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「壽初春大歌舞伎」で上演 尾上右近、中村壱太郎が明かす『二人椀久』への思い

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左から)中村壱太郎、尾上右近

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2025年1月2日(木)に歌舞伎座で開幕する1月歌舞伎座「壽初春大歌舞伎」夜の部にて上演される『二人椀久』は、豪商、椀屋久兵衛と遊女松山の夢の逢瀬を幻想的に描く舞踊作品。取り組むのは、尾上右近と中村壱太郎だ。ふたりは11月に実施された取材会に揃って出席、公演への意欲、作品への思いを語るとともに、仲の良いふたりならではのユーモアあふれるトークを繰り広げた。

ふたりの思いがぴったりと重なって

五世中村富十郎と四世中村雀右衛門の名演で人気を得た舞踊『二人椀久』にふたりが初めて挑んだのは、2018年6月に行われた右近の自主公演「研の會」でのこと。右近が椀屋久兵衛を、壱太郎が松山太夫を勤めてから6年を経ての、歌舞伎座での上演となる。

冒頭、作品への思いを語った右近。「私のルーツである尾上流の代表作といっても過言ではない作品です。私は尾上流の手ほどきを受けたおかげでいまがある。心して取り組みたい」。壱太郎も研の會での上演を振り返り、「何を一緒にやろうかと相談してくれて、では『二人椀久』をと言ってくれたことはすごく嬉しく、同じ熱量のものがあったという気付きにもなった。これからいろんなものを一緒にやっていきたいなと思うきっかけにもなった作品ですし、今回は25日間上演できる。究極に美しい舞台にしたい」と意気込んだ。

2018年「第四回 研の會」『二人椀久』左より、松山太夫=中村壱太郎、椀屋久兵衛=尾上右近 ©研の會(撮影:田口真佐美)

同世代のふたりの仲の良さ、そのわけを問われると、右近はこう語る。「歌舞伎は、歴史と伝統を自分たちがつなげていくという使命がどこかにあって、それが、本当に自分のやりたいこと、その純粋な気持ちと重なったとき、いい仕事ができる。ふたりの思いがぴったりと重なる、こうした作品に恵まれたということも、仲良くやれている理由のひとつだと思います」。これを受けて壱太郎は、「喋らなくてもできる距離感と呼吸が、ここにあるから成り立つのだと思います。僕が吾妻流の家に生まれて、右近くんは尾上流にルーツがある。また初代尾上菊之丞さんがこの踊りを作って私の曽祖父の初代吾妻徳穂と踊っているという、作品との縁もあります。ただ、縁だからやるということだけでなく、根っからこの作品が大好きですし、尾上菊之丞先生にも熱く教えていただいた。それはまさに青春の1ページ。そうした思いも詰まった作品です」と振り返る。

6年前の研の會の翌日、空を見上げ、地方への仕事へと旅立っていった壱太郎の不在を寂しく思い、SNSに「なぜ壱さんがいないんだ」と綴ったと笑う右近。「時が経ち、それぞれ自分たちの道を歩んでいる感覚も強くある。お互いに歌舞伎座でやらせていただく機会が増える中で、より説得力のあるものを、たくさんのものを背負って楽しんでいるふたりとしてのぞみたい」。

歌舞伎の魅力が詰まった、バレエのような作品

今回のこの作品への取り組み方について尋ねられると、「いま、この場で確認しあっている状態」(右近)、「ノー打ち合わせだから」(壱太郎)と息もぴったりに答えるふたりだが、右近は「清元の、歌舞伎の音楽の家に生まれたので、音に対する敏感さは大事にしているつもりです」。さらには、「自分にとっての恋人、松山太夫が幻想として現れ、幻想の中でふたり戯れるあの多幸感、喜びを分かち合う──歌舞伎の型、心から動くものとしての型、振りというものに気付かされた作品でもあります。やれることはたくさんありますが、引き算にもチャレンジしたい」と明かす。若い世代のふたりが歌舞伎座でこうした作品を上演することが、 “当たり前”のことになっていかなければ、という思いも強い。「貪欲に、果てしなく発展していくことが歌舞伎のためになると信じて取り組みたい。後輩たちに、夢を見せていく存在になっていかなければ」とも。

壱太郎は、「一挙手一投足、伝わる踊りにしたい。それは研の會のときから思っていたことですが、ただ、当時は本当に若かったし、思いが強すぎ、引き算どころではありませんでした。まるで付き合いたての恋人のようでしたが、6年が経ち、僕らも大人になり、いまは少し冷めた状態。それは踊りにも出ると思います」。さらには、「この公演で僕は1年ぶりに歌舞伎座に帰ってくることになりますが、やはり、浮ついた心ではいけないなという気がして、いま、ドキドキし始めています」と笑顔を見せた。

お互いの発言をふまえて、「一周まわって、結局研の會のようにやったほうがいいかもしれないし」と右近がいうと、「これまでのこの取材会はなんだったのか!?」と、壱太郎から間髪容れずのツッコミ。笑いながら右近は、「いや、僕らはそのとき感じたことしかできないと思うんです」と付け加えた。

作品の魅力については、「想像力で楽しむことができるのは歌舞伎の魅力が詰まっている。音楽との丁々発止や相手との駆け引き、緩急もある。言葉がわからなくても伝わる、バレエのような作品です」(右近)。「固い蕾が、だんだんふわーっと柔らかく開いてきて、それが全開になり、最後散ってゆく、という感じだなと思っています。そのイメージを持ちながら、究極の美しさを表現したい。シンプルに月と松しかない中での美学を出すことができればいいと思います」(壱太郎)。また、「音楽の構成が素晴らしい。こんなにいい曲はない」と熱く語る壱太郎。右近はこの曲を聴きながらジョギングしていたというが、「緩急が非常に強い音楽──ジョギング向けではないです(笑)」と笑顔で釘を刺した。

最後に、「良い一年のスタートをお切りいただきたいという思いを込めて、生命感あふれる『二人椀久』をお届けします」(右近)、「歌舞伎の踊りってこんなに感動するんだ、こんなに訴えかけるものがあるんだと思える作品を観ていただけると思いますので、ぜひ歌舞伎座にいらしてください」(壱太郎)と公演をアピール。すると右近が「『大富豪同心』を観るついででも構いません(笑)」。ふたりは同じ夜の部、『二人椀久』の後に『大富豪同心』にも出演する。「『二人椀久』の余韻に浸っていられないんです」(壱太郎)、「僕らは、ラインナップ全体に対する思いを持っている世代であるということも打ち出したいですよね」(右近)と本音も明かす。さらに昼の部では、右近は『寿曽我対面』の小林朝比奈を、壱太郎は『陰陽師 鉄輪』で徳子姫を演じる。新春の歌舞伎座でのふたりの活躍から、目が離せない。

<公演情報>
「壽 初春大歌舞伎」

【昼の部】11:00~
一、『寿曽我対面』
二、『陰陽師』
   大百足退治
   鉄輪
三、恋飛脚大和往来 玩辞楼十二曲の内『封印切』

【夜の部】16:30~
一、一谷嫩軍記『熊谷陣屋』
二、『二人椀久』
三、新作歌舞伎『大富豪同心 影武者 八巻卯之吉篇』

2025年1月2日(木・祝)~1月26日(日)
※8日(水)、16日(木)休演
※下記日程は学校団体来観
昼の部:14日(火)、23日(木)、24日(金)
夜の部:22日(水)

会場:東京・歌舞伎座

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2445410

公式サイト:
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/921

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