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益山貴司によるオリジナルホラーミュージカル『キッチュ&ホラー・イン・モータース』が開幕!

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ホラーミュージカル『キッチュ&ホラー・イン・モータース』

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「ロッキー・ホラー・ショー」や「リトルショップ・オブ・ホラーズ」のような、“イカれて、イカしたホラーミュージカル”を日本でも作りたい、という思いから生まれたホラーミュージカル『キッチュ&ホラー・イン・モータース』。映像・演劇の両方において意欲的な活動を続ける益山貴司が作・演出を務め、佐々木崇、村田寛奈、曽世海司、益山寛司、小飯塚貴世江、柳内佑介といった個性豊かなメンバーとともにオリジナルのミュージカルに挑戦する。
2024年10月31日の初日を前に行われたゲネプロの様子をお届けしよう。

「ちょっぴり観客参加型」と説明があるように、客席にはミニライトとミニラッパが置かれている。まずはストーリーテラーを務める曽世が雰囲気たっぷりな佇まいで登場。不気味ながらコミカルに世界観を説明し、観客に配られた白い紙で紙吹雪を作る練習が始まる。それによって劇場内に一体感が漂い、さらに小飯塚貴世江と柳内佑介によるポップでクセの強いテーマ曲によってあっという間に『キッチュ&ホラー・イン・モータース』の世界に引き込まれた。レトロでポップな可愛らしさとアングラ感が両立している衣装・ビジュアルや舞台美術も見応えがあり、このカンパニーが作る物語に夢中になってしまう。

突然の事故で父を亡くし、夢だったバスケットボール選手の道は怪我で絶たれ、結婚を意識した彼女に振られた青年・エミル(佐々木崇)。笑みを絶やさないという由来の名前を持つ彼は人生に絶望して死を考えるが、そこに「自動車整備工場であるマキモトモータースからの使い」を名乗る男が現れる。話によると、亡き父がエミルの好きなサーモンピンクの新車を遺しているという。

……と、文字で見ると不気味なホラーにも思えるが、冒頭からブラックな笑いとコミカルな芝居が散りばめられており、エミルに悪いと思いつつ笑ってしまうシーンが多数。
エミルが工場へ向かう途中、同じく工場を目指す謎の美少女・ミサキ(村田寛奈)に遭遇し、惹かれることで、物語はさらに加速していく。「車になりたい」と高らかに歌うミサキはかなりの変わり者に見えるが、彼女の切実な思いを知ると「そういう考え方もあるか」と納得しそうになる。

さらに、工場にたどり着いたエミルは、行方をくらましたミサキを探すうちに工場長のラチェット牧本(益山寛司)、部下のレンチ(柳内佑介)、ジャッキー(小飯塚貴世江)に出会う。

客席を巻き込むラチェットのナンバーや納車式を経て、エミルは父が遺した“車”を受け取ることに。ここまでの流れで予想はつくのだが、実際に元・人間の車が登場すると笑ってしまう。思った以上に表情豊かな車と思わぬ展開、工員たちに振り回されるエミルが不憫だがユーモラスだ。見た目も性格も個性的すぎるキャラクターたちの中、普通の青年であるエミルが奮闘する姿がコミカルで、自然と応援したくなる。

一方、車になるという夢を叶える前に思いを書いた手紙を綴っていたミサキ。地下室に監禁されたエミルと再会し、自らの生い立ち、幼い頃からの疎外感を語るうちに、寄り添ってくれるエミルに心を開いていく。おかしな自動車整備工場に迷い込んだ青年と車になりたい少女という一風変わった2人による王道のロマンスが微笑ましい。恋心をまっすぐに伝えるエミル、彼の想いを受け止めるミサキの美しいナンバーも印象的。

ポップでコミカルなB級ホラーコメディかと思いきや、人間と車、機械の悲哀が描かれており、思わずほろりとくるシーンも多い。ぶっ飛んだ設定だらけだが、どこか彼らを身近に感じられた。

悪役に見えるキャラクターにも憎めない愛らしさがあり、名前のない登場人物たちも個性豊か。それぞれのキャラクターや場面に合ったイガキアキコによるキャッチーな音楽と、楽曲の魅力を引き立てる演出やダンスの華やかさも大きな魅力と言えるだろう。

意外な伏線も散りばめられており、終盤に向かうにつれて様々な謎が解けていくのが面白い。さらに、観客が参加するシーンが冒頭からラストまであちこちにあるため、登場人物のひとりとして不可思議な出来事を一緒に体験しているような気分に浸ることができる。ゲネプロでも次々に笑い声や拍手が起き、劇場が一体となって盛り上がっていた。

本作は2024年10月31日~11月10日(日)まで、浅草九劇で上演。キャスト陣との距離が近く一緒に盛り上がることができる前方席・普通席に加えて、1ドリンク+1フード付きの「後ろでゆったり食べ飲み席」も。公演によってはアフタートークや劇中歌のライブイベントも実施される。ホラー好きもミュージカル好きも楽しめるだろう本作を、ぜひ劇場で体験してほしい。

取材・文:吉田沙奈

<公演情報>
ホラーミュージカル『キッチュ&ホラー・イン・モータース』

公演期間:10月31日~11月10日(日)
会場:浅草九劇

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/kitschandhorror/

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