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ラストゲームを目前にした浦和・興梠慎三を直撃! 「満員の埼スタで最後の最後、勝って終わりたい」

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興梠慎三(浦和レッズ) (C)大崎聡

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いよいよ、興梠慎三の最後の勇姿となる『2024明治安田生命J1リーグ戦』最終節まであと2日となった。38歳の誕生日に今季限りでの引退を発表した本人の言葉を借りれば、「ようやく来た」ラストゲームとなる。J1歴代2位の168ゴール、9年連続ふた桁ゴール、18年連続ゴール、そして『ACL』日本人最多の27ゴールという数々の記録を打ち立てた浦和レッズのエース。12月8日(日)・埼玉スタジアム2002でのラストマッチを前にした興梠の言葉を聞こうとマスコミ7社が集結。12月4日に行われた合同インタビューの模様をここに紹介したい。

――プロ生活20年を終えようとしている今の心境はいかがですか。

「ようやくもう少しで終わりかと。寂しいと言うよりうれしいの方が強い。毎シーズン、いろいろなプレッシャーがある中で戦ってきて、ようやくプレッシャーから解放される。Jリーグのタイトルを取れなかったという悔しさはありますが、自分なりに全力でやってきましたので清々しい気持ちです」

――引退を決めてからうれしかったことよりも悔しかったことの方が思い出すと口にしていましたが。

「浦和レッズで11年間在籍して、うれしいシーズンよりも悔しいシーズンが多かったのが正直なところ。タイトルの数であったり、自分の中でミシャ(ミハイロ・ペトロヴィッチ監督)を退任させてしまったという思いもあります。それも全部、自分自身を成長させてくれたシーズンでもあるし、すべてが僕の財産になったのは間違いない。『ACL』のタイトルを取ったこともあるが、思い返せばうれしさよりも悔しい思いの方を思い返してしまう」

――では一番うれしかった思い出は?

「タイトルを取ったのもうれしいですが、素晴らしい指導者、素晴らしい選手たちに出会えたことが一番大きかったと思います」

――ストライカーのエゴがない興梠選手がJ1歴代2位のゴール数を残せたのはなぜですか。

「2位ということに満足しているわけでもないし、自慢しているわけでもありません。試合に常に出ていたから、FWとしてふた桁ゴールは取らないといけない最低限の使命だと常に思っていた。自分にとってはすごいというより当たり前のことなので、この記録に関しては大して誇れることはない。得点数を誇るのではなく、チーム内の競争に勝ち抜いてコンスタントに試合に出続けたことに対して、自分自身を褒めていいかなと思う」

――ゴールはあくまで付いてきた結果?

「そうですね。まずチームが勝点3を取るために1試合1試合臨んでいたので、チームのためにがんばっていれば、自ずと結果は付いてくるだろうという考えだった。そこを怠らずにやったからこそ、結果が付いてきたのかなと」

興梠慎三(浦和レッズ) (C)大崎聡

――鹿島アントラーズ時代も熾烈なポジション争いがありました。

「鹿島の時は僕も若かったので、自分のことでいっぱいいっぱい。毎年タイトルを取らないといけないという環境の中でやってきたので、鹿島時代は楽しいよりも辛かったです。『1試合でも不甲斐ない試合をすればポジションを奪われる』という恐怖感の中でサッカーをしていたので、鹿島でリーグ3連覇などたくさんのタイトルを取ってきたけど、うれしいよりも何かびくびくしながらやっていたシーズンでした。
浦和に来てから毎年補強している中、ポジション争いも大変だったけど、『浦和で試合に出続ける』という強い気持ちで来たし、ある程度年を重ねて周りも見えるようになって、自分自身1年ごとに成長できたので、『余裕を持っていろんなことにチャレンジできたかな』という感覚があります」

――鹿島から浦和へ来た際の覚悟を改めて聞かせてください。

「当時は禁断の移籍と言われていたが、浦和レッズのサポーターのみなさんは誰ひとり、自分が来ることを認めていなかったと思う。そういう状況の中、『見返してやろう』という強い気持ちで浦和レッズに来たので、僕が一番強い気持ちで移籍してきたという自信はあります。移籍してきた選手は『サポーターに認められるまで応援をされない』と聞いていたので、『どうにかして覆したい』という気持ちで試合に臨んでいたけど、すごく早いタイミングで自分のチャントを作ってくれた。たぶん第3・4節だったのですが、その時はすごくうれしかったのを覚えています。
(第6節・湘南ベルマーレ戦で)初ゴールを決める前にチャントができたので。ゴールを決めなくても、チームのためにどれだけ仕事をできているかを評価してくれたと思うので、浦和のサポーターはサッカーを見る目があるし、わかってくれていると思いました」

――浦和での初ゴールを振り返ってほしいのですが。

「レッズに来てなかなか点が取れなくて、サッカーをやって初めて『点を取りたい』と思った時期かもしれない。そこまで貪欲に点を取りたいとならなかった自分がその時期だけは貪欲に取りたいと思っていました。初ゴールもそうだが、すべてのゴールが自分ひとりでゴールを取るタイプではないので、誰かに生かされる選手なので。その時のアシストは(柏木)陽介。陽介が持ったら『常に動き出そう』と自分の中で決めていて、陽介も合わせてくれた。そういう信頼関係がサッカーにとって大事だと思うので、『チームメイトを信じて走らないといけない』と強く感じたゴールですね」

――柏木さんとの呼吸はどのように生み出したのですか。

「常に練習からお互いに要求し合ったりするのはあるけど、陽介に限らず、一人ひとりの癖を見極めること。人それぞれ癖やテンボは違うので、その癖を知るのが大事だと思っていて、もちろん自分の癖を味方に伝えるのも大事。トレーニングでやっていないと絶対に試合では出せないので、僕は陽介の癖をすべてわかっていたつもりだし、陽介もすべて理解してくれたと思う。若い選手にも『自分が受け手なら出し手のタイミングをすべて理解しろ』と伝えている。それで点が取れる取れないが決まってくるので」

――若い選手は出し手の見極めができていますか。

「できていないですね」

――では、興梠選手はなぜ出し手の癖を見極めることができたのですか。

「最初は難しいです。出し手も常に僕を見ているわけではないので。いいプレーが増えれば増えるほど、自分を見てくれる。僕はその人を信頼し続け動くしかなかった。信頼して走れば出てくる、それが結果に結びつくというのがあるので、最初からできなくても信頼し続けてやり続けるしかない」

――味方だけではなく、相手DFの癖を見てプレーしていましたか。

「DFの癖と言うか、『ここをさぼりがち』とか、『ここは一生懸命付いて来るな』とか。DFによって、自分のプレーを変えていましたね。自分には『これだ』という武器はないんですけど、いろんなDFに対していろいろ対応できるのが自分の強みだと思っていたので」

興梠慎三(浦和レッズ) (C)J.LEAGUE

――あのペナルティエリア内での余裕や遊びはいかにして身に付けたのですか。

「若い選手にあそこまで『GKをおちょくるようなことをしろ』とはなかなか言えないですけど、あれは勇気のいるプレー。外してしまうと、すごくいろいろ言われるので。決めれば、『落ち着いているね』『うまいね』と言われる紙一重のプレー。僕はおちょくるようなプレーが好きなので、ついやってしまうということもあるが、『それくらい余裕を持ってシュートを打とうよ』というのは若い選手には伝えています。
GKに詰められてシュートコースを狭められた時、『普通に打っても入らない、上を越えれば絶対に入る』というシーンでも、力が入って強いシュートを打とうとする選手が多い。上を越す選択肢ができるかできないか、それは本人次第。僕は『精神的な強さと技術で上を狙ってほしい』と若い選手に言ってるんですけど、『外した時はボロクソ言われるぞ』と。『それぐらいの覚悟でやれよ』と言っている。それくらい遊び心があった方がサッカーは楽しいし、観ている人たちに『これぞプロのプレー』と思ってもらえると思う」

――遊び心は精神的な強さと高い技術に裏打ちされているのですね。

「一瞬のひらめきでもありますね。僕はどんなシチュエーションでも第一にループが入ってくるので。そういう思考があるから、ああいうプレーになる。若い選手にはひと呼吸おいてほしい。1秒でもちょっと考えてほしい。僕はそれをやっている。でも若い選手は強いシュートを打とうとする。チームメイトの(二田)理央は強いシュートをバンバン打ってGKに弾かれている。『そこでチップを蹴ったら絶対に入るのに』『GKを馬鹿にするくらいの気持ちでやれば入る』と理央にも言っているんですけど……」

――ワンタッチゴールも余裕は大事ですか。

「ペナの中は人数が多いので、GKを見るというよりかは自分に付いているDFをどう剥がすか。GKを見ずに感覚でシュートを打っています」

――ワンタッチゴールの極意は?

「一瞬で剥がせる動きを持っていれば簡単ですが、いろんなタイプがいるので難しい。僕は身長が小さいけど、クロスから結構決めていた。試合後、いろんなFWから『慎三さんの動きを勉強しているのですが、どうやってセンタリングに入っているのですか』と聞かれた時、いつも答えているのが、『まずはDFの後ろに隠れろ』『上がる時に前に入り込め』と。
センタリングが上がった時の確率論で、CBを越えて自分にピンポイントで入る確率と自分も越えて逆サイドに流れる確率と目の前のCBに弾かれる確率のどれが一番高いかと言うと、CBに弾かれる確率。そうならばCBの前に入れば触れる確率が高くなる。僕は『CBに弾かれるからCBの前に入ろう』と思うようになってから点を取れるようになった。それがFWにとって簡単に決められる方法だと思っている。
浦和に来た時はセンタリングからあまり点を取れなかったが、3~4年してからは『逆にセンタリングからしか点が取れないんじゃないか』というくらいになった。大裏で待ち構えているふりをしてCBの前に入る」

興梠慎三(浦和レッズ) (C)大崎聡

――自分のFWとしての才能をどうとらえていますか。

「自分のことを『サッカーがうまい』なんて思ったことは全くない。サッカー選手なら『ワールドカップに出たい』とか『海外でやりたい』とか高い目標があるが、全く絡んでいないですし、Jリーグの試合に安定して出ただけなので。ただ僕の中で一番強く思っていたのが、『在籍したチームで何かを成し遂げたい』というのが目標であり夢だった。だから『代表に出たい』よりも『浦和でタイトルを取りたい』というのが高くあったので、自分のことをうまいと思ったこと一度もなく、自分ひとりでは何もできないので」

――エンターテインメント感の強いゴールへのこだわりは?

「何よりもスタジアムに足を運んでくださるファン・サポーターのみなさんはお金を払って観に来てくれているわけですから、やっている本人たちが楽しまないと観てくれる人も楽しめないと思う。『素晴らしいコンビネーションで決めた』 とか、『ループで決めた』とか、『プロの試合はすごいんだな』というのを見せられたのはすごく自分の中でうれしく思う。そういうプレー、沸かせるプレーをもっともっとJリーグで観てみたい。もちろん勝つことは大事だが、勝つだけでは僕はあまり納得できない。圧倒して勝つ、なおかつ内容で上回る。とくに内容のところは、監督になったらこだわっていきたいですね」

――キャリア最終盤になって自分の能力を出し切った思いはありますか。

「僕自身、ひとつだけずば抜けて能力がないことが努力すること。『努力していたら自分自身どうなっていたか』と思うこともありますが、ここまでの選手になれなかったと思う。例えば食生活をしっかりコントロールして、24時間サッカーのことだけを考えていたら、たぶんここにいないと思う。自分が食べたい時に自分の好きなものを食べるなど、ストレスがないように生活してきたので、ハリル(ヴァイッド・ハリルホジッチ)監督には体脂肪のことをすごく言われたけど。ただやってみたら『どんな成果が出たんだろう』という思いもあるが、『おそらくダメだったんじゃないかな』と思う」

――週末のアルビレックス新潟戦に向けた準備はいかがですか。

「『まだ全然やれるじゃん』というプレーを見せたいですね。もう引退発表をしているので、もし自分がダメなプレーをしても、『引退するから仕方ないね』となるので、僕は怖いものがない状況。思い切りやるだけ。これまで見せてきたプレーを全力で見せたい。点を取ることをみなさんは求めていると思うけど、いつも通りまずは勝つこと。そこに徹すれば『自ずとゴールは取れるんじゃないかな』と思います」

――最後の埼スタをどう味わいたいですか。

「おかげさまで完売ということで、あの雰囲気をもう一度最後に味わえるのは本当に幸せ者だなと思う。でもこれまで満員のスタジアムでことごとく負けているので、最後の最後だけは勝って終わりたい」

――涙を見せずに笑顔で埼スタを去りたいですか。

「泣かないですよ……泣かないですね……泣かないです。笑顔で」

興梠の最後の試合となる『明治安田J1』第38節・浦和×新潟は12月8日(日)・埼玉スタジアム2002にてキックオフ。チケットは予定枚数終了。試合の模様はDAZN、テレ玉にて生中継。

取材・構成:碧山緒里摩(ぴあ)
撮影:大崎聡

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