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名優ここにあり! デンゼル・ワシントンが『グラディエーターⅡ』にもたらしたもの

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『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』 (C)2024 PARAMOUNT PICTURES.

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リドリー・スコットの『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』は“超大作”という言葉がふさわしいノンストップのエピックアクション! が、そうありつつも決して大味になっていないのは、脇にユニークなキャラクターを配しているからだろう。主人公ルシアス(ポール・メスカル)を最強のグラディエーターに仕立て上げるミステリアスな奴隷商人マクリヌス(デンゼル・ワシントン)の存在だ。

奴隷からグラディエーターとなり、それから奴隷商人にのし上がったという男。サイコパスとしか思えない残忍で冷酷な双子のローマ皇帝に巧みに取り入ってジワジワと宮廷内で力を伸ばし、その一方で、妻を殺した将軍アカシウス(ペドロ・パスカル)への復讐に燃えるルシアスには先の皇帝マルクス・アウレリウスの言葉を引用して「最大の復讐は相手を赦すこと」と、あたかも諭すような言葉を囁く。そしてルシアスが、その賢帝と謳われるアウレリウス(1作目ではリチャード・ハリスが演じていた)と、伝説の英雄マキシマス(ラッセル・クロウ)の血を引いていることを知ると、「血縁でなくとも皇帝になれるのはローマ帝国だけだ」云々とも言ってみせる。

事あるごとに印象的な言葉を口にし、含みのある笑みを浮かべるマクリヌス。何を考えてるのか分からず、敵なのか味方なのかさえもつかめない。ルシアスを振り回すように観客も翻弄しまくり、果たしてこのストーリーはどこに流れていくのか? そのターニングポイントのキーパーソンになっている。その考え方や生き方はある意味、自由であり現代的。見方によってはシェイクスピア的キャラクターとも言いたくなる、とても複雑で深みのある男。彼がいることで、ルシアスのまっすぐな正義感が際立つことにもなっている。

スコットは、そういう難しい役だからこそ名優のデンゼル・ワシントンに任せたのだろう。彼の軽妙な演技のおかげでピカレスク的な面白さも加わり、物語に現代的な解釈をもたらしたのは事実。あたかも往年のハリウッド映画のようにゴージャスかつドラマチックに古代ローマを再現し、バラエティに富んだアクションを散らばらせつつ、キャラクターを重層的にすることで、今の時代にふさわしい作品に仕立てているのはさすがスコットと言いたくなる。

スコットとワシントン、ふたりの組合せは『アメリカン・ギャングスタ―』(07)以来だが、このときもワシントンはドラッグビジネスで大成功する悪役をクールかつクレバーに演じ強烈な印象を残していた。ワシントンは『トレーニング デイ』(01)の悪徳麻薬捜査官役でアカデミー主演男優賞を獲得していることからも分かるように、実は悪役を演じると本領を発揮してくれる役者。もちろん、今回も例外ではなく、来年のショーレースでも大健闘しそうな予感がしまくるのだ。

文:渡辺麻紀

<作品情報>
『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』

上映中

(C)2024 PARAMOUNT PICTURES.

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