新・帝国劇場の設計者は小堀哲夫に決定 世界最高の「ここちよい帝劇」に
ステージ
ニュース

新・帝国劇場の劇場設計を担当する小堀哲夫氏 (撮影:内田涼)
続きを読むフォトギャラリー(6件)
すべて見る関連動画
すべて見る
東宝株式会社は1月16日、東京・帝国劇場で記者会見を行い、建築家で法政大学教授の小堀哲夫氏が新・帝国劇場の劇場設計を担当すると発表した。1911年に開設され、66年に現代の“2代目”が竣工した現在の帝国劇場は、劇場が入るビルの老朽化に伴い、隣接するビルと共に建て替えが決定しており、今年2月28日をもって一時休館する。
2022年に指名型のプロポーザルコンペが実施され、さまざまな設計者の中から、実績、デザイン、将来性など、新帝劇の設計候補者としてふさわしいとされた複数名から提案を預かり、有識者を含めた選定委員会を設け、厳正な審査の結果、小堀氏が選定された。東宝によると、小堀氏の提案が「帝劇の継承と発展を十分に理解し、新しい帝国劇場のあり方を的確に捉え、期待感に溢れる提案内容だった」としている。

小堀氏は「帝国劇場は、時代を経ても色あせない感動を持っている」とし、「我が国の文化、演劇において最も重要な建築である帝国劇場の設計に携われることを大変光栄に思っております」と決意を語った。
新しい帝国劇場の建築のコンセプトは、「THE VEIL」。皇居に面した帝国劇場、水のきらめき、美しい光、豊かな緑といった唯一無二のロケーションに恵まれており、それらの自然をまとい、自然に包み込まれるようなイメージが、新しい劇場にふさわしいと考えた。正面玄関の方角は変わらず、舞台と客席が90度向きを変え、エントランスの正面に客席を配置する予定だ。格式高い劇場空間と、開演と終演時の混雑緩和に配慮した。

会見には、東宝常務執行役員のエンタテインメントユニット演劇本部長・池田篤郎氏が同席し、「新しい帝国劇場に関しては、小堀さんの設計で自然光を取り入れて明るさと華やかさを提供していきたい」と抱負のコメント。リニューアル時期について、「2030年度とリリースしていますが、(費用高騰や人手不足の問題など)諸情勢を鑑みて、お知らせできる変化がありましたら、お答えできる時期にお知らせをしたいと思っております」と回答。施工業者に関しては検討中だとした。なお、新・帝国劇場はビルの地上4階、地下2階を占めるという。

現・帝国劇場は開場以来、演劇、ミュージカル、歌舞伎と、350を越える演目(再演を除く)を上演。世界的にも類を見ない、舞台の場面を瞬時に変化させる、地下6階からの舞台機構、大きな舞台袖、どのような脚本でも舞台化できる懐の深い劇場において、俳優・スタッフは力をあわせ、時代のその時々に新しい演劇、感動を生むようなエンタテインメントを観客に届けてきた。ラスト公演CONCERT『THE BEST New HISTORY COMING』(2月14日初日)は、その歴史の集大成となる内容で、鮮やかに劇場を彩った豪華キャストとともに有終の美を飾る。
現帝国劇場 振り返りPV
東宝は同日、以下の通り、新・帝国劇場の特徴を発表している。3代目の帝国劇場は「未来を見つめた日本らしさ」、そして世界最高の「ここちよい帝劇」を目指すといい、その完成と、ここから始まる演劇文化のさらなる発展に期待が寄せられる。
●劇場の配置を90度回転/正面性のあるアプローチ

メインエントランスはこれまでと同様、丸の内5th通り側になるが、劇場の配置を90度回転することで、エントランスの正面に客席を配置した計画となる。正面性が高まることで、格式高い劇場空間になるとともに、開演・終演時の混雑緩和に配慮した動線計画となっている。
●見やすくゆとりがあり、一体感のある客席
この場所でしか体験できない、より一体感が感じられる客席空間を計画。現在の劇場と同等数程度の客席数を設けながら、現・劇場より見やすいサイトラインを備えた、ゆとりのある座席とし、今まで以上に快適な観劇環境を目指して、あらゆる観客が観劇を楽しめる多様な客席を計画している。

●最先端の技術を備えた、演出の可能性を最大限引き出す舞台
現在と同規模の舞台空間とし、演出の自由度のある設え。舞台袖上部には、十分な作業性・安全性を確保したテクニカルギャラリーなどを設ける計画だ。さらに世界レベルの最先端の舞台技術を導入し、楽屋やスタッフのスペースの快適性にも配慮することで、誰にとっても「ここちよい帝劇」を目指す。
●ロビー・ホワイエ空間・機能の強化/劇場と日比谷の街をつなげる劇場カフェの整備
ロビー・ホワイエ空間が広がり、よりここちよく過ごせるとともに、カフェやバーなどの充実を図ることで多様な過ごし方ができる空間。また、トイレ等のユーティリティー機能を拡充し、幕間も含めた総合的な観劇体験の充実を図る。有楽町駅側の南東の一角には、一般の方も利用できるカフェ等を劇場に併設し、観劇前後や公演以外の時間も楽しめる劇場に。劇場と丸の内の街がより一体となって、地域に親しまれる劇場を目指す。
●劇場全体でのアクセシビリティ強化
新たな劇場もこれまでと同様、都内の複合施合施設では数少ない1階に客席がある劇場となる。屋外から段差なく客席までアクセスでき、町と劇場のつながりもより感じられる劇場に。地下には、エレベーター・エスカレーターを設けた劇場ロビーを新設する。地下鉄からもアクセスしやすくなり、多様な来場者が劇場へ訪れやすい設計計画になっている。また、施設内の商業スペースなどへもアクセスしやすく、公演前後の体験も含めて、誰もがここちよく楽しめる劇場を目指す。
取材・文・撮影(会見写真):内田涼
フォトギャラリー(6件)
すべて見る関連動画
すべて見る