「僕にとって大きな挑戦!」―― ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』主演、手島章斗インタビュー
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インタビュー

手島章斗 (撮影:荒川 潤)
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すべて見る2012年にフランスで世界初演され、日本では2016年、2018年と上演され、今年、7年ぶりに上演されるミュージカル『1789 –バスティーユの恋人たち-』。今回はキャストが一新され、フランス革命の最中に革命派へ身を投じる農夫ロナンを、ミュージカル『新テニスの王子様』など舞台でも活躍する手島章斗が主演する(岡宮来夢とWキャスト)。初めてのグランドミュージカル出演で主演を務める手島に、本作への意気込みや、ミュージカルへの想いを語ってもらった。
初めてのグランドミュージカルで「稽古が待ち遠しい」
――7年ぶりに上演される『1789 -バスティーユの恋人たち-』に主演されます。率直に今のお気持ちを教えてください。
手島章斗(以下、手島) 僕は今回が初めてのグランドミュージカル出演ですし、しかも主演ということで、すごく光栄な気持ちでいっぱいです。もちろん緊張や不安もありますが、ワクワクした気持ちの方が大きいですね。稽古が待ち遠しいです。
――具体的にはどんなところが楽しみですか?
手島 そもそもグランドミュージカルが初めてなので……壮大なセットの中で役を生きることができるのもそうですし、大好きな歌をたくさん歌わせていただけることもすべてにおいて楽しみです。
――『1789 -バスティーユの恋人たち-』は、宝塚歌劇団版のほか、東宝版もご覧になられたそうですが、その感想を教えてください。
手島 まず、作品としてとても面白く拝見しましたし、本当に大好きな題材でした。“フランス革命”や“歴史もの”と聞くと、少し敷居の高いイメージを持つ方がいらっしゃるかもしれませんが、わかりやすいストーリーですし、楽曲もキャッチー。演出も華やか且つダイナミックで、当時のフランスの様子が鮮明に想像できます! そして、小池(修一郎)さんの演出の豪華さ。特にマリー・アントワネットの登場シーンなんて、“エグい”!(笑)。その時代に一瞬でタイムスリップした感覚になりました。
宝塚版のほか、(ロナン役が)小池(徹平)さんバージョンと加藤(和樹)さんバージョンを拝見しましたが、演じる人が違えばまた違うテイストになるのも面白いですよね。当たり前と言えば、当たり前のことなんですけど。
今回、僕も(岡宮)来夢くんとWキャストでやらせていただくので、来夢くんのロナンと、僕のロナンでお互い輝けたらいいなと思いました。

――過去の映像をご覧になって、何かロナン像のヒントは得られましたか?
手島 生意気に捉えられるかもしれませんが、真似したいという気はないんです。ですから映像を見て「ここはこうしよう」「あそこはこうしよう」とは考えていません。
自分で言うのも変かもしれませんが、ロナンは結構自分と似ているというか、そんなに遠くない部分が多い気がしています。まっすぐで泥臭い性格もそうですし、地方出身で庶民的な感じもそうですし、似ている部分が多いので、あまり着飾らずに役を作っていけるのかなとは思いました。
――生きている時代は違うけれども、ロナンには共感する部分が多いのですね。
手島 はい。そう思います。時代が違うので、同じ土俵で物事を語るべきではないかもしれませんが、ロナンのように理不尽なことがあったとしたら、僕も「納得できない!」と戦うタイプだと思います。
――ちなみに帝国劇場では『レ・ミゼラブル』が上演されています(取材時)。フランス革命を題材にしたミュージカルという点では共通していますよね。
手島 『1789 -バスティーユの恋人たち-』に出演するにあたって、いろいろ勉強させていただければと思い、『レ・ミゼラブル』を拝見しました! 素晴らしかったです。
僕にしかできないロナンを
――楽曲の魅力についても教えてください
手島 どの楽曲もめちゃくちゃいい曲で、素敵です! 特に本作の代表的な曲としても知られている「サ・イラ・モナムール」はすごく印象に残っています。「ここで歌うんだ!?」という意味でも、落ちサビは上に転調して、オクターブ下で歌うんだ! という意味でも(笑)。
“俺たちは兄弟だ〜♪”の一節も印象的な「革命の兄弟」も耳に残りますし、オランプのソロ曲「許されぬ愛」も素敵な曲ですし……とにかく全部いい曲です!
僕自身が歌うのも楽しみですが、他の共演者の方々は歌唱力が高い方々ばかり。皆さんの歌声を聞くのも同じぐらい楽しみですし、お芝居も歌唱もいろいろ勉強させていただけたらと思っています。

――Wキャストとなる岡宮さんについての印象を教えてください。
手島 実はまだ来夢くんとはきちんとお話したことがないのですが、歌唱指導の先生が同じで、その先生づてに、僕との共演を楽しみにしてくれていると聞いて。僕も来夢くんとの共演が嬉しいですし、楽しみに思っています。お互いの違いや価値観をリスペクトしあいながらも、時にロナンや作品についての解釈を一緒に深められたらいいなと思っています。
――オランプ役の星風まどかさんと奥田いろはさんもWキャストです。
手島 おふたりとも初めてご一緒します。僕自身、初めてのWキャストですし、お相手がWキャストなのも初めてです。Wキャストということで組み合わせも様々でしょうから、きっと稽古の段階からより新鮮に役と向きあえるし、物語の進み方も終着点も毎回違うように感じる気がします。
――手島さんは普段、どのように役作りすることが多いですか。事前に色々と準備するのか、稽古場で生まれる化学反応を重視されるのか。
手島 まだ数作品しか舞台作品には携わっていないですが、どちらかと言うと、僕は後者です。
初舞台の時にシンガーのクセなのか、セリフを音程で覚えてしまいがちだったんです。なので、稽古では柔軟に色々やってみたいと思っています。
まだまだ僕自身の表現の引き出しは少ないですが、今回はロナンもオランプもWキャストなので、自然と毎回違ったものが生まれると思いますし、僕もいい形でパスを渡せるようにしたいです。そして、僕にしかできないロナンを作り上げられたらなと思います。
――その“らしさ”はどういう形で生まれるのでしょうか?
手島 正直、自分ではまだ言語化できないです。でも、お芝居も歌も、エンタメって、どこかに人間性が出てくると思っています。立ち居振る舞いや表情や仕草も含めて、全部が見られますから。
それに僕、嘘はつきたくないんです。もちろん、エンタメとして作品をお客さまにお届けする以上、ミザンス(※舞台上の立ち位置など)や決まり事はあるんですが、気持ちや行動は等身大でいたいんです。点と点を線にしていく過程の中で、“らしさ”が滲み出ていくお芝居になったらいいなと思っています。
ミュージカル出演は、アーティスト活動にも好影響
――手島さんは幅広い活動をされていますが、今後は積極的にミュージカルにも出演したいとお考えですか?
手島 そうですね。ミュージカルやお芝居は挑戦すればするほど、奥深くて面白いなと思うので、もっといろいろな作品をやってみたいという気持ちです。ミュージカルやお芝居のお仕事は、音楽活動をやっているだけでは学べないことがいろいろ学べるし、今の僕を成長させてくれるなと思うんです。

――アーティスト活動に還元している部分があるわけですね。
手島 はい、本当にたくさんあります。
例えば、ミュージカルはストーリーがあって、人物たちの感情があって、そこでの音楽にも音やコード進行があって、歌詞があって……と、すべての物事に意味があるじゃないですか。反対にポップスは、時には流れるように歌うことも多い。僕は自分で曲を作りますが、曲を作る意味や、メロディや歌詞の意味をより深く考えるようになりましたし、表現の幅も広がったように感じます。それはミュージカルの経験があるからこそです。
それに、役者として舞台に立っているときは没頭しているんです。スタッフさんが組んでくださったセットの中で役として生きて、その世界をお客さまにお届けするわけですが、お客さまの存在をそれほど意識していません。でも、アーティストとして舞台に立ってライブをするときは、いかにお客さまを巻き込むかを一番に考えているんです。
そのギャップは、どちらがいい、悪いではなく、ヒントになるんです。「今の自分はお客さまからどう見えている?」と客観視できたり、「ここでは何を見せたい?」と立ち止まって考えることができたり、双方のお仕事でプラスに働いている気がしていますし、そこが僕らしさになるのかもしれません。
――改めて、本作でどんな手島さんを見せてくれますか?
手島 多くの人に愛される作品で主演させていただけることは、僕にとって大きな挑戦ですし、何より僕が演じるロナンも目標に向かって挑戦する男です。きっと稽古を通じて、自由と平等を求めて革命を起こす彼の行動力や泥臭さを肌で感じて、それを体現していくことになると思います。今まで演じてきたどの役と比べても人間味がある気がするので、人間臭い僕を見てほしいです。
許されざる恋というテーマも僕は好きですし、広島県出身ということで自由や平等を思う心も人一倍強い。作品のメッセージも丁寧に、熱く、伝えていけたらと思います。
取材・文:五月女菜穂
撮影:荒川 潤
<公演情報>
ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』
【東京公演】
2025年4月8日(火)〜29日(火・祝)
明治座
【大阪公演】
2025年5月8日(木)~16日(金)
新歌舞伎座
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/musical1789/
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