライブでは初披露の『WALK AWAY』、バンドの音楽的な懐の深さを見せる『Into The Line』の2曲の流れも聴き応え十分だ。フロアを根底から焚きつける『Drifting』を経て、ライブ・アンセム『All I Want』で榛名STAGEは地獄絵図となり、鮮やかなフィニッシュを決めてくれた。とにかく、今のSHADOWSはバンドとして脂が乗りまくっている。このキレッキレの爆音を是非ともライブハウス で体感してほしい。
ザ・ボヤキングス
16:30〜 妙義STAGE
青空の下、風が吹くたびにカラフルなフラッグがなびいている。秋の気配を感じさせる気候の中、妙義STAGEにザ・ボヤキングスがやってきた。群馬が誇るロックバンドROGUEのメンバー、香川誠(vo/g)、西山史晃(vo/b)によるユニット。1曲目はROGUEの「セレナーデ」で、ギターカッティングやウォーキングベースのリズムに誘われて、早速手拍子が起きた。ギターとベースのアンサンブルも、しゃがれた歌声も渋い。ふたりいわく、2曲目以降はどんな順番で演奏するか決めていないらしく、「今朝練習してきた」「歌詞カードが飛んだら終わる(笑)」というリアルな言葉とともに、リラックスして音楽を鳴らす姿が印象的だった。ライブ最後の『OVER STEP』では、香川が長尺のギターソロでフィールドを沸かせる。全曲終了後には香川が、袖でライブを観ていたG-FREAK FACTORYの茂木に「この陽気とあのケータリングがあるなら、ノーギャラで来年も出ますよ」と伝える一幕も。それほどこの空間が気に入ったということだろう。
TOSHI-LOW
17:05〜 赤城STAGE
山人音楽祭への出演を楽しみにしていたが、アキレス腱断裂によりあえなく出演キャンセルとなってしまった高木ブー。急遽代役を引き受けたのはTOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU/the LOW-ATUS/ライブゾーン)。雷様でお馴染みのブーさんの代役といえば、同じ種族(?)の鬼がやらねばということだったが、本格的な鬼スタイルでの登場に、観客からどよめきと歓声が湧き起こる。ひとりギターを抱え、「人間の生き死にに関しては慣れているつもりだったが、俺が去年いちばんため息をついた人の歌を歌います」とThe Birthdayの『愛でぬりつぶせ』を歌う。「申し遅れましたTOSHI-LOWと申します、普段はELLEGARDENってバンドやってます」と冗談を言いながらBRAHMAN『今夜』や、BRAHMANでもカバーする『満月の夕』(ソウル・フラワー・ユニオン/HEATWAVE)を披露。観客の合いの手を交え盛り上げ、最後は時間がないから1番だけと歌ったOAU『帰り道』が、2番からはなぜか四星球の『クラーク博士と僕』になったところで、「僕らの歌をかっこよく歌わないでもらっていいですか」と舞台袖からハッピ姿の四星球・北島康雄が登場! ここからはバンド界のドリフ、四星球仕切りで「8時だヨ!全員集合」での転換曲(盆回り)と共に、ブーさんのパネルやハッピ姿のG-FREAK FACTORY、そして四星球のステージでは写真での登場だったが、茂木扮するどんだけマンも召喚。グダグダになりながらも、最後は「5時半だよ、全員集合!」の合図で『いい湯だな』を歌い締めくくった。鬼とどんだけマン、ふたり合わせて今年100歳。この姿が見られるのは山人音楽祭だからこそだ。
DJダイノジ
17:30〜 妙義STAGE
「このステージの打ち上げを担当いたしますのは、我々、DJダイノジでございます!」
妙義STAGEが復活ということは、彼らによる“打ち上げ”も復活。赤城&榛名STAGEでこのあとも続くライブに全力で臨むため、音楽でもっと元気になろうと集まった人たちが、拳を突き上げ、声を出し、モンキーダンスを踊りまくる。頼もしい光景だ。L'Arc〜en〜Ciel『READY STEADY GO』でフィールドが大運動会状態になったかと思えば、ギターリフを活かした繋ぎからのTHE ORAL CIGARETTES『狂乱 Hey Kids!!』でタオル回しの花が咲く。このあと出演する10-FEETの『第ゼロ感』や、前日に出演したDragon Ashの『Fantasista』がプレイされると、大きなシンガロングが起こった。そうこうしているうちに、空はオレンジ色に染まっている。楽しい時間はあっという間。「山人音楽祭、100年、200年と続きますように、心よりお祈り申し上げます!」とラストにはTHE BLUE HEARTS『リンダ リンダ』をみんなで歌った。
SCAFULL KING
17:40〜 榛名STAGE
SEが流れ、メンバーが登場する前から会場の温度は上がっている。みんな待っているのだ、SCAFULL KINGを。筆者もまさかこの場所で彼らのライブを観られるなんて想像もしていなかった。実際、ライブが始まったら、冷静に椅子に座ってライブレポできない・・・と思わせるほど楽しすぎた。
1曲目『SAVE YOU LOVE』から隙のない鉄壁のアンサンブルを突きつけ、既に観客はSCAFULL KINGの手の平で踊らされている状態である。「初出場、楽しんでいきましょう!」とSYUTA-LOW”TGMX”TAGAMI(vo/tp)は声をかけ、矢継ぎ早に曲を連発。メンバー間の阿吽の呼吸から放たれる音色に快楽のツボを押されっぱなし。榛名STAGEに休息の二文字は見当たらない。
中盤の『THE SIMPLE ANGER』では、お祭り感は増幅するばかりだ。後半に入ってもポップな歌メロが光る『WE ARE THE WORLDS』、祝祭感溢れる『IRISH FARM』で締め括り、SCAFULL KINGここにあり!と高らかに宣言する盤石のパフォーマンスを見せてくれた。
10-FEET
18:10〜 赤城STAGE
山人音楽祭もいよいよ終盤になり、高く掲げられるタオルと大歓声とに迎えられたのはG-FREAK FACTORYの盟友、10-FEETの3人。行こうか!の声で『VIBES BY VIBES』ではじまったステージは、ライブでのアンセム曲がずらりと並んだ。観客は休む間もない。それどころかシンガロングは大きく響き、新曲の『gg燦然』や『helm’N bass』といった縦横無尽で骨太なミクスチャーに飛び跳ね、さらに声を枯らすように歌う。中盤ではG-FREAK FACTORY・茂木洋晃をゲストに迎えて『アンテナラスト』を披露。哀愁感が滲んでよりエモーショナルな歌が会場に沁みわたったところから、「まだまだいけるか」とTAKUMA(vo/g)は豪快にギターをかき鳴らして『その向こうへ』で怒涛の後半へと折り返した。パワフルな歌声にシンガロングが重なり、曲の力が何倍にもなって一体感が増したところで、重厚なイントロが会場中を震わせ「山人音楽祭、ぶっ飛べ」という叫びで『第ゼロ感』に突入。演奏も、観客の興奮も天井知らずのアグレッシヴさで盛り上がっていったところで、『ヒトリセカイ』へとなだれ込む。「一緒にどこまでも行こうぜ」と、TAKUMAが叫ぶ。本来はここでセットリストの曲を終えていたがさらにもう1曲『蜃気楼』を演奏し、山人音楽祭でのステージを終えた。
バックドロップシンデレラ
18:50〜 榛名STAGE
『山人音楽祭』2日目の榛名STAGEのトリは、バックドロップシンデレラだ。『バズらせない天才』が始まるや、でんでけあゆみ(vo)はフロアに飛び込んでサーフしながら歌う。フィジカルで観客との距離を詰め、その後は曲で心の距離をガンガン詰めていった。『フェスだして』で一体感を高めた後、豊島”ペリー来航”渉(g/vo)が少し長めのMCを挟む。
「2回目なんだよ、山人(音楽祭)。俺が思うにちゃんと認められたってことだよね。このイベントはひとつ何かを背負っている奴らしか出れない気がして。バックドロップシンデレラは池袋を背負ってると言われた。何かをやろうしていることが認められて嬉しいぜ!」
それから演奏はさらに加速度を上げていく。観客もそれに応え、演奏中に何度もウォール・オブ・デスが勃発する大騒ぎ。『月あかりウンザウンザを踊る』では笑顔で踊りまくる観客ばかりであった。本編を『さらば青春のパンク』で締め、アンコールでは『一週間』を最後にプレイ。曲のテンポが速くなるにつれ、サークル・モッシュする観客の速度も上がり、音楽を通してハートで通じ合う温かな空間を創出。榛名STAGEの大トリに相応しいライブを貫徹した。
G-FREAK FACTORY
19:20〜 赤城STAGE
山人音楽祭の2日間を締めくくるのはもちろんこのバンド、G-FREAK FACTORY。「さあ、グリーンドーム、仕上げにきたぜ」「力を貸してくれ」と茂木は声を上げる。『Too oLD To KNoW』『REAL SIGN』と冒頭の2曲から重厚なバンド・アンサンブルと、ボリュームを上げ続ける観客の歌声で、クライマックスを更新。さらに最新作『HAZE』から『HARVEST』をじっくりと紡ぎ上げた。茂木はMCで、コロナ禍以前、2019年からの山人音楽祭からの5年を振り返る。その道は一筋縄でなかったが、この地でひとつひとつ探りながら、ここまできたという。若くかっこいいバンドも出てきたが、まだまだゆっくりする時間はないと語り、「群馬のライブハウスに来い、そこからはじめよう」という。山人音楽祭はそのひとつのきっかけだろう。
『ダディ・ダーリン』ではTOSHI-LOWをゲストに、会場中にスマホのライトが灯るなかで、茂木とTOSHI-LOWで真正面から語りかけあい、スリリングに言葉を編み上げた。ラスト『Fire』まで、フロアに向かって何度も、「声をくれよ」「栃木まで聞かせるぞ」と大合唱を起こしていったG-FREAK FACTORY。ひとつのバンドがフェスを作り上げ、成功させることは簡単なことじゃない。その並大抵じゃないことを彼らが全力でやり続け、そこにたくさんのバンドや観客が集う。その光景はますます美しいものになっていると、このステージでも実感する。
アンコール『日はまだ高く』では、盟友たちNAIKA MC、N∀OKI(ROTTENGRAFFTY)、TAKUMA(10-FEET)がマイクリレーをつなぎ、さらにこの日、ケガのために残念ながら出演できなかった高木ブーのために……というかもはや風物詩にもなってきているように思うが、出演者みんなで鬼の格好をして『いい湯だな』を披露。会場いっぱいの最高の笑顔で、山人音楽祭の2日間を終了した。
<公演情報>
『山人音楽祭2024』
2024年9月22日(土) 群馬・日本トーターグリーンドーム前橋
【セットリスト】
<赤城>
■TETORA
01.4⽉
02.7⽉
03.バカ
04.6⽉
05.嘘ばっかり
06.⾔葉のレントゲン
07.素直
08.2⽉
09.Loser for the future
■四星球
01.ふざけてナイト
02.運動会やりたい
03.クラーク博⼠と僕
04.ちょんまげマン
05.Mr.Cosmo
06.薬草
07.コミックバンド
■LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS PLUS
01.LITTLE GIANT
02.SNOWMAN
03.Hangover Weekend
04.SO EASY
05.MAKIN' MAGIC
06.OUT IN BLOOM
07.Delusions of Grandeur
08.BIG LITTLE LIES
09.Starting Over
10.WHAT’S BORDERLESS
■ハルカミライ
01.君にしか
02.カントリーロード
03.ファイト!!
04.俺達が呼んでいる
05.フルアイビール
06.春のテーマ
07.世界を終わらせて
08.PEAK’D YELLOW
09.アストロビスタ
10.Tough to be a Hugh
11.エース
12.To Bring BACK MEMORIES
13.これさえあればいい
■ROTTENGRAFFTY
01.秋桜
02.PLAYBACK
03.ハレルヤ
04.THIS WORLD
05.アイオイ
06.Blown in the Reborn
07.D.A.N.C.E.
08.⾦⾊グラフティー
■TOSHI-LOW
01.愛でぬりつぶせ
02.今夜
03.満月の夕
04.帰り道~クラーク博士と僕
05.いい湯だな
■10-FEET
01.VIBES BY VIBES
02.ハローフィクサー
03.gg燦然
04.helm'N bass
05.アンテナラストfeat. 茂⽊ 洋晃 from G-FREAK FACTORY
06.その向こうへ
07.第ゼロ感
08.ヒトリセカイ
09.蜃気楼
■G-FREAK FACTORY
01.Too oLD To KNoW
02.REAL SIGN
03.HARVEST
04.ダディ・ダーリン feat. TOSHI-LOW
05.Unscramble
06.らしくあれと
07.Fire
EN1.⽇はまだ⾼く
EN2.いい湯だな
<榛名>
■THE FOREVER YOUNG
01.今君を迎えにゆくんだ
02.明⽇はいらねぇ
03.WORLD END
04.すべての若者たちへ
05.素晴らしき世界
06.GO STRAIGHT
07.YOUTH
■KUZIRA
01.In The Deep
02.Blue
03.Snatch Away
04.Wasted Time
05.Clown
06.Muggy
07.A Sign of Autumn
08.Pacific
09.Backward
10.Spin
■HUSKING BEE
01.8.6
02.Anchor
03.Sun Myself
04.Faraway Flow
05.New Horizon
06.新利の⾵
07.Walk
■SHANK
01.Smash The Babylon
02.My Special Reason
03.Life is…
04.620
05.Hope
06.Extreme
07.Two sweet coffees a day
08.Set the fire
09.Steady
10.Movie
■SHADOWS
01.CLIMB
02.Senses
03.WALK AWAY
04.Into The Line
05.My Direction
06.So What
07.Drifting
08.All I Want
■SCAFULL KING
01.SAVE YOU LOVE
02.Brighten up
03.Whistle
04.Needless matters
05.THE SIMPLE ANGER
06.saxジングル
07.WE ARE THE WORLDS
08.NO TIME
09.YOU & I ,WALK AND SMILE
10.IRISH FARM
■バックドロップシンデレラ
01バズらせない天才
02.2020年はロックを聴かない
03.フェスだして
04.本気でウンザウンザを踊る
05.台湾フォーチュン
06.⽉あかりウンザウンザを踊る
07.さらば⻘春のパンク
EN.一週間
<妙義>
■上州弾語組合
01.メガ
02.バカにつける薬
03.それぞれ
04.ぐるぐる
05.野営
06.オブラディオブラダ
■ライブゾーン(TOSHI-LOW&茂木洋晃)
01.ダディ・ダーリン
02.Pressure Drop
03.ナオミの夢
04.朝焼けの歌
05.スローバラード
■NakamuraEmi
01.Don't
02.⾬のように泣いてやれ
03.スケボーマン
04.YAMABIKO
05.⽕をつけろ
06.かかってこいよ
■ザ・ボヤキングス
01.セレナーデ
02.漂流者
03.I.♡N.Y.
04.LOSE ONESELF
05.危険な男
06.OVER STEP
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山人音楽祭2024 公式サイト
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