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今話題の劇団「コンプソンズ」の劇団員が語る!旗揚げからの歩みと、新作公演『ビッグ虚無』の魅力

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コンプソンズ (撮影:源賀津己)

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第68回岸田國士戯曲賞の最終候補作品として、#11『愛について語るときは静かにしてくれ』(2023)がノミネートされ、一躍注目の的となった劇団「コンプソンズ」。金子鈴幸、星野花菜里を中心として明治大学の実験劇場を母体に旗揚げした彼らは、演劇的イリュージョンとナンセンスなギャグを交えつつ、実在の出来事を題材に鋭い視点で「時代」を描く。劇団員は現在、主催のふたりのほか、細井じゅん、大宮二郎、宝保里実、鈴木啓佑、金田陸の計7名。それぞれが多彩な活躍を見せている。

今回は、2016年の劇団旗揚げから今に至るまでの軌跡と、10月16日から公開となる新作公演『ビッグ虚無』の見どころを伺った。

取材に応じてくれたのは、(左から)宝保里実、細井じゅん、金子鈴幸、星野花菜里、大宮二郎、鈴木啓佑。

学生時代の仲間とともに歩んできた旗揚げからの道のり

――はじめに、劇団旗揚げの経緯を教えてください。

金子鈴幸(以下、金子) 明治大学の演劇サークル・実験劇場の卒業生である僕、星野、細井、大宮、宝保を中心に活動を始めました。とはいっても、当初は「劇団として有名になってやるんだ!」といった気概は全くなく……(笑)。ともに作品に向き合い、公演の回数を重ねることで、次第に劇団らしくなっていったように思います。

星野花菜里(以下、星野) 当時は社会人や学生のメンバーもいたことから、劇団への加入時期はさまざまでした。

金子 うちは「フリーターしか劇団員になれない」という鉄の掟があるので……。

鈴木啓佑(以下、鈴木) それこそ僕と金田陸は、金子くんに誘われて#1『アイコ、セブンティーン』(2016)から役者として参加していますが、当時は会社員だったので、#4『平成三十年のシェイクスピア』(2018)から正式に加入しました。

大宮二郎(以下、大宮) 僕はずっと連絡用のグループチャットにはいたんですが、留年していたので、加入までだいぶ時間がかかってしまいました(笑)。

全員 (笑)。

演劇界を大きく揺るがしたコロナ禍を振り返って

――続いて、コロナ禍におけるみなさんの活動について教えてください。

宝保里実(以下、宝保) 2020年は少なくとも月に1本は舞台に立つ予定だったのですが、新型コロナウイルス感染症が蔓延し、一気に5本くらい公演が中止になってしまいました。当時は、かなり落ち込みましたね。

金子 僕もとにかく時間を持て余していて、もどかしかったです。コンプソンズとしては、計2本の公演が中止になってしまいました。

――#9『イン・ザ・ナイトプール』(2022)では、金子さんに代わって細井さん、宝保さん、鈴木さん、大宮さんがそれぞれ短編作品の作・演出を務めていましたね。上演してみて、いかがでしたか?

金子 2022年度の佐藤佐吉演劇祭で、一度中止になった#7『何を見ても何かを思い出すと思う』(2021)のリバイバル上演をやらないかとお声がけをいただきました。ですが、すでに前年に自分たちで上演してしまっていて……。

細井じゅん(以下、細井) 金子さんに急遽、新作を執筆してもらうのも厳しいということで、僕たちが作・演出を担当することになりました。「この苦境を何とか乗り切るしかない!」と、一人ひとりが本当に必死でした。印象的だったのは、各作品に凝らされていた趣向が本当にさまざまだったということです。こんなことを考えていたんだと発見だらけで、結成6年目にして、お互いを知るよいきっかけになりました。

宝保 普段は金子くんの作家性が劇団を引っ張ってくれているのだけれど、それぞれ意外とやりたいことがあったんだなぁ、と驚きました。各々、そういったエッセンスをさりげなく普段の公演にも落とし込んでいたんですよね。

金子 なるほど。そうだったんですね。

鈴木 少し話が変わるのですが、僕はこの公演を通じて、「もっと自分が劇団に対して貢献できることを探そう」と思いました。具体的には、衣装としてのスタッフワークを強化することです。

大宮 僕は……、「解散」を匂わせる作品を書いたばかりに、お客さまに本気で心配されてしまって、いたたまれなかったです。

全員 (笑)。

星野 金子くんも、なぜか#7『何を見ても何かを思い出すと思う』の終演後に、そんな発言をしていたよね。次回公演の案内をしておきながら。

観客をどよめかせた、「解散」発言の真意とは!?

――実際に、「解散」を検討する瞬間もあったのでしょうか?

星野 解散しようとは思わなかったけれど、「作品をつくり続けないと消えるな」という焦りはありましたね。

金子 僕個人としては、#6『ノーカントリーフォーヤングメン』(2019)あたりから作品づくりに行き詰まっていました。旗揚げからずっと脚本を書いてきたので、「一体、次は何を書けばいいんだ」と……。で、どう舵を切るか迷っていたところでコロナ禍が始まって。むしろ、「悩んでいる場合か!」と奮い立たせられましたね。「解散」発言は、そうした苦境を打破したい思いから、つい口を衝いて出てしまったのかもしれません……(笑)。

宝保 えっと、私実は、「劇団員やめようかな」なんて考えていたときもあったんです。

金子 そうなの!?知らなかった。

宝保 #8『WATCH THE WATCHMEN(we put on masks)』(2020)あたりで、「自分は、果たしてちゃんと作品にコミットできているのかな?」と考えたら、不甲斐なくなってしまって。

細井 そういう不甲斐なさは僕にもありました。ひとり思い悩む金子さんの姿を見て、「思い付いたことは、包み隠さずに発信してみよう」と考えるようになりました。

大宮 僕たちが出したアイデアを拾うかどうかは金子に委ねるとして、「劇団員としてどう尽力できるか?」は今後の大きな課題の一つですよね。

苦境を乗り越え、新たなステージへ

――#9で気持ちを新たにし、迎えた#10『われらの狂気を生き延びる道を教えてください』(2022)と#11『愛について語るときは静かにしてくれ』(2023)。この2公演は、やはりみなさんにとって、ひと味違うものになったのでしょうか?

金子 そうですね。特に#10『われらの狂気を生き延びる道を教えてください』は、かなり思い出深い作品です。#9をみんなが上演してくれたおかげで、僕は本作の執筆に一年間くらい猶予をもらいました。その間に試行錯誤したアイデアをギュッと凝縮したのがこの作品です。また、コンプソンズとしては初めて、株式会社レプロエンタテインメントの協力のもと、浅草九劇にて半商業的に公演を行いました。

大宮 金子が#10を苦しみながらも果敢に書いていたのは知っていたので、ワクワクしながら読んだのですが、感想は「味、濃いなぁ!」でしたね(笑)。

金子 コンプソンズが一歩前進するであろう大事な公演だったので、あえて放送コードに引っかかるような過激なネタや、当時はあまり言及されていなかった芸能界の性加害問題なども取り上げて、今までやってきたことの集大成にしようと考えました。

星野 大きめの劇場で約2週間上演していたこともあり、全員が肩に力が入った状態で臨んだ公演でしたよね。そうした意味では、次作の#11『愛について語るときは静かにしてくれ』の方が、のびのびと、自分たちらしい公演だったように思います。

細井 僕は、#11の脚本を読みながら「これはすごいものができるぞ」と確信していました。それで、いの一番に金子さんに感想を伝えたんです。

金子 岸田國士戯曲賞という名誉ある賞の最終候補作品にノミネートしていただき、大変光栄でした。でも僕としては、「こっちを評価していただけるのかぁ」と少し意外だったんです(笑)。

星野 下北沢のOFF・OFFシアターでの上演だったので、お客さまにも熱量が伝わりやすかったのではないかと思います。

金子 実はあのくらい、肩の力を抜いて作品をつくった方が、よいものができるのかもしれませんね。

初めて観る方々にも「コンプソンズらしさ」を味わってほしい

――続く#12『岸辺のベストアルバム‼︎』(2024)の上演を経て、ついに10月には新作『ビッグ虚無』が公開となります。読者のみなさんに向けて、見どころを教えてください!

金子 僕はここ何年か、「コンプソンズらしさ」からいかに逃れられるかを意識して脚本を書いてきたのですが、今回は過去作を入念に読み返しながら作品をつくりました。そうした意味では、「コンプソンズらしさ」が存分に味わえる作品になっていると思います。それから、今回は劇団員のほか、コンプソンズゆかりの客演のみなさんが出演します。彼・彼女らの演技にも、ぜひご注目ください!

星野 岸田國士戯曲賞へのノミネートをきっかけにコンプソンズを知ってくれた方々にも、楽しんでもらえるような公演になればいいなと思っています。ご来場、お待ちしています!

――コンプソンズのみなさん、ありがとうございました!

取材・文:谷口由佳 撮影:源賀津己

<公演情報>
コンプソンズ#13『ビッグ虚無』

2024年10月16日(水)~20日(日) 東京・駅前劇場

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2453827

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