歴史、リミックス!ミュージカル「SIX」日本キャスト版が大歓声に包まれ開幕
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ミュージカル「SIX」日本キャスト版より。(撮影:岩田えり)
ミュージカル「SIX」日本キャスト版が、昨日1月31日に東京・EX THEATER ROPPONGIで開幕。ステージナタリーではソニン、田村芽実、原田真絢、エリアンナ、鈴木愛理、斎藤瑠希が出演した上演回をレポートする。
「SIX」は、2017年にイギリス・ケンブリッジ大学の学生により制作されたミュージカル。同作は2017年に「エジンバラ・フェスティバル・フリンジ」で注目を集め、イギリス・ロンドンのウエストエンド、アメリカ・ニューヨークのブロードウェイなど、各地で人気を博している。去る1月26日にはミュージカル「SIX」来日版(英語上演・日本語字幕)が閉幕し、このたび日本キャスト版がスタートした。
本作に登場するのは、“英国史上最も有名でスキャンダラスな暴君”とされるヘンリー8世の元王妃6人。現代によみがえった6人はガールズバンドを結成し、リードボーカルを務めるメンバーを「誰が最も悲惨な目に遭ったのか」で決めようとするが……。日本キャスト版には、キャサリン・オブ・アラゴン役に鈴木瑛美子、ソニン、アン・ブーリン役に田村、皆本麻帆、ジェーン・シーモア役に原田、遥海、アナ・オブ・クレーヴス役にエリアンナ、菅谷真理恵、キャサリン・ハワード役に鈴木、豊原江理佳、キャサリン・パー役に和希そら、斎藤がキャスティングされている。
冒頭、舞台を覆う幕から姿を現したキャストにスポットが当たり、6人は「離婚」「打首」「死亡」「離婚」「打首」「死別」と、おのおのが経験したヘンリーとの“別れ”をハンドマイクで語る。続いてオープニングナンバー「Ex-Wives」がスタートすると、キャストが「東京! 声聞かせて!」と煽り、観客も手拍子と大歓声で応えた。
それぞれゴールド、グリーン、ブラック、レッド、ピンク、ブルーの衣裳を着用したキャストたちは、ラインストーンやスタッズを輝かせながらパフォーマンスする。ステージ後方ではバンドの女性たちが、時にキャストとやり取りしながら爆音を奏でた。また宮廷画家ハンス・ホルバインについてのナンバー「Haus of Holbein」のシーンでは、舞台後方中央の四角い電飾の前にキャストが立つ。この場面では、まるで現代のマッチングアプリのように女性が左右に“スワイプ”され、“なし”なら左の赤い電飾、“あり”なら右の緑の電飾へとキャストが移動し、女性が容姿で品定めされる様子が描かれた。
元王妃たちはソロ曲を通じて人生の悲惨さを歌い、マウントを取り合いながらリードボーカルを決めようとする。しかし6人はやがて、それぞれの人生を“ヘンリーの妻”としてではなく、自分自身のものとして語り直そうと歴史の“リミックス”を試みる。スポットライトに照らされた彼女たちが、弾けるような笑顔で歌うフィナーレにぜひ期待しよう。
アラゴンとヘンリーの結婚期間は、妻たちの中で最長とされる約24年間。ソニンは離婚させられた怒りを「ありえない!」とパワフルに歌い、強気な女性としてアラゴンを立ち上げる。田村が演じるブーリンは、離婚を許さないカトリック教会とヘンリーが決別するきっかけとなるも、のちに打首となる人物。田村はくるくると変わる表情でブーリンの蠱惑的な魅力を体現し、何かにつけて「首を切られた」とアピールして笑いを誘った。男児の出産後に亡くなったシーモアは、“ヘンリーに最も愛された妻”とされている。原田はドラマチックなバラードに乗せ、息子の成長を見られなかった悲しみをしっとりと歌い上げた。
ホルバインが描いた肖像画が「本人と違う」として婚姻を無効にされてしまうクレーヴスには、その後も高い身分と城や邸宅などが与えられた。クレーヴス役のエリアンナは持ち前のエネルギッシュな歌声で「ひざまずなさいよ!」と歌い、観客を巻き込んで会場を盛り上げる。49歳のヘンリーと19歳で結婚したハワードは、姦通罪などで打ち首に。鈴木は身体をくねらせてセクシーにパフォーマンスしながらも、時折見せる表情から若くして散ったハワードの悲哀をにじませた。またパーは愛する恋人との結婚を望みながらもヘンリーと結婚し、彼の最期を看取った人物。パー役の斎藤は1つひとつの歌詞をかみ締めるように歌い、元恋人への愛や、聡明なパーが生きるために“神から与えられた使命”としてヘンリーと結婚するしかなかった悲しみを描き出した。
上演時間は約1時間20分。東京公演は2月21日まで。本作はその後、2月28日から3月2日まで愛知・御園座、7日から16日まで大阪の梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティでも上演される。
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