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舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』榊原郁恵インタビュー

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榊原郁恵演じるマクゴナガル校長 (撮影:HIRO KIMURA)

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2022年7月の開幕以来、ロングラン上演が続く舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』。世界中を熱狂の渦に巻き込んだ「ハリー・ポッター」シリーズの8作目の物語であり、7作目「ハリー・ポッターと死の秘宝」から19年後、父親になったハリーやロン、ハーマイオニー、そして彼らの子どもたちの姿が描かれるが、本作で2022年の日本初演時にマクゴナガル校長を演じ、一時期の休みを挟んで、今年3月の公演でカムバックを果たしたのが榊原郁恵である。当初は「マクゴナガル先生は私じゃないでしょ!」と思っていたという榊原に本作、そしてマクゴナガル校長役への思いを語ってもらった。

――最初に舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』のオファーが届いた時のお気持ちは?

最初にいただいた話はオファーではなく、事務所から「オーディションがあるけど受けてみる?」という話だったんです。実は私、オーディションというのをいままで受けたことがなくて……。「はい、次はこの作品をやりますよ」という感じでやってきたので、初めての経験で、しかも作品が『ハリー・ポッター』。60歳を過ぎて、こんな大きなチャレンジをさせてもらえるならやってみようと思いました。

とはいえ、オーディションなので自分の意思だけではどうにもならないですからね。受かったら自分で勝ちとったと言えるし、逆にダメだったら、この先の自分の将来について考えようかな……という意気込みでオーディションに向かいました。

――女優人生をかけて臨んだオーディションだったんですね。

はい。だから決まった瞬間は、これだけ大きな舞台に出られるという感動と、「私、まだこの仕事を続けられる……」という気持ちでした。これに落ちたら「もう潮時なのかな」というぐらいの思いだったので、「もう少し、このまま頑張りなさい」って言われているのかなと。

――今回の舞台では“校長”となっているマクゴナガル先生ですが、原作小説、映画シリーズでも、ハリーたちの成長に寄与してきた重要で、存在感のある役柄です。どのようなイメージをお持ちでしたか?

ずっとダンブルドア先生の下にいらっしゃって、ダンブルドア先生が亡き後、ホグワーツの校長となったわけですけど、もうとにかく映画の印象が強過ぎて(笑)! オーディションのお声をいただいたのはありがたいけど、「私はマクゴナガルじゃないでしょ!」って思いましたよ(苦笑)。私もマクゴナガルは大好きだけど、私が演じるってなったら、みんな「えー!?」って思わない? だって私自身もそう思うもん! なので、そこは最初すごく抵抗がありましたね。実際、オーディションでは他の役も演じてみたんですけど、別の役のほうが自分の中でピタッとハマった瞬間もあったんです。

マクゴナガルは、みなさんにとってもすごく大事な存在で、チャーミングだし、すごく聡明だし、慈悲深い菩薩のような人物で、あれを私ができるのか……? 映画の世界の“あの”マクゴナガルのイメージを壊してはいけないという思いもありました。

――実際に、メイクと衣装で半月型の眼鏡にグレイヘアのマクゴナガルに“変身”されてみていかがでしたか?

これは日本の舞台で初めてこういうふうに作られたわけではなく、もうずっとニューヨーク、ロンドンをはじめ、各国で変わらずにやってきたもので、(衣装・メイクの)海外チームが本当に事細かに衣装を合わせてくれて、ウィッグに関しても何度も頭のサイズを測ったり、調節したり、メイクも細かくいろいろと指導があったりしました。やはり衣装とメイクの力は大きいですね。あの衣装を着た途端に、いまはもう本当にマクゴナガル校長になれるんですよね。舞台に立つ直前も、シルエットが映るともうそれがマクゴナガルなんですよ。それで役になり切れるという感じです。

――マクゴナガル校長の内面的な部分についてもお聞きします。大人になったハリー、その息子で現在ホグワーツに通うアルバス、ドラコ・マルフォイの息子であるスコーピウスら教え子たちとの接し方について、どのようなことを意識されていますか?

みなさんが抱いているマクゴナガル先生のイメージを崩さないようにというところはずっとあるんですけれど、加えて、かつての教え子であるハリー・ポッター、それから現在のホグワーツの生徒であるアルバスやスコーピウスといった子どもたちに対しても、将来のことを考えながら、まるで親のような気持ちで接しています。

それから、マクゴナガル先生のとてもチャーミングな部分――シーンとしては少ないんですけれども、それが出せるシーンもあるので、やはりそのチャーミングさ、愛情深くもあり、でも一大事の時には本当に真剣に向き合い、時にはしっかりと叱るという強さの部分も意識しながら舞台に立っています。

――映画を観ても、決してマクゴナガル先生の登場シーンはものすごく多いわけではないんですけど、すごく印象深かったり、チャーミングだったりするんですよね。

そうなんですよ! 存在が大きいし、魔法もすごいけど偉ぶるわけでもないんですよね。そんな彼女のかわいらしい部分も大切にしたいなと思って舞台に立っています。

――物語全体に関しては、どういう部分に魅力を感じていますか? 親になって苦悩するハリーやドラコたちをどんな思いでご覧になっていますか?

大人になったハリーですが、“完璧なる英雄”ではないところが舞台版の魅力だと思います。そして意外にも……と言うと失礼ですけど(笑)、ドラコが結構、良いセリフを言うんですよ。映画版では厄介でクセのあるタイプでしたけど。舞台版ではハリーとドラコがチームとなって“敵”に向き合いますが、ドラコの心に響く言葉、ハリーのまだまだ大人になり切れない部分なども魅力だなと思います。

――榊原さん自身が“親”の目線でハリーに共感したり、ご自身の子育てに思いをはせたりするところはありましたか?

やはり最初の子どもに対してというのは、私もそうでしたけど、一生懸命「教えよう」とか、「教育していこう」って思いながらも、それが子どもの置かれている状況を見ずに一方的に何か正しいことを教えよう教え込もうというスタンスになってしまいがちなんですよね……。

それで子どもとの交流が途絶えてしまったり、子どもの言わんとしていることに耳を傾けられてなかったり……という部分は、引いて見てると「私にもそういう時があったかもしれないな」と思うところはありましたね。

(撮影:渡部孝弘)

――自分が当事者になってしまうと「見守る」というのが一番難しくなってしまうものですよね。

そうなんです(苦笑)。難しいですよね……。だからアルバスもそうですが、いま子どもがしようとしていることは何だろう? と考えて、「そんなことを考えていたのか。そうだよね……」と一度、受け止めてあげると「でもね……」というふうに言えるんでしょうけど、最初から頭ごなしに「いや、違うのよ!」って言ってしまうと、どんどん子どもとの距離が広がって、溝が大きくなっていってしまうんですよね。その様子が今回の舞台でも見受けられるんですが、そこは結構、好きな部分です。

――お子さんが成人されて、子育てを卒業されたいまだからこそ、そうやって一歩引いた目線で見て楽しめるんでしょうか?

どうでしょうね(笑)? よそ様のことは引いた目で見られるんですけど、自分の子どものことになると、未だにわからないことは多々ありますよ、成人していても(苦笑)。

――改めて、舞台版で観る今回の『ハリー・ポッター』の魅力はどういう部分にあると感じてらっしゃいますか?

映画なら、映像技術でいろんなものをクリアに映すことができて、魔法の世界も映像で表現できますけど、舞台は生身の人間がやっているんですね。でも、そこでもちゃんと魔法が起こるんです。照明だとか、セットの仕組みでいろんなことが起きていく――そういう意味で、自分たちで想像を膨らますことができるのが舞台だと思います。

いまは、何でもクリアで、カメラが寄ってくれて「こういうものですよ」と見るべきものをあてがってくれますが、そうではなくて、舞台は話している人だけをピンポイントで見なくても、反対側で動いている人などを見る楽しみも自分で選べるわけです。その瞬間を“生”で楽しめるというのが舞台の醍醐味だと思います。

これだけ練られた物語とセット、それから魔法を楽しみつつ、映画のその後、結婚したハリー・ポッターたちの姿を楽しんで見てもらえたらと思います。

――2022年の初演から本作に参加されてきて、キャストの入れ替わりもあって複数のハリー・ポッターを間近で見られてきましたが、現在の平方元基さん、吉沢悠さんが演じるハリー・ポッターの魅力を教えてください。

私は客席からは見ていないので、あくまでも間近で見た印象ですが、両極端と言ったらいいのかしら? 元基くんは甘えん坊で、泣きべそをかくようなハリーの印象で、悠さんは感情が激しく強いところがありつつ、でも子どもに対してお父さんになり切れないようなところがあって、子どもに対する2人の“距離感”の違いが面白いなと思います。

――見えてくる父親像が演じる俳優さんによって変わってくるんですね。

本当にそうなんです! 同じセリフをしゃべっているのに伝わってくるものが微妙に違ってくるんですよね。あとは公演を重ねていく中で、ご本人たちも新たに気づく部分もあるのか、少しずつ変化していく部分もあってすごく面白いです。

(撮影:宮川舞子)

取材・文:黒豆直樹

<公演情報>
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』

公演期間:ロングラン上演中
会場:TBS赤坂ACTシアター

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/events/harrypotter-stage/

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