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石原さとみ、“連ドラの女王”の座に? 『高嶺の花』好発進の理由は緩急つけた演技と等身大の姿にあり

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リアルサウンド

 女優の中でも本当に数字を持っているトップ女優だけに贈られる称号――“連ドラの女王”。今この肩書に最も近い女優と言えば、石原さとみだろう。7月11日にスタートしたドラマ『高嶺の花』(日本テレビ系)も初回視聴率11.1%と好発進。人気も実績もある女優でさえ初回1桁スタートが珍しくない昨今、石原さとみは貴重な“ハズさない”女優として、その地位を盤石なものとしている。

 近年の石原さとみが主演を務めた連続ドラマの視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を並べてみると、以下の通りだ。

・『アンナチュラル』(TBS系・2018年1月~3月)
初回視聴率:12.7%
最終回視聴率:13.3%
平均視聴率:11.1%

・『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系・2016年10月~12月)
初回視聴率:12.9%
最終回視聴率:12.3%
平均視聴率 12.4%

・『5→9~私に恋したお坊さん~』(フジテレビ系・2015年10月~12月)
初回視聴率:12.6%
最終回視聴率:12.7%
平均視聴率:11.7%

・『ディア・シスター』(フジテレビ系・2014年10月~12月)
初回視聴率:11.8%
最終回視聴率:10.9%
平均視聴率:11.3%

 特筆すべきは、その安定感。初回から確実に2桁を獲得し、最終回・平均視聴率ともに2桁をキープ。大幅な下落がないところに、彼女に対する視聴者の信頼感が表れている。今やドラマは役者で見る時代ではない、と囁かれるなか、石原さとみは「石原さとみが出ているドラマにはハズレがない」という視聴者からの信頼を獲得している数少ない女優のひとりだ。

■常盤貴子、篠原涼子の系譜を継ぐ“ラブコメができる女優”

 これまで“連ドラの女王”と呼ばれてきた女優は数多くいる。代表的なのが、90年代後半、5クール連続で連ドラのヒロインを務めた常盤貴子だ。また、00年代は『anego』(日本テレビ系)、『アンフェア』(関西テレビ・フジテレビ系)、『ハケンの品格』(日本テレビ系)と立て続けにヒットを飛ばした篠原涼子が、そう形容された。石原さとみは、タイプとしてはこの2人の路線に近い。3者の特徴を挙げるとすれば、“ラブコメができる女優”であることだ。

 近年、手堅く数字を狙うなら、医療モノや刑事モノといった1話完結型の職業ドラマが定石。これら鉄板ジャンルで主演を務め、数字をあげた女優はいるが、意外にラブコメで当てられる女優となると限られている。常盤貴子は『理想の結婚』(TBS系)で関西弁のヒロインをキュートに演じ、篠原涼子も『anego』や『ラスト・シンデレラ』(フジテレビ系)など、貴重なラブコメで結果を残した。

 石原さとみの場合も、近年の人気のきっかけとなった『リッチマン、プアウーマン』(フジテレビ系)から始まって、『失恋ショコラティエ』(フジテレビ系)、『5→9~私に恋したお坊さん~』と、月9枠のラブコメで支持層を固めた。現在放送中の『高嶺の花』も、1話を観る限りコメディ要素は強くないが、「美貌の令嬢と冴えない一般男性の恋」は恋愛ドラマとしては王道中の王道。“ラブコメに強い”石原さとみブランドが、初回視聴率につながったと言える。

 また、その演技に注目してみると、3者には共通の傾向が見られる。それは、台詞回しが早口でメリハリが効いていること。表情のバリエーションが豊富で、ちょっとオーバーなリアクションも違和感なくこせなることだ。連ドラはテンポが命。少しでも展開が緩慢になると、たちまち視聴者は退屈を覚える。視聴者を飽きることなく画面に集中させるには、リズミカルで緩急の効いた演技が生命線。『高嶺の花』の第1話でも、終盤、スナック喫茶の場面で、石原は持ち前の滑らかな台詞回しと、くるくる変わる多彩な表情を発揮し、視聴者の心を引き寄せた。

■石原さとみはファッションアイコンであり、等身大の“私たち”

 そして、石原さとみのドラマが“ハズさない”もうひとつの理由に、彼女の演じてきたキャラクターがある。石原さとみは、基本的に“スーパーウーマン”は演じない。『5→9~私に恋したお坊さん~』で演じた桜庭潤子は語学堪能でNY勤務を夢見るデキる女子だが、実家は路面電車が走る下町の団地、家では学生時代のジャージで過ごす庶民派だ。『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』の河野悦子も、華やかな出版社勤務のように見えて、新卒から数えて7回目で悲願の採用。配属先は地味な校閲部と、オシャレに憧れる田舎育ちの女の子だった。法医学を題材にした『アンナチュラル』の三澄ミコトも仕事は有能だが、決して他の医療モノや刑事モノのように劇画的な決め台詞は発したりしない。地に足の着いた演技で新境地を開拓した。

 そのメイクやファッションこそ憧れの対象となるが、石原さとみが演じてきたのは、時に背伸びはするものの、悩んだり迷ったりしながら今を生きる“私たち”に近い女性像。そこに共感を得ているからこそ、石原さとみのドラマは“ハズさない”のだ。

 今回の『高嶺の花』もタイトルだけ見れば“私たち”とかけ離れたキャラクターのようだが、手痛い失恋をして味覚障害に悩む姿は、高嶺の花というよりごく普通の女性。風間直人(峯田和伸)との朝食に涙する場面では、それまでの高慢でがさつな素振りとは一転、繊細な女性像が垣間見えて、一気に愛らしさ満開となった。「なりたい顔」の常連でありながら、どこか隙を感じさせる距離の近さが、石原さとみの魅力。だから男性女性問わず、高嶺の花であるはずの石原さとみに親しみを覚えるのだ。このドラマでも“ハズさない”可愛さで視聴者を魅了してくれることだろう。(文=横川良明)