《高野切》ほか「古筆切」の優品を紹介『企画展 古筆切 分かち合う名筆の美』 根津美術館 で
アート
ニュース
重要文化財《高野切(古今和歌集 巻第十九断簡)》伝 紀貫之筆 日本・平安時代 11世紀 根津美術館蔵
本来「古(いにしえ)の人の筆跡」を意味する「古筆」の語は、狭義には「平安から鎌倉時代の優れた筆跡」を指す。その狭義の意味の「古筆」を切断した断簡「古筆切(こひつぎれ)」に焦点をあてた企画展が、12月21日(土)から2025年2月9日(日) まで、東京・南青山の根津美術館で開催される。
「古筆切」は、名筆を尊重するなかで生まれたものだ。平安時代の貴族たちは、『古今和歌集』をはじめとする勅撰和歌集や私家集などの書写を書に秀でた人に依頼し、その名筆を贈答品や調度品として用いていた。室町時代以降になると、茶の湯の流行もあり、その名筆が一紙や一頁、場合によっては数行単位で切断され、軸物として床の間に飾られたり、鑑賞されるようになったのだという。
同展は、「古筆切」の優品を数多く有する根津美術館が、新たに収蔵した重要文化財の《高野切(こうやぎれ) 》をお披露目するための展覧会でもある。端正な字形や優美な線質、文字と文字をつなげて書いた連綿の流麗さ、さらにそれらの要素の調和性に優れている《高野切》は、仮名で書かれた古筆の最高峰に位置すると言われている傑作だ。軽快でのびやかな筆線が雲母砂子(きらすなご)を全面にまいた料紙に映えて美しいこの作品はまた、現存する『古今和歌集』の最古の書写本としても貴重な逸品である。
今回の展示は、《高野切》を筆頭に、平安から鎌倉時代にかけて書かれた館蔵の古筆切の優品が並ぶ。藤原定信によるスピード感ある巧みな書が記された《石山切(いしやまぎれ)》をはじめ、時代を代表する書き手による書は、柔らかな線や直線的な線、連綿の様や字配りのバランスなど、それぞれに個性的な魅力を放っている。
また、同時開催の『一行の書』(展示室2)では、様々な一行の書も紹介される。禅僧が法語などを書いた「一行書」だけでなく、例えば良寛が「天地」の2文字を一筆で書いた書など様々な一行の書も紹介される。それらに託された意味や筆者の個性も注目したいポイントだ。
同時開催は、古代中国の青銅器の鏡の文様に込められた宇宙観や当時の人々の願いに着目した特集と、新年を寿ぐ吉祥の茶道具の取り合わせの展示。年末年始の慌ただしさのなかにあって、心静かに書と古美術に親しむひとときを楽しみたい。
<開催概要>
『企画展 古筆切 分かち合う名筆の美』
会期:2024年12月21日 (土)~2025年2月9日(日)
会場:根津美術館 展示室1
時間:10:00~17:00(入場は16:30まで)
休館日:月曜(1月13日を除く)、12月27日(金)~1月6日(月)、1月14日(火)
料金:一般1,300円、大高1000円(オンライン日時指定予約制)
公式サイト:
https://www.nezu-muse.or.jp/
フォトギャラリー(6件)
すべて見る