劇場公開も決定。製作者・宮川絵里子が語るドラマ『SHOGUN 将軍』
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すべて見るエミー賞で史上最多18部門に輝いたドラマ『SHOGUN 将軍』が16日(土)から期間限定で劇場公開される。真田広之らと共に本作のプロデューサーを務めた宮川絵里子は本作の成立を「奇跡だと思います」と笑顔で語る。日本人が観ても違和感のない“世界を魅了する日本の時代劇”はどのようにして生まれたのか? このタイミングで改めて宮川に聞いた。
マーティン・スコセッシ監督の『沈黙 サイレンス』では共同プロデューサーを務めるなど、数多くの映画に参加してきた宮川が本プロジェクトに参加したのは2016年。まだ真田広之がこの作品に参加する前だ。
「制作会社のFXが本作のプロジェクトを進めていて、イギリス人のプロデューサー主導でロンドンを拠点に、部分的に日本で撮影しようとしている段階でした。この作品は実現するまでに延べ11年かかっているそうなんですけど、いろいろな段階があって、一度すべてが止まって仕切り直しになったんです。そこで本作のショーランナーになったジャスティン・マークスが入って、真田さんが参加して……それからもストップしたり、先が見えなくなったり、コロナ禍もありましたし、壁にぶちあたりながらここまで来た感じがします。ですから、日本が題材で、日本を中心に置いたドラマをここまでの規模で出来たのは本当に奇跡だと思います」
海外作品でサムライが登場する映画やドラマはこれまでにもたくさんあった。しかし、日本人がスタッフの中枢に招かれ、細部までこだわり抜いた作品は多くはない。
「FXのCEOのジョン・ラングラフがこのプロジェクトのことを信じていたのは大きかったと思います。もちろん最初からここまで大きなプロジェクトだったわけではなくて、もっと最小限の規模でつくろうとした時期もありました。その中で観客の現在の温度感だったり、コロナ禍での観客のストリーミングの視聴動向だったりが変化していって、だんだんと現在のかたちが出来ていったんです」
どの作品も制作され、公開されるベストなタイミングというものがある。人の流れ、時代の流れが合致した時にヒット作が生まれる。本作は5年前では成立しなかっただろうし、5年後につくられたなら、現在とは大きく違う内容になっていたかもしれない。時を読み、人を読み、じっと耐えて“その時”を待つ。本作のドラマの成立そのものが、まるで本作の主人公・虎永の物語のようだ。
「本当にそうですよね。時代の流れとピッタリとマッチしたと思うんです。“アルゴリズムでつくられたものは面白くない”とジョン・ラングラフもよく言うんです。才能のあるクリエイターだからできることを、時代を読んだタイミングだからできるものを、と言っていて、この作品はそこにうまくハマったんだと思います」
そんなプロジェクトを率いたのが、劇中では民を束ね、時代を読み、耐えて“その時”を待った虎永を演じた真田広之だ。本作での彼は主演俳優であり、プロデューサーであり、宮川曰く「プロデューサー以上」の存在だ。
「とにかく真田さんの存在が大きかったと思います。FXもジャスティンも良い作品をつくりたい、日本にリスペクトのあるものをつくりたいと思っていたんですけど、そのために何をどこまでやらなければならないのか? と考えた時に、着物の着方から所作のひとつまで真田さんが丁寧に説明していった。一番大きかったのは、真田さんがアメリカのトップの人たち、現場の人たちと良い関係を築けたことだと思います。
所作の先生は所作だけ知っているわけですけど、真田さんは所作も何もすべてをご存知なんですよね。着付けもできますし、エキストラの動き方までわかっている。セリフのちょっとした言い回し、例えば大砲は”たいほう”なのか”おおづつ”なのか、とかも時代考証としてはこっちだけど、セリフにするならこうしましょう……みたいな感覚的なことまで知識量と経験値がものすごいんです。さらにハリウッドで前向きな姿勢で20年活動されていて、そこで得た知識もあり、周囲からリスペクトもされている。ですから日本とハリウッドの文化の違い、システムの違いもわかっているので、何かを伝える時でも、誰にどんな言い方で、どのタイミングで伝えればいいのかわかっている。全員が気持ちのいい状態でコラボレーションできる状態を作り上げたのは真田さんだと思います。
それからやはり真田さんの仕事に対する“姿勢”ですよね。自分の出番がなくても朝から現場にいて、どんな小さなことでもちゃんと見ていて、自分から率先して動きますし、みんなと一緒にコーヒーの列に並んで、立場に関係なくスタッフの名前を覚えていたり。そういう姿勢の方がいることで、現場の雰囲気は本当によくなりますし、キャストもスタッフもさらなる実力が引き出される。私も含めて真田さんから学んだことは本当に多かったです。よく考えたら、真田さんは大スターなんですけど、プロデューサーの時は“カリスマ・スイッチ”みたいなものを切っているのか(笑)、周囲の人も気を遣うことはないですし、一緒に作業したり、頼み事をしたり、困った時は聞くことができるんです。
ハリウッドではよくメインの役者さんがプロデューサーに名前を連ねることはありますけど、まぁ見ても脚本づくりかキャスティングぐらいだと思うんです。でも、真田さんは毎日現場に来て、すべてを見てくださったので、本作で真田さんはプロデューサー以上のことをされたと思っています」
彼らの真摯な作品づくり、そして日本が誇る“活動屋の血”を継ぐ真田の活躍によって本作は世界各地で高評価を獲得した。
「日本を含め、世界中でヒットしたことが何よりもうれしいです。撮影の最後の方には賞の話をしている人がいたり、完成後には大きなプレミアがあったりとジワジワと達成感を感じてはいましたけど、日本の方がどのように受け入れてくださるのかは不安になっていたんです。でも、エミー賞のニュースが日本でも流れて、本当にいろんな方がドラマを観てくださって感想を寄せてくださって、そこでやっと“やった!この作品をやってよかった”と思うようになりましたね。ですから、今回の劇場公開でより多くの方に観てもらうことを期待しています」
今回の劇場公開ではシリーズの第一話と二話をスクリーンで上映。現在、ディズニー・プラスでは全話が配信されており、シーズン2の制作もすでに決定している。
「同じチームがロスに戻ってきて、7月から作業が始まっています。日本人だと、その先のドラマティックな歴史を知っているので、虎永が将軍になるところを見届けたいと思いますよね。私もすごく楽しみにしています。現在、良い状態で進んでいますので、期待してお待ちいただきたいです」
『SHOGUN 将軍』
エミー賞(R)受賞記念上映 第一話、第二話
11月16日(土)~23日(土) 8日間限定劇場上映
ディズニープラスの「スター」で独占配信中
(c)2024 Disney and its related entities
Courtesy of FX Networks
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