中島裕翔が大切にしているアイドル観「相手の幸せが、自分の喜びに繋がる」
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中島裕翔 (撮影/梁瀬玉実)
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すべて見る爽やかさとユーモアな気質を、違和感なく兼ね備えている人物は、そう多くはない。俳優としての活動も目覚ましい中島裕翔が、映画『366日』で“良い人すぎる”幼馴染・琉晴を演じた。ヒロイン・美海(上白石萌歌)に対し献身的に尽くす姿は、演じた中島本人でさえも「良い人すぎますよね」と開口一番に飛び出るほど。そんな役柄の解釈から、話を聞いた。
琉晴は「良い人すぎる」
本作で演じた琉晴は、中島いわく一言で人柄を表すと「良い人」。それも「良い人すぎます。美海にとって、こういう人がいてくれてよかったなと思える人」だという。「琉晴を演じてみて、こういう人に対する憧れがあることを自覚しました。本当に、素敵な役をいただいたと思います」と中島は述懐する。
「美海の幼馴染である琉晴は、誰よりも彼女の近くにいて、誰よりも彼女のことを考えていました。それでも、なかなか思いが通じない。そんな背景があると僕自身わかっているからこそ表現するのが難しくて、琉晴の良い人すぎる側面をどうやって嫌味なく演じられるか、チャレンジングでもありました」
沖縄が舞台である本作。中島が演じた琉晴も、全編を通して沖縄の方言で会話をする。「方言指導の方がついてくださって、みっちり教えていただきました」と中島自身が言うように、彼の話す方言はどこまでも自然だった。
「沖縄の方言特有のイントネーションを叩き込んでも、琉晴という役に落とし込んでセリフを口にしたり、実際のお芝居を通して湧く感情によって、方言そのものも変わっていく側面があるんです。指導の方と相談しながら、少しずつ違和感のないように仕上げていけたと思います。でも、すごく難しかったです」
役柄上、赤楚衛二演じる湊とは数えるほどしか共演シーンがない。限りある貴重な時間を実り多くするために、という強い思いで「感情をぶつけました」と表情を綻ばせる中島。
「赤楚くんとは唯一の同世代でしたし、いま振り返っても、もっと一緒にお芝居したかったなと思います。撮影日数でいったら3日間くらいだったんじゃないかな。少ない共演シーンに、ありったけの熱量を込めました。赤楚くんも受け止めながら、上回る熱量を返してくれたし、充実した時間でしたね」
反対に、共演シーンの多かった、美海を演じる上白石萌歌に対しては「笑顔の絶えない人」。「他愛もない話だってできる、誰に対しても分け隔てなく接することのできる、常に明るい素敵な方」と評する丁寧な言葉には、琉晴の美海に対する目線と、中島自身の誠実さが内包されているように思えた。
もう一度行きたい、縁を感じる沖縄の地
東京とは違った空気が流れる、沖縄独特の風や香りを全身で感じながらの撮影。中島の撮影シーンは、一日一シーン、午前中で終了になる日もあった。「たくさん沖縄を観光させてもらいました」と話す穏やかな口調には、現地のゆったりとした時間の流れが垣間見える。
「現地の方を観察していると、東京とは時間の流れが違うな、と感じる瞬間もありました。ゆったりとしていて、自然と気持ちがおおらかになる。那覇市はもちろん、今帰仁のほうにも行かせてもらって『より現地の人の空気感を味わうために』って口実で、しっかり観光しました(笑)」
とくに「今帰仁の方には、すごくお世話になった」とのこと。有名な今帰仁スイカを現場に差し入れするために探すも、なかなか見つけられなかったエピソードについて話してくれる。
「ぜんぜん見つからないから、諦めかけてマネージャーさんと男二人で、かき氷屋をハシゴしたんです。2店舗目に行った店員さんにダメもとで聞いてみたら『知り合いのところにあるかもしれません』って、わざわざ聞きに行ってくれて! 直売所に掛け合ってもらって、ようやく今帰仁スイカに巡り会えました。すごいご縁だなあと思いました」
人の優しさに触れ、貴重な今帰仁スイカの味も確かめられた撮影期間。縁を感じる沖縄の地に、中島は「また、お礼も兼ねて遊びに来たいです」と心を寄せた。
Hey! Say! JUMPで一番“良い人”なのは?
中島が演じる琉晴は、本人も口にするように、少々献身的すぎる“良い人”だ。ヒロイン・美海の幼馴染として、ときには自己犠牲に徹する瞬間もある。男性アイドルグループの一員として、日々、テレビ出演やライブパフォーマンスをする中島自身「琉晴みたいに、優しすぎるがゆえに、自分を犠牲にしてまで人の幸せを願ってしまう性については、アイドルも似ているのかも」と話す。
「どれだけ忙しくても、応援してくれるファンの方がいてくれるんだと思ったら、笑顔でカメラの前に立つことができます。それを自己犠牲と言ってしまうと言葉が強すぎるけど、基本的に『相手の幸せが自分の喜びに繋がる』っていう考え方を大事にしています。ネタバレになっちゃうから言えないですけど、この作品の琉晴だって、優しいだけじゃない一面がありますしね」
どんなに優しく穏やかな人でも、自分の欲に逆らえない瞬間がある。「それこそがリアリティだなと思います」と話す中島は、演じた役柄と自分自身の立場を、違和感なく地続きに捉えるフラットな視点を持っている。
そんな中島に「周りでもっとも良い人といえば?」と問いを向けてみると、「(うちのグループの)有岡かな」と悩まずに即答した。
「あの人は、誰も傷つけないんですよ。人の話を聞いたり、意見したりする姿勢を見ていると優しいな、と感じます。とくにグループとして複数人で活動していると、みんな本気であるがゆえに議論になる瞬間があると思う。有岡はどんなときも『YES AND』のスタンスで他者の話を聞くんです。相手の意見を聞き入れたうえで、しっかり自分の考えも伝える。優しいし、誠実ですよね。でも、本当に自分にとって興味のない話を聞いているときは、わかりやすく顔に出てますけど(笑)」
自分の意見とは違う考え方を提示されたとき、反発するのではなくいったん受け入れ、グループとしてより良い方向を探る。いわば緩衝材のような存在がいるのと同時に、そんなグループを俯瞰して個々の美点を掬ってみせる、中島のような存在も不可欠に違いない。
「僕は、自分の意見を主張するのが苦手というか、いわゆる『0→1』があまり得意ではないので、ほかのメンバーに任せている面も多いです。『こんなのどう?』って提案してみるときもあるけど、基本的には全体のバランスを見るようにしているかも。うちは賢いブレイン的なメンバーが集まっているので、僕はプレイヤーに徹しているかな。とくに、ライブの時は。僕らが周りに気持ち悪がられるくらいに仲が良いのは、お互いの得意・不得意を理解しながら、自然に立ち回っているからなんだろうな、と思います」
中島裕翔の忘れられない一日
赤楚衛二演じる湊は、音楽に救われた。アーティストとして常に音楽が身近にある中島にとっても、音楽に救われた瞬間が、これまでにあったのだろうか。
「月並みですけど、落ち込んでいるときに明るい曲を聴くと気持ちが上向きますし、ストレスが溜まっているときにゴリゴリのロックを聴くとスッキリしますし。僕はドラムをやっているので、ロックな曲を思いっきり叩くとストレス発散できます。音楽は、普段意識しないほど身近な存在であるぶん、常に助けられていますね」
映画『#マンホール』(2023)で主演を務めた際も、音楽が役作りの礎となった。役に合ったテーマソングを割り振られ、それが中島いわく「ガッチャガチャで、すごくヘビーな曲」だったからこそ、川村俊介というクレイジーな役が仕上がった。「僕たちの曲を聴いて、元気をもらえました! と言ってもらえる機会も多いです。やっぱり、音楽には力があるんだと感じます」と和やかに笑う。
「昨年、札幌ドームでおこなわれたフェス『SAPPORO MUSIC EXPERIENCE 2024』に参加させてもらったんです。僕にとっては初のフェス参加だったので、もう、すっごく楽しくて! 僕たちだけじゃない、ほかのアーティストのファンの方もたくさんいるなかでパフォーマンスするのは、緊張しましたけど良い経験でした。皆さんすごく優しいですし、普段まったく違うジャンルの音楽を聴いている方でも、一致団結して会場を盛り上げるパワーを感じて。ステージに出る直前まで『盛り上がってくれるかな……』って不安でしたけど、杞憂でしたね」
映画『366日』の公開で、2025年のスタートが飾られた。中島は2月にWOWOWドラマ『ゴールドサンセット』への出演も決まっている。「毎年良いスタートを切らせてもらっているので、2025年も良いご縁に恵まれたらいいな、と思います」と冷静に先を見つめる中島の視界には、また新たな挑戦の種が植わっているのかもしれない。
『366日』1月10日(金)より全国公開
https://movies.shochiku.co.jp/366movie/
(取材・文 北村有 撮影/梁瀬玉実)
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