「アメコミ好きにはたまらない」(by 有澤樟太郎) ミュージカル『ヒーロー』が日本初演へ 主演・有澤樟太郎が魅力を語る!
ステージ
ニュース
有澤樟太郎 撮影:石阪大輔
続きを読むフォトギャラリー(8件)
すべて見るミュージカル『ヒーロー』が2025年2月6日(木) から東京・シアタークリエで日本初演される。
過去にトラウマを持ちながらアメコミ漫画家を目指す主人公のヒーロー・バトウスキーを演じるのは、『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』にてジョナサン・ジョースター役で主演を務め、近年ではミュージカル『グリース』、ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』、ミュージカル『のだめカンタービレ』といった数々の話題作に出演している有澤樟太郎。
今回、有澤に本作に懸ける思いや見どころ、そしてアメコミ愛を語ってもらった。
こういうミュージカルが見たかった!
――いよいよミュージカル『ヒーロー』のお稽古が始まりました。今の心境は?
有澤樟太郎(以下、有澤) 歌稽古からスタートしたのですが、すごく楽しいです。まず、台本をいただいて読んでみたらとても好きなお話だったんです。さらに曲も素晴らしくて!モチベーションが高い状態で稽古に入れています。
――作品のどんなところが有澤さんのツボだったのでしょう?
有澤 人間ドラマなんです。家族の話だったり、友人の話だったり、その友人の恋愛模様だったり、僕が演じる主人公のヒーロー・バトウスキーも含めて出てくる登場人物は基本何かを抱えているのですが、彼らが前向きになる姿は共感を呼ぶと思います。
舞台はアメリカのミルウォーキーで、規模感は決して大きくはないですが、その分いい感じにこじんまりしていることも関係しているのかもしれません。とにかく「こういうミュージカルが見たかった!」と思う作品でした。
――日本初演ということで、その点に対する意気込みを改めて教えてください。
有澤 もちろん主役を演じられるという嬉しさもありますが、「よくこの題材を見つけてきてくれた!」という感謝の気持ちが大きいです。『ヒーロー』は日本初演ですが、演出家は個人的にとても信頼させていただいている上田一豪さんですし、稽古の段階から曲も歌詞も上演台本もすべて出来上がっている状態で臨めるので、正直、何も不安がない状態です。そんな環境を整えてくださっているスタッフの皆さんにも感謝の気持ちでいっぱいです。
上田一豪さんは「自然とその世界に連れていってくれる」
――上田さんとはミュージカル『グリース』などでもご一緒されていますが、上田さんが手掛ける演出についてはいかがですか?
有澤 上田さん演出の『グリース』、そして『のだめカンタービレ』は、それぞれアメリカの学園もの、日本の音大生の話だったんですが、上田さんはその時代や国などの背景をとても巧みに作られて、自然とその世界に連れていってくださる演出家さんだと思います。
何気ないことなんですけど、『グリース』のときに上田さんがハンバーガーを差し入れてくださったんです(笑)。作品的にハンバーガーを食べて、革ジャンを着て、これぞアメリカ! みたいな話だったので合わせてくださったのかな。ご自身が意識されてのことなのかわかりませんが、そういう細やかな気遣いが感じられました。今回もきっと自然に『ヒーロー』の世界に連れていってくださるんだろうなと思っています。また、上田さんは翻訳も手掛けられているのですが、歌詞も含めて言葉選びが素晴らしいんです。
――演じられるヒーロー・バトウスキーという人物について教えてください。どういうところに共感を覚えますか?
有澤 まずは「普通の人」というところです。ヒーローは28歳で、僕も今29歳なので、等身大で共感しやすいです。でもヒーローは過去の事件からトラウマを背負っていて、ちょっと前に進めなくなっているんですけど……。
“共感”とはまた違うかもしれませんが、僕、この作品ですごくいいなと思うのが、12歳のネイトという少年の存在です。コミックオタクで、ヒーローの父と仲がいい役。
以前、僕はご近所付き合いが密にある、アットホームなマンションに住んでいたんですけど、そのとき僕の家に自由に入ってくる少年がいたんです。僕が10歳、11歳ぐらいのとき、その少年は5歳ぐらいだったかな。年齢が離れているけど遠慮せず家に入ってきて、対等に話したり遊んだりしていたんです。本当は「なんでこんな小さな子と遊ばなくてはいけないんだ」と歓迎していなかった部分もあったんですけど(笑)、ふと「今どうしているのかな」と思い出してしまう。
台本を読んで、僕はその少年のことを思い出しました。遠慮のない感じもネイトに似ているし、ネイトは12歳、ヒーローは28歳ですけど、あのときの僕らの関係性に似ている気がします。ネイトとヒーローの関係性はこの物語のキーになるので、役作りをする上では大切にしたいです。
――身近な存在が思い浮かぶのは面白いですね。ヒーローは自身を「傍観者」と言っていますが、その点はいかがですか?
有澤 そうですね。たいていの人は自分が主人公だと思って生きていると思うんです。僕もあまりにもうまく行きすぎているときは「自分が主人公だ!」なんて調子に乗ってしまうことがある(笑)。でも、ヒーローは客観的にいろいろなことを見ていて、自分が描く漫画の世界でも、自分は登場せず傍観者なんです。そこはすごく共感できるかも。僕も自分の物語は絶対に描けないですから。
子どもの頃はヒーローに憧れていたし、アメコミも大好き!
――ところで、有澤さんはアメコミ(アメリカン・コミックス)がお好きなんですか?
有澤 大好きです! 特にマーベルの『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』が大好きです!『アイアンマン』の映画第一作が2008年に公開されていますが、『ヒーロー』の舞台も2008年で、アメコミの実写化が盛り上がっている時期の話なんです。セリフや歌にもいろいろアメコミ関連の要素が散りばめられているので、アメコミ好きにはたまらないと思います。いやぁ、アメコミを通ってきてよかったです、セリフを読むのも言うのも楽しいですもん!(笑)
――アメコミが大好きなことが伝わってきます(笑)
有澤 日本のヒーロー系は変身してコスチュームを身にまとう作品が多いですよね。でもアメコミだと、例えば「ハルク」は緑色の筋肉隆々としたキャラクターですけど、実はガンマ線を浴びているからそうなっているし、「スパイダーマン」は蜘蛛に噛まれたからああいう姿になっている。そういう背景が物語を面白くさせると思います。マーベル作品などに出てくるヒーローたちは、みんなちょっと裏の顔があって、むしろその部分がフィーチャーされる。そういう人間ドラマ的な部分にも惹かれます。
――今回の『ヒーロー』もそうした人間ドラマが魅力、と。
有澤 はい。先日、とある後輩とご飯を食べにいったんですが、そのとき後輩が「次、『ヒーロー』ですよね? シアタークリエですよね?」と聞いてきたので、「そうだよ」と言ったら「戦うんですか? 大変ですね」と返されて(笑)。もしかしたら僕が何かと戦うと思って、間違えてチケットを購入される方がいるかもしれませんが、今回は人間ドラマです(笑)。
――分かりました、しっかり記事で伝えます(笑)。有澤さんは「ヒーローに憧れてヒーローに救われた」とオフィシャルコメントに書かれていますが、有澤さんにとってのヒーローとは?
有澤 子どもの頃から仮面ライダーや戦隊ヒーローが大好きだったんです。その頃の将来の夢は消防士だったり、警察官だったり、戦隊ヒーローの影響を多分に受けたヒーロー的なポジションの職業でした。
ヒーローはやっぱり格好いい。いつも夢を壊さないでいてくれるのがいいですよね。子どもの頃、ヒーローショーのようなイベントによく連れていってもらいましたが、僕は「本当にテレビに映っているヒーローたちがそこにいる!」と思い込んでいました。子どもに夢を与え続けてくれる存在です。それがすべてではありませんが、僕もやっぱりヒーローに憧れていたから、この仕事を目指したところがあります。
ですから、ファンの方に「有澤さんは私のヒーローです」とお手紙などでいただくと、とても嬉しいです。20代前半の若い頃は「子どもたちの憧れの存在になりたい」という夢がありましたが、そうでなくとも、僕が舞台に立って役を演じたり、僕の何気ない一言だったりで救われている人がいると思うと責任のある仕事だなと思います。
最高の日本初演をお届けします! ぜひ劇場で!!
――本作は2025年2月から上演されます。2024年はどんな一年でしたか? また、2025年の抱負も教えてください。
有澤 新作オリジナルミュージカルから始まって、ドラマにも出演して……それほど舞台に多く出演していたわけではありませんが、すごく充実した一年でした。漢字一文字で言うなら、変化の「変」かな。仕事でも私生活でも変化がありましたし、「今のままではダメだ。変わらないと」という思いも芽生えました。そして2025年は、『キンキーブーツ』、そして『ヒーロー』と、ミュージカルの年になりそうなので、自分の弱点と向き合いながら、自信を持って舞台に臨めるよう頑張ります!
――最後に改めて上演を楽しみにしていらっしゃる皆さんへ意気込みをお願いします!
有澤 キャラクターも素晴らしいし、集まっているキャストのみなさんも素晴らしいし、音楽も上田さんの演出も素晴らしい! 日本初演でいいものを作って、皆さんに早くお届けしたいです。ぜひ楽しみにしていてください!
取材・文/五月女菜穂
写真/石阪大輔
<公演情報>
ミュージカル『ヒーロー』
日程:2025年2月6日(木)〜3月2日(日)
会場:シアタークリエ
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/musical-hero/
フォトギャラリー(8件)
すべて見る