TETSUYAが魅せた真冬の夜の夢 <TETSUYA Billboard Live Tour 2024> Billboard Live横浜公演ライヴレポート
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<TETSUYA Billboard Live Tour 2024>12月9日 Billboard Live横浜
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すべて見る本体のL’Arc~en~Ciel、さらには、そのコピーバンドとして始動させたLike-an-Angelでもベースを弾いているTETSUYAが、自身が作る楽曲をヴォーカリストとなって歌う形でソロ活動を本格的にスタートさせたのは2001年のこと。
ベーシストとしては、多くのミュージシャンの憧れの的となる独自のプレイスタイルを築き上げた文句なしのスーパープレーヤー。ソングライターとしての彼もまた、誰もが知るラルクの数々のヒットソングを手掛けてきた人物で、作品やライヴにおいては、ベースを弾きながら長年、重要なコーラスパートを担ってきた。
そんな実績があったとはいえ、本職がベーシストのバンドマンが、ソロシンガーとしてここまで活動を続けているのはかなり異色なこと。そんなTETSUYAが作るサウンド、歌が評価され、2022年からはあの格式高い音楽ブランドであるBillboard LiveがトップアーティストとしてソロのTETSUYAを迎え入れ、以降毎年この場所でライヴを行なってきた。
そうして、今年の冬もまた、そんなTETSUYAが東京、横浜、大阪の3会場を巡る<TETSUYA Billboard Live Tour 2024>を開催した。これで、Billboard Liveにおいては、3年連続でステージ開催を達成したことになる。各地のBillboard Liveでラグジュアリーなステージを展開し、TETSUYAがひと足早いクリスマスプレゼントを届けていったこのツアーのなかから、ここではBillboard Live横浜公演の1stステージの模様をお届けしよう。
クリスマスムード満点のBillboard Live横浜 夢のステージが始まる
毎年、クリスマスシーズン到来とともに始まるTETSUYAのソロツアー。この日の会場となったBillboard Live横浜は、フロア上部にあるスパイラル型のシャンデリアが印象的な場所。そのシャンデリアの形を模倣したようななんともアーティスティックなクリスマスツリーが、会場に訪れた観客たちをエントランスで出迎える。もうここから、会場はクリスマス仕様。
そして、場内に入ると、横浜の赤レンガを思わせる赤い緞帳には雪の結晶の影が投影されていて、ここにいるだけでラグジュアリーなクリスマスムードに包まれていく。
お客さんたちがテーブルで食事を終えた頃、可動式のシャンデリアが畳まれていって場内は暗転。フロアの下手の奥から、TETSUYAが登場してくる。観客に手を降りながら客席の通路を歩いてステージまで行くというサービスに、早くも歓声が上がる。
ライヴはカッコよく「FATE」、「誰がために鐘は鳴る」というシリアスなナンバーを続けざまに歌い、オープニングから緊迫した空気を場内に作り上げて開幕。この日のTETSUYA以外のメンバーは、お気に入りの椅子たちに加えて、これまでレギュラーだったフランスからやってきたヴィンテージの譜面台は、顔が隠れて見えないという観客の要望に応えてシンプルな台へとメンバーチェンジ。
さらに、マイクも通常のワイヤレスマイクはMCのときだけ使い、歌唱するときは、なんとTETSUYAが実際にレコーディングで使用しているという有線の高性能マイクが舞台に登場! 会場内の音響の良さはBillboard Live最大の魅力。それを最大限に生かそうと、アコースティック仕様にしたバックトラック、自身のコーラスをBillboard Live用にわざわざレコーディングし直した。
それに続いて、今回のツアーでは、歌をよりいい音質、音響で届けるために、自前のレコーディングマイクを自ら持ち込んでいたのだ。ライヴ中は、数曲ごとにこのマイクをつけたスタンドの角度を変えて歌っていくため、どの着席エリアからもTETSUYAの歌っている顔が様々な角度から見られるようになっていた。TETSUYAらしいこの気遣いは、ファンも嬉しかったはずだ。
このような、いままでにない新しい試みを取り入れていた今回のツアー。ライヴは、3曲目のTETSUYA王道のキラーチューン「Make a Wish」が始まると、それまでの緊迫したような重たい空気感がガラリと変わり、客席ではペンライトが揺れ、TETSUYAの爽やかなポップセンス溢れるメロディーがライトとともにキラキラ輝きだす。
歌い終えた直後、「てっちゃーん!」と黄色い声援が場内のあちこちから上がっていく様子は、まるでアイドル(笑)。それに応えて「はーい、てっちゃんでーす!」と可愛い女性アイドルのようなハイトーンヴォイスで挨拶をするTETSUYA。アーティストとファンが、お互い分かった上で、こういう遊びがあうんの呼吸で成り立ってしまうのがTETSUYAのソロライヴの楽しいところ。
そして、この日は、車検後に部品交換をしていてやっと戻ってきたという愛車を自ら運転して会場入りしたことを伝えた後、Billboard Live東京公演後「なにしてたん?」と観客に友達のように話しかける。TETSUYA自身は断捨離をしていたそうで、その断捨離後の水拭きで手、指先が荒れているので「見ないで」といって指を隠す。その振る舞いが愛らしくて、ファンは「ドラえもん(の手)みたい」といって悶絶。そんな細やかな動きまですべて見えてしまうところもBillboard Liveのいいところだ。
このあとはマイクスタンドの向きを変えて、ラルクでは出てこないような曲調をポップソングへと見事に昇華させた「愛されんだあ」へ。ここではTETSUYAが作った難易度高めのクラップ構成を、客席が一丸となって、間違えないように一生懸命クリアしてステージを盛り上げていく姿が、何度見ても愛おしい。
続けて「白いチューリップ」が始まると、観客たちはそこからすぐに気持ちを切り替え、歌に全集中。闇から光が舞うまでの物語の流れを、TETSUYAらしい高低差を存分に生かしたメロディー展開で描き出していくこの曲。レコーディングマイクを通して聞えてくる歌は一音一音がとても滑らかで、すぐそばで歌っているような距離感で届いていくため、この曲はとくに歌詞の世界観とも相まって、胸が痛いぐらい締め付けられる思いがした。
最後に“今の僕ならば笑って許せる”をオクターブ下で歌ったところは、TETSUYAの太く、艶っぽい低音ヴォイスがマイクの性能のお陰なのか、さらに色気を増して響いてきて、観客たちはその声にしびれてうっとりしていた。まだその声が残響となって耳の奥に残っているなか、TETSUYAのこの時期のライヴには欠かせない極上のウインターソング「lonely girl」が始まる。TETSUYAの歌を聴いているだけで、情景が目の前に鮮明に広がっていくこの曲では、照明が美しい雪の結晶や舞い散る雪を映し出していき、冬をファンタジックに演出していった。
まるで相席? 距離の近さが魅力のBillboardで「セクシー!」
歌い終えたTETSUYAがジャケットを脱いで、白シャツ姿になると「てっちゃんセクシー!」といってファンは大喜び。仕立てのいいファッショナルブルな白シャツは、今回のツアーの衣装のテーマ。
シャツ姿で下手の椅子に座るなり「(客席との距離が)近いよね。相席してるみたい」といって「どうも、TETSUYAです」と挨拶までするTETSUYA(微笑)。観客たちはここでLike-an-Angelからブームになっている「ヒューヒュー」を一斉に繰り出す。この、お客さんたちのタイミングをバッチリ押さえた「ヒューヒュー」には、TETSUYAも思わずにんまり。そうして、このあとはしばらくファンとマイク談義を交わす。MC用のワイヤレスマイクと、歌うときに使っている有線のレコーディングマイクだと、客席に届く声はどのように違うのかをファンに尋ねると、観客からはレコーディングマイクを通した声のほうが「太くてセクシー」という反応が返ってきた。
それを聞いたTETSUYAは「そうか」といいながら「でも、ハンドマイクのほうは声の抜けがいいよね」と解説。
そうして、このあとは「REGRET」からライヴを再開。音源ではデジタル色を押し出したこの曲、Billboard Liveではアコースティックアレンジにすることによって、絶望に墜ちていく様がより凄みを増して伝わってくる。そうして、次にきらめくポップナンバー「I WANNA BE WITH YOU」へとつなぐと、奈落の底からいっきに視界が晴れ、心が踊りだす。間奏ではTETSUYAが私物の小さなフォグマシーンを取り出し、スモークを自分の周辺、さらには客席にも吹きかけるという特効係を自ら担当(微笑)。これで会場には笑顔が広がり、みんなの心が軽くなって身体ごと気持ちよく羽ばたいていったところで本編はフィニッシュとなった。
クリスマスライヴの魔法は2025年へ続いていく
アンコール、TETSUYAは『To-y』の原作者である上條淳士の画家40周年というアニバーサリーにリスペクトを込めて、GASPTシャツを着用して登場。ソロになった頃に描いてもらったTETSUYAの原画イラストは、HYDEのものとともに上條の展示会で展示されている。
マイクを持ったTETSUYAは「今年はラルクのツアーもライクのツアーもTETSUYAのツアーもやって。なんやかんややってるわ」と2024年を振り返った。
そして「2025年もラルクのドームがあって、ライクも決まってて」というと「TETSUYAは?」という声が上がり、それには「まだ分かりません」と返答しつつも「みんな、楽しみやな。僕も楽しみ」と来年の抱負を伝えた。そうして、アンコールはサイドに設置した照明がTETSUYAを両方から照らすなか、元気なポップロック「Eureka」でスタート。“悪い事はもう起こらない”とTETSUYAが音楽で会場全体に魔法をかけていったあと(本当にそんな気持ちになるから不思議だ)、最後には名バラード「15 1/2 フィフティーンハーフ」を観客みんなにプレゼント。
曲が間奏にさしかかるとミラーボールがゆっくりと回りだし、そのキラキラした光が希望を与えるように観客ひとり一人を照らし出していき、会場全体が多幸感に包まれていったなか、ライヴは終わりを告げた。「まったね~」と生声で挨拶をして、みんなに手を振りながら再び客席の通路を通り抜け、会場を後にしたTETSUYA。そうして、この後の2ndステージでは黒サンタTETSUYAも登場し、その姿のまま歌の歌唱をプレゼントした。
このツアーで、2024年のソロ活動を締めくくったTETSUYA。2025年は1月18日、19日にL’Arc~en~Cielとして<L’Arc~en~Ciel LIVE 2025 hyde BIRTHDAY CELEBRATION>を東京ドームで開催。さらに、4月26日にはLike-an-Angelとしてワンマンライヴ<LIVE 2025 Angel beside yoU>をEX THEATER ROPPONGIで開催することがすでに決定。2025年もラルク、ライク、ソロと忙しく活動していくTETSUYAに大いに期待していて欲しい。
取材・文:東條祥恵
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