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矢崎仁司「風たちの午後」に池田エライザや「21世紀の女の子」監督たちがコメント

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「風たちの午後」

「風たちの午後(デジタルリマスター版)」に著名人が寄せたコメントが到着した。

矢崎仁司が1980年に発表した本作は、「女の子が女の子を好きになる」をテーマに、アパートで同居する美津と夏子の関係を描いた作品。夏子は美津を恋愛対象として愛するが、彼女には恋人・英男がおり、独占欲に駆られた夏子はある計画を立て英男に接近する。綾せつこ、伊藤奈穂美らが出演し、矢崎と長崎俊一が共同で脚本を執筆した。

「スティルライフオブメモリーズ」で矢崎とタッグを組んだ安藤政信は「愛が動機ならやっちゃいけない事は一つもない その感覚の矢崎仁司を 愛している」と、池田エライザは「湧き上がる言葉たちが、唇の裏まで来てはそっと消えていく。今を生きる私が、彼女たちに言えることなど何一つないのだ」とつづっている。

また、現在公開中のオムニバス映画「21世紀の女の子」に参加した監督たちからのコメントも。山中瑶子は「もしも日芸6年生の矢崎仁司が同級生にいて、こんなの先に撮られてしまったら、わたし映画作れないかも。40年前で良かった……」と、金子由里奈は「きっと、いつになく張り詰めた映画館で、この時間を多くの人と共有するのが楽しみです」と述べた。

「風たちの午後(デジタルリマスター版)」は東京・K's cinemaで公開中。3月9日からUPLINK吉祥寺でも上映され、以降は全国で順次公開される。

安藤政信 コメント

人が人を おもう事
人が人に 惹かれ欲しがる感情
純粋で人間の自然な事

愛が動機ならやっちゃいけない事は一つもない
その感覚の矢崎仁司を
愛している

池田エライザ コメント

湧き上がる言葉たちが、唇の裏まで来てはそっと消えていく。
今を生きる私が、彼女たちに言えることなど何一つないのだ。
純度の高い“美”その危うさに、指一本触れることもできぬまま、
私の中の正しさという概念はゆっくりと崩落していく。
人生の中でこの刹那に触れられたという事実に感謝を述べたい。

山戸結希 コメント

映像における文学性の発露を眺めているうちに、
痛みの感覚が身体の中にいつの間にか広がってゆき、
この映画と分かち難い季節をかつて生きていたような、
純真な錯覚に目覚めてゆく。
24歳の矢崎仁司監督に、いちばん望まれるべき未来があることだけを願いながら。

保坂和志 コメント

この映画は筋を説明したらきっと無理だらけだ。
しかし映画を観れば、
その無理が奇跡的に成功していると、きっとみんなが感じる。
この映画はレズビアン映画では全然ない。
そういう表面の筋に囚われずに観ればこの映画は、
監督と主演女優にとって未知の土地と言ってもいい映画に、
ただ勇気と愛だけを信じて踏み込んだ!
その勇気と愛に今回、僕は心を打たれた。
いまの自分があるのは、
あの頃こういう映画を撮った友達が何人もいたおかげだと思った。

ヴィヴィアン佐藤 コメント

硬質さと純粋さを併せ持つ原石。
優しい雷鳴のような聲や乱反射する光と陰翳のあや、
全部を閉じ込めてしまった記憶であり未来。
午後の光が屈折し射し込む鉱石の薄片の大海に、
滑走する船上の自分を見た。

山中瑶子 コメント

もしも日芸6年生の矢崎仁司が同級生にいて、
こんなの先に撮られてしまったら、わたし映画作れないかも。40年前で良かった……。
すべてに終わりをもたらす死と同じように、
「映画も滅びゆくもの」と矢崎さんは言うけれど、
それはまだ少し先のことで、良いですよね。

金子由里奈 コメント

正直、風景に溶けてしまいそうな役者達の小声に最初は戸惑いました。
どうしても言葉を探してしまう事をこの映画は疑うのです。
私はただ、息を潜めて観ていました。
ハンカチの揺れを、ライターの目的地を、
1つの傘に小さく収まる2人の愛を。
きっと、いつになく張り詰めた映画館で、
この時間を多くの人と共有するのが楽しみです。

新井卓 コメント

恋人たちが、きれぎれの電話線を手繰って、愛を交わした時代。
吹きわたるフィルム粒子の風に耳を澄ませながら、
かつてそこにあり、そして今も変わらぬ、わたしたちの孤独を想う。

小谷実由 コメント

自分の中で根底的に考えていたことと、矢崎仁司監督の思いが、
この105分の中で交じり合ったとき、
うっすらと答えの輪郭が見えたような気がした。
その答えを言葉にするのは難しい。
人間という生き物の愛し方は何通りあるのだろう。

島田大介 コメント

人を愛するというあまりにも純粋であり
今にも壊れてしまいそうな感情を誰しもが一度は抱いたことがあると思う。
それは性の話だけではなく人間の持つ愛するという普遍的な心を
矢崎監督は繊細に時に狂気を持って描きたかったのではないだろうか。
幻のデビュー作にして次作、三月のライオンに通ずる矢崎監督の秀逸な描写、
音による演出によってその時代の空気を紛れも無く肌に感じる作品。

荻野洋一 コメント

2018年、オーソン・ウェルズ「風の向こうへ」。
そして2019年、矢崎仁司「風たちの午後」。
風の筆で書かれた2つのまぼろしが、
共に40年の歳月をへて、立て続けにその封印を解かれた。
この時ならぬ連鎖が映画史的事件であることを、
私たちは、いまだ知らない。