【セットリスト】
■山田亮一とアフターソウル
1.最後のふたり
2.リボルバン
3.ネイキッドチャイニーズガール
4.汚言症
5.ワンナイト アルカホリック
6.アバンチュール
7.ポケモンセンター
8.若者のすべて
9.ハイカラさんが通る
■PK shampoo
1.夜間通用口
2.SSME
3.奇跡
4.S区宗教音楽公論
5.m7
6.二条駅
7.星
8.京都線
9.天使になるかもしれない
10.あきらめのすべて
音楽
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『新代田オルタナティヴサミット』 Photo:佐藤瑞起
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すべて見るText : 小川智宏 Photo:佐藤瑞起
PK shampooによる企画『新代田オルタナティヴサミット』が12月12日、新代田FEVERで開催された。初めての開催となるこの『オルタナティヴサミット』(ライブ中にヤマトパンクスは「定期開催していきましょうよ」と「宣言」していた)は「オルタナティヴの頂点を決める」(ヤマト)というコンセプトの対バンイベント。その初めてのゲストとして呼ばれたのは山田亮一とアフターソウル。その名の通りオルタナティヴで、でも心のど真ん中を震わせるロックソング満載となったこのイベントの模様をレポートする。
先攻は山田亮一とアフターソウル。元ハヌマーン、現バズマザーズ、サニアラズの山田亮一が今年新たに結成したバンドだ。本来は8月に大阪で開催されたPK shampoo主催の『PSYCHIC FES 2024』で初ステージを踏むはずだったが、山田が大麻の不法所持疑いで逮捕されたことを受け出演キャンセルに。出所後の8月30日にTHE NEATBEATSとのツーマンライブで復帰し、今回ようやくPKとの対バンが実現した。
フィードバックノイズがけたたましく鳴り響き、幕を開けた山田亮一とアフターソウルのステージ。山田が「アフターソウル、いきます!」と言って1曲目「最低のふたり」を歌い始める。とたんにあたたかな温度をもったロックンロールが転がり出した。続いてハヌマーンの楽曲「リボルバー」が繰り出され、さらに「アフターソウルにかまってちょうだい」という言葉とともにこちらもハヌマーン時代の楽曲「ネイキッド チャイニーズガール」へ。山田とギターの田中耕平、ベースのジャパ・ザ・グルーヴィが軽やかにサイドステップを踏む。ダイナミックなリズムに手拍子が起き、フロアからも歌声が上がる。そして「本日の夢先案内人はこの人」という紹介とともにジャパ・ザ・グルーヴィのベースが鳴り響き、水野絢太のドラムからソリッドでスリリングなロックンロール「夕凪」へ。山田と田中のツインギターフレーズも炸裂したこの曲を歌い終えると、山田は深々と一礼した。
その後も畳み掛けるようにステージは展開していった。「楽しい歌謡曲を歌います」と新曲(これがアッパーな上にキャッチーでいい曲だった!)を披露すると、イントロのギターが鳴った瞬間に歓声が湧き起こった「ワンナイト・アルカホリック」がさらにフロアを盛り上げ、かと思えば一転、「アバンチュール」では妖しげで切ないムードを漂わせる。「僕とみなさんの共通項は音楽が好きだってことやと思う。でもいちばんの違いは、僕はライブは好きで、ライブハウスは嫌いなんです」。「アバンチュール」を終えた山田がそう話し出した。そしてライブハウスが苦手なのに今日の2組を観るために這うようにしてここにやってきた「少数派」を讃えると、自分もかつて同じような思いをしたことがあった、と続けた。
「病んでいて外に出られないときに頑張ってポケモンセンターに行ったことがありました。そのときの歌を歌います」。繊細なアルペジオと優しいビートがフロアを心地よく揺らし、ライブは一気に終盤に入っていく。「一緒に熱くなってくれる?」と水野の力強いカウントとともに始まっていったのはハヌマーンの大名曲「若者のすべて」。荒々しくがなり上げるような山田の声に合わせて、FEVERに大絶叫が巻き起こる。一瞬にして何かを呼び起こされるようなこの感覚は、この曲に封じ込められた思いが今なお死んでいないことの表れだ。
と、ここでバスドラが破けるというまさかのハプニング。「(直すのに)どれくらいかかります?」と聞いた山田が間を繋ぐようにギターをかき鳴らして歌い出す。「アナーキー・イン・ザ・1K」だ。予想外の1曲にフロアでも歌う人が続出。期せずして訪れたクライマックスが美しい光景を描き出した。そして最後に「ハイカラさんが通る」を披露すると、「ありがとうございました!」と去っていった山田とバンドメンバー。ぎゅっと締まった演奏と曲そのもののエネルギーが相乗効果でどんどん高まっていくような、最高のライブだった。
そして後攻、PK shampoo。SEにのせてメンバーが登場した瞬間にフロアから声が上がる。と、ヤマトパンクスがアカペラでハヌマーン「アパルトの中の恋人達」の一節を歌い出した。そこから「PK shampooです、よろしく」と「夜間通用口」に突入していく粋なオープニング。ヤマトはかつてこの曲のカバー動画をアップしていた。彼なりの山田へのリスペクトでありエールなのだろう。
「夜間通用口」でシンガロングが巻き起こる中、すかさず「SSME」を繰り出す。胸に迫るメロディと塊のようなバンドサウンド、つまりこのバンドの最強の武器が全力でこちらに向かって飛んでくる。ヤマトのシャウトが轟き、続く「奇跡」でもイントロから大歓声を生み出すと、フロアはすっかりカオティックな熱狂に包まれた。
ここまで3曲を終え、ヤマトが先ほどのアフターソウルのライブについて「めちゃめちゃ、楽器のレベルで負けてない?」と口を開く。それに「でもあれ、練習してますよ」と応じるのはドラムのカズキ。「でも、魂では......」(ヤマト)「負けてるっす」(カズキ)。「負けてるんかーい!」というヤマトのベタなツッコミがオーディエンスを沸かせる。
そこからギター・福島カイトのしょうもない夢の話、そして彼が免許を取ったという話に。福島はそれを受けて「任せてください。どこへでも連れて行くっすよ。夜のサイドレバーは引かないっすよ」と胸を張る。「夜のサイドレバー」という言葉の意味の分からなさに「合ってる? それ」(ヤマト)「左ハンドルやん」(ベース・ニシオカケンタロウ)「ほんまに免許持ってる?」(ヤマト)と容赦なくツッコみが入る。結局この言葉で福島はライブの最後までイジり倒されることとなった。
そんなMCのふざけた感じと、いざ曲が始まったときのピンと張り詰めた緊張感、その落差、お笑い的に言うなら緩和と緊張のコントラストがPK shampooである。ダークな照明の中「S区宗教音楽公論」がずっしりとした質感とともに披露されると、そのままギターのサウンドでつなぐようにして「m7」。フォーキーなメロディにのせたヤマトの言葉にならない叫びが会場の空気をさらに熱くさせる。どこまでも高まっていくようなその歌に圧倒される。
そこからバンドのグルーヴが炸裂する「二条駅」へ。ヤマトの歌に福島とニシオカの声が重なり、分厚い音の塊となってでっかく広がっていく。音の手触りは間違いなくオルタナティヴ、だがその声の力強さとエモーショナルさは、ジャンルもスタイルも超えて心を鷲掴みにする求心力を持っている。
それほど圧倒的な曲の後に昨日朝から朝まで20時間飲んでた、と話し出すヤマト。さっきの「夜のサイドレバー」をもう一度イジるなど、またしてもユルい空気で繰り広げられる会話の果てに「最高の演奏見せてもらった後でこんなMCしてアレですけど」というヤマト。そんな彼に福島が「もう、あの伝説の曲をやるしかないんじゃないですか?」と問いかける。「俺が21歳のときに河川敷で書いたあの曲?」と始まっていくのは「星」だ。眩い光がステージを包み込む中、ノイジーなギターと重いベースが鳴り響いた。
さらに「京都線」ではヤマトの声がさらに感情を帯び、福島のコーラスがそれを増幅する。そろそろライブも終わりが近づいてきた頃だが、FEVERを覆う空気はどんどん濃密になっていく。
ダイバーも出現した「天使になるかもしれない」で本編を終えると、アンコールでヤマトは「オルタナG7を招聘する」と今後の『オルタナティヴサミット』について話し出す。誰を呼ぶか、という話で出てきた名前がニルヴァーナだったりしたのはともかく、今後このイベントがどうなっていくのか、本当に楽しみではある。
そしてそのアンコール、いきなりタイトルも未確定の新曲を披露。前のめりなギターリフと歌が炸裂する、気合の入った曲だった。さらにスケールの大きな「天王寺減衰曲線」を届けると、最後は「あきらめのすべて」。すべてを出し切るような渾身の演奏を見せつけると、ついに第1回『オルタナティヴサミット』は幕を下ろした。
この『オルタナティヴサミット』、次回は来年3月29日(土)に彼らのホーム・大阪の味園ユニバースで『千日前オルタナティヴサミット』として開催される。5月に取り壊しが決定している味園ユニバースでの、PK shampooラストライブだ。出演はこの日の2組と時速36km。きっといろいろな物語が乗っかって、最高の1日になるに違いないこのイベントにも要注目である。
<公演情報>
『新代田オルタナティヴサミット』
12月12日(木) 東京・新代田FEVER
出演:PK shampoo / 山田亮一とアフターソウル
■山田亮一とアフターソウル
1.最後のふたり
2.リボルバン
3.ネイキッドチャイニーズガール
4.汚言症
5.ワンナイト アルカホリック
6.アバンチュール
7.ポケモンセンター
8.若者のすべて
9.ハイカラさんが通る
■PK shampoo
1.夜間通用口
2.SSME
3.奇跡
4.S区宗教音楽公論
5.m7
6.二条駅
7.星
8.京都線
9.天使になるかもしれない
10.あきらめのすべて
<イベント情報>
『千日前オルタナティヴサミット』
2025年3月29日(土) 大阪・味園ユニバース
出演:PK shampoo / 山田亮一とアフターソウル / 時速36km
※チケットSOLD OUT!
PK shampoo 公式サイト:
https://pkshampoo.jp/
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