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梶芽衣子インタビュー「60年の中で順風満帆だったのはほんの2年しかない、それ相応の覚悟がなきゃ駄目ですよね」

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Text:浅野保志(ぴあ) Photo:吉田圭子

映画デビュー60周年を迎える梶芽衣子が、歌手としてアルバムを発表。日本を代表する女優として映画、テレビドラマで数々の作品に出演し、世界からも高い評価を受ける存在の彼女が、シンガーとして唯一無二のパフォーマンスを放つ。

――映画デビューから60周年を迎える梶芽衣子さんに、映画、ドラマ、そして音楽、コンサートについていろいろとお話を伺いたく、お時間いただきました。

昭和、平成、令和......。信じられないのよ、私こんなに働けているのが(笑)。ありがたいですよ、すごくね。健康な体でいられることが一番大事かな。そこに精進してきました。仕事的にも大変は大変ですよ。でも体力勝負になってくるんですよね。私、今77歳で、現場撮影は20代の人とおんなじレベルでやらなきゃいけないというのは大きな勝負なのですよ。でも俳優をやっている限り、齢相応な役しか来ないのは抵抗があるんですよね。“私もっと元気よ”みたいな。元気を示すのが“歌”だったんですよ。歌ってあまり自分で好んでやってきたジャンルではないんです。やっぱり俳優が主でずっとやってきたので。ただ、私の歌が映画の主題歌で、映画がヒットしたので付録みたいにヒットした。それにちょっと抵抗があって、映画と関係ないところで単独の歌の仕事だけでやれることってないのかなと思って、今回それが実現できた。だからすごくうれしいです。

――クエンティン・タランティーノ監督が映画『キル・ビル』の中で、梶さんの歌「修羅の花」と「怨み節」を抜擢しましたね。

それはうれしかったですね。20年くらい前ですけど、本当に青天の霹靂でね。私、ちょうど「鬼平犯科帳」という作品をやらせていただいていて、そこに専念していたんですよ。ある日突然、“タランティーノ監督が私の音楽を使いたい”というのを、「修羅の花」の作曲をしてくださった平尾(昌晃)先生からお電話いただいたんです。“芽衣子ちゃん、ハリウッドで君の歌を使うって言ってるんだけど、どうよ”という話だったのね。私ピンとこなくて、“タランティーノ監督が映画でどうしても使いたいと言ってるんだけど”って。“僕は構わないけど、僕の一存じゃ決められないので芽衣子ちゃんに今電話をしてるんだけど”って(笑)。

そのやりとりの後、もうすっかり忘れていたんです、私。そうしたら映画公開後、配給会社から電話があって、“作品と楽曲が評判良くて、今度タランティーノ監督がキャンペーンで来日するということになって、どうしてもタランティーノ監督が私に会いたいと言っているらしく、それが実現しないとキャンペーンが中止になってしまうかもしれない”みたいな(笑)。でもそんなこといきなり言われたって、私にもスケジュールがあってフジテレビの連続ドラマが入っていたんですよ。“これをOKされないと大変なことになる”って(笑)。しょうがないからテレビのプロデューサーの方に相談したら、”僕がついて行きたいぐらいです“って彼はタランティーノ監督の大ファンだったんですよ。それでお会いすることになって。

タランティーノ監督は音楽よりも、私の映画の方に興味があって“『野良猫ロック』の監督はどうだったんだ”とか、そういうことしか聞かないんです。音楽で私今ここに呼ばれているのに音楽のことは聞いてくれず......。手を離さないんですよ。私の出演している映画って、世界で売れているんですね。でも私は日本で制作して日本語で演じて、歌も日本語で歌っている訳ですよ。だからどうしてこんなに支持されるのかは、自分自身であまり実感がないですね。ただ最近、海外の作品に、タランティーノ監督みたいに音楽を使わせてくれというのが増えてますね。

――昨年、アナログと配信のみでリリースした6年ぶりのフル・アルバム『7(セッテ)』に、新曲を含む追加曲を加えて、CD『7 rosso(セッテロッソ)』として3月26日(水)にリリースされることが決定しました。聴かせていただいて、極めてロックテイストの強い楽曲にびっくりして感動いたしました。

私自身、最初戸惑ったんですよ、正直言って。ロックという部分は、この前に『追憶』というアルバムをインディーズでリリースしたんですよね。それがロックテイスト強いアルバムでその延長だったんです。これをプロデュースした鈴木慎ちゃん(鈴木慎一郎(BLOOD/ex CRAZE))ってすごい才能あると私は思ってます。実をいうと彼のお父様も私のディレクターをしていた時期があり、お父様の部屋に行くと私の音楽が全部置いてあるでしょ。小さいときからずっと聴いている訳ですよ。お父様はこうだったけど、僕が梶さんと一緒にするならこうじゃないというのがずっとあったらしいですよ。

――2代に渡って梶さんの音楽を支えたのですね。

そうなんですよ、光栄なことに。それで私の性格もよく知っているし、彼が生まれたての赤ちゃんのときに私は抱っこしてるんですよ(笑)。私が抱っこした写真を、彼は財布の中にお守りのように入れてあるみたいですよ。そういう意味で、ずっと私の歴史を見ているんですよね、子供の頃から。性格的なことも分かっているから、例えば「鬼平犯科帳」という仕事がすべて終わったときに、“僕は父とは違って芽衣子さんに歌っていただきたい歌はこういう歌です”って持ってきたのが『追憶』なんですよ。私それを聴いてびっくりして。『7(セッテ)』よりロックっぽいですから。それをあのままライブでやりましたから。そのときに初めて“音楽って本当はこんなに楽しいんだ”と実感したんですよ。やっぱりちゃんと歌をやりたいなあと思った。

私ね、芝居をやっていて、何で今日こんなに緊張しているのかしらって思ったことがあるんですね。それでふと気づいたら、これは自意識過剰だって自分で気づいたんですよ。うまくもないのにうまくやろうとしているって。そうしたらアガるに決まってるわねって。そのときに“歌もそうだ”と思ったんですよ。だから、楽しんでやれるようになれれば歌もまんざらではないかも知れないって。つまり自意識過剰に気づいて、それから変わりましたね。吹っ切れました。お芝居の方もそういうふうになってきたし、芝居だって最近ですもん。楽しめる余裕が自分にも出てきたっていうことは、本当に最近なんですよ。仕事の向き合い方が変わってきた。これは絶対、教えることでも教わることでもないと思います。自分で気がつかないと分からないと思います。

――アルバムを制作して、ライブで歌うことに関しては何かこだわりはありますか?

直の反応って、出て行ったときにしか分からない、ああいうものは......。私は舞台のお芝居ってやったことないんですね。“舞台は歌だ”と自分の中で思っているので。生の受け止め方ってあるじゃないですか。それはもうすごい醍醐味だし、面白いですよね。だから緊張している暇はないというか。一緒に楽しめちゃうっていうか。ついてきてくれるよね、お客様は。そういうやり方でしないと駄目だと思っていて。MCが何回か入る訳ですよね、ショーをやっている間に。そのMCも全然考えていきません、私。その行き当たりばったりでやるのが、怖いけどそれが面白いかなって。

――今回のライブではどんなステージをしてみたいと思われますか?

デビュー60年でしょう、その重さだと思いますけどね。どうなるかはちょっとやってみないと分かりませんけど、ただ、今までやってきたライブよりも曲数は多くなります。それは私自身が選曲して曲順も決め、たっぷり歌ったという感じにしたいと思います。

――60年間エンタテインメントをやり続けることって、本当に大変な偉業ですよね。

いや、でもね。私、60年の中で自分が成功したと思えて順風満帆だったのは、ほんの2年しかないですよ。あと全部大変でした。これが本音です。『女囚さそり』という映画が大ヒットした2年は、順風満帆でした。しかし自分で降りましたから、結果的にあのシリーズは。4本でやめました。だからそれも、自分で納得のいく降り方をしたつもりなんですね。だけどもやっぱり、あんなにヒットしているシリーズを降りたってことは、それ相応の覚悟がなきゃ駄目ですよね。例えば、この作品がもう当たらなくなってお客様が入らなくなるまで続けたとして、そのときに今の私があるかっていったら、ないですよ。そのほうがきついと思うんですよね。『女囚さそり』の一本目が当たったときに、それをすでに感じました。自分で降りたことで耐えられると思っていた。でもそのときに「怨み節」というヒットがあったので、私は歌で仕事を繋いでいました。60年やってきて、1年間丸々仕事がない年っていうのはないです、私。

俳優として歌手として、自分の納得のいく生き方を貫いてきた梶芽衣子。歳月を重ねるたびに、演じる役も、描く歌世界も、深みと円熟味が醸し出され、孤高のエンタテインメントとして君臨している。東京と大阪で開催される記念ライブで、その生きざまをじっくりと目に焼きつけて欲しい。

<リリース情報>
アルバム『7 rosso(セッテロッソ)』

2025年3月26日(水) リリース
価格:3,300円(税込)

【CD収録曲】
1.真ッ紅な道
2.心焦がして
3.上等じゃない
4.愛の剣
5.恋は刺青
6.女…
7.虫けらたちの数え唄
8.星空ロック
9.とばり
10.それだけで…
11.修羅の花
12.凛
13.追憶
14.ゆれる
15.怨み節
16.役者
17.き・せ・つ(新曲)

<ライブ情報>
梶芽衣子 60周年コンサート『セッテ ロッソ』

2025年4月27日(日) 東京・大手町三井ホール
開場 15:30 / 開演 16:00

2025年5月10日(土) 大阪・Billboard Live OSAKA
開場 14:00 / 開演 15:00
開場 17:00 / 開演 18:00

【チケット料金】
■東京公演
全席指定:8,800円(税込)
※ドリンク付
※未就学児入場不可

東京公演 一般発売:2月1日(土) 10:00~
https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=33200007

■大阪公演
BOXシート:21,300円
S指定席:10,100円
R指定席:9,000円
カジュアル:8,500円

大阪公演 チケット詳細はこちら:
https://www.billboard-live.com/osaka/show?event_id=ev-20446

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