プロデューサー・ワッキーが熱い思いを語る 舞台『Mother~特攻の母 鳥濱トメ物語~』取材会レポートが到着
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左から)ワッキー(ペナルティ)、浅香唯
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すべて見る鹿児島県南九州市知覧町郡で「富屋食堂」を営み、特攻隊員たちから“母”と慕われ、戦後「特攻の母」と呼ばれた鳥濱トメの半生を描いた舞台『Mother~特攻の母 鳥濱トメ物語~』。この作品は、2009年から2021年まで上演を続けた後、コロナ禍により一時は上演を断念、2025年に待望の上演再開が決定した。
2013年から役者として参加してきたペナルティ・ワッキーが、本公演からプロデューサーも兼務。都内で行われた取材会に主演の浅香唯とともに登場し、作品への並々ならぬ熱い思いを語った。
熱くなりすぎちゃって、ごめんなさい
ワッキーが、なぜ、この舞台でプロデューサーに挑戦することになったのか。まずはワッキーが自ら、その経緯を語った。
「80年前に実際にあったこの出来事を絶対に風化させてはいけないという、強く、清らかな思いで、役者として10年間、この作品に参加してきました。だけど、実際のところは“『Mother』をやるよ”と言ったら、お客さんがワーッと集まってくるという状況ではなかったんです。毎回、スタッフの方たちが一生懸命集客をしてくれていて、それを5年前くらいから僕も手伝うようになりました。それを見た周囲の人たちが“ワッキーさん、プロデューサーやったら?”と勧めてくれて、じゃあ、そうしようかなと。
実際に行動してみると、お笑い芸人の僕だからできることがあるということもわかって、今は、僕が目指している“『Mother』をやるよ”と言うだけでお客さんが集まってくれる状況を目指し、皆で重い石を一生懸命押しているところです。来年の公演で石が転がり出したら、『Mother』はずっと続いていく作品だと思っています。素晴らしい作品だし、実話だし、そこは自信があります」
そう語ったワッキーは、「熱くなりすぎちゃって、ごめんなさい」と少し照れた表情を見せた。
“かわいい”だけが理由じゃない
今回で3度目の鳥濱トメ役を務める浅香は、最初、ワッキーからのオファーを断ったという。
「私のキャラと鳥濱トメさんはイメージが遠いので、私じゃない方がいいよってお断りをしたんです。でも、ワッキーの熱意に押されて、一度やってみようと思いました。トメさんの懐の深い、“The お母さん”という感じに、どうすれば近づけるんだろうと模索して、たとえば見た目やしゃべり方を近づけたとしても、いかにも芝居っぽくて、無理が出てくると思ったんですよね。だから、正直何も考えずに稽古に望むようになりました。
でも、稽古場に入った瞬間に、これから命をかけて戦いに行く若者たちの世界にその場がぐっと引き締まっていて、不思議と当時に帰っていく感覚になって……。だから、役作りをするまでもなく、すごく自然に“この子たちを守りたい”“見送ってあげたい”という気持ちで、トメさんの役に入っていけました。それからは、性別も国籍も問わず、トメさんの大きな心、人間愛みたいなものを、お芝居を通して学ばせてもらっています。
私の今までの仕事の中では非常に異色というか、なかった役なので、今回もまた新しいトメさんが自分の中から生まれてくるんだろうなと期待しています」
これを聞いたワッキーは、「やっぱりこの人でよかったなと思いました」とつぶやくと、その理由をこう語った。
「トメさんの役は、演技がうまいとか、声がいいとかいうことよりも、“トメさんのような人”にやってもらいたかったんです。皆を分け隔てなく平等に扱って、大きな心で、明るくて。浅香唯という人は、トメさんそのものみたいな人。かわいいから、とか、昔ファンだったから、とかじゃないんですよ!……かわいいんですけど(笑)」
特攻隊員役たちの頑張りに涙
また、ワッキーは、本作品ならではの特別な稽古方法についても明かした。
「特攻隊員役の人たちは、普通の稽古の1時間くらい前に集まって、“教練”っていうのをやります。昔の軍人さんたちがやっていた筋トレのようなもので、号令に合わせて動作を揃えたり、腕立て伏せをしたりします。でも、そんな動きは舞台の中には出てこないんですよ。ただ、当時の特攻隊員の方たちに少しでも近づきたいという想いで頑張る。そうすると、舞台上にその効果が滲み出てくるんです。
特攻隊役の子たちは皆若いので、最初はいかにもイマドキっぽい感じで、“大丈夫かな”と心配になるんですけど、毎公演、教練を続けるうちにビシッと特攻隊員の感じが出てくる。“1,2,3!”って、気合が入った声で頑張っている姿を見ると、泣きそうになっちゃって……」
ここまで語ると、ワッキーは感極まって声を震わせた。
戦争を知っている世代もターゲットに
来年は戦後80年にあたることから、80歳以上の方と同伴者1名が無料招待される(各公演上限あり)。その理由を、ワッキーは次のように明かした。
「今までは、戦争を知らない世代をターゲットに、80年前の出来事を知ってもらいたいと頑張ってきたんですけど、来年は戦後80年ということで、戦争を知っている世代の方に見てもらいたいなと、こういう取り組みになりました。同伴者の方も無料にしたのは、80歳以上の方だとひとりでは危ないという理由もありますが、息子さんや娘さん、またはお孫さんと、ご家族で来てほしいという想いもありました」
スーツ姿で営業回りも
取材会では、ワッキーのプロデューサー業にも興味が集まり、具体的な活動内容について、ワッキーはこう説明した。
「スタッフの人たちと、スーツを着てたくさんの企業を回ったり、集客にあたり、中学や高校を回ったりもして、地道な活動をしています。母校の市立船橋(船橋市立船橋高等学校)にも行かせてもらいました。いろいろな会議に参加することもあれば、金持ちの社長さんに連れられて、キャバクラに行ったりもしています。決して、キャバクラに行きたいわけじゃないですよ! 『Mother』のためなら、何の苦労も感じないんですよね」
そんなプロデューサー・ワッキーを、浅香はこう語る。
「私に声をかけてくれたのはワッキーさんだし、いつも“唯さん大丈夫だよ”“唯さんならできるよ”というワッキーさんの言葉を信じて舞台に立たせてもらってきたので、私の中ではずっとプロデューサーだと思ってきました。ワッキーさんもお客さん目線で見て、お芝居のアドバイスをくださったりするので、改めてプロデューサーにというより、プロデューサー業に営業の仕事が加わったのかなという感じです」
新キャスト、ジャンポケ・太田、安藤美姫にも注目
本公演には、新キャストとして、ジャングルポケット・太田博久、安藤美姫が加わる。このキャスティングもワッキーが決めて、直々にオファーしたといい、「太田は熱くていい奴だし、安藤美姫ちゃんは、以前からこの舞台を観に来てくれたりしていて、一度、夫婦コントみたいなのに付き合ってくれたときに、あまりにしっくりきたので、“今度出てくれない?”と誘いました。そうしたらOKをくれたんです」と、抜擢の理由を明かした。
なお、ポスターに豪華なインパクトを添えた明石家さんまの「感動した 実話やから心に突き刺さった これは本物や!」というコメントについて、ワッキーは感謝を込めてこう語った。
「(さんまが)8年くらい前にお誘いしたら、本当に見に来てくださったんですよ。それで、“ええお芝居やな”と言ってくれたんですけど、今回もお電話で“帯にさんまさんのお言葉をいただけませんか”とお願いしたら、このお言葉をくださいました。“頑張れや”とも言ってくださって、ありがたいです。この言葉に後押ししてもらって、勇気ももらっています」
取材会の最後には、「真面目なお願いなんですけど、キャバクラのことばかり書かないでくださいね!」と記者に呼びかけて笑わせたワッキー。そんなワッキーが、プロデューサーとして、役者として、全力をかけて臨む『Mother ~特攻の母 鳥濱トメ物語~』は、2025年3月19日(水) から23日(日) まで、東京・新国立劇場 小劇場で上演される。
<公演情報>
アース製薬100周年 presents『Mother ~特攻の母 鳥濱トメ物語~』
脚本・演出:藤森一朗
出演:浅香唯、ワッキー(ペナルティ)、太田博久(ジャングルポケット)、安藤美姫 ほか
2025年3月19日(水)~23日(日)(全8回公演)
会場:東京・新国立劇場 小劇場
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