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山﨑賢人、新境地へ 無気力なのに強い忍者・雲隠九郎 熱演の裏側「ギャップ萌えを意識していました」

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山﨑賢人 (撮影/堺優史)

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現代に潜む忍者の暗躍を描いた映画『アンダーニンジャ』が1月24日(金)に公開される。主演の山﨑賢人が演じるのは、暇を持て余しニート同然の暮らしをおくる末端の忍者・雲隠九郎。「何を考えているのか掴めない印象があった」と語る山﨑が、どのように九郎を作りあげていったのか。その軌跡をたどる。

福田組の現場で感じる「楽しさ」と「独特な緊張感」

──原作を元々読んでいたとのことですが、手に取ったきっかけは?

いま思い返すと不思議な縁だったんですが、(猿田役の)岡山天音と普段からよく「最近面白い漫画ある?」みたいな話をしていて。結構前に「花沢健吾さんが新しく描いてる『アンダーニンジャ』って知ってる? 面白いよ」とオススメされて読み始めたんです。それがこうして今作で共演するとは……面白いですよね(笑)。

──原作のどんなところに魅力を感じましたか?

日本人として、やっぱり「忍者」という存在にすごく惹かれます。かつては本当に居たものだし、かっこいいし。『アンダーニンジャ』で描かれる忍者は「これこそが忍者」みたいな王道のビジュアルではなく、普通の人と変わらない感じで現代に潜んでいるという設定からワクワクが止まらなくて。

独特なロートーンでセリフが続く感じも好きですし、なんてことのないアパートが出てきて、そこに住んでいる人たちとのゆるい日常が描かれる一方で、めちゃめちゃかっこいいリアルな戦闘があったりと……『アンダーニンジャ』にしかない雰囲気がすごく好きです。

──そういった原作に福田雄一監督のテイストが乗ることでもたらされる魅力とは、どんなところにあると感じますか?

いま言ったような、日常のゆるい笑いのシーンと戦闘シーンのギャップを表現できるのは福田組しかないなと思いました。めちゃめちゃギャップがありますからね(笑)。例えば、僕が演じる九郎が戦っているところに野口(演:浜辺美波)が指輪を持ってきてくれるシーンとか……目の前に強敵がいるから、九郎は相手から目が離せないんですよね。それで、前を見ながら後ろに手を伸ばして野口が持っている指輪を取ろうとするんだけど、なかなかうまく取れなくて(笑)。あのシーンも「全然取れないっていう感じにして」と福田さんのアイデアなんですが、「あ、なるほど。面白いなあ」と思いました。

目の前ですごい戦いが起きようとしているのに、何も知らない野口が「どういうこと?」とか「え、なにこの時間?」ってツッコミを入れる、全然噛み合っていない感じも面白くて。そういった対比があることによって、福田さんの映画版『アンダーニンジャ』が“学園もの”としてもうまく成立しているのがすごいなと思いました。

──本作でまた福田監督と作品づくりができることについて、オファー時に思ったことは?

もちろん嬉しかったですし、福田組で『アンダーニンジャ』を撮ると聞いて「なるほど。すごい化学反応を起こしそうだな」とも思いました。自分も最近はアクションをやらせてもらうことが増えてきたので、そういった経験値も活かせるという意味でも新たな関わり方でまた福田さんとご一緒できるのが楽しみでした。

──福田監督の映画においては、2017年の『斉木楠雄のΨ難』、2020年の『ヲタクに恋は難しい』に続き3作目の出演となりますね。

福田さんの現場って常に笑いがあって、スタッフもキャストもみんなが楽しく作品づくりをしているんです。『斉木楠雄のΨ難』に出演したときに、お客さんも含めてみんなが笑って幸せな気持ちになっていて……「誰ひとり不幸な人がいないってすごいことだな」と思ったことを覚えています。

映画を撮っていますが、良い意味で遊びの部分があるというか、仕事だけど本気で遊ぶというか。笑いのプロの人たちがいる現場って、それまであまり経験したことがなかったのでいろんな気づきがありましたし……20代前半に福田さんの現場に参加できたことで、その後の現場でも自分のなかでは「楽しむ」というモチベーションが常にどこかしらにはあるので、そういう意味でも影響は大きかったと思います。

『斉木楠雄のΨ難』、『ヲタクに恋は難しい』、そして今回の『アンダーニンジャ』と、定期的に福田さんとご一緒できているのはすごく嬉しいことですね。ただ、“笑いの難しさ”を目の当たりにする現場でもあるので、福田組ならではの独特な緊張感があるというのも事実です(笑)。

掴めなくて謎の多い雲隠九郎を演じるのが「とても楽しかった」

──公式コメントでもおっしゃっていたように、雲隠九郎は何を考えているのか掴めない人物の印象ですが、どんなところを手がかりに役を作っていったのでしょうか?

まず、壮絶な修行を経てはじめて忍者になれるので、きっとそれぞれがものすごい努力しているんですよね。それで、疲れ果てちゃったのかな? という考え方がひとつあると思いました。

──九郎の気だるい感じは、そこからきているという考え方?

そうですね。すごい技術を得るためにいろんな修行をして全部習得したけれど、そのぶん疲れちゃった、みたいな考え方です。ほかにも、忍者なので人を欺く能力も習得していて、平気で嘘をつけたり……九郎のあの独特な話術も忍術のひとつかもしれないとか、いろんな考え方ができますよね。原作も謎が多いので、いろんな説がありますし。なので、九郎の読めないところや人間っぽくない謎な感じを多く残したいという気持ちで演じていました。

──淡々と話す九郎の本心がどこにあるのか、まったくわからない感じでした。

どこまでが本当のことを言っていて、どこまでが本気なのか。それすらも全部後からどうにでもできちゃうぐらいの能力がある人なんだろうなと思っていて。例えば、野口にいまの学校の状態について聞くシーンがありますが、あの九郎の感じってなんだか怖いじゃないですか。でも、それすらももしかしたら彼の忍術で、野口が知らぬ間にかかっていたのかもしれないとかっていう考え方もできて。自分としては、計り知れない九郎の深いところにあるものが見えないように演じようというのは意識していました。

──今回の九郎が謎の多い人物だからそういった役づくりをしたのではなく、普段から演じる人物のいろんな可能性を考えて役づくりをしているのでしょうか?

そうですね。台本に書いていなくても、演じるキャラクターがどういう人柄で、どういったことを経てきていまがあるんだろうっていうのは考えます。ただ、九郎はそのなかでも明確なものがなかったので、そのぶん自分でいろんな想像ができたのがとても楽しかったですね。

──福田監督とすり合わせた部分は?

最初の段階で「どのぐらいの感じで雲隠九郎というキャラクターを演じていくか」みたいなことは話しました。「ここをこういう風に見せたいね」といった表現の仕方は結構細かくすり合わせました。

今回はアクションシーンも多かったので、監督も気合いが入っていて。九郎の毛先の尖り具合といったビジュアルも含めて細かく話し合いながらやっていきました。でもやっぱり……福田さんが特に熱を込めて演出してくれたのは、お笑いのシーンでしたね(笑)。一番力が入っている感じがありましたし、九郎の掴めないところをお笑いのシーンでもうまく出せたらいいなと思いながら演じていました。

──お笑いのシーンで意識したことは?

間や声のボリュームや目線など、ひとつひとつが大切な要素になってくるので、笑いを作るのって難しいなと改めて思いました。九郎という人間の性格や人柄があるので、それを壊さないように面白くできたらいいなと……。

──たしかに、九郎とお笑いの掛け合わせは難しそうです。

「ギャップ萌え」というセリフがありましたが、九郎自体がギャップ萌えなんじゃないかと思って、そこは意識していました(笑)。

──ムロツヨシさん演じる大野と押入れでの掛け合いは、山﨑さんご自身も笑いをこらえるのが大変そうでしたね(笑)。

監督から全然カットがかからなくて、台本よりもだいぶ伸びていますから(笑)。九郎はほぼ「えっ!?」しか言ってなかったんですが、「えっ!?」がこんなに面白いとは思っていませんでした。セリフが終わったら押入れの扉を閉めて、それを大野がまた開けて会話するっていう繰り返しで台本では2回分くらい書いてあったんですが、それが終わってもカットがかからなくて「どうしよう?」と。

とりあえずムロさんがバンって扉を開けて顔を出したら、毎回新鮮な気持ちで「えっ!?」って言うようにしていました(笑)。でもムロさんが面白すぎて、やっぱり耐えられなくなって。九郎としては笑わないほうがいいなとは思っていましたが、どうしても無理で……そういうところも本編で使う福田さんは面白いなと思います。

アクションがビシッと決まった登場シーンで「観客の気持ちを掴みたい」

──アクションシーンも本作の見どころのひとつですが、撮影前に準備したことなどはありましたか?

めちゃめちゃ練習しました。手や足の指も使ったアクションなので、柔らかくしておくために指をぐっと広げるストレッチもしていました。

──印象的なアクションシーンは?

すべての戦いが1対1だったので、どれも印象に残っていますね。アクロバットの動きや刀で戦うシーンもあって、ひとつひとつが新鮮で……漫画のカットを忠実に再現しているところなんかもすごく楽しかったです。

──映画が始まってすぐのアレクセイとの戦いも圧巻でした。

雲隠九郎という男の登場シーンでもあるので、「アクションをビシッと決めて、映画を観ている方たちの気持ちを掴みたいな」と思って演じました。ビシッと決めつつ、九郎のだるそうな余裕な感じも出したかったので、アクション監督の田渕(景也)さんと現場で色々と話しながら作っていって。

例えば、アレクセイに締め技をかけているところも……最初は普通に押さえていたんですが、九郎の手が頭の近くにあったので“肘をついて横向きに寝そべったまま締め技をかける”ほうが余裕っぽく見えるんじゃないかと思ってやってみたら「いいね、それでいこう」となったり。そういった細かいところでも九郎の無気力なだるい感じが出せたらいいなと思い常に考えていました。それでいてめっちゃ強いってかっこいいじゃないですか。

──終盤の戦いも引き込まれます。

漫画を読んでいたときも衝撃的な戦いだったので、観てくださるお客さんにもあの緊張感や衝撃を与えられるようなものにしたいと思ってやっていました。

──アクションシーンを演じる楽しさはどこにあると感じていますか?

戦うのが好きなんでしょうね(笑)。自分もアクション映画を観るのが好きだし、演じるのも楽しいです。完成したものを観るのも楽しいし、早くみなさんにお見せしたいし……アクションを作っていくチームのアツさも好きですね。今作のアクションを演じている人たち全員がかっこよかったし、“現代の忍者”という大きな枠はあるものの、それぞれ戦い方が全然違ったりするので、そのあたりも見ていただけると面白いんじゃないかなと思います。

──野口とのシーンも多かったですが、浜辺さんのお芝居から引き出されたものはありましたか?

たくさんありました。九郎の掴めない言葉や行動に野口が一喜一憂してくれるので、自分自身も「野口にいいリアクションをさせたいな」と思いましたし、リアクションが返ってきたときにまた九郎の言葉や雰囲気、佇まいも変わっていった部分は大いにあると思います。

──ちなみに、山﨑さんご自身の推しキャラは?

ムロさんの大野、佐藤(二朗)さんの吉田昭和は間違いなく面白いんですけど、坂口(涼太郎)くんが演じた瑛太が近くでずっとツッコんだりボケたりしていて、それがずっと面白かったですね(笑)。この映画においてのコメディ部分をかなりの割合で担っていたんじゃないでしょうか。本当に最高でした。

──映画『アンダーニンジャ』に出演したことで得たものは?

笑いとアクションの融合という意味でも、これだけ緩急のあるものを作り出せたのは自分にとって大きかったと思います。アクション作品をたくさんやってきましたが、今作ではそこに笑いの要素をがっつり盛り込んだ表現方法や面白さを探求できましたし、アクションにも色んなアプローチや見せ方があることを学ぶことができて、本当に得るものが多い作品でした。

観てくださる方たちもジェットコースターのように笑いとアクションの緩急が楽しめると思いますし、どんな世代の方たちにもお届けできる作品なので、ぜひ観ていただきたいです。なにより、面白いのでね(笑)。何も考えずに観て楽しんで幸せになって、映画館を出たらなんだか興奮している。かつ、ちょっとした怪しさも纏いながら家に帰れるような、贅沢な映画だと思います。

『アンダーニンジャ』1月24日(金)より全国東宝系にて公開

https://underninja-mv.com/

©花沢健吾/講談社
©2025「アンダーニンジャ」製作委員会

出演:
山﨑賢人
浜辺美波
間宮祥太朗 白石麻衣
山本千尋 宮世琉弥 坂口涼太郎 長谷川忍(シソンヌ)
木南晴夏 ムロツヨシ / 岡山天音 平田満 佐藤二朗  ほか

原作:花沢健吾『アンダーニンジャ』(講談社「ヤングマガジン」連載)
脚本・監督:福田雄一
音楽:瀬川英史


撮影/堺優史、取材・文/とみたまい

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