『リプリー、あいにくの宇宙ね』伊藤万理華×上田誠インタビュー ――伊藤万理華の参加で上田誠が面白いと明言する、新作“ど”SFコメディ
ステージ
インタビュー

左から)上田誠、伊藤万理華 (撮影:荒川 潤)
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すべて見る――舞台では初の顔合わせですが、上演の経緯から教えてください。
上田 伊藤さんのことはもちろん、乃木坂46で活動されている時から知っていました。ヨーロッパ企画としても大歳(倫弘)が脚本を担当したドラマ『お耳に合いましたら。』や、僕が書いたドラマ『時をかけるな、恋人たち』(以下トキコイ)に出てもらったりして。伊藤さんのほうでもなんとなく、僕の世界とは相性がいいと思ってくださっているのではないか。そんなことを勝手に想像しつつ、オファーさせてもらいました。
――“相性がいい”と感じられた理由は?
上田 もちろんみんな頼んだらやってくれるんですけど(笑)、好きでSFをやってくれる人ってそう多くない気がして。でも伊藤さんは結構いけるんじゃないかと……。
伊藤 はい、好きです。そんなに舞台を見るタイプではないですが、自分が好きだと思う作品に上田さんやヨーロッパ企画さんが関わっていることが多くて。
上田 あっちこっちにいるな、みたいな(笑)。
伊藤 そうそう(笑)。それがSFだったり、ファンタジーだったり、日常の中の歪み、みたいなものの描き方がすごく好きなんです。

上田 今の世の中、映像にしろ、演劇にしろ、リアル系なドラマが幅を占めていますからね。予算のこともありますし。でも僕はせっかくならフィクションの中で演じたり、そこにリアリティを見出したい。そしてなによりエンタメが好きなんです。
伊藤 でもトキコイは大人がみんなで力を尽くして、いろんなことを組み合わせて、それによってちゃんとSFとして成立した作品でしたよね? 私はあれぐらい飛んじゃっている感じがすごく好きで。あと私の家族はみんなSF作品、しかも“ど”エンタメが大好きです。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』とか『機動戦士ガンダム』とかマーベル作品とか。今回お話をいただけてすごく嬉しかったです。
――上田さんの直感に間違いはなかったですね。
上田 いや良かったです。今、言って欲しかったことをずっと話してくれた感じです。
伊藤 (笑)。でもそれを意識したのはコロナ禍以降かもしれません。日常からかけ離れた世界に没頭することによって、自分自身救われたような気がして。そういうものを自分も生み出せたら、すごく嬉しいです。
上田 僕が今回これをやろうと思ったのは、アメリカの高校生が、完コピした『エイリアン』を学園祭で上演して、めっちゃお客さんにウケている動画を見たことがきっかけなんです。その時、なんかいいな、これが劇だよなと思って。ニッポン放送さんとご一緒するのは今回で5度目ですが、このチームってわりとトンチキな設定のものも(笑)、すごく真面目に、楽しんで取り組んでくれる。で、一度このチームで、思いっきり振り抜いた“ど”フィクションをやりたいと思ったんです。

伊藤が演じるのは『ダイ・ハード』にも通じる“不憫”キャラ!?
――現在執筆中とのことですが、どんな内容になりそうですか?
上田 まずこのチームが本多劇場でやるのは初めてなので、わりとギュッとした、“ど”密室ものをやりたいと思いました。それならばと、宇宙船の中でずっとトラブルが起こり続ける、みたいなものが面白いかなと。
伊藤 私もどちらかというと小規模な、みんな自力でやる、みたいな作品のほうが自分には合っている気がします。
上田 まさに自力でなんとかする、みたいな作品です。やっぱりコメディって、汗をかくのが面白いんですよ。それこそ演劇の本質というか。
――『エイリアン』をやった高校生には負けていられませんね。
上田 そう、負けないようにしたいです! あと個人的には劇団にしろ、外部のチームにしろ、大体トラブルの連続なんです(笑)。だから伊藤さん以外がみんなややこしくて、「なんで私こんな船に乗っちゃったんだろう?」みたいな感じになると面白いなと思っていて。
伊藤 不憫キャラですね(笑)。
上田 そうそう、不憫!(笑) タイトルにもなっていますけど、『エイリアン』の主人公エレン・リプリーもだいぶ不憫ですから。『ダイ・ハード』のジョン・マクレーンくらい不憫。不憫はいいんですよ(笑)。
伊藤 フフフ、楽しみです。

――では最後に読者にメッセージをお願い出来ますか?
伊藤 今って生きるのが本当に大変な時代だと思うんですが、私自身、なにも考えずに見られる作品、違う世界に連れて行ってくれる作品に救われたことが多々あって。そういうものをお届けしたい、今は本当にただそれだけです。
上田 フィクション度合いが強ければ強いほど、やっぱり気合いが入るんですよね。要はエイリアンものをやるなんて一大決心なわけですよ。バカにされそうやし(笑)。うかつに手は出せないけど、うまくいったら超面白い。で、今回は伊藤さんが出てくれる。それでもう僕はなんの心配もしていませんし、だいぶ面白いものになると思いますのでお楽しみに!
取材・文:野上瑠美子
撮影:荒川 潤
<公演情報>
『リプリー、あいにくの宇宙ね』
【東京公演】
2025年5月4日(日・祝)〜25日(日)
会場:本多劇場
【高知公演】
2025年6月3日(火)
会場:高知県立県民文化ホール オレンジホール
【大阪公演】
2025年6月6日(金)〜8日(日)
会場:森ノ宮ピロティホール
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/ripley/
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