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『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』監督インタビュー 「“戦争の恐怖”を描く作品にしたかった」

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Netflixシリーズ『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』の配信がスタートした。本作は、サンライズとSAFEHOUSEが共同で制作した全6話のフルCGアニメーションで、エラスマス・ブロスダウが監督を務めた。

シリーズ開始から45年。これまでに数々のガンダム作品が発表され、そのバリエーションと視点は多岐にわたっているが、本作は作品を語る視点、ひとつひとつの表現が見直された斬新な作品になった。ガンダムを再定義するのではなく、ガンダムを描く”視点と表現”を再定義したような本作はいかにして生まれたのか? ブロスダウ監督に話を聞いた。

『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』は、地球連邦政府と、宇宙に入植した人々の一部が独立した“ジオン公国”と戦争を繰り広げている世界が舞台。ジオンの兵イリヤ・ソラリ大尉と彼女が率いるレッド・ウルフ隊は地球の欧州に投入されるが、連邦軍の新型モビルスーツが出現したことで戦況が一変。壮絶な戦いに巻き込まれる。

本作は、様々な国と地域からスタッフが集結した作品で、米国出身のギャビン・ハイナイトが脚本を、山根公利がメカニカルスーパーバイザーを、由良浩明がアニメーションプロデューサーと音響監督を務め、ドイツ出身のブロスダウが監督に就任。オーストラリアの俳優シリア・マッシンガムが主人公イリヤ・ソラリのモーションキャプチャーモデルと声を演じている。

まず、ブロスダウ監督は「この作品は“戦争の恐怖”を描く作品にしたかった」と語る。

「プロジェクトが始まった段階から、私は本作では戦争のリアリティと、戦争の恐怖を描く作品にしたいと考えていました。もちろん、本作はエンターテイメントですから、過剰に暴力的な描写を描くのではなく、リアリティのある表現とガンダムの世界を良いバランスで描きたいとも思っていました。

演出をする上で守りたかったのは、カメラを常に“ジオンの側”に置くことでした。この物語はジオン視点の物語ですから、モビルスーツに乗っているパイロットであれ、地上でいる兵士であれ、描く際にはジオンの側にカメラを置いています。というのも、一瞬でもジオン側と対角線にカメラを置いたり、カメラに向かってジオンの兵士が歩いてくるカットを入れてしまうと、観客が疎外感を感じたり、“この戦いは自分とは関係のないものなんだ”と思ってしまうからです。目指したのは、観客もジオンの兵士と一緒に戦場にいるような気持ちになってもらうことでした」

「“スケール感”を出すことが出発点でした」

監督が目指したのは、『プライベート・ライアン』を観た時のような“没入感”と圧倒的な恐怖なのかもしれない。

「事前にさまざまな戦争映画を観て、観客がジオンの兵士と一緒に戦っていると感じられる視点を探っていきました。中でも『トゥモロー・ワールド』(アルフォンソ・キュアロン監督/2006年)の視点は参考にしました」

天才撮影監督エマニュエル・ルベッキが参加した『トゥモロー・ワールド』では手持ちカメラが主人公と並走し、熾烈な戦場の真ん中を潜り抜ける。圧倒的な緊張感、生々しい表現は本作にも通ずるものがある。本作では巨大なモビルスーツはしっかりと重量のある物体として描かれ、ビームによって攻撃を受けると穴が開くだけでなく、金属が溶け、破壊され、その結果、搭乗員が命を落とす。これまで何度も観てきたはずの『ガンダム』作品の表現のすべてが新しく感じられるのだ。

「“スケール感”を出すことが出発点でした。この作品はリアルな表現で描かれますから、そこを失敗してしまうとすべてが“おもちゃ”のように見えてしまいます。さらにいうと、モビルスーツもビーム・サーベルも現実の世界には存在しないものですよね? ですから過去の『ガンダム』作品を観ながら、バンダイナムコフィルムワークスさんと何度も話し合いをして、新たな表現を試行錯誤していきました。さらにビーム・サーベルであれば熱で金属が溶けるはずですから、その表現のレファレンスも取り寄せて改善していきました。

とは言え、この作品が最も重視したのはリアル感ではなく“戦争の恐ろしさ”です。ですから、すべての表現がドラマを描くために最も適したものになるように調整していきました」

「これまでとは違った『ガンダム』を観ていただけると思います」

ドイツで生まれたブロスダウ監督は、日本人と同じようにガンダムに触れてきたわけではない。しかし、本作ではそれが“新視点”につながっている。

「制作する上では言語の壁はありましたし、『ガンダム』というシリーズに対する基本的な考え方や感じ方の違いはありました。でも私はずっと『ガンダム』を自分の考える表現で描きたいと思っていました。例を挙げるとするなら、モビルスーツの“重さ”であったり、可能な限りファンタジックな描写を取り除いたガンダムの姿でした。それは私が日本人ではないからそう思うのか、私固有の感覚なのかはわかりません。

興味深かったのは、キャラクターの表現でも文化の違いを感じることでした。日本の方はあまり感情を表に出しませんが、西洋からしたら“もっと感情が表に出るはず”と思ってしまいます。その点でもこれまでにない『ガンダム』の人間ドラマになっていると思いますし、メインの言語が英語の『ガンダム』もおそらく初だと思います。その点でもこれまでとは違った『ガンダム』を観ていただけると思います」

本作は精巧な3DCGで描かれ、そのクオリティは極めて高いが、ブロスダウ監督は改めて「この作品で最も大事なのは人間ドラマ」と言い切る。

「この作品はあくまでも人間ドラマ、戦争の中で起こったドラマを描くためにあり、それが偶然というわけではないですがCGで描かれている、ということです」

『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』は “新表現・新視点”で我々の愛する『ガンダム』を描く最注目作になった。本作をきっかけに『ガンダム』の世界はさらに広がり、これまで以上に幅広い層のファンを獲得することになるだろう。

Netflixシリーズ『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』
Netflixにて世界独占配信中
©創通・サンライズ
https://www.netflix.com/title/81276500

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