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『3年A組』菅田将暉の姿にみる教師像の変化 熱血先生の声は現代にも届くのか?

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 高校教師・柊一颯に扮する菅田将暉の熱演が光る『3年A組―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)。魂のこもった一颯の説教に、学園ドラマの金字塔『3年B組金八先生』(TBS系)を重ねる視聴者も多く、“3A=現代版金八”といった声もよく耳にする。時代の流れによって、描かれ方に変化が見られる教師像。ここ数年の作品においても、現代だからこそ心を打つ教師が多くいる。

【写真】『3年A組』最終回シーン

 昭和を代表する教師といえば、先述の坂本金八(武田鉄矢)や『熱中時代』(日本テレビ系)の北野広大(水谷豊)、『スクールウォーズ』(TBS系)の滝沢賢治(山下真司)といった熱血先生がずらり。平成に入ると『GTO』(フジテレビ系)の鬼塚(反町隆史)や、『ごくせん』(日本テレビ系)のヤンクミ(仲間由紀恵)など、いざというときに生徒を守る破天荒な名物先生が誕生した。

 教師を主役とした学園モノの場合、初めは生徒に受け入れられずに浮いていた教師が、徐々に生徒と打ち解けていき、気づけば生徒から絶大な信頼を得ているというのが鉄板ストーリー。その流れを汲みつつも、近年、今までとは違う方法で生徒にアプローチする教師として印象的だったのが、『先に生まれただけの僕』(日本テレビ系/2017年、以下『先僕』)で櫻井翔が演じた鳴海涼介。総合商社からの出向で、校長職に就いたエリートビジネスマンだ。

 鳴海は校長という立場とはいえ、直接生徒に声かけをするシーンも多く、その言葉は毎回大きな反響を呼んだ。第一話では「奨学金問題」について取り上げ、“奨学金=卒業後に背負う借金”であることを鋭く指摘。ほかにも「スクールカースト」「デジタル万引き」など、大人になるまでに知っておくべきテーマについて、上からでも下からでもなく、“先に生まれただけ”という立ち位置から論理的に説いた。

 また『僕らは奇跡でできている』(カンテレ・フジテレビ/2018年、以下『僕キセ』)で高橋一生が演じた動物行動学の大学講師・相河一輝も、興味深い。固定観念を覆す一輝のマイペースな言動は、ときに周囲に波乱を巻き起こす。だが、周りの意見に左右されることなく、常識にとらわれることなく、素直に生きる一輝の言葉は、じわじわと現代人の心に浸透。生徒たちが一輝に惹かれていくのと同じように、我々視聴者も、世間体を気にして“見失っていた自分自身”を取り戻すような感覚を覚えるのだった。

 そして、『3年A組』の柊一颯である。自殺したクラスメイト・景山澪奈(上白石萌歌)の死の真相を通して、生徒たちに“何が大切で、何を守らなければいけないのか”を伝えるべく、魂の授業を進めていくのだが、その言葉がグサグサと胸に突き刺さる。

 菅田が生徒にする説教にはアドリブも含まれているといい、たとえば第5話で諏訪唯月(今田美桜)にぶつけた「恥もかかずに強くなれると思うな」という名言もそのひとつ。台本にはないリアルな言葉がグッとくると、生徒役の今田や片寄涼太(甲斐隼人役)らも明かしており、その熱き競演を見ている私たちの心にも、一颯のまっすぐな思いが響いてくる(3月7日放送の日本テレビ系『ZIP!』にて)。

 『先僕』は、現代の社会問題に鋭くメスを入れ、『僕キセ』は現代人が忘れかけている物事の本質について訴え、『3年A組』はあえてド派手なフィクションにすることで、SNSを中心とした現代社会の闇に真っ向からぶつかっていく。“論理的・じんわり・熱血”と、それぞれタイプは違うが、今だからこそ響くやり方で、大切なことを伝える教師たち。今後も時代の流れを受け、未だ想像し得ないキャラクターの教師たちが、続々登場してくるに違いない。

 とにもかくにも、今夜は『3年A組』最後の授業。柊一颯の“教え”を、とくと心に刻むことにしよう。

(nakamura omame)