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中島健人が見据える今後の10年と、その先「絶対にみんなを離さない」

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中島健人 (撮影:堺優史)

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口にしていれば、夢は叶う。昨今、よく聞くようになった言葉だ。しかし、体現できている人間は決して多くはない。俳優・中島健人は、そのうちの僅かな一人。Huluオリジナル『コンコルディア/Concordia』にて、兼ねてから口にしていた海外ドラマデビューを果たした。天才技術者のA・J・オオバを演じた中島は、なんと全編英語での演技に挑戦。この経験は、今後の俳優人生にとって間違いなくターニングポイントとなった、と語る。

全編英語での演技「夢みたいな時間でした」

中島演じるA・Jは、カメラ+AIでモニタリングされたコミュニティ、コンコルディアの根幹を担うAI制作を担当。クールで頭が切れ、コンコルディアでコミュニティ・オフィサーとして働くイザベル・ラーソン(ナンナ・ブロンデル)に対しても、どこか高圧的に自らの意見を通そうとする。日本での撮影と比較しての大きな違いは「流動性」だった。

「現場で渡される脚本は製本されていなくて、当日の撮影シーンに該当する箇所をその場で配られるスタイルでした。変更点が知らされるのも、ほとんど当日。臨機応変に対応するのがマストの世界で、そういった柔軟性や流動性を試されるプレッシャーは、日本では感じられないものでした」

しかし、そんなプレッシャーに易々と膝をつかないのが中島健人。これまでもアカデミー賞授賞式のインタビューに英語で対応するなど、未知の領域にも進んでチャレンジしてきた。「とりあえず、当たって砕けろ! の精神で臨みましたね」と優雅に微笑む様には、さらにもう一段階の自信が積み重ねられているように見える。

「もしかしたら、英語で話している僕は、外国の方から見たら『一生懸命で可愛い』と思われているんじゃないかな」と中島。

「やけに熱量たっぷりで、次々といろいろなことを話してくるな? って思われているはず(笑)。あれをやりたい、これはどうだろう? と、本作の撮影現場でもたくさん提案しました。あとは共演者の一人であるノア・エリクセン役のシュテベン(・ゾバー)にも、当時公開が控えていた『おまえの罪を自白しろ』(2023)のあらすじを、一生懸命に英語でまくしたてたり。でも、それは日本語でも変わらないかな……」

しかし、A・Jを演じているときの中島には、一生懸命な可愛らしさの代わりに「なかなか首を縦に振らない、プライドが高くブレない自分」が表出したという。「A・Jとして英語を話している間は、まったく違う人格になれて、夢みたいな体験でしたね」と語る中島の目には、達成感が滲む。

海外の現場で、日本人として他国の役者と肩を並べ、同じステージに立ったこと。「自分の人生であり得なかったことの連続、間違いなく僕の28歳(※本作撮影当時)の一年間は、衝撃でいっぱいでした。この『コンコルディア/Concordia』という作品が、僕の未来を切り拓いてくれたと感じています」という中島の自信に満ちた言葉が、さらなる彼の活躍を予感させてくれる。

好奇心旺盛な日本男児っぷりを発揮

『コンコルディア/Concordia』は、『ゲーム・オブ・スローンズ』を始めとする数々の世界的話題作を手がけてきたプロデューサーであるフランク・ドルジャーの最新作。日本人俳優・中島健人の起用について、フランクは「彼は現場にいる俳優たちにアドバイスを求めることを躊躇しなかった」と積極性についても評価している。

「『なんだ、この日本人は?』と思われるレベルで、現場でさまざまなことを提案しました。初めて海外ドラマに出演する日本人の新参者なのに、めちゃくちゃ言ってくるな!? って感じだったと思うんですよね、きっと。僕の撮影地は基本的にローマに限られていたんですけど『ミラノで撮影するシーンを増やしてほしい』とお願いしたこともありました。結果、叶わずで残念でしたけど……。わからないことも先送りにせず、その場で訊く姿勢を大切にしていました」

中島にとって、初の海外ドラマの撮影現場。持ち前の好奇心を刺激する要素が詰まっていた。俳優一人につき一台のトレーラーが当てがわれ、専用の控室として使用する。クレーンの先にカメラが付いたような撮影機器が、まるで蛇のように波打ち、より滑らかな動きが映像に反映される。初めて目にする撮影技術の連続に「好奇心旺盛な日本男児っぷりを発揮していましたね」と興奮が抑えきれなかったようだ。

受け取った刺激、吸収した知識や技術について「MV撮影などで活かせたら……と考えていますが、現地のクリエイティブが凄すぎて、まだそれらを活かすアビリティが僕にはないかもしれません」と、謙虚な姿勢を崩さない中島。撮影中、現地のカメラマンからウインクされ「普段は(ウインクを)する側なのに、え、俺ウインクされるんだ!? ってびっくり。イタリアの男性たちって、本当にカッコいいんですよ」と、日本ではなかなかできない体験まで明かしてくれた。

心は侍。良い意味で喧嘩したかった?

A・Jについて、撮影地だけではなく服装についても提案を重ねた、と中島。「ほぼ僕の好みだった」というA・Jの身に付けるものは、すべて中島自身が構想し選んだという。

「現地のスタイリストの方が、僕の希望に合わせてたくさんの衣装を持ってきてくださって『どれがいい?』と選ばせてくれました。1話から6話にかけて、A・Jの心理的描写が変化していくのに合わせて、カジュアルなスタイルから、少しずつジャケットを合わせたオフィスフォーマルな雰囲気に仕上げていこう、という話に。服装からも彼の心境の緩急が伝わるよう、工夫しました」

こだわりは、もちろんA・Jのキャラ設定にも及ぶ。バーバラ・イーダー監督とともに、A・Jの存在そのものが本作のアクセントになるよう、彼の性格をさらに尖らせ、ほかの登場人物ともセッションを重ねる様を見せたい、と提案。対比するように、A・Jの助手にあたるマチルド(ジョセフィン・ジュベール)の人柄は柔らかくなっていき、感情のコントラストも明確になっていった。

「自分のいまの考えが、どれくらい海外の現場で通用するか。それを知りたかったし、とにかく刺激を受けたかった。だから、現地のスタッフやキャストの方々と、良い意味で“喧嘩”したかったんですよ。『俺、侍ですけど?』っていう気持ちで、勝負するつもりで。僕がグイグイいったら向こうでは『あ、侍さまなんですね!』っていう反応がほとんどで、そっと刀を鞘に戻すことになりましたが(笑)。僕にとって良いぶつかり方ができた、素晴らしい約1ヶ月の短期留学でした」

音楽で繋がった、人との縁

なかなかOKテイクが撮れず、苦戦したシーンもあったという。しかし、先述したマチルド役のジョセフィン・ジュベールが「大丈夫、リラックス!」と声をかけてくれ、気持ちが落ち着いた。「英語のリスニングが完璧じゃない僕にとって、ネイティブの会話がなかなか聞き取れない瞬間もあったんですが、彼女がより簡単に英訳してくれる場面もあって。とても助けられました」と振り返る中島からは、共演した俳優陣への絶え間ないリスペクトが伝わってくる。

「僕は人の運に恵まれています。海外の撮影現場でもさまざまな特性があるらしいんですが、『コンコルディア』の現場は優しいスタッフやキャストたちが集まっていて。ちょっと驚いたのは、ジュリアナ・エリクセン役を演じたクリスティアーネ(・パウル)さんが、Sexy Zone(現:timelesz)の楽曲『RIGHT NEXT TO YOU』を聴いて『とても良い曲!』って言ってくださったこと。全編英語の曲は、海外でも心を通じ合わせる効果があるんですよね」

楽曲『LET'S MUSIC』も『コンコルディア』現場スタッフの心を掴んだ。「あの赤い衣装のやつでしょう!」とその場で踊って見せてくれたという。「海外では僕は新人。誰も知ってくれている人がいない現場でしたけど、音楽をやっていたおかげで世界と繋がれました」と語る中島は、あらためてアーティストと役者を両立させてきた利点を実感した、と重ねる。

「いろいろな活動の方針があって然るべきですが、僕としては、役者一本の人間じゃなくてよかった、と痛感した撮影期間でした。やっぱり音楽は、言語も国境も超える。アウェイな場でも他者と繋がれる手段になり得るんですよね」

「絶対に、離さないよ」

ソロ活動開始から約半年。かねてより口にしていた海外ドラマ出演の夢まで果たし、野望をどんどん実現させていく中島の姿に、眩しさ、喜び、嬉しさを感じているファンがほとんどだろう。中島自身、ファンとの距離感について思うところはあるのか。

「僕はもともと、ずっと昔から応援してくれている近いファンの方も、遠くから見守ってくれているファンの方も、どちらも巻き込んで一緒に楽しみたいタイプ。それこそ『コンコルディア』をきっかけに、僕のパーソナルな部分に興味を持ってくれる人が増えたら嬉しいです。後輩に対しても『海外で挑戦している先輩がいる』っていう事実が刺激になっていてほしいし、自分自身が先駆者になったつもりで、海外にもファンを増やす心構えで挑みたいな、と思っています」

取材日の直前にも、多忙のなかインスタライブを敢行。そのほか、アーティスト・キタニタツヤと結成したばかりのユニット・GEMN(ジェム)での音楽活動も始動しており、お互いのファン同士が交流する様子まで楽しんでいる。ファンとの繋がりは薄く遠くなるどころか、濃く近くなっている。

活動の幅やフィールドが広がり続けても、アーティストであり俳優である中島健人のスタンスは変わらない。中島健人は中島健人として在り続ける。ファンとの距離が空いているなんて、中島さんは感じていないんですね、と投げかけると、彼は両目を見開いて「むしろ、絶対に離さないですよ」と断言した。

「こうやって、こうです!」と言いながら、両腕を真横に広げ、肩を組む動きをしてみせる。勢い余り「いや、むしろこうですね!」と、今度は広げた両腕を天井に向かって突き上げた。「僕はいつだって、何人だろうが離さないっていう気持ちでいます」というストレートな思いは、間違いなくファン全員の心に届くだろう。

「この『コンコルディア』が僕の切るファーストカードだとしたら、次のカードも、またその次のカードも、おもしろいものが待ち受けています。これまで一緒に仕事をしてきた方たちと、素敵なご縁が繋がって、魅力的なチームが再結成された。僕の原点を作り上げたような、大切な作品を届けられるタイミングにいるので、満ち足りています。ものすごく忙殺はされていますけどね(笑)」

「たくさん、やりたいことをやるつもりです」と口にする彼の目は静かで、それでいて容易には触れられない熱をはらんでいるようにも見える。

取材・文:北村有 撮影:堺優史

<配信情報>
Huluオリジナル『コンコルディア/Concordia』

毎週金曜新エピソード更新/全6話

ショーランナー 兼 製作総指揮:フランク・ドルジャー
監督:バーバラ・イーダー
脚本:ニコラス・ラーシュ マイク・ウェルデン アイラ・ヴァン・トリヒト
出演:ルース・ブラッドリー、ナンナ・ブロンデル、クリスティアーネ・パウル、シュテヴェン・ゾヴァー、中島健人 ほか

公式HP:
https://www.hulu.jp/static/concordia/

(C)Hulu Japan

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