ミュージカル『DEATH TAKES A HOLIDAY』ゲネプロ・囲み取材　レポート

9月27日、ミュージカル『DEATH TAKES A HOLIDAY』の28日初日開幕に先駆けてゲネプロ取材会が行われた。

ゲネプロの様子をお伝えしよう。まず第一次世界大戦の映像から始まり、一転してイタリア北部の山道を豪華な車で走るランベルティ公爵一家が登場。
最初のナンバー「人生の途中では」でガッチリ心が掴まれた。音符が躍動する、ダイナミックで華やかな音楽と重唱は、モーリー・イェストン作曲ならでは！　イェストン作曲のミュージカル『タイタニック』の冒頭、あの果てしない高揚感を思い出した。

音楽に乗った車の疾走感や、カーブでは車が分解してまた戻る……と演出も面白い。これから何が始まるんだろうとワクワクしたところで、突然車はスピンし、ヒロインのグラツィアは投げ出される。

一家はこの大事故に動転するが、なんとグラツィアは無傷。何かが起こり、何かが変わったが、それがわかるのは屋敷に戻ってから。深夜、死神がランベルティ公爵のところにやってきて、二日間の休暇をこの屋敷で過ごすと宣言。侯爵と偶然話を聞いた召使いのフィデレは震え上がる。翌日、死神はロシア貴族ニコライ・サーキの姿を借りてやって来た。グラツィアは車の事故を起こしたコラードとの婚約を破棄。いつしかサーキとの恋に落ちていく……。

コメディとファンタジー、ロマンスが入り混じり、登場人物それぞれのキャラクターがユニークで、それぞれ人生模様が見えるのが素晴らしい。

主演の小瀧は、死神／サーキという謎めいた存在を説得力たっぷりに演じ切り、物語をしっかり引っ張っている。ダンスやタップ、そして力強い歌唱が見事。コメディとシリアスを行き来しながら、生きるとは何かを死神が探り、生と愛の喜びを感じていく様、同時に自らを見つめ直す様には心動かされた。

グラツィアを演じた山下は、美しいソプラノを駆使し、好奇心旺盛で溌剌としたヒロイン像で魅了。小瀧とのデュエットが耳に残った。

音楽がイェストン節たっぷりで素敵な上、セットや衣裳の豪華さ、派手なショーシーンと、ミュージカルの醍醐味をたっぷりと味わえるのは、生田大和演出ゆえか。同時に、生とは？死とは？と考えさせられる深いテーマが詰まっているのがこの作品の際立つところ。帰り道、死神が自然の摂理のみで仕事するような、たくさん働かずに済む世界になってほしいと、心底思った。

囲み会見レポート

――ゲネが終わっての感想と抱負をお聞かせください。

小瀧　過去一でいっぱいいっぱいです。それくらいファンタジーで魅力がたくさん詰め込まれているミュージカル。昨日と今日は歌詞が飛んでしまいました。歌詞が魅力的だけど、繰り返しが多くて「ALIVE!」とか難しいんですよ。明日からはバッチリ行きたい。最後まで走り切るのはものすごく大変な印象ですが、必ず大きな達成感を得られると確信しているので最後までこのカンパニーで走り抜きたいと強く思っています。

山下　私自身、ミュージカルが10年ぶり。正直、小瀧さんを支える余裕がない状況です。最初のうちはミュージカルってこうしなきゃいけないんだよねと苦戦していましたけど、結局映像と同じくお芝居や人間の心のやり取りが大事。今は自分らしく居ようという感じです。小瀧さんが仰る通り難しい楽曲ですが、本当に美しくて物語にぴったり。このチームと一緒に、音楽も含めて楽しく駆け抜けられたらいいなと思います。

美園　今日は客席から皆様と一緒に拝見しました。私は宝塚歌劇団を退団してから3年ぶりの舞台でお稽古が始まる前からすごく緊張して、未だにその緊張が抜けません。女性だけの集団でしたので、生身の男性の方がおられること、また女性も様々なバックボーンの方々と一緒に演技ができたことは大きな糧になりました。そして山下リオさんと日々話し合いながら役を深めていくという、ダブルキャストの経験もありがたいです。漠然とした不安がありつつ、でも小瀧さんがどんと構えて受け止めてくださるので、安心感を感じています。楽曲も大変難しいので、技術的なところやお客様にどう受け止めてもらいたいかを追求しつつ、1回1回の公演を務めていけたらと思っています。

生田　昨年、宝塚歌劇団月組で上演した作品でして、本質の部分では大きな違いはないと思います。この物語が持つエンターテイメント性、ファンタジー性、ラブコメディ的な要素、そして最終的に人生の素晴らしさにたどり着くメッセージ。今回、小瀧さんを主演に迎え、役者それぞれが持つ人間性を深めていきたいと稽古に取り組んでまいりました。演出面では、サーキがこのお屋敷の各部屋で様々な人生のそれぞれの要素を学ぶところを重点的に作りました。例えば、音楽から始まってパリの幻を見るとか、そういう広がりを一つ一つ丁寧に作っていきました。

小瀧さんは以前、『ザ・ビューティフル・ゲーム』で拝見しまして、体格の良さと大きさを持ちながら演技がすごい繊細な人という印象でした。同時に、声と役作りの深さ、客観性を持ち、真ん中に立つ人向きの資質を備えている方だと稽古中に改めて感じました。彼が持つ客観的に作品全体を考える力に僕も助けていただき、たくさん話し合いながら作ってきました。小瀧さんはトライすることに対して大きな変化を恐れない人。芝居に対する勇気がとても魅力です。

――小瀧さん、こんなにちゃんとしたタップは初めてでは？

小瀧　はい。シューズ履いたのはほぼ初めて近く、7月上旬からのスタート。タップは宝塚版の映像を拝見しまして。見ているとできそうなのに、稽古初日に絶望（笑）。心が折れそうでしたが、先生に助けてもらいながら頑張りました。僕のソロのタップは最初もっと簡単だったんですよ。生田さんが、「もっと難しくできないかな？」ってウキウキした顔で言ってこうなりました。

生田　想像以上にできるようになったので、もっと行ける！と（笑）。実際に良いシーンになりましたよ。

最後は小瀧が締めくくった。

僕自身、いろんなことに挑戦しています。個性的な魅力あふれるキャラクターがたくさん出てきますし、聴いて、目で観て楽しめる作品。セットも衣裳も素晴らしく豪華。細部まで見て楽しんでいただきたいです。

取材・文：三浦真紀
撮影：川野結李歌

＜東京公演＞
ミュージカル『DEATH TAKES A HOLIDAY』

公演期間：2024年9月28日(土)～10月20日(日)
会場：東急シアターオーブ

チケット情報：
https://w.pia.jp/t/deathtakesaholiday/