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『ミスター・ムーンライト』 成井豊・関根翔太・鍛治本大樹が23年ぶりの再演に込める思い

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チケットぴあ

左から)鍛治本大樹、成井豊、関根翔太 (撮影:源賀津己)

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演劇集団キャラメルボックスの2024年クリスマスツアーでは、2001年初演の『ミスター・ムーンライト』を23年ぶりに再演する。脚本・演出の成井豊と関根翔太、鍛治本大樹にインタビューを行った。

ワクワクとプレッシャーが入り混じる再演

――まず、23年ぶりの再演についてお聞かせください。

成井 チラシの裏にも書いたんですが、わざと再演してこなかった時代の作品です。「胃ガンかもしれない」と言われたショックで死をテーマにした作品ばかり書いていて、自分で「死の時代」と呼んでいる時期。当時の作品を見返すのが辛くて封印していました。でも、昨年『クローズ・ユア・アイズ』を上演したら思いのほか面白くて、『ミスター・ムーンライト』も初演を久しぶりに見たら面白かった。自分でもワクワクしていますが、同時に、面白い初演に勝てるかという心配もありますね。

――再演と聞いた時はいかがでしたか。

関根 実は僕が初めて見たキャラメルボックスがこの作品でした。お笑いじゃないのに、物語やキャラクターでこんなに笑えるんだというのが衝撃で。これは生で見たいと思って『トリツカレ男』を見にいきました。だから初めての再演と聞いて「おお!」と。同時に、僕の役は鹿島と聞いてプレッシャーも感じました(笑)。でも尻込みせずに挑みたいです。

鍛治本 僕も初めて見たDVDがこの作品なんです。キャラメルボックスのことをよく知らずに俳優教室に飛び込み、入ると決まって、お店に並んでいた中から手に取ったのがこの作品でした。舞台自体そんなに観ていなかったので、最初はスピード感に混乱したけど面白かった。舞台を学びはじめるタイミングで見ることができてよかったです。今の僕は、この作品を書いた当時の成井さんと同年代。なんとか初演より面白くしたいなと思っています。

――過去のインタビューで、成井さんは再演をするときにキャスティングを重視するという話をされていました。今回のキャスティングの意図や期待を教えていただけますか。

成井 『ミスター・ムーンライト』をやりたいと思っても、もちろんキャスティングがうまくいかなかったらやりません。うまくはまったと思ったのでGOサインを出しました。

関根の鹿島に関してはかなり期待値を込めていて、博打ですね(笑)。初演時の上川(隆也)と年齢が近いけど、なかなか大変だと思う。というのも当時、上川はテレビの仕事が忙しくてキャラメルボックスの公演に出演するのは2年に一度くらいになっていたんです。せっかく出てくれるならやりがいのある難しい役を、と思って書いたのが鹿島というキャラクター。女性の魂に憑依される気弱なSFオタクの男性で、作り込みが必要な役です。関根本人とも全然違うけど、近年かなり伸びているので、この難しい役を通してさらに伸びてくれたら嬉しいですね。

鍛治本が演じる結城も本人とは全然違う役だけど、数年前に演じた『嵐になるまで待って』の波多野がすごく良くて。悪い人ではないけど、作中では悪役ポジションという点では今回の結城も同じです。そういった役にまた挑戦してもらいたいなと。

期待値を含めてですが、面白いキャスティングができたと思います。一点、今のキャラメルボックスに利根川がいなくて。近江谷(太朗)ならできるということでお願いしました。

成井豊

――演じる役の印象はいかがですか?

関根 成井さんから役のオファーが来た時に「非常に難しい役です」と言われたので、そこは重々承知しています。台本を見ると真っ黒ですが、初演の映像を見ると上川さんはそれを感じさせない芝居をしているんですよね。役者として挑戦し甲斐がある役だと感じました。

鍛治本 成井さんからのオファーに「イケメン枠です、よろしくお願いします」と書かれていて、その言葉にプレッシャーを感じました(笑)。イケメン度をどう出すかが一番の課題になるのかなと。でも、台本を読んでみて、意外と自分に近いものを感じています。結城は非常に偏屈なものを感じるキャラクター。僕も日常では隠していますが偏屈なので(笑)、それを解放しつつ、結城のこだわり、大切にしているものを意識しようと思っています。

初演の良さを残しつつ、より良いものに

――今回の見どころになりそうな部分はどこでしょう。

成井 初演は本当に評判が良くて、特にOPのダンスは劇団員に聞いても好きだという声が多かった。100%同じにはならないだろうけど、近いものをやろうと思っています。昔からのお客様はあれを見たいという方が多いでしょうから、まずは新しいメンバーによるダンス。あと、全役変わる再演はなかなか経験がない。ほとんどのメンバーが初体験だから、ほぼ新作として作れるんじゃないかと思っています。

鍛治本 見どころは関根の主演じゃないでしょうか(笑)。キャスト陣を見ると、好き勝手やりそうなメンバー揃い。出てきては関根にちょっかいをかけて無責任に去っていくことの連続になると思います。それに対応しながら物語を回し、汗をかいて振り回される姿が見どころになるでしょうし、僕もどんどんちょっかいをかけたいと思います(笑)。

関根 見どころにしたいのは、鍛治本さんとの親友感。僕自身は友達が少なくて親友の感覚が掴めていないんですが、だからこその親友感をぜひ見てもらいたいと思います。

関根翔太

――初演が良すぎてプレッシャーも大きいとのことですが、再演ならではの楽しさ・魅力はどこにあると思いますか?

成井 すごく面白かったけど、初演は色々やりすぎているんです。例えば舞台装置もすごくゴージャス。あんなに作る必要ない(笑)。飾ってあるだけで使ってないセットもあったもんね。あと、ギャグがたくさんあって面白かったけど、あんなにやる必要ある?

一同 (笑)。

成井 上川はテレビが忙しくなっていたのもあったのか、稽古を本当に楽しんでいて、アドリブの嵐。50ステージ以上ある本番でも全く手を抜かずにギャグをやって、なんて勤勉なんだろうと(笑)。

初演を褒めましたが、盛りすぎた部分を削ってシンプルにすることで、もっとお客様に突き刺さる物語になるんじゃないかと思っています。だからといって面白さを減らすことはしないけど、より物語や役者の感情が突き刺さる、鋭いお芝居にしたいと思っています。

鍛治本 僕は同じ作品を繰り返し上演している歌舞伎やお能が好きで、自分がやる時も、再演作品ってすごく好きなんです。初演は強大ですが、いいところを取り入れつつ自分たちの良さを出せるので、圧倒的に再演が有利だと思っています。いいお手本を利用しながらもっといいものにできると確信しています。

関根 大成功した初演があるので、そこに今の僕ら、今の時代だからできる付加価値をつけていけば、絶対面白い作品にできると思います。当時はなかった感覚も盛り込むことで今のお客様に楽しんでもらえるものになるはず。自分たちの感覚を信じて作っていけたら楽しいものにできると思っています。

キャラメルボックスだから見せられる芝居を

――SNSなどの反応を見ると、すごく思い入れのある作品だから久しぶりに舞台を見に行こうという声も多くありました。久しぶり・初めての方に向けて、今のキャラメルボックスの魅力を伝えるならどこでしょう。

成井 39年前にできた劇団ですが、当時は小劇場ブームがまだ続いていました。アンチロマンの時代で、ストーリーがよくわからないものが主流だった。でも我々の世代はストーリーがしっかりしたものを作りたいと。そこから39年経ち、いろいろな時代がありましたが、うちのような劇団は今でもあまりない。特徴としては、ファンタジーでコミカルさもあるエンターテインメント。劇団員にはスピードとパッションが大事だと伝えています。これは80年代を代表する夢の遊眠社や第三舞台、つかこうへい事務所の影響もあると思う。熱くて速い芝居が面白いと刷り込まれていて、それを39年続けている劇団です。

関根 この間、『ディスカバリーズ』というキャラメルの若手だけの公演があったんですが、あんなに若者が汗だくで声を張り上げている芝居はなかなかないと感じました。脈々と受け継がれてきたものを守り、キャラメルでしか見られないものを作り上げている。ダンスやファンタジー要素など、成井さんの十八番が詰まっていると思いました。「王道」なのに唯一無二なのがキャラメルボックスだと思います。

鍛治本 昔から見てくださっている方は、劇団と一緒に歳をとっているんですよね。長年応援してくださっている方が多く、『ミスター・ムーンライト』初演の時はキャラクターたちと同年代だった方が、今は僕らを子供のように見守ってくれていると感じます。僕は入団して20年弱ですが、いまだに初舞台のお話をされるんです(笑)。いつまで経っても覚えていてくれて、成長を見守ってくれている印象が強い。一緒に歳をとって、お客さんと劇団員の関係性が変わっていくのが魅力だと思います。

鍛治本大樹

――公演に対する意気込みと読者へのメッセージをお願いします。

成井 再演は基本的に評判の良い作品を上演します。でも、今回はちょっと心配。初演の評判が良すぎるし、今映像を見ても本当に面白い。やりがいがすごくあるけど、かなり頑張らないといけません。自分で自分を鼓舞しているところです。相当頑張るので、ぜひ楽しみに見に来てほしいです。

関根 汗まみれになりながら真っ向勝負で頑張りたいです。近江谷さんがゲストで出演されることで、きっと2001年版を見ている方も見てくださると思います。「今のキャラメルボックスもいいよ」というのをお見せしたいです。

鍛治本 再演ですが、メンバーも時代も違うので新作のつもりで臨もうと思っています。とはいえ偉大な初演があるので、意識しなくても意識してしまうはず。それくらいのバランスでやっていくのがいいと思いますし、若いメンバーも増えていて、今のキャラメルボックスの面白さが存分にでる作品になっていると思います。

取材・文:吉田沙奈
撮影:源賀津己

<東京公演>
演劇集団キャラメルボックス2024クリスマスツアー
『ミスター・ムーンライト』

公演期間:2024年12月20日(金)~12月25日(水) 会場:サンシャイン劇場

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/caramelbox-moonlight/

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