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【PFF連載インタビュー】「わたしの映画づくり」『Retake リテイク』中野晃太監督

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映画監督の登竜門として、黒沢清、佐藤信介、李相日、石井裕也、山中瑶子ら、現在の映画界で活躍する数多くの才能を見出してきた「第47回ぴあフィルムフェスティバル2025(PFF)」が、9月6日(土)~20日(土)の13日間(月曜休館)、東京・京橋の国立映画アーカイブで開催される。

2月1日(土)からは、PFFのメインプログラムである、自主映画コンペティション「PFFアワード2025」の応募受付がスタート。昨年、18歳以下の出品料を無料化すると、入選作には高校生以下の監督による3作品が選出。史上最年少となる14歳の中学生の入選監督も誕生し、新時代の到来を感じさせる開催となった。

これを受け、今回から、出品料無料の対象を19歳以下まで拡大されるほか、「PFFプロデュース(旧称:PFFスカラシップ)」で長編映画デビューするチャンスが、全入選監督に拡大される。応募締め切りは3月23日(日)。

応募受付開始を前に、これから映画づくりを考えている、応募を考えている人たちの参考になればということで、近年PFFアワードに入選し、作品の劇場公開を控える監督3名にインタビューを敢行。

2人目は、PFFアワード2023で見事グランプリを獲得した『Retake リテイク』の中野晃太監督にインタビュー。現在劇場公開中の同作を自主制作していた当時のことから、入選したときのPFF体験までを振り返ってもらった。

高校時代から映像制作をはじめ、現在も映像作品制作ワークショップを開催しながら映画制作を行う中野晃太監督。

『Retake リテイク』は、監督が高校の映像制作の授業で講師として出会った、教え子の創作への情熱に触発されて制作を思い立ち生まれた。

その教え子のひとりが、主演の遊を演じた、現在人気バンド「チョーキューメイ」で大活躍中の麗になる。

完成した作品はまずPFFへの応募することをはじめから決めていたという。

「大学で映画を学んでいたときと、卒業した直後ぐらいに何度かPFFに応募したんですけど、箸にも棒にも掛からなかった(苦笑)。そのリベンジというわけではないですけど、目標としてPFFには応募しようと考えていました。クラウドファンディングにも明記していたので、PFFのことはかなり意識していました」

入選の報せが届いたときは「まさか!と思いました。メールかなにかで連絡が来るものと思っていたら、直接電話をいただいて、サプライズでした」とのこと。では、PFFの映画祭自体には参加してみてどんな印象を抱いただろうか?

「それまで映画祭に参加したことがさほどないので比較できないのですが、まずほかの入選監督たちの作品を見れたことが良かったです。こんなに多様な作品があるとは想像していなくて驚きました。ほかの作品をみることで、監督や出演者の人と出会い、その後、飲みに行くなどして(笑)、つながりができる。ただ、入選しました、上映しました、それで終わりではない。映画を通して、映画仲間ができる場であることを実感しました」

まさか世界の人たちまで自分の作品が届くとは

自身の作品の上映は、どのような場になっただろうか?

「僕も何度も訪れていますけど、国立映画アーカイブは名画の殿堂というか。国内のみならず世界の名画を所蔵していて上映している。僕からすると夢のような場所で。そこで自分の作った映画が上映されることは感無量でした。もうそれだけでも感動だったんですけど、ありがたいことに僕が開催している映像のワークショップの教え子から、大学時代の教授である諏訪敦彦監督ら僕がお世話になってきた恩師や先輩のみなさんまで、会場に駆けつけてくれたんですよね。叔父をはじめ身内も来てくれました。僕の人生に関わってきてくれた人たちが勢ぞろいしたような感じだったんです。なんか自分のこれまでの歩みを凝縮してみたような気持になる特別な時間になりました」

さらにこう話を続ける。

「それからPFFの上映をきっかけにいろいろな方に見ていただいて、ひとつ自信を得たといいますか。誰に頼まれたわけでもなく自分が勝手に作った映画ですから、はじめは誰に届くのか見当がつかない。でも、PFFで上映してありがたいことにグランプリを受賞して、そのあと、いくつかの海外の映画祭への出品も決まりました。その間、いろいろな声をいただきました。これまでまったく接点のない国の人とつながことができたんですよね。これって考えてみると、すごいことで人生でそうあることではない。しかもグーグル翻訳を駆使して、感想を読んでみると、たとえば日本の裏側のチリの人たちにもちゃんと伝わっているんですよね。まさか世界の人たちまで自分の作品が届くとは夢にも思っていなかったので、これからを含めてひとつの大きな自信を得た気がします」

自身の映像制作に取り組みながら、ふだんは学校やワークショップで若い世代に映像作りを教えている。いまの若い世代に何か感じることはあるだろうか?

「学校などの授業の一環として教えているケースが多いので、受講する子どもたちは必ずしも映像制作を目指しているわけではありません。ただ、僕らの世代とは映像作りの感覚がかなり違ってきていることはやはり感じます。たとえば小学生に教えることが多いのですが、すでにYouTubeやTikTokに馴れ親しんでいて、動画配信をやったことがある子もいる。だから、いまの中学、高校生ぐらいはおそらく映像を作ることがネイティブな感覚としてある。映画をみて、大学や専門学校にいって初めて本格的に映像作りを学んでという感覚とは明らかに違う。昔は映像を作るとなるとどこかハードルが高くて身構えるところがありましたけど、そんなところがない。動画と映画は違うといった意見はあると思いますけど、いずれにしても映像に対して新しい感覚をもった人が作る新感覚の作品がこれからどんどん出てくるのではないかと思っています。とんでもない才能や作品が出てくる可能性みたいなものを、僕は若い世代に教えながら感じています。昨年のPFFで3人の10代の監督が入選したのは、その表れかもしれません」

先述の通りPFFでは、10代の若い世代へさらに扉を開こうと、昨年18歳以下の作品の出品料を無料化。今年はさらに19歳までと拡大した。

「これはありがたいというか。自分が学生だったころ、もしこの制度があったら、どれほど助かったことか(笑)。応募を考えている人にとって出品料は大きくて、出費を考えるといくつもの映画祭に出すことはできない。特に10代はそうだと思います。たとえば出品料5000円だとして、いくつか出そうとしたらすぐに数万円になってしまう。中学生や高校生がこの額をねん出するのはかなり大変だと思います。でも、無料であれば、出品料がネックとなって応募を諦めていた子も考え直すだろうし、あまり応募を考えていなかった子たちも腕試しにちょっと応募してみようかなと心が動くような気がします。今も学校やワークショップで映像制作を教えていますが、喜ぶ子たちもいるけっこういるのではないかなと思います。このことを知らない子にはアナウンスしようかなと思います。『PFFは無料で応募できるよ』と」

『Retake リテイク』

出品を考えている人に対して、何かメッセージはあるだろうか?

「振り返ってみると、『Retake リテイク』を完成させたときは、劇場公開を迎える日がくるなんて想像していませんでした。もしかしたら、うまくいってどこかの映画祭にひっかかってくれたらなぐらいに思っていました。それが、ひとつ目標にしていたPFFに入選して、グランプリまでいただき、海外の映画祭も巡って、いまこうして日本での劇場公開を迎えている。PFFへの応募をきっかけに、ひとつ道が拓けた。こういうことが起きる可能性がある。ですから、完成させた作品があるならば積極的に応募してみてはどうかと思います。応募しないと何も始まりませんから、どんどん挑戦してほしいですね」

では、最後に『Retake リテイク』の劇場公開を迎えて、今の気持ちは?

「実は、配信での公開は以前からお話をいただいていました。ただ、僕の中で、映画は映画館で公開してまず映画館でみてほしいというこだわりがあって劇場公開をずっと模索してきました。それを実現させることができて、素直にうれしいです。いまは多くの方にみてもらえたらと思っています」

(取材・文:水上賢治)

「PFFアワード2025」作品募集

受付期間:2025年2月1日(土)~3月23日(日)
出品料:一般 3,000円 ★19歳以下は無料(2005年4月1日以降生まれの方)
https://pff.jp/jp/award/entry/

「第47回ぴあフィルムフェスティバル2025」

会期:2025年9月6日(土)~20日(土) ※月曜休館
会場:国立映画アーカイブ(京橋)
https://pff.jp/jp/

『Retake リテイク』

監督・脚本・撮影・編集:中野晃太
出演:麗(チョーキューメイ)、武藤優汰、タカノアレイナ、大原奈子、千葉龍青
新宿K's Cinemaにて公開中
https://retake-movie.com/
(C)湘南市民メディアネットワーク

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