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甦夢THEATRE「黄金仮面―masque doré―」小越勇輝・岡幸二郎 インタビュー

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インタビュー

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左から)小越勇輝、岡幸二郎 (撮影:源賀津己)

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日本の本格推理小説・探偵小説の礎を築いた作家、江戸川乱歩の代表作のひとつ『黄金仮面』。名探偵・明智小五郎と黄金仮面が活躍する、これまで幾度となく映像化・舞台化されてきた作品に今回、“甦夢THEATRE”として新たな光があてられる。明智役に挑む小越勇輝と、ダイナミックかつ華麗な対決を展開する黄金仮面役の岡幸二郎、ふたりはこの作品にどのように臨もうとしているのだろうか。

レトロでモダンな乱歩世界が、2024年に甦る

――江戸川乱歩の作品について、おふたりはどういうイメージを持っていましたか?

小越 僕はこれまであまり触れたことがなくて、今回ほぼ初めてです。時代背景は今とは違いますけど、今この時代にあってもおかしくないというか、ありえないだろうとも思わないし、意外にできちゃうんじゃないかなっていう身近さや、ワクワク感を感じました。

小越勇輝

――なるほど。岡さんはいかがですか?

 私は美輪明宏さんの舞台『黒蜥蜴』の大ファンなんです。三島由紀夫とは違う、耽美なせりふで、しかもひとつのせりふが二重構造、三重構造になっていたりする。それとこの『黄金仮面』もそうですけど、たぶん昭和5(1930)年くらいが舞台で、まだ太平洋戦争に突入する前のちょっと華やかな日本の描かれ方が非常に素敵なんですよね。乱歩って、小学校の頃は図書室に行くと『黄金仮面』があって、表紙に描かれた半笑いした仮面の絵がすごく不気味だなって思っていました。小越くんたちの頃の図書室には、もう乱歩のコーナーはなかったかも?

小越 そうですね、なかったかもしれません。

――その辺はどうしても、ジェネレーションギャップが生じますね。では、今回の出演が決まった時にどんなことを感じましたか?

 「江戸川乱歩だ……!」と、じわじわと嬉しさを感じました。

岡幸二郎

――しかも役どころが黄金仮面ですしね。小越さんは、名探偵・明智小五郎という役どころへの挑戦ですね。

小越 まず何よりも僕を選んでいただいことがすごくありがたいし、楽しみだなという気持ちが大きかったです。今までいろいろな方が明智小五郎を演じた作品が作られていますけど、名探偵であるという部分をはじめ、自分が演じるとなるとどう創っていけるのかを考えていて。周りの方たちとの空気感でもいろいろ変わってきそうだし、模索の第一歩を始めたところです。

――今回のキャスティングは、小越さんの明智役への起用をはじめ、かなり大胆なように感じます。

 私の年代で明智小五郎って言ったら、天地茂さんですよ……めちゃくちゃ熟した男の人で。だから、今回の配役は面白いと思いました。

――小林少年も、子役ではなく成人男性の佐藤永典さんが演じますしね。もっとも、佐藤さんは以前にも小林少年を演じられていますけど。ほかにも音楽劇の要素や、「甦夢THEATRE」と銘打たれているなど、独特なアレンジがされています。おふたりはどういうところに面白さを感じましたか?

小越 原作はもちろん面白いですし、「甦夢THEATRE」として、この時代に甦るというか、さらにパワーアップした舞台演劇にする面白さがあります。歌も入るしそれぞれの役者さんがいろいろな役を演じますし、台本の想像力以上のものが膨れ上がる、すごく華やかな作品になるんじゃないでしょうか。

――“華やか”というキーワードが出ましたが、岡さんはどう思われますか?

 作品の舞台となっている昭和初期が甦ることは、今はちょうど昭和ブームでもありますし、古臭く感じるようなことはまったくないでしょうね。せりふ自体は昔の言葉をちゃんと使っていて、ちょっとスローな感じがあり、そのうえで小越くんも言ってくれたように他のメンバーがいろいろな役を演じていくなかでのスピード感も加味される。その対比が、非常に面白いかもしれません。

山崎彬×小越勇輝×岡幸二郎への期待

――演出の山崎彬さんからは、役づくりなどについておふたりにオーダーはありましたか?

 立ち稽古が始まったばかりで、具体的なことはまだ伺ってないんです。僕は山崎さんの演出を受けるのは初めてですが、見ていると、俳優を動かしながら考えていかれるタイプのようですね。演出家さんって、ご自分の中できっちり画を創って「あそこに行ってください」「そこに立っていてください」と指示を出していくタイプと、いろいろなことを試行錯誤して俳優を動かしながら頭の中を整理していくタイプ、2通りあると思うんです。山崎さんは後者のようなので、これから少しずつ画を創ってキャラクター形成をしていってくださるのではないかと。

小越 彬さんとは何回かご一緒していますけど、空間を動かしていく感じがすごく面白い。出演者に対しては自由にやらせてくれるというか、それが面白かったら「そっちもいいね」って幅を与えてくれるんです。稽古でも今はまだいろいろな面でいっぱいいっぱいですけど、自分なりに「こうやったら面白いかな」っていうものを提案しながら、いろいろなことをできたらと思っています。

――初共演のおふたりですが、お互いに俳優としての印象は?

小越 最近だと、僕がすごくお世話になった茅野イサムさんが演出されたミュージカル『夜曲~ノクターン~』に岡さんも出演されていたので、観に行かせていただきました。茅野さんと本番前にお話しして「岡さん、すごいよ」って聞いていたんですけど、実際に観たら本当に存在感がすごかった。でもお会いしてみると、すごく柔らかくて、お優しい空気をまとっていて。

 それは仮の姿です(笑)。

――真の姿ではないと?

小越 (笑)。でもやっぱり、稽古場でも存在感がすごい。鍛えてらっしゃるし、立ち姿も綺麗だし。

 自分としては、最近「2.5次元」と言われている人たちの中にいることが多いので、小越くんたちがメインだからのんびり座ってみんなを見て。

――お父さんポジションで見守ってらっしゃると。

 だんだん、そういう感じに(笑)。若者たちが活躍しているところを見ていますが、やっぱりすごいですよ。小越くんは子役からだから、20年以上やってるわけでしょ。見た目の風貌より百倍しっかりしている。

――主演として、芯がおありだと。では小越さんらしい明智って、どういう感じになりそうですか?

 明智小五郎ってずっと熟した男性のイメージだったなか、小越くんはまったく風貌が違うわけですよ。だけど中身は本当に明智で、そこが面白いし、今回の『黄金仮面』の見どころのひとつだと思います。僕くらいの年齢の人たちが「明智はこんなに若くないじゃないか」と思って観に来ても、観終わった後には立派に成立している面白さを感じてもらえると思うんですよね。

感じて、想像をめぐらせて、それこそが愉しい舞台

――今回の座組については、どのように感じていますか。

 とても面白いですよ。みんな積極的で、それぞれに個性を発揮しているし、自分の出番じゃない時に見ていてもすごく面白い。演出家がみんなに見せ場を創ってあげようとしていますし。

――それは楽しみですね。あえて「この人のこういうところを注目してほしい」ポイントを挙げていただくなら?

小越 難しいですね……あえてと言うなら、佐藤くんはめちゃくちゃ大事なポジションの小林少年で、よくしゃべる。

 すごいしゃべってるよね。

小越 自分のシーンが終わって席に戻ったら、まだ小林少年のセリフが続いていたくらい。佐藤くんの長セリフ僕自身もすごく楽しみにしています。

――小林少年は、メインの語り手ですからね。

 あと高橋良輔さんも3役を演じていて、しかもその3役が同時に出てくるシーンがある。どうなるのか楽しみですね。

――その辺りは、人間が生で演じる演劇ならではの面白い場面になりそうですね。

 出演者が本当にいろいろなことをするので、本番を見てのお楽しみ、というところですね。人の力だけで何かを創り上げることの面白さは、最近の舞台に慣れている方にとっては逆に新しいんじゃないかと思います。

――最近は舞台の映像演出もすごく凝ったものになってきていますよね。

 そういった部分も含めて、ものすごく説明的でわかりやすいものがいいとされているなかで、この舞台は江戸川乱歩だからかもしれませんけど、ていねいに教えないお芝居というか、お客様にしっかり想像してもらうことになると思います。

――“考えるな、感じろ”的な感じですね。

 そう、そういうことって実は必要なんじゃないかなって思います。

――締めくくりとして、公演へのお誘いのメッセージをいただけますか。

 舞台っていうのは、お客様に劇場に来て、観ていただいて、どう感じていただくかが大事です。私たちがお話ししたことで少しでも興味を持たれたら、ぜひ劇場に足を運んでいただきたいです。きっと損はさせない舞台、必ずお土産を何か持って帰っていただける舞台だと思うので、劇場でお待ちしています。

小越 舞台もたくさん、本当にいろいろな作品がありますし、観ていただくだけでも大変なこと。その中でこうして江戸川乱歩作品の『黄金画面』を現代に甦らせて天王洲 銀河劇場のような大きな劇場でできることを、すごくありがたいし幸せだと感じています。『黄金仮面』を知っている方も知らない方も、気になる方はぜひ観に来ていただきたいと思います。演劇ってこういう風に表現できる、こういう面白いものがあるっていう、岡さんもおっしゃった説明しすぎず心で感じて、頭で考えてまた感じて、だからこそどこか記憶に残る演劇の面白さを、来てくださった方にお届けできたらと思います。

乱歩の世界が令和に甦る、甦夢THEATRE「黄金仮面―masque doré―」を堪能できるのは、10月11日(金)~20日(日)、天王洲銀河劇場にて。

取材・文:金井まゆみ
撮影:源賀津己

ヘアメイク:佐々木渚香(小越勇輝)/齊藤沙織(岡幸二郎)
スタイリング:小田優士

<公演情報>
甦夢THEATRE「黄金仮面―masque doré―」

公演期間:2024年10月11日(金)〜10月20日(日)
会場:天王洲 銀河劇場

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/theatre-ougon/

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