自由に向って走るスティーブ・マックィーンの魅力が全開『パピヨン〈デジタルリマスター版〉』
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イラストレーション:高松啓二
映画・音楽・舞台など各ジャンルのエンタメ通=水先案内人が、いまみるべき公演を紹介します。
【水先案内人 高松啓二のおススメ】
「Forget France!」──裸の囚人達に演説する指揮官から始まる。このヒゲの指揮官は本作の脚本家ダルトン・トランボである。1974年公開、高校時代にシネラマで観た。当時の印象は、ドガ役のダスティン・ホフマンに感銘を受けたが、あらためて観るとやっぱりスティーブ・マックィーンの魅力に尽きる!
特に独房では、所長が「お前を壊す」というのは肉体的にも精神的にも破壊することだった。歩いて5歩の空間に水のようなスープ、堅そうな毛布、吸血コウモリ、ゴキブリなど想像絶する劣悪さだ。しかもドガの差し入れがバレて、光まで遮られ徐々に体力が落ちていくのをマックィーンは目で表現する。それでも絶対にへこたれず、何度も脱獄する。
パピヨンは罪人にもかかわらず(本人は無罪と言ってるが)善悪を超えて自由に向って走る人間として描かれ、マックィーン本人のキャラクターと重なる。ちなみに最初の強制労働“キロ40”の沼からの逃走は『ネバダ・スミス』の刑務所と酷似したシーンがあるのは発見だった。悪魔島で『オフィサー・アンド・スパイ』のドレフュス事件のドレフュス大尉の石の椅子にパピヨンが座って怒られるシーンは、赤狩りで投獄されたトランボの想いなのだろう。
<作品情報>
『パピヨン〈デジタルリマスター版〉』
1月31日(金) 公開
公式サイト:
https://www.theatres-classics.com/